2018/03/29(木) - 12:19
石畳坂が連続して登場する第73回ドワーズ・ドール・フラーンデレンで、再びクイックステップフロアーズが強さを誇示。共に逃げた4名を出し抜いたイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が2年連続大会制覇を成し遂げた。
3月28日、ロンド・ファン・フラーンデレンを4日後に控える週半ばに「フランドル横断レース」と呼ばれる第73回ドワーズ・ドール・フラーンデレンが開催された。
ベルギー北西部フランドル地方のローセラーレを出発し、急登坂を縫うように経由しつつワレヘムを目指すコースは180.5km。ヘントやロンドと同じ団体によるオーガナイズであり、昨年まではE3ハーレルベーケ前に開催されていたが、今年は開催日が後ろにずれた。ロンド本戦と区別するために昨年から20km以上短縮され、名物の石畳登坂「オウデクワレモント」と「パテルベルグ」が消滅。ワールドツアーとしては2番目の短距離レースとなったが、それでも「ターイエンベルグ」や「クルイスベルグ」、「ノケレベルグ」といった難関ポイントが連続する。
ロンド直前のタイミングであり、世界王者でヘント〜ウェヴェルヘム勝者のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はDNS。ツール・ド・フランスに登場する石畳区間の予習演習のためにモビスターのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)とナイロ・キンタナ(コロンビア)が出場を選んだ。
気温7度、雨強め。過酷なレースを予感させる天候の下ローセラーレからリアルスタートが切られたものの、天候が影響して活発なアタック合戦には繋がらない。昨年秋の川遊び中に脚を20か所以上骨折するアクシデントから復帰したルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)が逃げ始めたのは残り90km地点のことだった。
ヘントでトップ10入りしたオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)が途中離脱し、ここまでのセミクラシックで強さを見せたシクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)は立哨の警察官と正面衝突してしまう。幸いヴァンアールトは大きな怪我なく後方集団でレースを終えている。
レースが動き始めたのはロウを飲み込み、残り70kmを切った登坂「クノクテベルグ(距離1900m/平均勾配4.9%/最大勾配11.8%)」を超えてから。BMCレーシングとクイックステップフロアーズが猛烈にペースアップを行ったことで消耗した選手たちが一気に遅れ、次の「コルテケール(1000m/6.4%/17%)」でトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が独走に持ち込みんだ。
しかしスリッピーな石畳のコーナーでマルティンは落車し、トム・ボーネンがアタックポイントとして愛した「ターイエンベルグ」を前に引き戻される。登坂でゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)が猛烈なペースアップで独走に持ち込み、やがて吸収されるも他チームのアシスト陣を疲弊させることに成功している。
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)、ストラーデ・ビアンケで勝利したティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)やバルベルデらエース級選手が自らペースアップを行い、10名強がロットNLユンボ率いる第2集団をわずかに引き離した状態で2回目のクノクテベルグ(残り35km地点)に入った。
クノクテベルグではヴァンアーヴェルマートとベノートが抜け出したものの、次に現れた2000m続く石畳「ヴェレント通り」で吸収。すると今度はセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)がアタックし、昨年覇者のランパールトが続いた。
2人にはマイク・テウニッセン(オランダ、サンウェブ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、マッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)が合流し、お見合いを続ける集団を一気に引き離していく。フィニッシュまで25kmを残したこの動きが勝ち逃げへと繋がった。
豪雨を切り裂いて進む先頭5名と、今ひとつ協調体制を取りきれない追走グループ8名(スティバル、テルプストラ、GVA、べノート、ストゥイヴェン、バルベルデ、ジャンニ・モスコン、ティモ・ローセン)の差は20秒から30秒。追走の機関車役が不足したことも手伝って、2つのグループは最後まで合流することはなかった。
逃げ切りへの青信号を灯らせた先頭グループでは、残り1.2kmから「屈強な選手たちを相手にスプリントで勝てる自信がなかったので、ロングスパートに全てを賭けた。僕はまだ無名なので見逃してもらい、5秒〜10秒くらいのリードが生まれたら勝てると思った」と言うペデルセンがアタック。しかしデンマーク王者の動きはすぐに潰され、今にも止まりそうな牽制状態からタイミングよくランパールトが仕掛けた。
