2010/01/30(土) - 06:25
冬の一大イベント、UCIシクロクロス世界選手権大会が今週末、チェコで開催される。レースの見所や、現地入りした選手たちの最新情報をお届けしよう!
雪深い現地に入った日本人選手&スタッフ
降り積もった雪に立ち往生するクルマが続出 photo:Sonoko Tanaka今年の開催地であるチェコはドイツの東、イタリアの北に位置する人口約1,000万人の小さな国だ。首都のプラハは、中世の重厚な街並みを残す上品で美しい街並みが有名。そしてレースが開催されるのは、プラハより南に80kmほど離れたターボルという街の郊外だ。
レースは1月30日(土曜日)に、ジュニアとアンダー23カテゴリー、翌31日(日曜日)に女子とエリートカテゴリーのレースが予定されている。
日本代表とそれを支えるスタッフたち photo:Sonoko Tanaka日本の代表選手は7名。アンダー23カテゴリーが竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)、女子が豊岡英子(パナソニックレディーズ)、森田正美(チームブリヂストン・アンカー)、志村みち子(ラヴニールあづみの)、福本千佳(Ready Go JAPAN)、そしてエリートが辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と、全日本チャンピオンを含む、有力選手が顔を揃えている。
選手全員が、前週にオランダで開催されたワールドカップに参戦したあと、空路で27日(水曜日)に、チェコに入った。
直前まで気温はー20℃を下回っていたと言うが、現在気温はー10℃〜0℃程度。予想していたよりも寒くない印象だが、日本の気候と比較すると言うまでもなく寒い。天候は夜間に雪が降り積もり、日中は曇り空という具合だ。
28日(木曜日)と29日(金曜日)の午後に会場へ行き、選手たちは思い思いに試走を行った。起伏の多い3300mの周回コースは、一面凍った雪に覆われ、とにかく滑りやすいのが特徴的。雪に不慣れな選手だけでなく、経験豊かな現地の選手ですら、落車を繰り返している。
U23の2名はそれぞれの思いを胸にコースを試走
レースを翌日に控えてコースを試走する竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka限られた試走時間を使って、各選手はコースレイアウトを把握し、苦手なポイントを何度も反復練習している。試走を終えた選手に話を聞いていこう。
まずは、楽しむかのように試走をしていた竹之内悠選手。年明けから新しくなったグリーンのバイクも目を引く。今年がアンダー23カテゴリー最後の年であり、今回の世界選手権には特別な思いがこもる。
U23にエントリーした小坂光(宇都宮ブリッツェン)がコースを試走 photo:Sonoko Tanaka「年末年始にベルギーを拠点として、3週間ほどヨーロッパのレースを走っています。年始に一度帰国したものの、世界選手権の前からヨーロッパで走れていることはよかったし、それが、今の自信につながっていると思います。雪でスリッピーで何が起こるかわからないコースだけど、今年は慣れてきているし、逆に何が起こるかわからないというのは、チャンスでもあると思う。運が大事だし、どれだけラッキーを呼び込めるかがキーになると思う。スタート後の混乱をうまく避けて、前のグループで走りたい」。
「直前のワールドカップでも、ラップタイムは20位前後の選手と変わらないので、とにかく前に出て、安定して走ることができれば上位を狙えると思っています。新しいバイクの感触もすごくいいので、今はレースが本当に楽しみですね!」と笑顔を見せる。
もう1人のアンダー23代表の小坂光選手にも期待がかかる。昨年は父親である小坂正則選手(スワコレーシングチーム)と親子で世界選手権に出場したことでも脚光を浴びたが、今年は単独での参戦となる。
「父からは思いっきり走ってくるように言われました。試走をしてみて、ここまでの雪は初めてなので戸惑っていますが、このコースでは、ヨーロッパの選手も苦戦すると思う。だから、条件は同じ。自分にもチャンスがあるかもって思いますね」。
「年始に体調を崩して、先週のワールドカップは万全の体調ではなかったんです。思った以上に走れなくて、自信を失いかけたりもしたけど、体調は回復してきているし、レースが楽しみです。所属チームの地元、栃木もシクロクロスに注目してくれています。チームの協力もあるので、前に出て頑張りたいと思います」。
エリート女子には4名がエントリー
