2018/02/04(日) - 15:33
2レース連続でイギリスにアルカンシェルを奪取されたベルギー勢だったが、サンヌ・カントの女子エリートタイトル防衛で盛り返した。與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)と今井美穂(CO2Bicycle)のコメント、U23の結果と合わせてレポート。
シクロクロス世界選手権初日のトリを飾るのは、41名が出走した女子エリート。1日を通して雨が降らなかったことで路面の泥はさらに重たさを増し、キャンバーや下り区間はさらに荒れ具合を増したハードコースに向けて、所定より若干時間が押す中選手たちが飛び出していった。
保有UCIポイント数でスタート位置が悪いポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やマリアンヌ・フォス(オランダ)が埋もれる中、強烈なダッシュを決めたのはイタリアのエヴァ・リヒナーだった。連覇を賭けて臨んだサンヌ・カント(ベルギー)はやや遅れ、クリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク)やマウド・カプテンス(オランダ)らが続く形で50分のレースが動き出す。
快調に飛ばしたリヒナーだったが、1周目のキャンバー区間でスリップして失速。ロードレースではブールス・ドルマンスサイクリングチームに所属するマジュラスが先頭に上がり、ベテランのエレン・ヴァンロイと、徐々にポジションを上げたカントのベルギー勢が最初の激坂登坂で追いついた。
スムーズな動作でカントが先頭を奪い、ヴァンロイは滑りやすさ極まりないタフコースに沈没。そんな中、39歳の全米王者ケイティ・コンプトン(アメリカ)が徐々にポジションを上げ、2周目の中盤までにマジュラスをキャッチ。更にカントにまで追いつくと、現世界王者にミスが生まれた。
キャンバーでのスリップや、重い泥区間でランニングを強いられたカントと、ミスなくまとめ、パワフルなペダリングで踏み抜いたコンプトンの差は一気に10秒弱まで開く。過酷なコンディションを得意とするカントの苦戦に会場はどよめきに包まれていく。
「最終周回に入る時の差は5秒くらい。今回は負けるかもしれないと思った」と後に語るカントだが、バイク交換時の処理の速さが決め手となって再合流に成功する。付かず離れずの距離で最終周回のキャンバー区間に突入した2人。すると今度はコンプトンが轍を外して失速し、一気にリードが生まれる。ここまでイギリス勢に打ちのめされてきたベルギーサポーターの絶叫が会場を震わせた。
必死に追走を試みたコンプトンだったが、カントも残り半周をミスなくまとめ、独走を守ったままホームストレートに現れた。中盤のミスを帳消しにする走りで得た、12秒差のアルカンシェル防衛。フィニッシュライン上で力強いガッツポーズが決まった。
「今までのキャリアの中でも一番タフなレースで、一番タフなコースだったと思う。最終周回の差も少なく、一つのミスでレースを失ってしまうのでいかにミスなく走るかが大切だった。私はこのコースに合っていないという声も多かったけれど、そんなことはないと証明できた。昨年は(マリアンヌ)フォスと、今年はコンプトンとの一騎打ちを制しての勝利は大きな意味を持つと思う」と、カントはレース直後のインタビューに対して語った。
3位にはマジュラスをパスしたルシンダ・ブランド(オランダ)が入り、開催国オランダに2つめのメダルをもたらした。普段のワールドカップと異なる顔ぶれを上位に選んだタフコースで、序盤好調に進めていた今井美穂(CO2Bicycle)はディレイラーハンガー折れに見舞われ完走ならず。最後尾から無理せずレースを進めた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)は8分26秒遅れの34位で、オランダの生活拠点から徒歩圏内で開催された「地元」レースを走りきった。以下は二人のコメント。
與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)
確実に完走するという目標を達成したので満足です。こちらの生活拠点の横で開催されたレースだったので、オーガナイザーやファンにたくさん声をかけてもらえました。オランダ人ではないのに地元選手としてみてもらえて嬉しかったですね。世界選手権特有の雰囲気に飲まれることもないし、意外と周りのヨーロッパ選手も苦戦していたので淡々と進めました。