全員の視線が外れる絶妙な瞬間を突いたランパールトは一気にリードを稼ぎ、躊躇した4名を引き離したままフィニッシュへと到達。スタート地点ローセラーレとフィニッシュ地点ワレヘムの中間に位置するイゼゲム出身の26歳が、地元レースで嬉しい2連覇を達成した。
昨年7月のブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージに続くプロ通算7勝目を挙げたランパールト。アシストとして働いたパリ〜ニースを経て石畳クラシックに参加し、チームの大活躍を影から支えていたサブエースが積極的な走りで勝利を掴んだ。
「天候がレースを左右すると読んでいたので、今日は2つのプランを持って臨んでいた。一つはエリア(ヴィヴィアーニ)でのスプリントだったけれど、誰もが苦しむ厳しい展開で彼はいなくなってしまった。そこで僕とスティービー、それとテルプストラでレースをシャッフルする作戦に出たんだ。雨と寒さで各チームが消耗していたので動きを作れるだろうと思っていた」とランパールトは語る。
「ヴァンマルクがアタックした時、テルプストラに言われて飛び乗り、先頭集団に入ることができた。それからは協力してローテションしてリードを稼ぎ出せたんだ。ペデルセンのアタックを防ぐと不意に飛び出した形になって、そこから差を広げようとスプリント。僕よりスピードのある選手揃いだったので今しかないと全力で逃げ続けたよ。こんなにハイレベルで、しかも家の近くのレースで再び勝てて本当に嬉しい。フランドルで勝ちまくっていることがロンドに向けての最高のモチベーションになっているよ」。クイックステップフロアーズの勝利数は今回で20勝目。昨年の現時点を3つも上回るハイペースを維持しており、もちろん勝利数ランキングで首位を独走中だ。
4日後にはロンド・ファン・フラーンデレンが開催され、シュヘルデプライス(UCI1.HC)を水曜日に挟んでパリ〜ルーベでフランドル地方を熱狂に包み込む北のクラシック週間はフィナーレを迎える。シクロワイアードでは現地レポートやバイク特集を含めてお伝えする予定だ。
3月28日、ロンド・ファン・フラーンデレンを4日後に控える週半ばに「フランドル横断レース」と呼ばれる第73回ドワーズ・ドール・フラーンデレンが開催された。
ベルギー北西部フランドル地方のローセラーレを出発し、急登坂を縫うように経由しつつワレヘムを目指すコースは180.5km。ヘントやロンドと同じ団体によるオーガナイズであり、昨年まではE3ハーレルベーケ前に開催されていたが、今年は開催日が後ろにずれた。ロンド本戦と区別するために昨年から20km以上短縮され、名物の石畳登坂「オウデクワレモント」と「パテルベルグ」が消滅。ワールドツアーとしては2番目の短距離レースとなったが、それでも「ターイエンベルグ」や「クルイスベルグ」、「ノケレベルグ」といった難関ポイントが連続する。
ロンド直前のタイミングであり、世界王者でヘント〜ウェヴェルヘム勝者のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はDNS。ツール・ド・フランスに登場する石畳区間の予習演習のためにモビスターのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)とナイロ・キンタナ(コロンビア)が出場を選んだ。
気温7度、雨強め。過酷なレースを予感させる天候の下ローセラーレからリアルスタートが切られたものの、天候が影響して活発なアタック合戦には繋がらない。昨年秋の川遊び中に脚を20か所以上骨折するアクシデントから復帰したルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)が逃げ始めたのは残り90km地点のことだった。
ヘントでトップ10入りしたオリヴァー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル)が途中離脱し、ここまでのセミクラシックで強さを見せたシクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)は立哨の警察官と正面衝突してしまう。幸いヴァンアールトは大きな怪我なく後方集団でレースを終えている。
レースが動き始めたのはロウを飲み込み、残り70kmを切った登坂「クノクテベルグ(距離1900m/平均勾配4.9%/最大勾配11.8%)」を超えてから。BMCレーシングとクイックステップフロアーズが猛烈にペースアップを行ったことで消耗した選手たちが一気に遅れ、次の「コルテケール(1000m/6.4%/17%)」でトニ・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が独走に持ち込みんだ。
しかしスリッピーな石畳のコーナーでマルティンは落車し、トム・ボーネンがアタックポイントとして愛した「ターイエンベルグ」を前に引き戻される。登坂でゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)が猛烈なペースアップで独走に持ち込み、やがて吸収されるも他チームのアシスト陣を疲弊させることに成功している。
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)、ストラーデ・ビアンケで勝利したティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)やバルベルデらエース級選手が自らペースアップを行い、10名強がロットNLユンボ率いる第2集団をわずかに引き離した状態で2回目のクノクテベルグ(残り35km地点)に入った。
