2017/07/26(水) - 09:00
ボントレガーのラインアップに新たに加わったカーボンチューブレスレディホイール「Aeolus Pro 3 TLR」をインプレッション。上位モデルと同形状のリムで空力を高めつつ、ミドルグレードのカーボン素材とハブを採用することでペア価格アンダー20万円を達成した意欲作を、チューブレスタイヤの装着からテストした。
ボントレガーのハイパフォーマンスホイールとして展開される「Aeolus(アイオロス)」シリーズ。ギリシア神話に登場する風の神の名を冠す通り、主にエアロダイナミクスを追求したラインアップであり、あるゆる風向きに対して最適なリム形状を導き出したAeolusは、10年以上の長きに渡りトレックサポートチームの走りを支えてきた。
さて、ここ近年でカーボンホイールを取り巻く現状は大きく変わってきた。従来有名ブランド製品は高価なプライスタグを掲げていることが常だったが、廉価版のリムやハブなどを取り入れコストパフォーマンスを上げたモデルを展開し、市場からの支持が赤丸急上昇中。カンパニョーロのONEシリーズに始まり、最近ではジップ302、マヴィックPROシリーズ、ロヴァールのCLシリーズといったアンダー20万円のホイールセット戦国時代と言えよう。
今回インプレッションを行った「Aeolus Pro 3 TLR」は、ボントレガーがそんな現在のホイール市場に殴り込みを掛けるための意欲作。Aeolus 3 TLR D3の廉価版として開発され、上位グレードと同じテクノロジーを多数投入することでAeolus 3 TLR D3にも劣らない空力性、軽量性、耐久性を実現したチューブレスレディホイールだ。
リムにはAeolusシリーズに特徴的なD3(Dual Directional Design)形状をそのまま採用しており、空力とコントロール性に優れる35mmハイトや、トレンドに沿った外幅27mmのワイドリムが特徴。走行時に風が当たるタイヤ側と、風が抜けていくリム後方側の2箇所で発生する空気抵抗を軽減する設計になっており、高いエアロ性能を実現するだけでなく、横風に対しても優れたコントロール性能を発揮するようデザインされている。
使用する素材は製品名にもなっている、同社オリジナルのOCLV Proカーボンだ。トップグレードのOCVLカーボンから一つランクを下げつつも、製法は全く同じであり高い品質はそのまま。最適化されたカーボン積層パターンに対し、熱と圧力による超高密度圧縮をかけ、かつカーボン同士の隙間を最小限に抑えるOCLV製法により品質の均質化や高強度を目指している。
リムベッドはチューブレスタイヤに最適化された形状が採用されたほか、ブレーキ面には表面に溝を設けることで制動力と放熱性能を高める工夫も凝らされ、メンテナンス性に優れる外出しニップルとバテッド形状のDT Aeroliteスポークというコンビネーションで組み上げられている。
ハブにはボントレガーオリジナルのRLハブを使用。3つ爪タイプのスタンダードなラチェットとなっており、フリーは外側に引っ張るだけで着脱可能とメンテナンスもしやすくなっている。ペア重量は1506g。価格は184,000円(税抜)だ。今回はボントレガーのR3 TLRタイヤを装備し、チューブレス仕様にてテスト。シクロワイアードにて輪行サイクリング紀行でもお馴染みの、テツ店長ことバイクプラス 多摩センターの河井孝介さんにチューブレスタイヤの取り付け段階からインプレッションしていただいた。
ー インプレッション
「セミディープならではの推進力に加え、チューブレスの乗り心地の良さが光る」 河井孝介(バイクプラス 多摩センター)
やはりボントレガーのAeolusシリーズだけあって、高い空力性能と、スピードに乗せたときの推進力が特徴です。私が普段使用するチューブラータイプのAeolus D3ホイールとキャラクターもほぼ同一で、素性の良さがありますね。リムハイトが高いため若干乗り心地の硬さは感じるのですが、チューブレスタイヤを組み合わせた際のバランスの良さは特筆すべきものがあります。個人的にもチューブレス運用で普段履きできるな、したいな、と。
走りの性能は35mmハイトのセミディープだけに巡航時の速度維持がラクですよね。上位クラスのアルミホイールと価格的にあまり変わらず、踏み出しの軽さでは軽量ロープロファイルモデルに譲るものの、Aeolus Pro 3 TLRも1500g+α程度と頑張っていますし、推進力や巡航性能はこちらに軍配が上がります。Aeolus D3チューブラーと比較すれば、登りの性能やバイクの振りにやや重さは感じますが、価格を踏まえれば非常に優秀だと言いたいです。
剛性感もAeolusらしく硬すぎず、横方向へのしなり感やウィップがあって、脚への反発も少なく感じますね。先述した通りセミディープかつビードフックなどがあるため縦方向の硬さはどうしても増してしまうのですが、ワイド幅のチューブレスタイヤを組み合わせると全く気になりません。
