2010/01/21(木) - 17:28
レース終盤に起伏のある周回コースが設定されたツアー・ダウンアンダー第3ステージは、上りスプリント勝負で強豪を沈めたマヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)が勝利。果敢に勝利を狙った元スペインチャンピオンと世界チャンピオンを、ポルトガルチャンピオンが打ち破った。
最高気温40度に達する暑さに見舞われたツアー・ダウンアンダー第3ステージ。レースはアデレード中心部から南に3km下ったアンレーの街をスタート。そこから南に向かって高速道を走り、38km地点でKOM(山岳ポイント)を通過する。
最後は内陸部のスターリングを中心とした21kmの周回コースが登場。ゴール前8kmは概ね上り基調で、最終ストレートも勾配3%ほどの上りが続く。前日までバトルを繰り広げていたピュアスプリンターではなく、ダッシュ力に長けたクラシックライダー、もしくは軽量スプリンター向きのステージだ。
第3ステージをスタートしたのは、ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)を除く131名。正式なスタートが切られると、すぐさまアタック合戦が始まった。
積極的にアタックを仕掛けたのはセバスティアン・ロセレル(ベルギー、レディオシャック)やホアン・オラク(スペイン、カチューシャ)。一時は9名の逃げグループが形成されたが、チームHTC・コロンビアがコントロールするメイン集団がアタッカーを全て封じ込める。
やがてKOMが近づくと、メイン集団からトーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)とルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)がアタック。観客が詰めかけたこの日唯一のKOMはローレッガーが先頭で通過し、山岳賞トップの座をティモシー・ロー(チームUniSA)から奪い取った。
その後もレースは落ち着かず、ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)とキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)の逃げも短命に終わる。続いて飛び出したサイモン・クラーク(オーストラリア、チームUniSA)とカルステン・クローン(オランダ、BMCレーシングチーム)に3名が追いつくと、ようやくレースは落ち着いた。
先頭2名に合流したのは、昨年大会で逃げまくったジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、そしてマチェイ・パテルスキー(ポーランド、リクイガス)。しかしケースデパーニュの集団コントロールにより、タイム差は1分台に抑え込まれた。
やがてスターリングの周回コースに入ると、先頭はボブリッジとクラークの2人に。メイン集団から飛び出したマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)は単独で先頭に合流したが、最終周回に入ると逃げは全て捕らえられた。
ラスト6kmでのミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)も失敗し、人数を揃えたケースデパーニュが完全に主導権を握ってゴールへ。ラスト1kmを切るとランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)がアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)の動きに警戒しながら先頭へ。主要選手が互いに牽制し合う中、ラスト250mでカルドソが勢い良く飛び出した。
上りで後続を一気に突き放すカルドソ。慌ててバルベルデやカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が応戦したが、その差は埋まらなかった。
バルベルデとエヴァンスを下したカルドソは、今年リバティーセグロス・コンチネンタルチームからフットオン・セルヴェットに移籍した25歳。昨年ポルトガル選手権で優勝を飾り、ナショナルチャンピオンジャージを着ている。バイクは特注ゴールドカラーだ。
「こんなタフなステージで勝てて本当に嬉しい。これはプロツアーチームの選手として走る初のプロツアーレース。総合成績で既に大きく遅れているから総合優勝は狙えないけど、チームにとって大きな意味のある勝利だ」。ゴール後カルドソは流暢なイタリア語でインタビューに応えた。
ラスト1kmの攻防についてカルドソは「逃げが吸収されてからは、ケースデパーニュが集団を完全にコントロールしていた。でもその隙を突いて飛び出したんだ」。ライバルたちが牽制する中、カルドソが切れ味鋭いスプリントで大きな勝利を掴んだ。
バルベルデとエヴァンスに続いて4位に入ったのは、前日の第2ステージで激しくクラッシュし、左腕を20針縫う怪我を負っていたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)。1月26日に20歳の誕生日を迎えるプロ1年目のルーキーだが、チームスタッフもそ実力に太鼓判を押している。また一人、注目すべき若手が現れた。
ステージ優勝を飾ったカルドソはボーナスタイム10秒を獲得したが、第1ステージで8分以上遅れてフィニッシュしているため、総合上位には影響せず。総合リーダージャージはこの日23位に入ったアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)が守った。ボーナスタイム6秒を獲得したバルベルデは総合4位に浮上している。
ステージダイジェストムービー
ツアー・ダウンアンダー2010第3ステージ結果
1位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)3h14'38"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+01"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)
5位 マウロ・フィネット(イタリア、リクイガス)
6位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
7位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)
8位 マルクス・フォーテン(ドイツ、チームミルラム)
9位 アントニー・ルー(フランス、フランセーズデジュー)
10位 エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)9h53'38"
2位 グレゴリー・ヘンダーソン(イギリス、チームスカイ)+14"
3位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
5位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)+16"
6位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
8位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)+19"
9位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)+20"
10位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)
スプリント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)
山岳賞
トーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)
新人賞
ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
