2017/07/22(土) - 14:27
手のひらを広げたキュベカ基金のロゴを示しながらボアッソンハーゲンがフィニッシュ。プロヴァンスの長い一日は、天候にも味方され、平穏に終わった。英気を養ったマイヨジョーヌ候補たちはいよいよ最終バトルに挑む。
朝方にかけて冷え込むアルプスの山あいの町を離れ、ツールは200km以上かけてプロヴァンスにやってきた。季節が一気に真夏に逆戻りし、蒸し暑く、賑やかに蝉が鳴く。雷を伴う猛烈な雨を降らす雲が一帯に漂った(実際に迂回路の高速道路では大雨渋滞が発生した)が、ツール・ド・フランスのプロトンが雨に濡れることはなかった。レース中盤にかけて吹いた強風も、プロヴァンスの平野に出るとおさまった。
フィニッシュ地点の町は、美容室の名前のようなサロン=ド=プロヴァンス。地中海にほど近い人口4万人の町は、美容室ではなく、フランス空軍のアクロバット飛行団「パトルイユ・ド・フランス」が拠点を置く空軍基地で有名だ。ツールの到着に合わせ、青白赤のトリコロール(三色)の煙を噴射しながら飛行団が隊列をなして上空を何度も旋回。住民は慣れっこだが、時に低空を旋回したため爆音が轟いた。前触れもなく突然現れるので撮影が難しい。
第18ステージまでに合計862kmを逃げているトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が再び逃げた。この日は25kmで逃げグループが形成され、222.5kmのフィニッシュ地点まで逃げたため197.5kmをプラス。これにより第19ステージ終了時までに合計1059.5kmを逃げていることになる。これはつまり、デヘントがレース全体の31%の距離を逃げていることを意味する。
逃げていない日も、平坦ステージであればアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のために1日中ずっと集団先頭に立ってペースをコントロール。逃げのスペシャリストはペースコントロールのスペシャリストでもある。今大会最も長い時間全身に風を受けているのはデヘントであると言い切れる。
しかしロット・ソウダルはまだ勝利がない。アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)は順調にグランツール連続完走記録を18まで伸ばしそうだが、ここまで13グランツール連続でステージ優勝を飾っているグライペルは0勝。チームバスのフロントガラスに置かれたゴリラのぬいぐるみに哀愁が漂っている。このままパリで勝つことができなければ、連続ステージ優勝記録が13グランツールで途切れることになる。ちなみにリタイア者続出の2017年大会において、現在レースに残っている167名の中でパリ・シャンゼリゼを制したことがあるのはグライペルだけ。
第15ステージで勝利したバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)然り、ここ数年「Google Mapでコースを予習した」とステージ優勝者がコメントする機会が増えている。何事も予習は大事。これはフォトグラファーも同様で、Google Mapのストリートビューを駆使してコースをバーチャルロケハンすることで撮影の幅が大きく広がる。ストリートビューはフランス国内の道路を網羅しているため、例えばヒマワリ畑の様子なんかもある程度チェックできてしまう。
この日の勝者エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)は、あらかじめ撮影されていたフィニッシュのコース映像を見て予習し、左右で差が出る残り2.8kmのラウンドアバウト(ロータリー)を攻略してアタックした。ボアッソンハーゲンはアタックからフィニッシュラインまでの2km強を平均46.7km/hで駆け抜けている。なお、ボアッソンハーゲンの右手パーのポーズは5勝目という意味ではなく、キュベカ基金のロゴを模したものだ。
ボアッソンハーゲンは今大会4回もトップ3フィニッシュを経験しており、第7ステージではわずか6mm差で2位。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)のいないチームのリーダーとして、ボアッソンハーゲンが待ちに待った勝利を手にした。ボアッソンハーゲンはチームスカイ時代の2011年に平坦大集団スプリントと山岳逃げ切りでステージ2勝。コースの種類に関係なく、距離が長いタフなステージで成績を残す傾向にある。
そしてディメンションデータは2015年から3年連続でステージ優勝を達成した。各チームはスポンサーの一行をツール会場に呼び、ゲスト用のチームバンでレースを案内するのが通例。大会スポンサーでもあるディメンションデータは最も多くのゲストカーを用意し、連日スポンサーを手厚くホストしていた。
そしていよいよ7月22日はマルセイユ22.5km個人タイムトライアル。ランタンルージュ(総合最下位)のルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)から順に、マイヨジョーヌのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)まで167名が67,394人収容のスタジアム(オランジュ・ヴェロドローム)をスタートしていく。フィニッシュ地点でもあるスタジアムの約2/3のシートはチケット販売済み。ここまで83時間26分55秒を走ってタイム差23秒という僅差の戦いが、約28分前後のタイムトライアルで決着する。
