1982年創業のサイクルシューズブランド、LAKE(レイク)よりハイエンドロードシューズ「CX402」をインプレッション。自宅のオーブンで熱成形可能なソールと、レザーの王様と目されるカンガルー革を使用したプレミアムなロードシューズだ。


レイク CX402 レイク CX402 photo:Makoto.AYANO
アメリカのイリノイ州エヴァンストンにて1982年に創業したレイクは、カーボンソールを採用した量産シューズや、極寒仕様に耐えるウィンター用のシューズ、あるいは熱成形のできるシューズなど数々の”業界初”を生み出してきたシューズメーカーだ。小規模なメーカーながらトッププロ選手にも愛用者は少なくなく、その高いフィット感やカスタム性などが評価されてきた。現在はアイントホーフェンに拠点を置くオランダ企業となっている。

そんなレイクのロードシューズラインアップにおいて、ハイエンドモデルに当たるのが今回紹介する「CX402」である。しなやかで軽量、高級素材としても名高いカンガルーレザーをアッパーに使用し、アウトソールには同社が得意とする熱成形可能なフルカーボンソールを合わせたフラッグシップモデルである。

2つのBOAダイアルによりケーブルを引きフィットさせる2つのBOAダイアルによりケーブルを引きフィットさせる カンガルーレザーは軽く、強く、しなやかでフィット感に優れる高級皮革だカンガルーレザーは軽く、強く、しなやかでフィット感に優れる高級皮革だ


アッパー部分はオーストラリアの老舗革加工業者から供給された「K-lite」と呼ばれる軽量性、強度、耐久性に優れた足馴染みの良い天然カンガルー皮革を採用。原皮に複数の表面処理を施し、細かい傷に対する耐久性や、細菌の繁殖を防ぐ抗菌効果を付け加えている。また全体に細かいホールを開け、つま先やタンにメッシュ素材を配することで通気性も確保している。

一方で、天然レザーを全体に使用したシューズのため、どうしても内部の温度が上昇しやすい傾向にある。それを改善するためにNASAが開発したアウトラスト・スマートファブリックテクノロジーを採用しており、ミクロレベルの最先端素材がシューズ内の温度を常に快適な数値に保つ機能も搭載している。

ソールには熱成形可能な「CFCカーボンソール」を採用。アッパーではなくこのカーボンソールをオーブンで温め自分の足に合うように成形することで抜群のホールド感を実現し、ペダリング時のパワーロスを最小限に留めることが出来る。その上、アウトソール自体も100%カーボンにて成形され、最高剛性係数15.0を誇るため、パワー伝達性は非常に高いと言えるだろう。

ソール一体型のヒールカウンターは踵を包み込むような構造だソール一体型のヒールカウンターは踵を包み込むような構造だ カンガルーレザーに通気のパンチング穴がある。日本人の足型に合うラストだカンガルーレザーに通気のパンチング穴がある。日本人の足型に合うラストだ


またこのカーボンソールは2層構造となっており、フィット感を高めつつも軽量で快適、ペダリングパワーの伝達に適した独自の構造となっている(下図参照)。

ダブルソールの構造ダブルソールの構造 (c)LAKE/kirshberg inc
なおラスト(足型)にはノーマル、ワイド、レディースの3形状が、そしてソールにはルックやシマノなどの3つ穴だけでなく4つ穴のスピードプレイ専用も用意されているため、よりフィットするシューズを選ぶことが出来る。またヒールパッドが交換式となっている点もヘビーユーザーには嬉しいだろう。フィットシステムにはサイクリングシューズの標準スペックとなったBOA社のL6クロージャーを2個搭載し、ムラなく均一に締め上げてくれる。サイズは女性用を含めると36〜50まで用意され、37.5〜46.5にはハーフサイズも用意される。そしてなんと左右別々のサイズでオーダーすることも可能だ(後述のカラーオーダーの場合のみ)。

また、熱成形を一度行ってしまうと返品が不可能になってしまうため、正式な注文前に熱成形を試し最適なサイズを知ることが出来る「CX402 熱成形サンプルレンタルキット」も用意。更に用意されたカラーを組み合わせるカラーセレクトプログラムや、模様やロゴなどを入れ完全にオリジナルのデザインでオーダーすることが出来るオリジナルグラフィックプログラムといったサービスも。サイズもデザインも自分だけの一足を作ることが出来るプレミアムシューズだ。

