2017/07/14(金) - 19:39
「007・トゥモローネバーダイ」のロケ地としても使われた小型機専用の滑走路で繰り広げられたマイヨジョーヌ争い。今回の現地レポートでは郵便・印刷業務でツールに帯同する「クーリエトラック」を取材しました。まだ間に合う、選手へのファンレターの出し方も伝授します。
ツール・ド・フランス第12ステージはポー〜ペラギュードの214.5km。スタート地点のポーは、ピレネー山脈を越えるときのスタート地点やフィニッシュ地点となることが多く、今回で通算69回目の登場。パリ、ボルドーに次いで3番目に多い回数で、街中には自転車のモニュメントが多くありました。リゾート地の雰囲気も漂い観光地としても知られるグレーのシックな街、ポーからはじまったピレネー決戦は、小雨が降る中スタートを切りました。選手も雨具を着てサイン台へ向かいます。
ポーを出ると、プロトンは一路東南へ。県をあげてツール・ド・フランスの招致に力を入れているオット・ピレネー県の県庁所在地タルブの街を抜けたら、いよいよピレネー山脈に入ります。アレス峠(2級山岳)、マンテ峠(1級)、バレ峠(超級)、ペイルスルド峠(1級)、そして最後にぺイラギュード峠(2級)。フィニッシュは1997年の映画「007・トゥモローネバーダイ」のロケ地としても使われた小型機専用の滑走路「アルチポート007」。映画ロケ地として使われたオマージュとして、またツール・ド・フランス招致の記念として、1997年から20年後となる今年「アルチポート007」と名付けられたところです。
今日のコースは後半戦に山岳があるため、メディアは山岳へ行かずフィニッシュ地点へ直行する人が多く、私たちもそうすることにしました。回り道がコースと並行するように走っていたため、途中、高度が高くなった高速道路から、隊列を組み集団となって走るプロトンを観ることができました。その美しさと華やかさといったら。
その美しい集団も、山岳ではばらけます。マイヨジョーヌを着るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)とファビオ・アル(イタリア・アスタナ)のカーブでのコースアウトにはらはらさせられました。「アルチポート007」の滑走路へ一番にランディングしたのは、アージェードゥーゼールのロマン・バルデ(フランス)でした。フルームは6秒差で総合2位に転落。マイヨジョーヌをアルに奪われてしまいました。
フィニッシュ後、チームスカイのバス前は、メディアとファンでごった返しました。バスの中に入ったフルームは、10分〜15分ほどしてからバスの外へ出てきますが、その姿はマイヨジョーヌではなくチームスカイの白いジャージ。「下を向いて走るのがフルームの乗り方」が定着しているものの、マイヨジョーヌを脱いだフルームはどこか悲しげに見えました。ですがフルームはクールダウンが終わるとメディアへ誠実な対応。英国紳士らしく質問に答え、ふたたびバスの中に消えていったのでした。
ツール・ド・フランスのクーリエトラック
さて、このステージでは、フィニッシュ地点で少し時間があったので、プレスセンター脇に停められていたクーリエトラックを取材しました。外には「Courrier−Reprographie」と書いてあります。日本語にすると「郵便」「複写」の意味。さて、どんなことをしているトラックなのでしょうか?
フランスの通信サービス会社「デュカポスト」のディレクター、ベンジャミンさんが案内してくれました。トラックとともにツール・ド・フランスに帯同し、コミュニケやリザルトの印刷を行ったり、郵便のサービスを行っていると説明してくれました。
コミュニケやリザルトの印刷
トラック後ろ側の階段から中に入ると、まず目に入ったのは、三台の大きなコピー機。「RISO」のもので日本製。「日本のものは性能がいいですよね」と。このコピー機で、「コミュニケ」や「リザルト」を印刷しています。フィニッシュ地点は都市部の時もあれば、第12ステージのようなスキー場や山中のときもあります。どんなフィニッシュ地点でも、プレスセンターに座っているとコミュニケやリザルトのプリントが完了次第、ひとりひとりに配られるのですが、それはこのクーリエトラックの中で印刷されたもの。
プレスセンターで仕事をするメディアは限られているとは言え、ジャーナリストの数だけで2000名となるツール・ド・フランスですから膨大な量を印刷しています。また、データは刻刻と変わるので、その印刷枚数はかなりのものとなります。印刷枚数が多くても、またどんな場所においても、このトラックのおかげで迅速に確定情報を手にすることができるのです。
ファンレターの配達
コピー機の向かい側には、チームごとに分けられたメールボックスが。これは何かと聞くと、「選手やチームあてに届いた郵便物を仕分けるメールボックスです。ツール中に届いた郵便物を、チームに配達するんですよ」と教えてくれました。「たとえば…」とふいに取り出して見せてくれた手紙には「Yukiya Arashiro」と書かれていました。なんと、新城幸也選手へとしたためられた、フランス人ファンからのファンレターでした。これにはびっくり!フランスやオランダのテレビ番組で取材され、ユーロスポーツの生放送にも日本人としてはじめて出演した新城選手ですから、フランス中、ヨーロッパ中にファンがいることを改めて実感したのでした。
郵便物の投函
トラックの中にはコピー用紙や文房具を収納する棚があったり、デスクがあったりと、まるで移動式のオフィスのようでした。スタート地点のヴィラージュ入口にはデュカポストのメールボックスが置かれています。そのメールボックスへ郵便物を入れておくと、投函ができる仕組みになっています。切手を貼る必要がありますが、クーリエトラックで購入することも可能。ツール・ド・フランス中に投函されたり、選手へ届けられる手紙。今はSNSやメールが発達したおかげでこのような手紙からは遠ざかっているかもしれませんが、新鮮に感じますし、なんだか夢がありますね。ぜひお気に入りの選手へファンレターを出してみては?
