2017/07/22(土) - 06:05
222.5kmの今大会最長ステージで逃げ切り決まる。入念なコースチェックが功を奏し、残り3kmを切ってから逃げメンバーを振り切ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が独走勝利を飾った。
例年であれば最終山岳ステージから立て続けに最終個人TTもしくはパリ凱旋に向かうが、2017年はその間にワンクッション置く。アルプス山脈のアンブランから2つの3級山岳を越えて、徐々に高度を下げながらプロヴァンスへ。コース全長は今大会最長222.5km。スプリンターにもチャンスがあるが、多くのチームが逃げに打って出た。
スタート後すぐ、ベルギー独立記念日に合わせてベルギー勢を中心にアタック合戦が繰り広げられる。マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)のステージ5勝の立役者とも言える「集団コントロールの巧者」ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、クイックステップフロアーズ)もアタックにジョイン。リードを得る逃げが生まれないままメイン集団は2つの連続3級山岳に差し掛かり、35km地点でようやく20名の先行が始まった。
ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)というオールラウンダーの他、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)というスプリンターを含む20名の逃げ。総合20位(47分03秒遅れ)のモレマを含むこの逃げグループをメイン集団は見送った。
チームスカイが逃げグループを捉えることに興味を示さなかったため、222.5kmという長丁場の1/3を終えた時点でタイム差は8分まで拡大。メイン集団では、パリまで300km強を残してオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)とティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)がリタイアを選択している。
逃げグループはデヘントを先頭にメイン集団から8分リードを保ったままスプリントポイント(136.5km)を駆け抜ける。この時点でマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)のポイント賞トップの座は誰にも手の届かない状態となり、マイヨヴェール獲得が暫定的に確定した。
フィニッシュまで60kmを残してタイム差は依然として8分のまま。逃げきりが徐々に濃厚になってきた先頭グループからはステージ優勝に向けた動きが出始め、果敢にアタックしたイェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)はしばらくの独走ののちに吸収される。この日最後の3級山岳の登りが始まるとロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)がペースを上げてセレクションを開始した。
シカールと協調したのは最年少エリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ)とロベルト・キセルロウスキー(クロアチア、カチューシャ・アルペシン)の2人。メイン集団とのタイム差を9分まで広げながらシカールら3名が3級山岳をクリアしたが、下り区間で再び先頭は20名に戻る。
下りを利用してモレマが飛び出すシーンも見られたが決まらない。メイン集団とのタイム差が8分、9分、10分と順調に広がり続けたため、もはや協調体制を築けない逃げグループではアタックに次ぐアタックが繰り返されることに。残り20kmを切った横風区間でクークレースがペースアップすると逃げグループは二分された。
先頭はデヘント、クークレール、バークランツ、ボアッソンハーゲン、アルント、ジェスベール、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)という9名に絞られ、追走グループとのタイム差を13秒まで広げて残り10kmアーチを通過していく。しばらく追走グループを引き離すために先頭9名は協調体制を築いたが、すぐに再びアタックのスイッチが入った。
アタックと牽制、そしてアタック。メンバー2人(クークレールとアルバジーニ)を抱えるオリカ・スコットが積極的に仕掛けたが決まらない。すると、残り2.8km地点のラウンドアバウトを抜けたところでボアッソンハーゲンとアルントが抜け出した。
「今朝、フィニッシュ地点のビデオを見て予習していたので、ラウンドアバウトの右側が有利だと分かっていた。ニキアス・アルントを除いて他の選手たちは左側をチョイス。ラウンドアバウトを抜けたところで距離が開いたので、そこがタイミングだと判断して仕掛けた」というボアッソンハーゲンがアルントとともに残る7名を引き離し、そこからさらに加速して独走に持ち込む。単独で追走したアルントも、その後ろの7名も、得意の短距離TTに持ち込んだボアッソンハーゲンには届かなかった。
写真判定の必要が全くない独走勝利。自身ステージ通算3勝目を飾ったボアッソンハーゲンはフィニッシュ後にチームマネージャーと抱き合い、雄叫びをあげた。「写真判定で負けるのはもうたくさんなので、スプリント勝負に持ち込むのではなく独走で勝ちたかった。敗れはしたものの、集団スプリントでの僅差の敗北が自分に自信を与えてくれた。マーク・カヴェンディッシュがリタイアした後も、チームはモチベーションを失わず、ただ集団の中で過ごすのではなく、攻撃を続けたんだ。ようやく手にした勝利をとにかく嬉しく思う」と、ディメンションデータに今大会1勝目をもたらしたボアッソンハーゲン。この日の勝利でポイント賞3位に浮上している。
強風が吹かなかったことで平穏に平坦ステージを終えたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は「全力を出すことなく1日を平和に終えることができたので、明日の個人TTに向けて力を貯めることができた。それはチームメイトたちがずっとメイン集団をコントロールしてくれたおかげだ」と語る。
マルセイユを舞台にした第20ステージ個人タイムトライアルを前にフルームはロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)から23秒、リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)から29秒のリードを得ている。4度目の総合優勝に王手をかけたフルームは「個人TTのコースは自分向きだけど、ステージ優勝を狙えるかと聞かれればプリモシュ・ログリッチェやトニー・マルティンには及ばないと思う。自分はリスクを犯すことなく今まで通りにTTを走るだけ。ホイールは交換できるけど脚は交換できないので、パンクよりも落車が怖い。総合タイムを挽回しなければならない立場よりも、追われる立場のほうがずっといい」とコメントしている。