ただ、合わせるタイヤ如何では取り付けに苦労するため、最初は信頼できるショップに預けるのが吉。今回履かせたボントレガーのR3 TLRタイヤは、ボントレガーのタイヤレバーを折る覚悟でようやく入ったくらい取り付けに苦労しました。ただし一度取り付けてしまえば、ビードやリム側の設計が良いためか、すんなりとビードが上がってくれて嬉しかったですね。クリンチャーとチューブレスどちらも使えるホイールではありますが、個人的には是非とも圧倒的に乗り心地の良いチューブレスを、やや低圧で乗ることを推したいですね。
それともう一つ良かったのが、安心安全の制動力。ブレーキ面の処理が新しくなっており、付属するブレーキシューで十分な制動力が得られました。ボントレガーはカーボンリムの歴史も長いので、ブレーキ時の熱に対する強度、そしてチューブレスとしての機能も信頼できますし、大手ブランドだという安心感も大きなものです。
実際にホイール使ってみても不安感は全くありませんし、廉価グレードではありますが、走りの性能は練習用以上。レースやイベントに向けてのホイールとして購入を検討してみても良いと思います。
ボントレガー Aeolus Pro 3 TLR
タイヤタイプ:チューブレスレディ/クリンチャー
リム素材:OCLV Proカーボン
リムサイズ:高さ35mm、外幅27mm
ハブ:ボントレガーRLハブ
フリーボディ:シマノ/スラム(10s・11s)
重量:前後セット1506g(フロント656g、リア850g)
付属品:TLRリムストリップ、TLRバルブ、バルブコア取り外し用工具、Black Princeカーボンパッド、リムストリップ
税抜価格:184,000円(フロント84,000円、リア100,000円)
インプレッションライダーのプロフィール
河井孝介(バイクプラス 多摩センター)
東京都多摩市にあるバイクプラス 多摩センター店店長。お店は尾根幹線道路や多摩川サイクリングロードにもアクセスが良く、サイクリストが気軽に立ち寄れる立地。ショップスタッフとしてのモットーは"モノではなく、コトを伝えること"。自転車とともに鉄道趣味を嗜み、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿る輪行サイクリングがライフワーク。愛車は先代Madone6で、ツーリング時にはクロモリディスクロードの520 Discも愛用する。
バイクプラス 多摩センターショップHP
text:Yuto.Murata
photo:So.Isobe
ボントレガーのハイパフォーマンスホイールとして展開される「Aeolus(アイオロス)」シリーズ。ギリシア神話に登場する風の神の名を冠す通り、主にエアロダイナミクスを追求したラインアップであり、あるゆる風向きに対して最適なリム形状を導き出したAeolusは、10年以上の長きに渡りトレックサポートチームの走りを支えてきた。
さて、ここ近年でカーボンホイールを取り巻く現状は大きく変わってきた。従来有名ブランド製品は高価なプライスタグを掲げていることが常だったが、廉価版のリムやハブなどを取り入れコストパフォーマンスを上げたモデルを展開し、市場からの支持が赤丸急上昇中。カンパニョーロのONEシリーズに始まり、最近ではジップ302、マヴィックPROシリーズ、ロヴァールのCLシリーズといったアンダー20万円のホイールセット戦国時代と言えよう。
今回インプレッションを行った「Aeolus Pro 3 TLR」は、ボントレガーがそんな現在のホイール市場に殴り込みを掛けるための意欲作。Aeolus 3 TLR D3の廉価版として開発され、上位グレードと同じテクノロジーを多数投入することでAeolus 3 TLR D3にも劣らない空力性、軽量性、耐久性を実現したチューブレスレディホイールだ。
リムにはAeolusシリーズに特徴的なD3(Dual Directional Design)形状をそのまま採用しており、空力とコントロール性に優れる35mmハイトや、トレンドに沿った外幅27mmのワイドリムが特徴。走行時に風が当たるタイヤ側と、風が抜けていくリム後方側の2箇所で発生する空気抵抗を軽減する設計になっており、高いエアロ性能を実現するだけでなく、横風に対しても優れたコントロール性能を発揮するようデザインされている。
使用する素材は製品名にもなっている、同社オリジナルのOCLV Proカーボンだ。トップグレードのOCVLカーボンから一つランクを下げつつも、製法は全く同じであり高い品質はそのまま。最適化されたカーボン積層パターンに対し、熱と圧力による超高密度圧縮をかけ、かつカーボン同士の隙間を最小限に抑えるOCLV製法により品質の均質化や高強度を目指している。
