222.5kmの今大会最長ステージで逃げ切り決まる。入念なコースチェックが功を奏し、残り3kmを切ってから逃げメンバーを振り切ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が独走勝利を飾った。



チームスカイを先頭にラベンダー畑を抜けるチームスカイを先頭にラベンダー畑を抜ける photo:Tim de Waele / TDWsport
ツール・ド・フランス2017第19ステージツール・ド・フランス2017第19ステージ ©GEOATLASツール・ド・フランス2017第19ステージツール・ド・フランス2017第19ステージ ©A.S.O.
平穏な1日を過ごしたマイヨジョーヌのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)平穏な1日を過ごしたマイヨジョーヌのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele / TDWsport
例年であれば最終山岳ステージから立て続けに最終個人TTもしくはパリ凱旋に向かうが、2017年はその間にワンクッション置く。アルプス山脈のアンブランから2つの3級山岳を越えて、徐々に高度を下げながらプロヴァンスへ。コース全長は今大会最長222.5km。スプリンターにもチャンスがあるが、多くのチームが逃げに打って出た。

スタート後すぐ、ベルギー独立記念日に合わせてベルギー勢を中心にアタック合戦が繰り広げられる。マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)のステージ5勝の立役者とも言える「集団コントロールの巧者」ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、クイックステップフロアーズ)もアタックにジョイン。リードを得る逃げが生まれないままメイン集団は2つの連続3級山岳に差し掛かり、35km地点でようやく20名の先行が始まった。

ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)というオールラウンダーの他、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)というスプリンターを含む20名の逃げ。総合20位(47分03秒遅れ)のモレマを含むこの逃げグループをメイン集団は見送った。

チームスカイが逃げグループを捉えることに興味を示さなかったため、222.5kmという長丁場の1/3を終えた時点でタイム差は8分まで拡大。メイン集団では、パリまで300km強を残してオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)とティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)がリタイアを選択している。

逃げグループはデヘントを先頭にメイン集団から8分リードを保ったままスプリントポイント(136.5km)を駆け抜ける。この時点でマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)のポイント賞トップの座は誰にも手の届かない状態となり、マイヨヴェール獲得が暫定的に確定した。

レース序盤にアタックするリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)レース序盤にアタックするリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) photo:Tim de Waele / TDWsport
メイン集団の先頭で走り続けたチームスカイメイン集団の先頭で走り続けたチームスカイ photo:Tim de Waele / TDWsport
序盤のペースアップによって遅れるアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)序盤のペースアップによって遅れるアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) photo:Tim de Waele / TDWsport逃げグループを牽引するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)逃げグループを牽引するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele / TDWsport
ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)ら20名が逃げグループを形成ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)ら20名が逃げグループを形成 photo:Tim de Waele / TDWsport
アルプスを抜けてプロヴァンスを目指すプロトンアルプスを抜けてプロヴァンスを目指すプロトン photo:Tim de Waele / TDWsport
フィニッシュまで60kmを残してタイム差は依然として8分のまま。逃げきりが徐々に濃厚になってきた先頭グループからはステージ優勝に向けた動きが出始め、果敢にアタックしたイェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)はしばらくの独走ののちに吸収される。この日最後の3級山岳の登りが始まるとロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)がペースを上げてセレクションを開始した。

シカールと協調したのは最年少エリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ)とロベルト・キセルロウスキー(クロアチア、カチューシャ・アルペシン)の2人。メイン集団とのタイム差を9分まで広げながらシカールら3名が3級山岳をクリアしたが、下り区間で再び先頭は20名に戻る。

下りを利用してモレマが飛び出すシーンも見られたが決まらない。メイン集団とのタイム差が8分、9分、10分と順調に広がり続けたため、もはや協調体制を築けない逃げグループではアタックに次ぐアタックが繰り返されることに。残り20kmを切った横風区間でクークレースがペースアップすると逃げグループは二分された。

先頭はデヘント、クークレール、バークランツ、ボアッソンハーゲン、アルント、ジェスベール、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)という9名に絞られ、追走グループとのタイム差を13秒まで広げて残り10kmアーチを通過していく。しばらく追走グループを引き離すために先頭9名は協調体制を築いたが、すぐに再びアタックのスイッチが入った。

