2017/11/23(木) - 20:45
ツール・ド・おきなわ市民100kmアンダー39の部で優勝した藤田涼平(サイタマサイクルプロジェクト)によるレポート。元オリンピック選手の父、藤田晃三さんの勧めで春休みに沖縄で合宿を体験、最高の環境と練習仲間に支えられての勝利を振り返る。
父の勧めた「沖縄修行」がツール・ド・おきなわの始まり
ツールドおきなわは去年に引き続き2回目の参加。私のツール・ド・おきなわ挑戦は、去年の3月に沖縄で一ヶ月間修行したことがきっかけで始まった。その修行とは、沖縄最大の自転車店である沖縄輪業で一ヶ月間働くというもの。
市民100kmアンダー39の部で優勝した藤田涼平(サイタマサイクルプロジェクト) photo:Satoru.Kato父から突然「春休み暇だろ?沖縄で一ヶ月自転車修行に行ってこい。もう決まったから。」とメールが来た。沖縄輪業さんと父が話を勝手に進めてしまっていたのだ。当時、東京サイクルデザイン専門学校の学生だった私にとっては、いい勉強ができる絶好の機会。断る理由は無かった。
友達を1人連れていってもいいとのことだったので、クラスメイトの岩村をこの修行に巻き込んだ。こうして私と岩村の沖縄自転車修行が始まった。
生活する部屋は沖縄輪業さんが用意してくれた。生活に必要なものがほとんど揃っていて、3本ローラーと固定ローラーまである最高の環境だった。3月でも半袖で過ごせる沖縄の地で、練習と仕事の毎日。実業団チームで走っていた岩村はいい練習相手になってくれた。
沖縄輪業で定期的に行われる練習会には毎回参加した。そこでお世話になったのが、沖縄輪業を拠点に活動している自転車チーム「男塾」の皆さん。ツール・ド・おきなわのコースを案内してもらい、レースに出場することを約束してこの修行は終了した。とても充実した一ヶ月だった。
沖縄での「男塾練」の様子。この日は沖縄を拠点に練習する西加南子さんも参加してくれた
ツール・ド・おきなわ2016が初めてのロードレース体験だった
レースはヒルクライムしか経験がなく、これが初めてのロードレースだった。
父の藤田晃三さん(元アンカー選手)。アンカーツアーでは一緒に参加した選手をサポートしながら走る photo:Makoto.AYANO2016年のツール・ド・おきなわは、父が案内をする「アンカーツアー」で参加。初めてのツール・ド・おきなわでも安心してレースに集中できた。相棒の岩村と共に100kmアンダー39に出場。私は男塾のジャージを着て走った。
レースは半澤さんが残り30kmから独走逃げ切り優勝。2位と3位は羽地ダムでアタックした2人が表彰台を獲得。私は4位集団の2着で5位だった。岩村は15位。常に私のポジションや体調を気にしながら走ってくれた。反省点は沢山あったが、初めてのロードレースで5位入賞は上出来で、その後の自信にもなった。
2017年シーズン
専門学校を卒業後、セオサイクルでアルバイトをしながらプロ選手を目指して本格的にレース活動を開始した。サイタマサイクルプロジェクトに所属し、JBCFエリートツアーを走る。3月のJBCF宇都宮開幕戦で3位に入り、E3からE2に昇格。7月の広島大会でE1に昇格。シーズン後半はE1クラスでトップ10に入ることが出来るまでに成長した。
沖縄までに20レースを走り、雨のレースや落車など色々な経験をした。元選手の父やチームメイトからのアドバイスもあり、自転車選手として大きく成長できた1年だった。
レースレポート
迎えたシーズンラストレース、ツール・ド・おきなわ。去年と同じ100kmアンダー39クラスにエントリー。今年も父のツアーで参加した。
補給のボトルを受け取り、普久川ダム頂上を越える藤田涼平(サイタマサイクルプロジェクト) photo:Makoto.AYANO
岩村は京都の自転車店に就職して、今年は選手としてではなく大会のオフシャルメカニックとして沖縄に来ていた。サイタマサイクルプロジェクトからは同じクラスにトミー(富本)さんがエントリー。チームメイトがいるのは心強かった。
金曜日に沖縄入り。空港からホテルまでツアーバスで移動。夜のツアー懇親会では「優勝します」と宣言した。