クノクテベルグではヴァンアーヴェルマートとベノートが抜け出したものの、次に現れた2000m続く石畳「ヴェレント通り」で吸収。すると今度はセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)がアタックし、昨年覇者のランパールトが続いた。
2人にはマイク・テウニッセン(オランダ、サンウェブ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、マッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)が合流し、お見合いを続ける集団を一気に引き離していく。フィニッシュまで25kmを残したこの動きが勝ち逃げへと繋がった。
豪雨を切り裂いて進む先頭5名と、今ひとつ協調体制を取りきれない追走グループ8名(スティバル、テルプストラ、GVA、べノート、ストゥイヴェン、バルベルデ、ジャンニ・モスコン、ティモ・ローセン)の差は20秒から30秒。追走の機関車役が不足したことも手伝って、2つのグループは最後まで合流することはなかった。
逃げ切りへの青信号を灯らせた先頭グループでは、残り1.2kmから「屈強な選手たちを相手にスプリントで勝てる自信がなかったので、ロングスパートに全てを賭けた。僕はまだ無名なので見逃してもらい、5秒〜10秒くらいのリードが生まれたら勝てると思った」と言うペデルセンがアタック。しかしデンマーク王者の動きはすぐに潰され、今にも止まりそうな牽制状態からタイミングよくランパールトが仕掛けた。
全員の視線が外れる絶妙な瞬間を突いたランパールトは一気にリードを稼ぎ、躊躇した4名を引き離したままフィニッシュへと到達。スタート地点ローセラーレとフィニッシュ地点ワレヘムの中間に位置するイゼゲム出身の26歳が、地元レースで嬉しい2連覇を達成した。
昨年7月のブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージに続くプロ通算7勝目を挙げたランパールト。アシストとして働いたパリ〜ニースを経て石畳クラシックに参加し、チームの大活躍を影から支えていたサブエースが積極的な走りで勝利を掴んだ。
「天候がレースを左右すると読んでいたので、今日は2つのプランを持って臨んでいた。一つはエリア(ヴィヴィアーニ)でのスプリントだったけれど、誰もが苦しむ厳しい展開で彼はいなくなってしまった。そこで僕とスティービー、それとテルプストラでレースをシャッフルする作戦に出たんだ。雨と寒さで各チームが消耗していたので動きを作れるだろうと思っていた」とランパールトは語る。
「ヴァンマルクがアタックした時、テルプストラに言われて飛び乗り、先頭集団に入ることができた。それからは協力してローテションしてリードを稼ぎ出せたんだ。ペデルセンのアタックを防ぐと不意に飛び出した形になって、そこから差を広げようとスプリント。僕よりスピードのある選手揃いだったので今しかないと全力で逃げ続けたよ。こんなにハイレベルで、しかも家の近くのレースで再び勝てて本当に嬉しい。フランドルで勝ちまくっていることがロンドに向けての最高のモチベーションになっているよ」。クイックステップフロアーズの勝利数は今回で20勝目。昨年の現時点を3つも上回るハイペースを維持しており、もちろん勝利数ランキングで首位を独走中だ。
4日後にはロンド・ファン・フラーンデレンが開催され、シュヘルデプライス(UCI1.HC)を水曜日に挟んでパリ〜ルーベでフランドル地方を熱狂に包み込む北のクラシック週間はフィナーレを迎える。シクロワイアードでは現地レポートやバイク特集を含めてお伝えする予定だ。
ドワーズ・ドール・フラーンデレン2018結果
1位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ) | 4h09’40” |
2位 | マイク・テウニッセン(オランダ、サンウェブ) | +02” |
3位 | セップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | |
4位 | エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) | |
5位 | マッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
6位 | ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) | +29” |
7位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) | +30” |
8位 | グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) | +59” |
9位 | ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ) | |
10位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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