逃げグループからアタックを仕掛けるミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)逃げグループからアタックを仕掛けるミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット) photo:Tim de Waele / TDWsport
横風区間で9名に絞られた逃げグループ横風区間で9名に絞られた逃げグループ photo:Tim de Waele / TDWsportマイヨヴェールを着て走るマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)マイヨヴェールを着て走るマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) photo:Tim de Waele / TDWsport
残り3kmでニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)と飛び出したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)残り3kmでニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)と飛び出したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele / TDWsport
残り3kmでアルントを引き離したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)残り3kmでアルントを引き離したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele / TDWsport
アタックと牽制、そしてアタック。メンバー2人(クークレールとアルバジーニ)を抱えるオリカ・スコットが積極的に仕掛けたが決まらない。すると、残り2.8km地点のラウンドアバウトを抜けたところでボアッソンハーゲンとアルントが抜け出した。

「今朝、フィニッシュ地点のビデオを見て予習していたので、ラウンドアバウトの右側が有利だと分かっていた。ニキアス・アルントを除いて他の選手たちは左側をチョイス。ラウンドアバウトを抜けたところで距離が開いたので、そこがタイミングだと判断して仕掛けた」というボアッソンハーゲンがアルントとともに残る7名を引き離し、そこからさらに加速して独走に持ち込む。単独で追走したアルントも、その後ろの7名も、得意の短距離TTに持ち込んだボアッソンハーゲンには届かなかった。

写真判定の必要が全くない独走勝利。自身ステージ通算3勝目を飾ったボアッソンハーゲンはフィニッシュ後にチームマネージャーと抱き合い、雄叫びをあげた。「写真判定で負けるのはもうたくさんなので、スプリント勝負に持ち込むのではなく独走で勝ちたかった。敗れはしたものの、集団スプリントでの僅差の敗北が自分に自信を与えてくれた。マーク・カヴェンディッシュがリタイアした後も、チームはモチベーションを失わず、ただ集団の中で過ごすのではなく、攻撃を続けたんだ。ようやく手にした勝利をとにかく嬉しく思う」と、ディメンションデータに今大会1勝目をもたらしたボアッソンハーゲン。この日の勝利でポイント賞3位に浮上している。

独走でフィニッシュするエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)独走でフィニッシュするエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Tim de Waele / TDWsport
安全に集団前方でフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)安全に集団前方でフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele / TDWsport
強風が吹かなかったことで平穏に平坦ステージを終えたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は「全力を出すことなく1日を平和に終えることができたので、明日の個人TTに向けて力を貯めることができた。それはチームメイトたちがずっとメイン集団をコントロールしてくれたおかげだ」と語る。

マルセイユを舞台にした第20ステージ個人タイムトライアルを前にフルームはロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)から23秒、リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)から29秒のリードを得ている。4度目の総合優勝に王手をかけたフルームは「個人TTのコースは自分向きだけど、ステージ優勝を狙えるかと聞かれればプリモシュ・ログリッチェやトニー・マルティンには及ばないと思う。自分はリスクを犯すことなく今まで通りにTTを走るだけ。ホイールは交換できるけど脚は交換できないので、パンクよりも落車が怖い。総合タイムを挽回しなければならない立場よりも、追われる立場のほうがずっといい」とコメントしている。

総合成績やヤングライダー賞のランキングに変動はなし。マシューズがマイヨヴェールを、そしてワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がマイヨアポワ獲得を確定させた。バークランツを含む逃げ切りが決まったことでチーム総合1位のチームスカイと同2位アージェードゥーゼールのタイム差が15分18秒から3分08秒に縮まっている。

念願のステージ優勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)念願のステージ優勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
笑顔で表彰台に上がるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)笑顔で表彰台に上がるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
マイヨジョーヌを着て最終個人TTに挑むことになったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌを着て最終個人TTに挑むことになったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsportステージ敢闘賞はイェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)の手にステージ敢闘賞はイェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)の手に photo:Kei Tsuji / TDWsport
H3
ツール・ド・フランス2017第19ステージ結果
ステージ成績
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 5:06:09
2位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) 0:05
3位 イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット) 0:17
4位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)
5位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)
7位 エリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ)
8位 ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)
9位 ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット) 0:19
10位 ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ) 1:32
105位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) 12:27
DNF オンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)
DNF ティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)
敢闘賞 イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 83:26:55
2位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:23
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック) 0:29
4位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) 1:36
5位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 1:55
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) 2:56
7位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 4:46
8位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ) 6:52
9位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) 8:22
10位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) 8:34
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) 364ts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 204pts
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 200pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) 169pts
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 80pts
3位  トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 64pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 83:31:41
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ) 2:06
3位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 26:15
チーム総合成績
1位 チームスカイ 250:38:26
2位 アージェードゥーゼール 3:08
3位 BMCレーシング 1:41:51
text&photo:Kei Tsuji in Salon-de-Provence, France

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