1級山岳クンブレ・デル・ソルで猛加速したマイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が1年ぶりのステージ優勝。最初の休息日を前に、ボーナスタイムを得て総合リードを更に広げた。



風光明媚な海岸線を眼下に1級山岳クンブレ・デル・ソルを駆け上がる風光明媚な海岸線を眼下に1級山岳クンブレ・デル・ソルを駆け上がる photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージ image:Unipublic


ブエルタ・ア・エスパーニャの前半戦も大詰め。9日間に渡る長い第1周目を締めくくるのは、ビーチリゾートが連なるバレンシア州のレバンテ海岸を北上する174km。スタート後100km以上に渡って続く平坦路に向けて、この日はマルケル・イリサル(スペイン、トレック・セガフレード)、マルク・ソレール(スペイン、モビスター)、トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、エフデジ)ら10名が20km地点から逃げ始めた。

この日メイン集団のコントロールを担ったのは、マイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス)を従えたチームスカイではなく、来季のスポンサーが未だ決定せず、チーム存続の危機に瀕しているキャノンデール・ドラパックの面々。この日グリーンのアーガイルトレインはフルメンバーを揃えてステージ終盤まで先頭を譲らず、終始無言のアピールを続けた。

逃げた10名。タイム差は2〜3分程度で推移した逃げた10名。タイム差は2〜3分程度で推移した photo:CorVos落車でレースを降りたイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)落車でレースを降りたイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:CorVos

チーム存続の危機に瀕するキャノンデール・ドラパックがメイン集団をコントロールチーム存続の危機に瀕するキャノンデール・ドラパックがメイン集団をコントロール photo:CorVos
序盤こそ風光明媚な沿岸風景が続いたが、残り50kmを切ってからプロトンは一路内陸へと舵を切る。その後は最大勾配21%の激坂区間を含む2級山岳プイグ・ジョレンサ峠(長さ3.2km/平均9.2%)を2度こなしてから残り800mから脇道へ。非公式ながら25%の激坂区間を経て、最後は地中海を見下ろす標高415mの1級山岳クンブレ・デル・ソル(長さ4km/平均9.1%)と至るという文字通りの山場が続く。逃げグループ、メイン集団共に緊張感を高めつつ、徐々に山岳に近づいていった。

およそ1分半のリードで2級山岳プイグ・ジョレンサ峠に到達した逃げグループでは、ルドヴィグソンの加速で集団が割れ、やがて追いついてきたソレールとの二人旅が始まる。メイン集団ではアタックを警戒して各チームが前方に集う中から、総合タイムを失っているロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)が単独で仕掛ける。しかし同調する動きは現れず、キャノンデールの牽引によって引き戻された。

ローテーションを回しながら(ルドヴィグソンはバンプでジャンプを決めながら)逃げる2人だったが、一塊になって峠を目指す集団を引き離すには至らない。単独で粘ったソレールも残り6km地点で、キャノンデールからチームスカイに牽引役をバトンタッチした集団に飲み込まれる。

プイグ・ジョレンサ峠で逃げグループから飛び出したマルク・ソレール(スペイン、モビスター)とトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、エフデジ)プイグ・ジョレンサ峠で逃げグループから飛び出したマルク・ソレール(スペイン、モビスター)とトビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、エフデジ) photo:CorVos2度目のプイグ・ジョレンサ峠でアタックするリカルド・カラパス(エクアドル、モビスター)2度目のプイグ・ジョレンサ峠でアタックするリカルド・カラパス(エクアドル、モビスター) photo:Unipublic/Photogomez Sport

各チームが密集して1級山岳クンブレ・デル・ソルにアタックする各チームが密集して1級山岳クンブレ・デル・ソルにアタックする photo:CorVos
2度めのプイグ・ジョレンサ峠に達し、勾配が18%に達する急勾配区間で、積極的な姿勢を崩さないバルデがこの日2度目のアタックを敢行する。一定ペースを刻むチームスカイに対してネオプロのエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)とリカルド・カラパス(エクアドル、モビスター)がバルデに合流し、続けざまにカラパスが爆発的な加速で単独先頭に躍り出た。

逃げ切りも匂わせるカラパスだったが徐々に失速し、ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)がハイペースで牽く集団に飲み込まれる。再三に渡るバルデの攻撃も封じられ、15名程度まで絞り込まれた集団がニエベ先頭で残り1kmのアーチを通過した。

総合上位勢でまず動いたのは、1分8秒遅れの総合7位につけるダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)。しかしフルームがガッチリとマークし、デラクルスがペースを弱めたその瞬間、マイヨロホ自らダンシングでアタックした。

早回しのようなフルームの急激な加速に、番手に付けていたアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は中切れして脱落。エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)とマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)だけが残り200mで追いついたが、それを確認したフルームは再び踏み込み、まずウッズを、そして粘ったチャベスを引き離して独走でフィニッシュへ。ゴールライン上で勢い良くガッツポーズを繰り出した。

チャベスらを振り切ってクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)がゴールに突き進むチャベスらを振り切ってクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)がゴールに突き進む photo:CorVos
力強いガッツポーズでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)力強いガッツポーズでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos
ステージ3位でフィニッシュするマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)ステージ3位でフィニッシュするマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) photo:CorVosアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は12秒遅れのステージ6位アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は12秒遅れのステージ6位 photo:CorVos


ステージ優勝としては昨年大会第19ステージ(個人タイムトライアル)以来、およそ1年ぶりの勝利を飾ったフルームは「最後の数百メートルは持てる力の全てを出してもがいた。ライバルたちは追いつけないと判断したようだ。本当に、本当に勝てて嬉しいよ。チームメイトは素晴らしい仕事をしてくれて、最後の峠で良いテンポを刻んだ。ブエルタ1周目が終わって、これ以上望めないほどに上手く運んでいて、そしてファンタスティックなブエルタ開幕となっている。脚の感触も上々だし、これまで何度も参加してきたブエルタの中でも最高の試合運びだ」とコメント。今回の勝利でボーナスタイムを加算し、チャベスとの差を36秒にまで広げてみせた。

そして総合トップ10内で順位を上げたのは、最後フルームに肉薄したウッズ(9位→8位)と、アタックの口火を切ったデラクルス(7位→6位)。最後に離れながらも6位に入ったコンタドールは総合17位→13位へとジャンプアップに成功している。

およそ1年ぶりのステージ優勝を手にしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)およそ1年ぶりのステージ優勝を手にしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Unipublic/Photogomez Sport
H3
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第9ステージ
ステージ結果
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 4h07'13"
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) +04"
3位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) +05"
4位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) +08"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) +12"
7位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
8位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング) +14"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
11位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +17"
12位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +19"
16位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +27"
DNF ヨアン・ルボン(フランス、エフデジ)
DNF イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 36h33'16"
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) +36"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング) +1'05"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'17"
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +1'27"
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) +1'30"
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1'33"
8位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) +1'52"
9位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +1'55"
10位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ) +2'15"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 55pts
2位 マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 49pts
3位 パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 44pts
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 37pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 18pts
3位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 15pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 5pts
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) 15pts
3位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) 39pts
チーム総合成績
1位 モビスター 109h06'12"
2位 UEAチームエミレーツ +19"
3位 アスタナ +4'57"
text:So.Isobe
photo:CorVos

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