2017/07/06(木) - 15:27
二人のチャンピオンがいないツール・ド・フランスがヴォージュ山脈に突入。最初の山頂フィニッシュでクリストファー・フルームやリッチー・ポートの好調ぶりが明らかになった。フォトグラファーの辻啓が現地の様子を伝えます。
ツール・ド・フランス第5ステージの朝、サガンは宿泊先のホテルで報道陣を相手に囲み取材を行い、UCIコミッセールの決定が覆らなかったことと、レースを離れて帰宅することを明らかにした。サガンは第5ステージのスタートを見ることなく空港に向かい、空路で帰宅している。
「決定は受け入れるが、もちろん同意できる決定ではない。スプリントで間違ったことをしたとは思っていない。マークが落車したことは残念であり、彼が早く回復することを願っている。誰もがインターネットで映像を見たと思うけど、クレイジーなスプリントだった。ああいったスプリントは今回が初めてではないし、今回が最後でもない」
UCIコミッセールの判断に今さら異議を唱えるつもりは毛頭ないが、一般的な意見を知るために個人的な投票をTwitterで行ったところ、「16%が除外は妥当、84%が妥当ではない(合計6,323票)」という結果に。ほぼ同じ内容で投票を行ったマイケル・ロジャース(オーストラリア)の結果は「14%が帰宅させる、86%がレースに残す(合計2,914票)」だった。
一夜明けてサガンと同じく帰路につくマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)は「ツール・ド・フランスから世界チャンピオンを除外するなんて相当勇気と根性が必要だったはず。ソーシャルメディアや外野の意見に惑わされることなく審判団が決断を下したことを評価したい」とコメントしている。「フィリップ・マーリアン氏からは過去に降格処分を受けたことがある。正しいか正しくないかは置いておいて、ルールを破ればもちろん処分が下る。自分には子供がいるので何が危険か何が危険じゃないかは判断している。フェンス際の細い隙間に突っ込んだことに疑問を呈する人もいるけど、どれだけの横幅があればすり抜けられるかは心得ている。それはスプリンターにはなくてはならない感覚であり、そのおかげでこれまでステージ30勝を飾っているんだ。ペテルと自分は今でも友人であり、関係が悪化することはない。彼は直接やってきて謝ってくれた。これまでもこれからも友人なんだ」。
まだまだ(自分を含めて)メディアは騒ぎ立てているが、サガンとカヴェンディッシュにとっては何か事態が変わるわけでもないので割り切っている。本人たちはすでにツールの先を見て歩き出している。
第5ステージは直訳で「偉大な東部」を意味するグラン・テスト地域圏(かつてのロレーヌ地域圏とアルザス地域圏)のヴォージュ山脈を走る。アルザスと言えばドイツ系アルザス人が住む地域であり、住民の大半がドイツ語の方言を話す。どうりで建物などの街並みもドイツっぽい。ドイツ国境が近いだけでなく、スイス国境も数十kmの距離にある。
フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は35回目の誕生日を祝うかのように逃げに乗り、残り4km地点まで逃げ続けた。ステージ優勝には届かなかったが、ステージ敢闘賞を獲得。「良い誕生日プレゼントになった」とジルベールは喜んでいる。ちなみに今大会にはジルベールより年上の選手が21名出場。最年長は40歳のアイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)で、39歳のマシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・スコット)と38歳のトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)が続いている。
GPSデータを集めているディメンションデータ社の発表によると、20〜140kmの間にメイン集団のペースを作っていたのは82.5%がBMCレーシングで、3.3%がチームスカイ、14.2%がその他のチーム。つまりBMCレーシングがほぼ先頭固定でメイン集団を引き続けた。
イニシアティブをとったBMCレーシングのエース、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)はクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)からリードを奪えながったが「もっと多くを期待していた」と語っており、自分のコンディションに大きな自信を持っていることを伺わせる。
ポートが「脱帽だった」と讃えたのがファビオ・アル(イタリア、アスタナ)の勝利。アルは登坂距離5.9km/平均勾配8.5%の登りを平均スピード19.66km/hで駆け上がっている。イタリア人選手によるステージ優勝は2015年のヴィンチェンツォ・ニーバリ以来。
ここラ・プロンシュ・デ・ベルフィーユでツールがフィニッシュを迎えるのは3回目で、2012年はクリストファー・フルームがステージ優勝してブラドレー・ウィギンズがマイヨジョーヌ獲得、2014年はニーバリがステージ優勝してマイヨジョーヌ獲得。つまりここでマイヨジョーヌを手にした2選手が最終的な総合優勝に輝くというジンクスがある。アルの勝利によって、ラ・プロンシュ・デ・ベルフィーユはイタリアンチャンピオンジャージを着る選手と相性が良いという傾向も生まれた。
フルームがマイヨジョーヌを着るのは45日目。フルームは過去のジンクスを引き継ぐことができるだろうか。第5ステージという早いタイミングでのマイヨジョーヌ獲得だが、本人はもうパリまで他人にジャージを明け渡すつもりはないようだ。