過去に製作されたカスタムデザインはinstagramやFacebookなどでハッシュタグ「#lakecustom」で検索すると多数見つけることができ、通常は製版代が掛かるオリジナルのグラフィックも公式サイトやSNSに上がっているデザインなら製版代無しで注文することができる(色の変更も可能)。ただし注文するシューズのサイズと版のサイズが合わない場合もあるため、気になるデザインがあれば代理店キルシュベルクに問い合わせよう。

今回は実際にCX402を熱成形フィッティングにより製作し、長期に渡った使用してのテストを行った。それではインプレションに移ろう。



― インプレッション 熱成形の過程からライド使用感まで

2017年夏前にCX402をオーダーした際の行程と、数ヶ月間に渡り長期インプレした実感を記そう。購入時には輸入代理店キルシュベルクの担当者による熱成形とフィッティングアドバイスを受け、シューズを選んだ。CX402はソールの種類などで数種有るが、幅はノーマル、ソールはスピードプレイ専用ソールをオーダーした。(CW編集部 綾野 真)

レイクCX402 レイクCX402 photo:Makoto.AYANO
熱成形フィッティングにはオーブンレンジを使用する。キルシュベルク社が導入しているアイリスオーヤマ製のオーブン(庫内のサイズ、温度調整域、価格面で良いそうだ)を使用してまずシューズを温める。レンジを温め、温度が90℃に安定してからシューズを中に入れて5分間、その後フィッティングに入る。ちなみにプロショップによく設置してあるシマノのカスタムフィット用成形器も使い勝手が良いとのことだ。

90℃に設定したオーブンレンジで5分間温めてからフィッティングに入る90℃に設定したオーブンレンジで5分間温めてからフィッティングに入る ヒールカウンター部を踵と足周辺のカーブに合わせるようにフィットさせるヒールカウンター部を踵と足周辺のカーブに合わせるようにフィットさせる


ソックスを通じて暖かさを感じつつ、シューズを履いたら少し体重をかけるようにして、カーボンソールを自分の脚になじませてゆく。踵(かかと)回りが狭く締まったソールを、自身の足の形状に応じたホールドができるように押し広げるイメージだ。CX402のCFCカーボンソールは後部のヒールカウンターが一体成型され、ソール全体で踵回りを包み込むようなフォルムに整形されているのがユニーク。硬度は剛性指数15と非常に高く、かつ軽量だ。このソールはカルロス・サストレが2008年にツール・ド・フランスを優勝した際に履いたシューズにも採用されていたもので、その頃からほぼ変わっていない。それだけの完成度の高さなのだろう。

しなやかなカンガルー革アッパーとBOAダイアルにより高いフィット感が得られるしなやかなカンガルー革アッパーとBOAダイアルにより高いフィット感が得られる ソールとヒールカウンターは簡単な作業で足にフィットしてくれた。カンガルー革のアッパーは非常にソフトかつしなやかで、使い込むに伴って自然に足の形状に馴染んでくるため、アッパー自体の変形は必要ないようだ。つまり熱成形は主にカーボンソールを変形させフィットさせるのが目的だ。とくに踵を包む構造のヒールカウンターが温かいうちに足形に沿うように圧えてやるというイメージ。ヒールカウンターを熱成形するのは、ペダリングパワーロスの主な原因が踵の浮きであるためだ。

熱成形だからと難しいことは無く、とても簡単だ。大切なのは温度管理で「90℃で5分」を守ること。マニュアル通りに行えれば問題ない。成形した後に履いてみてフィット不足を感じたら、もう一度熱成形に戻れば良いとのこと。ヒール成形にかかる時間はオーブン予熱5〜10分、シューズ加熱5分、成形1分、冷却&硬化10〜15分で、合計20〜30分だ。成形プロセスは5回までなら可能だ。

BOAダイアルは引きあげ、回すことで締め込みを調整するBOAダイアルは引きあげ、回すことで締め込みを調整する 購入を決める前にお試し熱成形フィッティングを行うこともできる。これは熱成形用のテストシューズ(実製品と同じサンプル)とレンジを借り受けることで実際に希望サイズで熱成形を行いフィットするかどうか確かめられるというのだから、なんとも到れり尽くせりだ。

