2017/07/07(金) - 14:21
マイヨジョーヌ45日目を平和にやりすごしたフルームと、ライバルに青い弾丸と称されたキッテル、そしてまだ収束を見せないサガンの一件。最高気温36度の蒸し暑さに見舞われたツール第6ステージの現地レポートをお届けします。
ヴィラージュでは携帯電話の充電が可能 photo:Kei Tsuji / TDWsport
マイヨアポワのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が登場 photo:Kei Tsuji / TDWsport
EUとフランス、そしてオート=ソーヌ県の旗 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ディスクブレーキ搭載バイクに乗るマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が出走サインに向かう photo:Kei Tsuji / TDWsport
スプリントに向けた展望を語る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームバス前でスタートを待つペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のバイク photo:Kei Tsuji / TDWsport
汗が吹き出てくる暑さ。気温は36度まで上がり、いつものカラッとした暑さではなく、空気中に水分を含んだ湿度の高い暑さ。「この暑さに苦しんでいるチームメイトはいないですか?」とスタート前に新城幸也(バーレーン・メリダ)に質問すると「これぐらいの暑さで苦しんでいたらツールを走れないですよ」と笑われた。
スタート地点のチームバスエリアでは、チームスタッフたちは選手たちのための氷嚢や冷たいドリンクの用意のためにせわしなく動き回っていた。どのチームが発明したのかは不明だが、ストッキングに握り拳1.5倍分ぐらいの氷を入れて両側を結び、ハサミで切ったものを何個も作ってクーラーボックスに入れておくのが一般化している。レース中に選手たちはそのストッキングアイスをチームカーから受け取り、首根っこに入れながら走る。安価でどこでも手に入り、簡単に手早く作れ、適度なスピードで溶け、いい具合に身体を冷やすことができる優れものだ。
この日もボーラ・ハンスグローエのチームバスの前には9台のバイクが並べられた。人目につきやすい最前列に並べられているのがペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のバイク。サガンは第4ステージの落車誘発(疑惑)で失格処分を受けてすでに帰宅しているが、スペシャルペイントのバイクは変わらずそこにある。処分に納得していないチームの無言の抵抗にも見える。
サガンの失格処分を不服として、7月5日、ボーラ・ハンスグローエは「緊急要請」としてCAS(スポーツ仲裁裁判所)に提訴した。チームはASOとUCIがサガンに下した失格処分を撤回するよう要求。つまりチームはサガンのレース復帰を求めている。
チームはサガンの処分決定に関してUCIコミッセールがUCI規約12.2.006に反していると主張。同規約は「コミッセールパネルは、当該者が自身の観点から弁明する機会を得た場合あるいは召喚に従い、あるいは召喚に欠席した場合にも、問題についてのみ判定できる(JCFサイトから抜粋)」とある。分かりやすく言うと、サガン側の主張を聞くことなく処分が決定したことに問題がある、ということ。
この日(提訴翌日)の第6ステージのレース中にCASはプレスリリースを出し、「ペテル・サガンは現在も変わらず資格剥奪の状態である」という短い発表を行い、ボーラ・ハンスグローエの訴えを棄却した。UCIルール上、ステージレースで正式な成績を残すためには毎ステージ欠かさず出場する必要がある。万が一(確率が0.01%ではないかもしれないけど)復帰できたとしても、それはそれでものすごく複雑な事態になるのは間違いない。
連日100台以上のバイクがUCIによってチェックされている photo:Kei Tsuji / TDWsport
ローヌ川を経て地中海に注ぐソーヌ川をまたぐ photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げるヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)ら3名 photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームスカイが常にメイン集団の前方に位置 photo:Kei Tsuji / TDWsport
4級山岳ラングルを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)はマイヨジョーヌ着用45日目を平和にやりすごした。マイヨジョーヌ着用記録の最長はエディ・メルクス(ベルギー)の96日間で、フルームはまだその半分にも及ばない。
歴代2位は75日間のベルナール・イノー(フランス)で、60日間のミゲール・インデュラインと50日間のジャック・アンクティル(フランス)が続く。フルームは第6ステージ終了の時点で歴代5位につけており、本人の「パリまでマイヨジョーヌを着続けたい」という言葉が現実になれば、今大会でアンクティルとインデュラインを抜いて歴代3位までジャンプアップする。
現役選手の中でフルームに次いで多いのは20日間のトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)、19日間のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、そして11日間のアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)。ちなみにランス・アームストロング(アメリカ)は83日間マイヨジョーヌを着ているが、その記録は総合優勝と同様に抹消されている。
バーテープだけ黄色くしたバイクに乗って、チームメイトとお揃いの黄色いヘルメット(チーム総合成績トップの証)をかぶって、フルームが何事もなく平坦ステージをやりすごした。風で飛んだ大きなパラソルがプロトンを直撃するシーンもあったが、幸い大きな落車が発生することはなかった。
現在選手たちが走っているのはフランスの東の端。第6ステージの前半に登場したゆったりとした流れのソーヌ川はやがてローヌ川に合流して地中海に流れ込む。つまり、北海に注ぐライン川沿いのデュッセルドルフで開幕したツールが、いつの間にか分水嶺を越えて、水が南に流れる地域に入っている。
ジルベールと抱き合って喜ぶマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
フィニッシュ後すぐにローラー台でダウンするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
マイヨジョーヌに袖を通すクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ステージ2勝目を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:Tim de Waele / TDWsport