リムベッドはチューブレスタイヤに最適化された形状が採用されたほか、ブレーキ面には表面に溝を設けることで制動力と放熱性能を高める工夫も凝らされ、メンテナンス性に優れる外出しニップルとバテッド形状のDT Aeroliteスポークというコンビネーションで組み上げられている。
ハブにはボントレガーオリジナルのRLハブを使用。3つ爪タイプのスタンダードなラチェットとなっており、フリーは外側に引っ張るだけで着脱可能とメンテナンスもしやすくなっている。ペア重量は1506g。価格は184,000円(税抜)だ。今回はボントレガーのR3 TLRタイヤを装備し、チューブレス仕様にてテスト。シクロワイアードにて輪行サイクリング紀行でもお馴染みの、テツ店長ことバイクプラス 多摩センターの河井孝介さんにチューブレスタイヤの取り付け段階からインプレッションしていただいた。
ー インプレッション
「セミディープならではの推進力に加え、チューブレスの乗り心地の良さが光る」 河井孝介(バイクプラス 多摩センター)
やはりボントレガーのAeolusシリーズだけあって、高い空力性能と、スピードに乗せたときの推進力が特徴です。私が普段使用するチューブラータイプのAeolus D3ホイールとキャラクターもほぼ同一で、素性の良さがありますね。リムハイトが高いため若干乗り心地の硬さは感じるのですが、チューブレスタイヤを組み合わせた際のバランスの良さは特筆すべきものがあります。個人的にもチューブレス運用で普段履きできるな、したいな、と。
走りの性能は35mmハイトのセミディープだけに巡航時の速度維持がラクですよね。上位クラスのアルミホイールと価格的にあまり変わらず、踏み出しの軽さでは軽量ロープロファイルモデルに譲るものの、Aeolus Pro 3 TLRも1500g+α程度と頑張っていますし、推進力や巡航性能はこちらに軍配が上がります。Aeolus D3チューブラーと比較すれば、登りの性能やバイクの振りにやや重さは感じますが、価格を踏まえれば非常に優秀だと言いたいです。
剛性感もAeolusらしく硬すぎず、横方向へのしなり感やウィップがあって、脚への反発も少なく感じますね。先述した通りセミディープかつビードフックなどがあるため縦方向の硬さはどうしても増してしまうのですが、ワイド幅のチューブレスタイヤを組み合わせると全く気になりません。
ただ、合わせるタイヤ如何では取り付けに苦労するため、最初は信頼できるショップに預けるのが吉。今回履かせたボントレガーのR3 TLRタイヤは、ボントレガーのタイヤレバーを折る覚悟でようやく入ったくらい取り付けに苦労しました。ただし一度取り付けてしまえば、ビードやリム側の設計が良いためか、すんなりとビードが上がってくれて嬉しかったですね。クリンチャーとチューブレスどちらも使えるホイールではありますが、個人的には是非とも圧倒的に乗り心地の良いチューブレスを、やや低圧で乗ることを推したいですね。
それともう一つ良かったのが、安心安全の制動力。ブレーキ面の処理が新しくなっており、付属するブレーキシューで十分な制動力が得られました。ボントレガーはカーボンリムの歴史も長いので、ブレーキ時の熱に対する強度、そしてチューブレスとしての機能も信頼できますし、大手ブランドだという安心感も大きなものです。
実際にホイール使ってみても不安感は全くありませんし、廉価グレードではありますが、走りの性能は練習用以上。レースやイベントに向けてのホイールとして購入を検討してみても良いと思います。
ボントレガー Aeolus Pro 3 TLR
タイヤタイプ:チューブレスレディ/クリンチャー
リム素材:OCLV Proカーボン
リムサイズ:高さ35mm、外幅27mm
ハブ:ボントレガーRLハブ
フリーボディ:シマノ/スラム(10s・11s)
重量:前後セット1506g(フロント656g、リア850g)
付属品:TLRリムストリップ、TLRバルブ、バルブコア取り外し用工具、Black Princeカーボンパッド、リムストリップ
税抜価格:184,000円(フロント84,000円、リア100,000円)
インプレッションライダーのプロフィール
河井孝介(バイクプラス 多摩センター)
東京都多摩市にあるバイクプラス 多摩センター店店長。お店は尾根幹線道路や多摩川サイクリングロードにもアクセスが良く、サイクリストが気軽に立ち寄れる立地。ショップスタッフとしてのモットーは"モノではなく、コトを伝えること"。自転車とともに鉄道趣味を嗜み、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿る輪行サイクリングがライフワーク。愛車は先代Madone6で、ツーリング時にはクロモリディスクロードの520 Discも愛用する。
バイクプラス 多摩センターショップHP
text:Yuto.Murata
photo:So.Isobe
リンク
Amazon.co.jp