レース前日。私は100kmオーバー40で優勝を狙うツアー参加者の木村さん(埼北ツブラーゼ)と2人で羽地ダムの試走に向った。最後の勝負ポイントをしっかりチェックした。羽地を下り、古宇利島へ。そこで他のツアー参加者と合流してレース会場へ向った。この日は60km走りTSSはぴったり100。ちょっと走り過ぎたかもしれない。炭水化物中心の夕食を済ませ、早めに就寝。寝る前に「明日は勝ちます」とFacebookに投稿した。
レース前日は4時起床。ツアーバスでスタート地点まで移動した。6時30分到着。風があって予想以上に寒かった。岩村から上着を借りて事なきを得た。
スタートまで時間があったので、父と一緒に武井享介さんに挨拶をしに行った。武井さんは與那嶺選手をスタート前にサポートするために100kmにエントリーしていたようだ。本気で走らないことを確認して少し安心したが、レースで何かしらのアクションを起こしてくるのは間違いないので要注意の選手であることには変わりなかった。このとき目標を聞かれて「優勝です!」と答えた。スタートギリギリまでアップをして、いよいよレースが始まる。
100kmアンダー39のメイン集団 photo:Makoto.AYANO
10時11分ローリングスタート。先導車のすぐ後ろを走った。しばらくしてチームメイトのトミー(富元)さんもここに合流。ローリングが解除されてもペースは上がらなかったので、そのまま先頭をキープした。この時はサイタマサイクルプロジェクトの2人で大集団を牽引していたので気分が良かった。
先頭付近で奥を下り海岸線へ。ここで私の右後方で落車が発生。次々に選手が巻き込まれ、道幅一杯にストップする大落車だった。これを何事も無く回避できたのは私とトミーさんを含む先頭付近を走っていた20人ほどしかいなかった。
チームメイトのトミー(富元)さんも好調で集団の先頭をよく引いてくれる photo:Makoto.AYANO遅れた選手が合流して50人以上の集団で普久川ダムの登りへ。登り始めてすぐにクライマーの宿谷さん(竹芝レーシング)がアタック。ゴールまでまだ距離があるので誰も反応せず。「1人で行かしとけ!」と声を上げる人もいた。あっという間に1分以上の差がついた。下りは実業団のレースと比べるとかなり遅く感じた。武井さんだけは異常に速かった。
逃げる宿谷さんとのタイム差がなかなか縮まらなかったが、武井さんが集団をまとめてくれた。下りはほとんど武井さんが先頭だった。武井さんはまさに「集団のボス」という感じだった。
ゴールまで残り30kmの所でようやく宿谷さんを吸収。ここからは去年のような逃げができないように注意だ。小集団のスプリントに持ち込むことが出来ればスプリント力がある自分に勝機がある。
武井享介さんがアタックをして集団を翻弄する。格の違うほどの強さを感じた photo:Makoto.AYANO登りで武井さんがアタックしてレースが動いた。このアタックに反応したのは一人のみ。羽地前で捕まって無駄に足を使ってしまうことだけは避けたかったので、私はこの逃げには乗らなかった。
逃げ2人との差が開き、武井さん不在の集団でこの逃げを捕まえることが出来るか不安で仕方がなかった。羽地手前の平坦はきれいにローテーションしてハイペースが維持できた。羽地までに逃げを吸収したい気持ちは皆一緒だったようだ。
羽地の麓で逃げを捉えた。そのまま羽地ダムの登りをいいペースで登る。この時は脚が攣りそうな状態で、誰かが仕掛けたらついていけなかったかもしれない。
トンネルを抜け右に曲がると多くの観客がいた。「藤田! いけ!!」名前を呼ばれて振り返る。真っ赤な男塾ジャージ姿、塾長の宇野さんだった。この応援で気合が入った。
市民100kmアンダー39優勝の藤田涼平(サイタマサイクルプロジェクト) は、藤田晃三さんの息子さん photo:Makoto.AYANO
羽地をクリアして58号線に入る。残ったメンバーには埼玉の練習仲間の福田さん(イノウエレーシング)がいた。人数を数えると13人。狙っていたレース展開に持ち込むことができた。全開のスプリントが出来れば優勝できる!