スプリンターの中でマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)の速さは頭一つか二つ分抜け出ている。キッテルはステージ通算11勝目で、先輩ジャーマンスプリンターのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)に並んだ。
ディメンションデータ社によるデータ解析によると、スプリント中の最速スピードはアルノー・デマール(フランス、エフデジ)がマークした75.04km/h。しかしこれはデマールがポジションを上げるために踏んだ残り400m地点でのスピードであり、残り200mからフィニッシュラインまで最速で駆け抜けたのはキッテルだった。キッテルがおよそ残り90m地点で71.17km/hのトップスピードをマークしたのに対し、デマールは残り400m地点からスピードを伸ばせず、むしろ失速している。
マイヨヴェールを守りながらも2勝目を逃したデマールは「グライペルを抜いた時、勝ったと思った。すると左後ろから青い弾丸が飛んできたんだ。これだけは言い切れる。彼は他の誰よりも速かった」と舌を巻いた。
キッテルはここまでのステージで積極的にスプリントポイントの戦いに加わっていないが、これからは1日2回のスプリントに挑むことを宣言。現状、デマール(170ポイント)とキッテル(143ポイント)がマイヨヴェールの有力候補。サガンと同様に山岳ステージでも動けるマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)も96ポイントで続いている。サガンの離脱によってマイヨヴェール争いの行方はさっぱり分からなくなった。
text&photo:Kei Tsuji in Troyes, France
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スタート地点のチームバスエリアでは、チームスタッフたちは選手たちのための氷嚢や冷たいドリンクの用意のためにせわしなく動き回っていた。どのチームが発明したのかは不明だが、ストッキングに握り拳1.5倍分ぐらいの氷を入れて両側を結び、ハサミで切ったものを何個も作ってクーラーボックスに入れておくのが一般化している。レース中に選手たちはそのストッキングアイスをチームカーから受け取り、首根っこに入れながら走る。安価でどこでも手に入り、簡単に手早く作れ、適度なスピードで溶け、いい具合に身体を冷やすことができる優れものだ。
この日もボーラ・ハンスグローエのチームバスの前には9台のバイクが並べられた。人目につきやすい最前列に並べられているのがペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)のバイク。サガンは第4ステージの落車誘発(疑惑)で失格処分を受けてすでに帰宅しているが、スペシャルペイントのバイクは変わらずそこにある。処分に納得していないチームの無言の抵抗にも見える。
サガンの失格処分を不服として、7月5日、ボーラ・ハンスグローエは「緊急要請」としてCAS(スポーツ仲裁裁判所)に提訴した。チームはASOとUCIがサガンに下した失格処分を撤回するよう要求。つまりチームはサガンのレース復帰を求めている。
チームはサガンの処分決定に関してUCIコミッセールがUCI規約12.2.006に反していると主張。同規約は「コミッセールパネルは、当該者が自身の観点から弁明する機会を得た場合あるいは召喚に従い、あるいは召喚に欠席した場合にも、問題についてのみ判定できる(JCFサイトから抜粋)」とある。分かりやすく言うと、サガン側の主張を聞くことなく処分が決定したことに問題がある、ということ。
この日(提訴翌日)の第6ステージのレース中にCASはプレスリリースを出し、「ペテル・サガンは現在も変わらず資格剥奪の状態である」という短い発表を行い、ボーラ・ハンスグローエの訴えを棄却した。UCIルール上、ステージレースで正式な成績を残すためには毎ステージ欠かさず出場する必要がある。万が一(確率が0.01%ではないかもしれないけど)復帰できたとしても、それはそれでものすごく複雑な事態になるのは間違いない。
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歴代2位は75日間のベルナール・イノー(フランス)で、60日間のミゲール・インデュラインと50日間のジャック・アンクティル(フランス)が続く。フルームは第6ステージ終了の時点で歴代5位につけており、本人の「パリまでマイヨジョーヌを着続けたい」という言葉が現実になれば、今大会でアンクティルとインデュラインを抜いて歴代3位までジャンプアップする。
現役選手の中でフルームに次いで多いのは20日間のトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)、19日間のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、そして11日間のアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)。ちなみにランス・アームストロング(アメリカ)は83日間マイヨジョーヌを着ているが、その記録は総合優勝と同様に抹消されている。
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現在選手たちが走っているのはフランスの東の端。第6ステージの前半に登場したゆったりとした流れのソーヌ川はやがてローヌ川に合流して地中海に流れ込む。つまり、北海に注ぐライン川沿いのデュッセルドルフで開幕したツールが、いつの間にか分水嶺を越えて、水が南に流れる地域に入っている。
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ディメンションデータ社によるデータ解析によると、スプリント中の最速スピードはアルノー・デマール(フランス、エフデジ)がマークした75.04km/h。しかしこれはデマールがポジションを上げるために踏んだ残り400m地点でのスピードであり、残り200mからフィニッシュラインまで最速で駆け抜けたのはキッテルだった。キッテルがおよそ残り90m地点で71.17km/hのトップスピードをマークしたのに対し、デマールは残り400m地点からスピードを伸ばせず、むしろ失速している。
マイヨヴェールを守りながらも2勝目を逃したデマールは「グライペルを抜いた時、勝ったと思った。すると左後ろから青い弾丸が飛んできたんだ。これだけは言い切れる。彼は他の誰よりも速かった」と舌を巻いた。
キッテルはここまでのステージで積極的にスプリントポイントの戦いに加わっていないが、これからは1日2回のスプリントに挑むことを宣言。現状、デマール(170ポイント)とキッテル(143ポイント)がマイヨヴェールの有力候補。サガンと同様に山岳ステージでも動けるマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)も96ポイントで続いている。サガンの離脱によってマイヨヴェール争いの行方はさっぱり分からなくなった。
text&photo:Kei Tsuji in Troyes, France
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