ファンレターの出し方
日本からフランスへ送る場合、手紙など航空便のものは通常3、4日〜1週間くらいかかりますが、その日数を見越して郵便物の到着地を決め、郵便番号と都市名を書きます。これから出すのでしたら、5日以上あとの、ブリアンソン、エンブラン、サロン・ド・プロヴァンス、マルセイユあたりがよさそうです。(サービスはマルセイユまで。AIRMAILと明記、必要分の切手を貼ります)
受取人名:
チーム名:
Tour de France - DOCAPOST
(都市名と郵便番号は以下参照)
7月19日 ブリアンソン 05100
7月20日 ブリアンソン 05100
7月21日 エンブラン 05200
7月21日 サロン・ド・プロヴァンス 13300
7月22日 マルセイユ 13008
text&photo: Seiko.Meguro in Peyragudes,France
筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)
2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年よりツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。趣味はバラ栽培と鑑賞。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。ライター、自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、宮城インバウンドDMOアドバイザー。
https://global-wifi.com/go-beyonder/067.html
ツール・ド・フランス第12ステージはポー〜ペラギュードの214.5km。スタート地点のポーは、ピレネー山脈を越えるときのスタート地点やフィニッシュ地点となることが多く、今回で通算69回目の登場。パリ、ボルドーに次いで3番目に多い回数で、街中には自転車のモニュメントが多くありました。リゾート地の雰囲気も漂い観光地としても知られるグレーのシックな街、ポーからはじまったピレネー決戦は、小雨が降る中スタートを切りました。選手も雨具を着てサイン台へ向かいます。
ポーを出ると、プロトンは一路東南へ。県をあげてツール・ド・フランスの招致に力を入れているオット・ピレネー県の県庁所在地タルブの街を抜けたら、いよいよピレネー山脈に入ります。アレス峠(2級山岳)、マンテ峠(1級)、バレ峠(超級)、ペイルスルド峠(1級)、そして最後にぺイラギュード峠(2級)。フィニッシュは1997年の映画「007・トゥモローネバーダイ」のロケ地としても使われた小型機専用の滑走路「アルチポート007」。映画ロケ地として使われたオマージュとして、またツール・ド・フランス招致の記念として、1997年から20年後となる今年「アルチポート007」と名付けられたところです。
今日のコースは後半戦に山岳があるため、メディアは山岳へ行かずフィニッシュ地点へ直行する人が多く、私たちもそうすることにしました。回り道がコースと並行するように走っていたため、途中、高度が高くなった高速道路から、隊列を組み集団となって走るプロトンを観ることができました。その美しさと華やかさといったら。
その美しい集団も、山岳ではばらけます。マイヨジョーヌを着るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)とファビオ・アル(イタリア・アスタナ)のカーブでのコースアウトにはらはらさせられました。「アルチポート007」の滑走路へ一番にランディングしたのは、アージェードゥーゼールのロマン・バルデ(フランス)でした。フルームは6秒差で総合2位に転落。マイヨジョーヌをアルに奪われてしまいました。
フィニッシュ後、チームスカイのバス前は、メディアとファンでごった返しました。バスの中に入ったフルームは、10分〜15分ほどしてからバスの外へ出てきますが、その姿はマイヨジョーヌではなくチームスカイの白いジャージ。「下を向いて走るのがフルームの乗り方」が定着しているものの、マイヨジョーヌを脱いだフルームはどこか悲しげに見えました。ですがフルームはクールダウンが終わるとメディアへ誠実な対応。英国紳士らしく質問に答え、ふたたびバスの中に消えていったのでした。
ツール・ド・フランスのクーリエトラック
さて、このステージでは、フィニッシュ地点で少し時間があったので、プレスセンター脇に停められていたクーリエトラックを取材しました。外には「Courrier−Reprographie」と書いてあります。日本語にすると「郵便」「複写」の意味。さて、どんなことをしているトラックなのでしょうか?