しかし、残り5kmのイオン坂でついに脚が攣ってしまった。集団の後ろでストレッチを繰り返した。スプリントのフォームをとって脚の状態を確認してみる。なんとかなりそうだった。
残り1km切ったところからポジションを前に上げていく。残り500mで先頭に出た。誰から仕掛けるか様子を伺う。残り300mで福田さんが最初に動いた。この後ろにぴったりつく。残り150mで腰を上げて一気に加速して先頭に出た。すぐに攣りそうになって、最後はシッティングで踏み続けた。ゴール手前で後ろを見ると付いてきていたのは2位の選手だけだった。手を挙げてゴール! 初優勝! 有言実行した瞬間だった。
市民100kmアンダー39の部で優勝した藤田涼平(サイタマサイクルプロジェクト) photo:Satoru.Kato
レース後、優勝を喜んでくれた相棒の岩村と レース後、色々な人に優勝を祝福してもらいました。父、ツアー参加者の皆さん。沖縄輪業と男塾の皆さん。チームメイトや練習でお世話になった皆さん。岩村は自分のことのように喜んでくれた。沢山の人に支えられていることを実感しました。本当にありがとうございました。
優勝という最高の結果でツールドおきなわ2017終えることができた。来年は市民210kmに挑戦したいと思う。
来シーズンは全日本選手権に挑戦する予定だ。JBCFのレースでも結果を残せるように頑張りたい。また成長した姿で1年後に沖縄に帰ってきたい。
使用機材
フレーム : アンカー RHM9 RS
ホイール : SHIMANO 9000 C35 CL
コンポ : SHIMANO 9070
タイヤ : BRIDGESTONE EXTENZA R1X
ウェア : SUNVOLT セパレートワンピース
ヘルメット:KABUTO AERO-R1
サングラス: ESS CROSSBOW
ソックス : R×L TBK-300R
市民レース100km アンダー39優勝の藤田涼平(サイタマサイクルプロジェクト) photo:Makoto.AYANO
text:Ryohei.FUJITA
photo:Makoto.AYANO,Satoru.KATO
父の勧めた「沖縄修行」がツール・ド・おきなわの始まり
ツールドおきなわは去年に引き続き2回目の参加。私のツール・ド・おきなわ挑戦は、去年の3月に沖縄で一ヶ月間修行したことがきっかけで始まった。その修行とは、沖縄最大の自転車店である沖縄輪業で一ヶ月間働くというもの。
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友達を1人連れていってもいいとのことだったので、クラスメイトの岩村をこの修行に巻き込んだ。こうして私と岩村の沖縄自転車修行が始まった。
生活する部屋は沖縄輪業さんが用意してくれた。生活に必要なものがほとんど揃っていて、3本ローラーと固定ローラーまである最高の環境だった。3月でも半袖で過ごせる沖縄の地で、練習と仕事の毎日。実業団チームで走っていた岩村はいい練習相手になってくれた。
沖縄輪業で定期的に行われる練習会には毎回参加した。そこでお世話になったのが、沖縄輪業を拠点に活動している自転車チーム「男塾」の皆さん。ツール・ド・おきなわのコースを案内してもらい、レースに出場することを約束してこの修行は終了した。とても充実した一ヶ月だった。
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ツール・ド・おきなわ2016が初めてのロードレース体験だった
レースはヒルクライムしか経験がなく、これが初めてのロードレースだった。
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レースは半澤さんが残り30kmから独走逃げ切り優勝。2位と3位は羽地ダムでアタックした2人が表彰台を獲得。私は4位集団の2着で5位だった。岩村は15位。常に私のポジションや体調を気にしながら走ってくれた。反省点は沢山あったが、初めてのロードレースで5位入賞は上出来で、その後の自信にもなった。
2017年シーズン
専門学校を卒業後、セオサイクルでアルバイトをしながらプロ選手を目指して本格的にレース活動を開始した。サイタマサイクルプロジェクトに所属し、JBCFエリートツアーを走る。3月のJBCF宇都宮開幕戦で3位に入り、E3からE2に昇格。7月の広島大会でE1に昇格。シーズン後半はE1クラスでトップ10に入ることが出来るまでに成長した。
沖縄までに20レースを走り、雨のレースや落車など色々な経験をした。元選手の父やチームメイトからのアドバイスもあり、自転車選手として大きく成長できた1年だった。
レースレポート