今井美穂(CO2Bicycle)
スタートが百点満点の走りだっただけに悔しさしかありません。前に出れば落車も防げると思って積極策に出ましたが、力及ばず。メカトラブルもピットから遠い場所だったのですが、それを防げなかったのも実力です。やはりコースも、レースも、応援してくれる観客も含めて世界選手権は別次元。走ってみて、昨年からあまり進歩を感じられなかったことが残念でした。来年大会でリベンジしたいと思います。
女子U23は本命のリチャーズが圧勝
この日2レース目として開催された女子U23でも、男子ジュニアに続いてイギリス勢が躍進した。スタートこそエマ・ホワイト(アメリカ)がホールショットを確保したものの、1周目中盤には今季ワールドカップのエリートカテゴリーで優勝しているイヴィ・リチャーズ(イギリス)が先頭に浮上。同じくユニオンジャックを纏うハリエット・ハーンデンも続き、早くもイギリスがワンツー体制を敷き始める。
リチャーズはミスを起こしつつも後続との差を一方的に広げ続け、2016年にヒュースデン・ゾルダーで開催されたU23世界選手権以来2年ぶりのアルカンシェル奪還に成功。ドミニカ出身で、現在オランダ国籍で活躍するセイリン・デルカルメンアルバラードが2位に入り、ナディア・ヘイグルがオーストリアに表彰台をもたらした。
シクロクロス世界選手権初日のトリを飾るのは、41名が出走した女子エリート。1日を通して雨が降らなかったことで路面の泥はさらに重たさを増し、キャンバーや下り区間はさらに荒れ具合を増したハードコースに向けて、所定より若干時間が押す中選手たちが飛び出していった。
保有UCIポイント数でスタート位置が悪いポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やマリアンヌ・フォス(オランダ)が埋もれる中、強烈なダッシュを決めたのはイタリアのエヴァ・リヒナーだった。連覇を賭けて臨んだサンヌ・カント(ベルギー)はやや遅れ、クリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク)やマウド・カプテンス(オランダ)らが続く形で50分のレースが動き出す。
快調に飛ばしたリヒナーだったが、1周目のキャンバー区間でスリップして失速。ロードレースではブールス・ドルマンスサイクリングチームに所属するマジュラスが先頭に上がり、ベテランのエレン・ヴァンロイと、徐々にポジションを上げたカントのベルギー勢が最初の激坂登坂で追いついた。
スムーズな動作でカントが先頭を奪い、ヴァンロイは滑りやすさ極まりないタフコースに沈没。そんな中、39歳の全米王者ケイティ・コンプトン(アメリカ)が徐々にポジションを上げ、2周目の中盤までにマジュラスをキャッチ。更にカントにまで追いつくと、現世界王者にミスが生まれた。
キャンバーでのスリップや、重い泥区間でランニングを強いられたカントと、ミスなくまとめ、パワフルなペダリングで踏み抜いたコンプトンの差は一気に10秒弱まで開く。過酷なコンディションを得意とするカントの苦戦に会場はどよめきに包まれていく。
「最終周回に入る時の差は5秒くらい。今回は負けるかもしれないと思った」と後に語るカントだが、バイク交換時の処理の速さが決め手となって再合流に成功する。付かず離れずの距離で最終周回のキャンバー区間に突入した2人。すると今度はコンプトンが轍を外して失速し、一気にリードが生まれる。ここまでイギリス勢に打ちのめされてきたベルギーサポーターの絶叫が会場を震わせた。
必死に追走を試みたコンプトンだったが、カントも残り半周をミスなくまとめ、独走を守ったままホームストレートに現れた。中盤のミスを帳消しにする走りで得た、12秒差のアルカンシェル防衛。フィニッシュライン上で力強いガッツポーズが決まった。
「今までのキャリアの中でも一番タフなレースで、一番タフなコースだったと思う。最終周回の差も少なく、一つのミスでレースを失ってしまうのでいかにミスなく走るかが大切だった。私はこのコースに合っていないという声も多かったけれど、そんなことはないと証明できた。昨年は(マリアンヌ)フォスと、今年はコンプトンとの一騎打ちを制しての勝利は大きな意味を持つと思う」と、カントはレース直後のインタビューに対して語った。