text&photo:Kei Tsuji in La Planche des belles filles, France
ツール・ド・フランス第5ステージの朝、サガンは宿泊先のホテルで報道陣を相手に囲み取材を行い、UCIコミッセールの決定が覆らなかったことと、レースを離れて帰宅することを明らかにした。サガンは第5ステージのスタートを見ることなく空港に向かい、空路で帰宅している。
「決定は受け入れるが、もちろん同意できる決定ではない。スプリントで間違ったことをしたとは思っていない。マークが落車したことは残念であり、彼が早く回復することを願っている。誰もがインターネットで映像を見たと思うけど、クレイジーなスプリントだった。ああいったスプリントは今回が初めてではないし、今回が最後でもない」
UCIコミッセールの判断に今さら異議を唱えるつもりは毛頭ないが、一般的な意見を知るために個人的な投票をTwitterで行ったところ、「16%が除外は妥当、84%が妥当ではない(合計6,323票)」という結果に。ほぼ同じ内容で投票を行ったマイケル・ロジャース(オーストラリア)の結果は「14%が帰宅させる、86%がレースに残す(合計2,914票)」だった。
一夜明けてサガンと同じく帰路につくマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)は「ツール・ド・フランスから世界チャンピオンを除外するなんて相当勇気と根性が必要だったはず。ソーシャルメディアや外野の意見に惑わされることなく審判団が決断を下したことを評価したい」とコメントしている。「フィリップ・マーリアン氏からは過去に降格処分を受けたことがある。正しいか正しくないかは置いておいて、ルールを破ればもちろん処分が下る。自分には子供がいるので何が危険か何が危険じゃないかは判断している。フェンス際の細い隙間に突っ込んだことに疑問を呈する人もいるけど、どれだけの横幅があればすり抜けられるかは心得ている。それはスプリンターにはなくてはならない感覚であり、そのおかげでこれまでステージ30勝を飾っているんだ。ペテルと自分は今でも友人であり、関係が悪化することはない。彼は直接やってきて謝ってくれた。これまでもこれからも友人なんだ」。
まだまだ(自分を含めて)メディアは騒ぎ立てているが、サガンとカヴェンディッシュにとっては何か事態が変わるわけでもないので割り切っている。本人たちはすでにツールの先を見て歩き出している。
第5ステージは直訳で「偉大な東部」を意味するグラン・テスト地域圏(かつてのロレーヌ地域圏とアルザス地域圏)のヴォージュ山脈を走る。アルザスと言えばドイツ系アルザス人が住む地域であり、住民の大半がドイツ語の方言を話す。どうりで建物などの街並みもドイツっぽい。ドイツ国境が近いだけでなく、スイス国境も数十kmの距離にある。
フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は35回目の誕生日を祝うかのように逃げに乗り、残り4km地点まで逃げ続けた。ステージ優勝には届かなかったが、ステージ敢闘賞を獲得。「良い誕生日プレゼントになった」とジルベールは喜んでいる。ちなみに今大会にはジルベールより年上の選手が21名出場。最年長は40歳のアイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)で、39歳のマシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・スコット)と38歳のトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)が続いている。
GPSデータを集めているディメンションデータ社の発表によると、20〜140kmの間にメイン集団のペースを作っていたのは82.5%がBMCレーシングで、3.3%がチームスカイ、14.2%がその他のチーム。つまりBMCレーシングがほぼ先頭固定でメイン集団を引き続けた。
イニシアティブをとったBMCレーシングのエース、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)はクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)からリードを奪えながったが「もっと多くを期待していた」と語っており、自分のコンディションに大きな自信を持っていることを伺わせる。
ポートが「脱帽だった」と讃えたのがファビオ・アル(イタリア、アスタナ)の勝利。アルは登坂距離5.9km/平均勾配8.5%の登りを平均スピード19.66km/hで駆け上がっている。イタリア人選手によるステージ優勝は2015年のヴィンチェンツォ・ニーバリ以来。
ここラ・プロンシュ・デ・ベルフィーユでツールがフィニッシュを迎えるのは3回目で、2012年はクリストファー・フルームがステージ優勝してブラドレー・ウィギンズがマイヨジョーヌ獲得、2014年はニーバリがステージ優勝してマイヨジョーヌ獲得。つまりここでマイヨジョーヌを手にした2選手が最終的な総合優勝に輝くというジンクスがある。アルの勝利によって、ラ・プロンシュ・デ・ベルフィーユはイタリアンチャンピオンジャージを着る選手と相性が良いという傾向も生まれた。
フルームがマイヨジョーヌを着るのは45日目。フルームは過去のジンクスを引き継ぐことができるだろうか。第5ステージという早いタイミングでのマイヨジョーヌ獲得だが、本人はもうパリまで他人にジャージを明け渡すつもりはないようだ。
text&photo:Kei Tsuji in La Planche des belles filles, France
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