総合成績やヤングライダー賞のランキングに変動はなし。マシューズがマイヨヴェールを、そしてワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がマイヨアポワ獲得を確定させた。バークランツを含む逃げ切りが決まったことでチーム総合1位のチームスカイと同2位アージェードゥーゼールのタイム差が15分18秒から3分08秒に縮まっている。
例年であれば最終山岳ステージから立て続けに最終個人TTもしくはパリ凱旋に向かうが、2017年はその間にワンクッション置く。アルプス山脈のアンブランから2つの3級山岳を越えて、徐々に高度を下げながらプロヴァンスへ。コース全長は今大会最長222.5km。スプリンターにもチャンスがあるが、多くのチームが逃げに打って出た。
スタート後すぐ、ベルギー独立記念日に合わせてベルギー勢を中心にアタック合戦が繰り広げられる。マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)のステージ5勝の立役者とも言える「集団コントロールの巧者」ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー、クイックステップフロアーズ)もアタックにジョイン。リードを得る逃げが生まれないままメイン集団は2つの連続3級山岳に差し掛かり、35km地点でようやく20名の先行が始まった。
ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)というオールラウンダーの他、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)というスプリンターを含む20名の逃げ。総合20位(47分03秒遅れ)のモレマを含むこの逃げグループをメイン集団は見送った。
チームスカイが逃げグループを捉えることに興味を示さなかったため、222.5kmという長丁場の1/3を終えた時点でタイム差は8分まで拡大。メイン集団では、パリまで300km強を残してオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)とティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)がリタイアを選択している。
逃げグループはデヘントを先頭にメイン集団から8分リードを保ったままスプリントポイント(136.5km)を駆け抜ける。この時点でマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)のポイント賞トップの座は誰にも手の届かない状態となり、マイヨヴェール獲得が暫定的に確定した。
フィニッシュまで60kmを残してタイム差は依然として8分のまま。逃げきりが徐々に濃厚になってきた先頭グループからはステージ優勝に向けた動きが出始め、果敢にアタックしたイェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)はしばらくの独走ののちに吸収される。この日最後の3級山岳の登りが始まるとロメン・シカール(フランス、ディレクトエネルジー)がペースを上げてセレクションを開始した。
シカールと協調したのは最年少エリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ)とロベルト・キセルロウスキー(クロアチア、カチューシャ・アルペシン)の2人。メイン集団とのタイム差を9分まで広げながらシカールら3名が3級山岳をクリアしたが、下り区間で再び先頭は20名に戻る。
下りを利用してモレマが飛び出すシーンも見られたが決まらない。メイン集団とのタイム差が8分、9分、10分と順調に広がり続けたため、もはや協調体制を築けない逃げグループではアタックに次ぐアタックが繰り返されることに。残り20kmを切った横風区間でクークレースがペースアップすると逃げグループは二分された。
先頭はデヘント、クークレール、バークランツ、ボアッソンハーゲン、アルント、ジェスベール、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)という9名に絞られ、追走グループとのタイム差を13秒まで広げて残り10kmアーチを通過していく。しばらく追走グループを引き離すために先頭9名は協調体制を築いたが、すぐに再びアタックのスイッチが入った。
アタックと牽制、そしてアタック。メンバー2人(クークレールとアルバジーニ)を抱えるオリカ・スコットが積極的に仕掛けたが決まらない。すると、残り2.8km地点のラウンドアバウトを抜けたところでボアッソンハーゲンとアルントが抜け出した。
「今朝、フィニッシュ地点のビデオを見て予習していたので、ラウンドアバウトの右側が有利だと分かっていた。ニキアス・アルントを除いて他の選手たちは左側をチョイス。ラウンドアバウトを抜けたところで距離が開いたので、そこがタイミングだと判断して仕掛けた」というボアッソンハーゲンがアルントとともに残る7名を引き離し、そこからさらに加速して独走に持ち込む。単独で追走したアルントも、その後ろの7名も、得意の短距離TTに持ち込んだボアッソンハーゲンには届かなかった。
写真判定の必要が全くない独走勝利。自身ステージ通算3勝目を飾ったボアッソンハーゲンはフィニッシュ後にチームマネージャーと抱き合い、雄叫びをあげた。「写真判定で負けるのはもうたくさんなので、スプリント勝負に持ち込むのではなく独走で勝ちたかった。敗れはしたものの、集団スプリントでの僅差の敗北が自分に自信を与えてくれた。マーク・カヴェンディッシュがリタイアした後も、チームはモチベーションを失わず、ただ集団の中で過ごすのではなく、攻撃を続けたんだ。ようやく手にした勝利をとにかく嬉しく思う」と、ディメンションデータに今大会1勝目をもたらしたボアッソンハーゲン。この日の勝利でポイント賞3位に浮上している。
強風が吹かなかったことで平穏に平坦ステージを終えたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は「全力を出すことなく1日を平和に終えることができたので、明日の個人TTに向けて力を貯めることができた。それはチームメイトたちがずっとメイン集団をコントロールしてくれたおかげだ」と語る。