チーム総合成績
アージェードゥーゼル
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Cor Vos
最高気温40度に達する暑さに見舞われたツアー・ダウンアンダー第3ステージ。レースはアデレード中心部から南に3km下ったアンレーの街をスタート。そこから南に向かって高速道を走り、38km地点でKOM(山岳ポイント)を通過する。
最後は内陸部のスターリングを中心とした21kmの周回コースが登場。ゴール前8kmは概ね上り基調で、最終ストレートも勾配3%ほどの上りが続く。前日までバトルを繰り広げていたピュアスプリンターではなく、ダッシュ力に長けたクラシックライダー、もしくは軽量スプリンター向きのステージだ。
第3ステージをスタートしたのは、ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)を除く131名。正式なスタートが切られると、すぐさまアタック合戦が始まった。
積極的にアタックを仕掛けたのはセバスティアン・ロセレル(ベルギー、レディオシャック)やホアン・オラク(スペイン、カチューシャ)。一時は9名の逃げグループが形成されたが、チームHTC・コロンビアがコントロールするメイン集団がアタッカーを全て封じ込める。
やがてKOMが近づくと、メイン集団からトーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)とルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)がアタック。観客が詰めかけたこの日唯一のKOMはローレッガーが先頭で通過し、山岳賞トップの座をティモシー・ロー(チームUniSA)から奪い取った。
その後もレースは落ち着かず、ホセイバン・グティエレス(スペイン、ケースデパーニュ)とキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)の逃げも短命に終わる。続いて飛び出したサイモン・クラーク(オーストラリア、チームUniSA)とカルステン・クローン(オランダ、BMCレーシングチーム)に3名が追いつくと、ようやくレースは落ち着いた。
先頭2名に合流したのは、昨年大会で逃げまくったジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、そしてマチェイ・パテルスキー(ポーランド、リクイガス)。しかしケースデパーニュの集団コントロールにより、タイム差は1分台に抑え込まれた。
やがてスターリングの周回コースに入ると、先頭はボブリッジとクラークの2人に。メイン集団から飛び出したマシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)は単独で先頭に合流したが、最終周回に入ると逃げは全て捕らえられた。
ラスト6kmでのミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)も失敗し、人数を揃えたケースデパーニュが完全に主導権を握ってゴールへ。ラスト1kmを切るとランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)がアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)の動きに警戒しながら先頭へ。主要選手が互いに牽制し合う中、ラスト250mでカルドソが勢い良く飛び出した。
上りで後続を一気に突き放すカルドソ。慌ててバルベルデやカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が応戦したが、その差は埋まらなかった。
バルベルデとエヴァンスを下したカルドソは、今年リバティーセグロス・コンチネンタルチームからフットオン・セルヴェットに移籍した25歳。昨年ポルトガル選手権で優勝を飾り、ナショナルチャンピオンジャージを着ている。バイクは特注ゴールドカラーだ。
「こんなタフなステージで勝てて本当に嬉しい。これはプロツアーチームの選手として走る初のプロツアーレース。総合成績で既に大きく遅れているから総合優勝は狙えないけど、チームにとって大きな意味のある勝利だ」。ゴール後カルドソは流暢なイタリア語でインタビューに応えた。
ラスト1kmの攻防についてカルドソは「逃げが吸収されてからは、ケースデパーニュが集団を完全にコントロールしていた。でもその隙を突いて飛び出したんだ」。ライバルたちが牽制する中、カルドソが切れ味鋭いスプリントで大きな勝利を掴んだ。
バルベルデとエヴァンスに続いて4位に入ったのは、前日の第2ステージで激しくクラッシュし、左腕を20針縫う怪我を負っていたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)。1月26日に20歳の誕生日を迎えるプロ1年目のルーキーだが、チームスタッフもそ実力に太鼓判を押している。また一人、注目すべき若手が現れた。
ステージ優勝を飾ったカルドソはボーナスタイム10秒を獲得したが、第1ステージで8分以上遅れてフィニッシュしているため、総合上位には影響せず。総合リーダージャージはこの日23位に入ったアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)が守った。ボーナスタイム6秒を獲得したバルベルデは総合4位に浮上している。
ステージダイジェストムービー
ツアー・ダウンアンダー2010第3ステージ結果
1位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)3h14'38"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)+01"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)
5位 マウロ・フィネット(イタリア、リクイガス)
6位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
7位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)
8位 マルクス・フォーテン(ドイツ、チームミルラム)
9位 アントニー・ルー(フランス、フランセーズデジュー)
10位 エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)9h53'38"
2位 グレゴリー・ヘンダーソン(イギリス、チームスカイ)+14"
3位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
5位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)+16"
6位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
8位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)+19"
9位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)+20"
10位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)
スプリント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)
山岳賞
トーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)
新人賞
ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
チーム総合成績
アージェードゥーゼル
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Cor Vos
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