迎えたシーズンラストレース、ツール・ド・おきなわ。去年と同じ100kmアンダー39クラスにエントリー。今年も父のツアーで参加した。
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金曜日に沖縄入り。空港からホテルまでツアーバスで移動。夜のツアー懇親会では「優勝します」と宣言した。
レース前日。私は100kmオーバー40で優勝を狙うツアー参加者の木村さん(埼北ツブラーゼ)と2人で羽地ダムの試走に向った。最後の勝負ポイントをしっかりチェックした。羽地を下り、古宇利島へ。そこで他のツアー参加者と合流してレース会場へ向った。この日は60km走りTSSはぴったり100。ちょっと走り過ぎたかもしれない。炭水化物中心の夕食を済ませ、早めに就寝。寝る前に「明日は勝ちます」とFacebookに投稿した。
レース前日は4時起床。ツアーバスでスタート地点まで移動した。6時30分到着。風があって予想以上に寒かった。岩村から上着を借りて事なきを得た。
スタートまで時間があったので、父と一緒に武井享介さんに挨拶をしに行った。武井さんは與那嶺選手をスタート前にサポートするために100kmにエントリーしていたようだ。本気で走らないことを確認して少し安心したが、レースで何かしらのアクションを起こしてくるのは間違いないので要注意の選手であることには変わりなかった。このとき目標を聞かれて「優勝です!」と答えた。スタートギリギリまでアップをして、いよいよレースが始まる。
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先頭付近で奥を下り海岸線へ。ここで私の右後方で落車が発生。次々に選手が巻き込まれ、道幅一杯にストップする大落車だった。これを何事も無く回避できたのは私とトミーさんを含む先頭付近を走っていた20人ほどしかいなかった。
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逃げる宿谷さんとのタイム差がなかなか縮まらなかったが、武井さんが集団をまとめてくれた。下りはほとんど武井さんが先頭だった。武井さんはまさに「集団のボス」という感じだった。
ゴールまで残り30kmの所でようやく宿谷さんを吸収。ここからは去年のような逃げができないように注意だ。小集団のスプリントに持ち込むことが出来ればスプリント力がある自分に勝機がある。
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羽地の麓で逃げを捉えた。そのまま羽地ダムの登りをいいペースで登る。この時は脚が攣りそうな状態で、誰かが仕掛けたらついていけなかったかもしれない。
トンネルを抜け右に曲がると多くの観客がいた。「藤田! いけ!!」名前を呼ばれて振り返る。真っ赤な男塾ジャージ姿、塾長の宇野さんだった。この応援で気合が入った。
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しかし、残り5kmのイオン坂でついに脚が攣ってしまった。集団の後ろでストレッチを繰り返した。スプリントのフォームをとって脚の状態を確認してみる。なんとかなりそうだった。
残り1km切ったところからポジションを前に上げていく。残り500mで先頭に出た。誰から仕掛けるか様子を伺う。残り300mで福田さんが最初に動いた。この後ろにぴったりつく。残り150mで腰を上げて一気に加速して先頭に出た。すぐに攣りそうになって、最後はシッティングで踏み続けた。ゴール手前で後ろを見ると付いてきていたのは2位の選手だけだった。手を挙げてゴール! 初優勝! 有言実行した瞬間だった。
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優勝という最高の結果でツールドおきなわ2017終えることができた。来年は市民210kmに挑戦したいと思う。
来シーズンは全日本選手権に挑戦する予定だ。JBCFのレースでも結果を残せるように頑張りたい。また成長した姿で1年後に沖縄に帰ってきたい。
使用機材
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ウェア : SUNVOLT セパレートワンピース
ヘルメット:KABUTO AERO-R1
サングラス: ESS CROSSBOW
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text:Ryohei.FUJITA
photo:Makoto.AYANO,Satoru.KATO
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