アッパーは2つのBOAダイアルによってケーブルを締め込むことでフィットさせる。タンにはソフトなファブリックが用いられ、足首回りのストレスもない設計。アッパーは親指側のパネルが小指側までせり出して、甲を面で覆うように裁断されている。革自体もソフトなため、締め込んでいっても当たるところが無い。そして踵周りをカーボンソールが包み込んでホールドしてくれるため、アッパーはそれほど締め込む必要が無い。ソールのフィット感が高いため、アッパーで必要以上に足をホールドする必要がないのだ。熱成形されフィット感が向上したヒールカウンターは踵をしっかりとホールドしてくれ、かつ快適だ。

カンガルーレザーのアッパーは繊維質が非常に緻密で、しなやかでフィット感が高い。独特のシワがある軽く、薄く、強い革は、かつて私がサッカーをしていたころに愛用していた(高価な最高級の)スパイクシューズを思い出させてくれる素晴らしいフィーリングだ。皮革としての柔軟性、軽さ、破れにくさなど、カンガルー革の高い耐久性は牛革の比較ではないことはよく知っている。CX402はすでに長く履いているが傷みは少ない。

レイクCX402  スピードプレイ専用ソールレイクCX402 スピードプレイ専用ソール スピードプレイ専用ソールにクリートを取り付ければスタックハイトは最も小さくできるスピードプレイ専用ソールにクリートを取り付ければスタックハイトは最も小さくできる


筆者はスピードプレイペダルを好んで使用しているため専用ソールを選んだ。三つ穴アダプター無しでスピードプレイクリートが取り付けられることでスタックハイトが低くできるのはもちろん、ソールのクリート取付部は2層構造になっているという非常に凝った作りになっている。スピードプレイのクリートは薄いソールではクリートのある部分に圧迫や存在感を感じてしまうものだが、この中空2層式の構造によってピンポイントの圧迫感がなく、ソール全体がペダルとつながっているような一体感が生まれている。シューズ全体でペダルを回せるような感覚に繋がり、このフィーリングは非常に気に入っている。

CX402シューズは数回の熱成形が可能とのことで、時間が経てばフィッティングし直すことができる。アッパーには通気のためのパンチング穴があけられているが、カンガルー革の薄くて通気性が良いという性質で、見た目以上に蒸れの心配は少なさそうだ。

天然皮革のためクリーナーと保革クリームで年一度ぐらい(あるいは雨中走行後は)ケアをしてやるのが良いという。革は薄くて浸透性が高いため、ろう・油分の比較的薄いクリームを使うのが良さそうだ。市場にはカンガルー革専用クリームもあるのでそれを使うのが安心だろう。

東京・矢野口のCROSS COFEEでの試着会の様子。同カフェはLAKEシューズの販売も行っている東京・矢野口のCROSS COFEEでの試着会の様子。同カフェはLAKEシューズの販売も行っている photo:Makoto.AYANOLAKEの代理店であるキルシュベルクにより、日本各地・各イベントでは頻繁にLAKEシューズ試着会が行われており、その機会を利用すればフィッティングの相談を受けることができる。また「LAKE CX402 熱成形サンプルレンタルキット」は、サイズの異なるCX402のサンプルシューズ数足とオーブン、温度計をセットでレンタルできるサービス(価格は2,000円で、シューズ購入時には同額分の値引きが受けられる)で、オンラインストアより予約・注文ができる。

また、シューズの購入オーダー時にも前後サイズ同梱サービスや、申し出ればオーブンも一緒に無償で届けてくれる(返送料はユーザー負担)など、購入する時にもストレスが無いのが嬉しい。

シューズの熱成形やフィッティングはハードルが高いものように思えるが、こうした代理店努力によって誰でもが負担無しにメリットを享受できるサービスになっている。カスタムフィットシューズの素晴らしさを体験すれば、シューズ自体の価格が少し高いのであっても十分に納得できるものだ。小さなブランドながらこうしたコンシュマー本位の姿勢は素晴らしいと思う。



レイク CX402
ソール:CFCカスタムフィットカーボン
アッパー:K-Liteカンガルーレザー/メッシュ
クロースシステム:BOA L6マイクロクロージャー×2
カラー:ホワイト、ブラック、レッド
サイズ:39〜50(ハーフサイズあり)、36〜43(レディース、ハーフサイズあり)
価 格:
CX402シューズ 59,800円(税込)
カラーセレクトプログラム 69,800円(税込)
オリジナルグラフィックプログラム 81,800円(税込)

レイク CX402 熱成形サンプルレンタルキット
内 容:サイズの異なるCX402サンプルシューズ数足、オーブン、温度計
価 格:2,000円(税込)+往路送料

photo&text:Makoto.AYANO
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