フランスの通信サービス会社「デュカポスト」のディレクター、ベンジャミンさんが案内してくれました。トラックとともにツール・ド・フランスに帯同し、コミュニケやリザルトの印刷を行ったり、郵便のサービスを行っていると説明してくれました。
コミュニケやリザルトの印刷
トラック後ろ側の階段から中に入ると、まず目に入ったのは、三台の大きなコピー機。「RISO」のもので日本製。「日本のものは性能がいいですよね」と。このコピー機で、「コミュニケ」や「リザルト」を印刷しています。フィニッシュ地点は都市部の時もあれば、第12ステージのようなスキー場や山中のときもあります。どんなフィニッシュ地点でも、プレスセンターに座っているとコミュニケやリザルトのプリントが完了次第、ひとりひとりに配られるのですが、それはこのクーリエトラックの中で印刷されたもの。
プレスセンターで仕事をするメディアは限られているとは言え、ジャーナリストの数だけで2000名となるツール・ド・フランスですから膨大な量を印刷しています。また、データは刻刻と変わるので、その印刷枚数はかなりのものとなります。印刷枚数が多くても、またどんな場所においても、このトラックのおかげで迅速に確定情報を手にすることができるのです。
ファンレターの配達
コピー機の向かい側には、チームごとに分けられたメールボックスが。これは何かと聞くと、「選手やチームあてに届いた郵便物を仕分けるメールボックスです。ツール中に届いた郵便物を、チームに配達するんですよ」と教えてくれました。「たとえば…」とふいに取り出して見せてくれた手紙には「Yukiya Arashiro」と書かれていました。なんと、新城幸也選手へとしたためられた、フランス人ファンからのファンレターでした。これにはびっくり!フランスやオランダのテレビ番組で取材され、ユーロスポーツの生放送にも日本人としてはじめて出演した新城選手ですから、フランス中、ヨーロッパ中にファンがいることを改めて実感したのでした。
郵便物の投函
トラックの中にはコピー用紙や文房具を収納する棚があったり、デスクがあったりと、まるで移動式のオフィスのようでした。スタート地点のヴィラージュ入口にはデュカポストのメールボックスが置かれています。そのメールボックスへ郵便物を入れておくと、投函ができる仕組みになっています。切手を貼る必要がありますが、クーリエトラックで購入することも可能。ツール・ド・フランス中に投函されたり、選手へ届けられる手紙。今はSNSやメールが発達したおかげでこのような手紙からは遠ざかっているかもしれませんが、新鮮に感じますし、なんだか夢がありますね。ぜひお気に入りの選手へファンレターを出してみては?
ファンレターの出し方
日本からフランスへ送る場合、手紙など航空便のものは通常3、4日〜1週間くらいかかりますが、その日数を見越して郵便物の到着地を決め、郵便番号と都市名を書きます。これから出すのでしたら、5日以上あとの、ブリアンソン、エンブラン、サロン・ド・プロヴァンス、マルセイユあたりがよさそうです。(サービスはマルセイユまで。AIRMAILと明記、必要分の切手を貼ります)
受取人名:
チーム名:
Tour de France - DOCAPOST
(都市名と郵便番号は以下参照)
7月19日 ブリアンソン 05100
7月20日 ブリアンソン 05100
7月21日 エンブラン 05200
7月21日 サロン・ド・プロヴァンス 13300
7月22日 マルセイユ 13008
text&photo: Seiko.Meguro in Peyragudes,France
筆者プロフィール:目黒 誠子(めぐろせいこ)
2006年ジャパンカップサイクルロードレースに業務で携わってからロードレースの世界に魅了される。2014年よりツアー・オブ・ジャパンでは海外チームの招待・連絡を担当していた。ロードバイクでのサイクリングを楽しむ。趣味はバラ栽培と鑑賞。航空会社の広報系の仕事にも携わり、折り紙飛行機の指導員という変わりダネ資格を持つ。ライター、自転車とまちづくり・クリーン工房アドバイザー、宮城インバウンドDMOアドバイザー。
https://global-wifi.com/go-beyonder/067.html
Amazon.co.jp