コースを試走する全日本チャンピオンの豊岡英子(パナソニック・レディース) photo:Sonoko Tanaka女子選手は4人がエントリーする。注目は、今季ライバルとして国内レースを沸かせた豊岡英子選手と森田正美選手だろう。涙ながらに全日本チャンピオンの座を獲得した豊岡英子選手は、今回が5回目の世界選手権参戦となる。
ヨーロッパでのレース経験が豊富で、今季も全日本選手権後から渡欧。ワールドカップをはじめ多くのレースに参戦し、コンディションを高めてきた。
雪の降り積もったコースを試走する志村みち子(ラヴニールあづみの) photo:Sonoko Tanaka「この雪はもっと滑るかと思っていたけど、予想していたよりもマシ。でも滑るから、すべてのコーナーが勝負のポイントになってくるのだと思う。ルーベのワールドカップ(1月17日)であまりのキツさから体調を崩して、先週はあまりよくなかったけど、今週になって戻ってきている」。
「チェコは2シーズン前に滞在していたから知り合いが多くって、みんなが応援してくれている。だから、前だけを見て走って、10番代の順位を狙っていきたい。焦らないように、落ち着いてレースに対応していきたいと思う」と話す。これまでの経験からか、少し余裕が感じられる。
世界選手権に初めて出場する福本千佳(Ready Go JAPAN) photo:Sonoko Tanaka一方の森田正美選手もブランクがあるものの4回目の世界選手権となる。「雪か氷のレースになると聞いていたけど、ここまで一面の雪だとは思っていませんでした。思ってもいないラインに進んでしまったりと、想像できないアクシデントが多くて、4回目にして、初めてのコンディションに驚いています。でも、ようやく時差ボケも抜けて、しっかり眠れるようになってきているので、当日はケガをすることなく、1つでも前に行きたいと思っています」。
セレクションレース・ポイント3位の志村みち子選手は「北海道出身で、松本に住んでいたことがあるので、寒さは大丈夫。先週のワールドカップでは、転倒が多くうまく走れなくて、力を出し切ることができなかった。だから、世界選手権では、自分の走りをして、自分の力をすべて出していきたいですね」とコメント。
そして4人目は、世界選手権初参戦となる17才、高校生ライダーの福本千佳選手。小柄な体格ながら、初めての世界のビッグレースに体当たりで挑んでいるような印象だ。スタッフのアドバイスを聞きながら、うまくこなせるようになるまで、同じポイント何度も何度もを繰り返し練習している。
「コースはすべてが難しい。乗っても降りてもどっちも滑る。でも、先週のレースで、同じレベルの選手がいることもわかったので、最後まで諦めないで走ることが目標。今回の遠征はすべてが勉強だと思っています」。完走すら難しいワールドカップで、8分51秒遅れの43位でゴールし、周囲を驚かせた福本選手。女子選手にアンダー23やジュニアカテゴリーはないが、堂々とほかの選手に張り合うことができている。今回の世界選手権では、今後につながる貴重な経験ができるだろう。
コースを試走する森田正美(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka
世界選手権初出場の福本千佳(Ready Go JAPAN)がコースを試走 photo:Sonoko Tanaka
寒さに震える辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka
全日本選手権8連覇中の日本のエース、辻浦圭一
コースを試走する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka今季、男子エリートは全日本選手権を8連覇した辻浦圭一選手のみのエントリー。この世界選手権をシーズン最大の目標とし、序盤のレースでは、とにかく気負わないこと、無理に頑張らないことを意識して、世界選手権に向けてコンディションを高めてきた。
期待がかかった昨年は直前にインフルエンザに罹患し、思うように走れなかった悔しさもあるのだろう。今季から、欧州遠征の拠点をベルギーに移し、滞在先での街をあげての応援も彼を後押しする。
「コンディションはよく仕上がっている。ルーベで転倒し、ケガをしてしまったが、そのレースではあまり疲労しなかったので、結果的によかったと思う。翌週、疲れがたまっていなかったから、集中してトレーニングすることができ、先週のワールドカップの走りもよかった」。
「チェコ・ターボルは、2001年に初めて出場した世界選手権の開催地。当時は完走することが目標だったけど、いまは違う。今回のレースでまた次につながる課題が見えてくればいいと思う」。あまり多くは語らないが、言葉の奥にレースに向けての熱い思いが感じられる。日本チームを率いるエースとして、期待を裏切らない素晴らしいレースを見せてくれることだろう。