3位にはマジュラスをパスしたルシンダ・ブランド(オランダ)が入り、開催国オランダに2つめのメダルをもたらした。普段のワールドカップと異なる顔ぶれを上位に選んだタフコースで、序盤好調に進めていた今井美穂(CO2Bicycle)はディレイラーハンガー折れに見舞われ完走ならず。最後尾から無理せずレースを進めた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)は8分26秒遅れの34位で、オランダの生活拠点から徒歩圏内で開催された「地元」レースを走りきった。以下は二人のコメント。
與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)
確実に完走するという目標を達成したので満足です。こちらの生活拠点の横で開催されたレースだったので、オーガナイザーやファンにたくさん声をかけてもらえました。オランダ人ではないのに地元選手としてみてもらえて嬉しかったですね。世界選手権特有の雰囲気に飲まれることもないし、意外と周りのヨーロッパ選手も苦戦していたので淡々と進めました。
今井美穂(CO2Bicycle)
スタートが百点満点の走りだっただけに悔しさしかありません。前に出れば落車も防げると思って積極策に出ましたが、力及ばず。メカトラブルもピットから遠い場所だったのですが、それを防げなかったのも実力です。やはりコースも、レースも、応援してくれる観客も含めて世界選手権は別次元。走ってみて、昨年からあまり進歩を感じられなかったことが残念でした。来年大会でリベンジしたいと思います。
女子U23は本命のリチャーズが圧勝
この日2レース目として開催された女子U23でも、男子ジュニアに続いてイギリス勢が躍進した。スタートこそエマ・ホワイト(アメリカ)がホールショットを確保したものの、1周目中盤には今季ワールドカップのエリートカテゴリーで優勝しているイヴィ・リチャーズ(イギリス)が先頭に浮上。同じくユニオンジャックを纏うハリエット・ハーンデンも続き、早くもイギリスがワンツー体制を敷き始める。
リチャーズはミスを起こしつつも後続との差を一方的に広げ続け、2016年にヒュースデン・ゾルダーで開催されたU23世界選手権以来2年ぶりのアルカンシェル奪還に成功。ドミニカ出身で、現在オランダ国籍で活躍するセイリン・デルカルメンアルバラードが2位に入り、ナディア・ヘイグルがオーストリアに表彰台をもたらした。
シクロクロス世界選手権2018女子エリート結果
1位 | サンヌ・カント(ベルギー) | 49’34” |
2位 | ケイティ・コンプトン(アメリカ) | +12” |
3位 | ルシンダ・ブランド(オランダ) | +26” |
4位 | クリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク) | +55’ |
5位 | エリザベス・ブランダウ(ドイツ) | +1’26” |
6位 | ケイトリン・キオー(アメリカ) | +1’45” |
7位 | エヴァ・リヒナー(イタリア) | +1’49” |
8位 | エレ・アンダーソン(アメリカ) | +1’57” |
9位 | マーレネ・プティ(フランス) | +2’10” |
10位 | カロリーヌ・マニ(フランス) | +2’38” |
34位 | 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) | +8’26” |
37位 | 今井美穂(CO2Bicycle) | Lap |
シクロクロス世界選手権2018女子U23結果
1位 | イヴィ・リチャーズ(イギリス) | 37’52” |
2位 | セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ) | +38” |
3位 | ナディア・ヘイグル(オーストリア) | +1’04” |
4位 | ハリエット・ハーンデン(イギリス) | +1’24” |
5位 | フルール・ナーデンガスト(オランダ) | +1’40” |
6位 | サラ・カサソラ(イタリア) | |
7位 | エマ・ホワイト(アメリカ) | +1’59” |
8位 | マリオン・ノーブルリブロール(フランス) | +2’03” |
9位 | アデラ・サファノヴァ(チェコ) | |
10位 | ラウラ・フェルドンショット(ベルギー) | 2’41” |
text&photo:So.Isobe
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