マルセイユを舞台にした第20ステージ個人タイムトライアルを前にフルームはロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)から23秒、リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)から29秒のリードを得ている。4度目の総合優勝に王手をかけたフルームは「個人TTのコースは自分向きだけど、ステージ優勝を狙えるかと聞かれればプリモシュ・ログリッチェやトニー・マルティンには及ばないと思う。自分はリスクを犯すことなく今まで通りにTTを走るだけ。ホイールは交換できるけど脚は交換できないので、パンクよりも落車が怖い。総合タイムを挽回しなければならない立場よりも、追われる立場のほうがずっといい」とコメントしている。
総合成績やヤングライダー賞のランキングに変動はなし。マシューズがマイヨヴェールを、そしてワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)がマイヨアポワ獲得を確定させた。バークランツを含む逃げ切りが決まったことでチーム総合1位のチームスカイと同2位アージェードゥーゼールのタイム差が15分18秒から3分08秒に縮まっている。
H3
ツール・ド・フランス2017第19ステージ結果
ステージ成績
1位 | エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) | 5:06:09 |
2位 | ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) | 0:05 |
3位 | イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット) | 0:17 |
4位 | ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター) | |
5位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) | |
6位 | シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー) | |
7位 | エリー・ジェスベール(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ) | |
8位 | ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール) | |
9位 | ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット) | 0:19 |
10位 | ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・オスカロ) | 1:32 |
105位 | 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) | 12:27 |
DNF | オンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ) | |
DNF | ティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ) | |
敢闘賞 | イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 83:26:55 |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:23 |
3位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック) | 0:29 |
4位 | ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) | 1:36 |
5位 | ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) | 1:55 |
6位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) | 2:56 |
7位 | サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) | 4:46 |
8位 | ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ) | 6:52 |
9位 | ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) | 8:22 |
10位 | アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) | 8:34 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | 364ts |
2位 | アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) | 204pts |
3位 | エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) | 200pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) | 169pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) | 80pts |
3位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) | 64pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) | 83:31:41 |
2位 | ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ) | 2:06 |
3位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 26:15 |
チーム総合成績
1位 | チームスカイ | 250:38:26 |
2位 | アージェードゥーゼール | 3:08 |
3位 | BMCレーシング | 1:41:51 |
text&photo:Kei Tsuji in Salon-de-Provence, France
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