※関西シクロクロスblogには現地入りしたサポーターによるレポートや音声インタビューなどが続々とアップされる。そちらも合わせご覧下さい(編集部)。
text&photo:Sonoko Tanaka in Tábor, Czech
雪深い現地に入った日本人選手&スタッフ
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レースは1月30日(土曜日)に、ジュニアとアンダー23カテゴリー、翌31日(日曜日)に女子とエリートカテゴリーのレースが予定されている。
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選手全員が、前週にオランダで開催されたワールドカップに参戦したあと、空路で27日(水曜日)に、チェコに入った。
直前まで気温はー20℃を下回っていたと言うが、現在気温はー10℃〜0℃程度。予想していたよりも寒くない印象だが、日本の気候と比較すると言うまでもなく寒い。天候は夜間に雪が降り積もり、日中は曇り空という具合だ。
28日(木曜日)と29日(金曜日)の午後に会場へ行き、選手たちは思い思いに試走を行った。起伏の多い3300mの周回コースは、一面凍った雪に覆われ、とにかく滑りやすいのが特徴的。雪に不慣れな選手だけでなく、経験豊かな現地の選手ですら、落車を繰り返している。
U23の2名はそれぞれの思いを胸にコースを試走
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もう1人のアンダー23代表の小坂光選手にも期待がかかる。昨年は父親である小坂正則選手(スワコレーシングチーム)と親子で世界選手権に出場したことでも脚光を浴びたが、今年は単独での参戦となる。
「父からは思いっきり走ってくるように言われました。試走をしてみて、ここまでの雪は初めてなので戸惑っていますが、このコースでは、ヨーロッパの選手も苦戦すると思う。だから、条件は同じ。自分にもチャンスがあるかもって思いますね」。
「年始に体調を崩して、先週のワールドカップは万全の体調ではなかったんです。思った以上に走れなくて、自信を失いかけたりもしたけど、体調は回復してきているし、レースが楽しみです。所属チームの地元、栃木もシクロクロスに注目してくれています。チームの協力もあるので、前に出て頑張りたいと思います」。
エリート女子には4名がエントリー
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そして4人目は、世界選手権初参戦となる17才、高校生ライダーの福本千佳選手。小柄な体格ながら、初めての世界のビッグレースに体当たりで挑んでいるような印象だ。スタッフのアドバイスを聞きながら、うまくこなせるようになるまで、同じポイント何度も何度もを繰り返し練習している。
「コースはすべてが難しい。乗っても降りてもどっちも滑る。でも、先週のレースで、同じレベルの選手がいることもわかったので、最後まで諦めないで走ることが目標。今回の遠征はすべてが勉強だと思っています」。完走すら難しいワールドカップで、8分51秒遅れの43位でゴールし、周囲を驚かせた福本選手。女子選手にアンダー23やジュニアカテゴリーはないが、堂々とほかの選手に張り合うことができている。今回の世界選手権では、今後につながる貴重な経験ができるだろう。
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全日本選手権8連覇中の日本のエース、辻浦圭一
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「チェコ・ターボルは、2001年に初めて出場した世界選手権の開催地。当時は完走することが目標だったけど、いまは違う。今回のレースでまた次につながる課題が見えてくればいいと思う」。あまり多くは語らないが、言葉の奥にレースに向けての熱い思いが感じられる。日本チームを率いるエースとして、期待を裏切らない素晴らしいレースを見せてくれることだろう。
※関西シクロクロスblogには現地入りしたサポーターによるレポートや音声インタビューなどが続々とアップされる。そちらも合わせご覧下さい(編集部)。
text&photo:Sonoko Tanaka in Tábor, Czech
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