text&photo:Kei Tsuji in Salon-de-Provence, France
朝方にかけて冷え込むアルプスの山あいの町を離れ、ツールは200km以上かけてプロヴァンスにやってきた。季節が一気に真夏に逆戻りし、蒸し暑く、賑やかに蝉が鳴く。雷を伴う猛烈な雨を降らす雲が一帯に漂った(実際に迂回路の高速道路では大雨渋滞が発生した)が、ツール・ド・フランスのプロトンが雨に濡れることはなかった。レース中盤にかけて吹いた強風も、プロヴァンスの平野に出るとおさまった。
フィニッシュ地点の町は、美容室の名前のようなサロン=ド=プロヴァンス。地中海にほど近い人口4万人の町は、美容室ではなく、フランス空軍のアクロバット飛行団「パトルイユ・ド・フランス」が拠点を置く空軍基地で有名だ。ツールの到着に合わせ、青白赤のトリコロール(三色)の煙を噴射しながら飛行団が隊列をなして上空を何度も旋回。住民は慣れっこだが、時に低空を旋回したため爆音が轟いた。前触れもなく突然現れるので撮影が難しい。
第18ステージまでに合計862kmを逃げているトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が再び逃げた。この日は25kmで逃げグループが形成され、222.5kmのフィニッシュ地点まで逃げたため197.5kmをプラス。これにより第19ステージ終了時までに合計1059.5kmを逃げていることになる。これはつまり、デヘントがレース全体の31%の距離を逃げていることを意味する。
逃げていない日も、平坦ステージであればアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のために1日中ずっと集団先頭に立ってペースをコントロール。逃げのスペシャリストはペースコントロールのスペシャリストでもある。今大会最も長い時間全身に風を受けているのはデヘントであると言い切れる。
しかしロット・ソウダルはまだ勝利がない。アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)は順調にグランツール連続完走記録を18まで伸ばしそうだが、ここまで13グランツール連続でステージ優勝を飾っているグライペルは0勝。チームバスのフロントガラスに置かれたゴリラのぬいぐるみに哀愁が漂っている。このままパリで勝つことができなければ、連続ステージ優勝記録が13グランツールで途切れることになる。ちなみにリタイア者続出の2017年大会において、現在レースに残っている167名の中でパリ・シャンゼリゼを制したことがあるのはグライペルだけ。
第15ステージで勝利したバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)然り、ここ数年「Google Mapでコースを予習した」とステージ優勝者がコメントする機会が増えている。何事も予習は大事。これはフォトグラファーも同様で、Google Mapのストリートビューを駆使してコースをバーチャルロケハンすることで撮影の幅が大きく広がる。ストリートビューはフランス国内の道路を網羅しているため、例えばヒマワリ畑の様子なんかもある程度チェックできてしまう。
この日の勝者エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)は、あらかじめ撮影されていたフィニッシュのコース映像を見て予習し、左右で差が出る残り2.8kmのラウンドアバウト(ロータリー)を攻略してアタックした。ボアッソンハーゲンはアタックからフィニッシュラインまでの2km強を平均46.7km/hで駆け抜けている。なお、ボアッソンハーゲンの右手パーのポーズは5勝目という意味ではなく、キュベカ基金のロゴを模したものだ。
ボアッソンハーゲンは今大会4回もトップ3フィニッシュを経験しており、第7ステージではわずか6mm差で2位。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)のいないチームのリーダーとして、ボアッソンハーゲンが待ちに待った勝利を手にした。ボアッソンハーゲンはチームスカイ時代の2011年に平坦大集団スプリントと山岳逃げ切りでステージ2勝。コースの種類に関係なく、距離が長いタフなステージで成績を残す傾向にある。
そしてディメンションデータは2015年から3年連続でステージ優勝を達成した。各チームはスポンサーの一行をツール会場に呼び、ゲスト用のチームバンでレースを案内するのが通例。大会スポンサーでもあるディメンションデータは最も多くのゲストカーを用意し、連日スポンサーを手厚くホストしていた。
そしていよいよ7月22日はマルセイユ22.5km個人タイムトライアル。ランタンルージュ(総合最下位)のルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)から順に、マイヨジョーヌのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)まで167名が67,394人収容のスタジアム(オランジュ・ヴェロドローム)をスタートしていく。フィニッシュ地点でもあるスタジアムの約2/3のシートはチケット販売済み。ここまで83時間26分55秒を走ってタイム差23秒という僅差の戦いが、約28分前後のタイムトライアルで決着する。
text&photo:Kei Tsuji in Salon-de-Provence, France
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