2017/06/04(日) - 21:09
1周目から逃げたのはダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)。じつに95kmを逃げ切って最終ステージを制した。総合上位に変動はなく首位のホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が守り切り、チーム2度目の熊野総合優勝を達成した。
逆転なるか?名コースの最終太地ステージ
ツール・ド・熊野最終日第3ステージが6月4日(日)、和歌山県太地町で行われた。1周10kmの中にあらゆる状況が組み込まれた名コースでは過去数々の名勝負が繰り広げられてきた。過去には逆転劇が多く生まれたが、UCIレースになってからはそのまま守りきることが多くなっている。昨年は途中で豪雨となり起死回生のアタックを仕掛けた総合2位の選手が落車し、大きく順位を落としている。
前ステージまでで首位のホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)は2位オスカル・プジョル(チーム右京)に43秒差ある。さらにプジョルから総合6位までは13秒、ポイント賞は首位ホセ・ビセンテとプジョル、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)とは6点の僅差。チーム総合も首位キナンサイクリングチームと2位タブリーズシャハルダリとは42秒差と接近している。いずれも展開次第では逆転可能な範囲だ。
ダミアン・モニエが1周目から単独逃げる
太地くじら浜公園をスタートした集団は2.5km先のKOM目指して活性化する。サラウット・シリロナチャイ(タイコンチネンタルサイクリングチーム)が獲得しなおも集団前方は激しいアタックが続く。ここからダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)が抜け出し、メイン集団がこれを追いながらも活性化した状態が続く。モニエはリーダーのホセ・ビセンテとは7分17秒差でありこの逃げは容認される。
3周目にはモニエを追って数人が抜け出し4周目にはそれらがまとまり7人の追走ができる。メンバーは早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)、入部正太朗(シマノレーシング)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、エドガー・ノアレス・ニエト(セブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズ)、リカルド・ガルシア(キナンサイクリングチーム)、土井雪広(マトリックスパワータグ)、石橋学(ブリヂストンアンカー)で、のちにジョン・アベラストゥリ・イザガ(チーム右京)が単独でブリッジし逃げは8人に。
個人総合逆転からステージ狙いへ
総合2分10秒差9位の早川は順位アップを、阿部はポイント賞を、入部とアベラストゥリはステージ優勝を狙う一方、ガルシア、土井、石橋は押さえで逃げに入る。追走は8人いるが引くのは実質半分だ。レースはしばらく先頭モニエ、追走8人、メイン集団の構図で進む。タイム差はそれぞれの間で30秒から1分ほど。
途中のスプリントポイントは2回とも追走8人の中では阿部が先着してポイント賞1位を見据える。総合狙いでは、マトリックスは追走の早川とのタイム差だけを見ればいい。その観点ではチーム右京やキナン、タブリーズシャハルダリらに40〜50秒のアドバンテージがありマトリックスだけが引く必要性もない。そのためレースはステージ優勝に関心が移っていく。マトリックスはこのままフィニッシュすればいい。
95%を逃げたダミアン・モニエがステージを制する
周回を重ねてもモニエの勢いは衰えず追走8人とのタイム差は1分を超え、メイン集団が追走8人を吸収しそうな勢いに。最終周回はさすがに追走8人そしてメイン集団ともにペースを上げるがそれぞれに届かず、結局モニエが38秒差で逃げ切って優勝、2位にはアベラストゥリ、そして3位に土井が入った。メイン集団は追走集団に6秒遅れでパク・サンホン(LXサイクリングチーム)先頭にフィニッシュした。
優勝したモニエは2003年から10年間コフィディスに所属しジロ・デ・イタリアステージ優勝やフランス選手権個人追い抜き優勝など実績があり、2013年からブリヂストンアンカーに所属する34歳。独走力に定評があり、この日は全行程の95%の距離を逃げ切り8人の追走とのタイム差をむしろ離すほどの離れ業を見せた。
熊野で2度目の総合優勝のマトリックスパワータグ
マトリックスパワータグは前日までに2人を失い4人での出走だったが、土井と吉田隼人がリードしてホセ・ビセンテの総合を守り切った。特に土井の存在は大きく、2年前の総合優勝時は後半になるまで他チームの激しい攻撃に晒されたが、今回そのようなことはなくチームとして総合力が上がったことを示している。
結果
第3ステージ 100.0km
1位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)2時間27分15秒
2位 ジョン・アベラストゥリ・イザガ(チーム右京)+38秒
3位 土井雪広(マトリックスパワータグ)
4位 入部正太朗(シマノレーシング)
5位 石橋学(ブリヂストンアンカー)
6位 リカルド・ガルシア(キナンサイクリングチーム)
7位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)
8位 エドガー・ノアレス・ニエト(セブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズ)+40秒
9位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
10位 パク・サンホン(LXサイクリングチーム)+44秒
個人総合時間賞 最終成績
1位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)7時間41分59秒
2位 オスカル・プジョル(チーム右京)+43秒
3位 マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)+46秒
4位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)+48秒
5位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズシャハルダリ)+53秒
6位 イリヤ・ダビデノク(タブリーズシャハルダリ)+56秒
7位 山本元喜(キナンサイクリングチーム)+1分02秒
8位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)+1分22秒
9位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)+2分04秒
10位 ペーラポル・チャウチャンクワン(タイコンチネンタルサイクリングチーム)+2分15秒
個人総合ポイント賞 最終成績
1位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)44点
2位 入部正太朗(シマノレーシング)40点
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)37点
個人総合山岳賞 最終成績
1位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ・チーム)22点
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)15点
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)10点
個人総合U23賞 最終成績
1位 田窪賢次(マトリックスパワータグ)7時間46分07秒
チーム総合 最終成績
1位 キナンサイクリングチーム 23時間09分10秒
2位 タブリーズ・シャハルダリ・チーム +3分29秒
3位 マトリックスパワータグ +8分18秒
photo&text:Hideaki TAKAGI
逆転なるか?名コースの最終太地ステージ
ツール・ド・熊野最終日第3ステージが6月4日(日)、和歌山県太地町で行われた。1周10kmの中にあらゆる状況が組み込まれた名コースでは過去数々の名勝負が繰り広げられてきた。過去には逆転劇が多く生まれたが、UCIレースになってからはそのまま守りきることが多くなっている。昨年は途中で豪雨となり起死回生のアタックを仕掛けた総合2位の選手が落車し、大きく順位を落としている。
前ステージまでで首位のホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)は2位オスカル・プジョル(チーム右京)に43秒差ある。さらにプジョルから総合6位までは13秒、ポイント賞は首位ホセ・ビセンテとプジョル、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)とは6点の僅差。チーム総合も首位キナンサイクリングチームと2位タブリーズシャハルダリとは42秒差と接近している。いずれも展開次第では逆転可能な範囲だ。
ダミアン・モニエが1周目から単独逃げる
太地くじら浜公園をスタートした集団は2.5km先のKOM目指して活性化する。サラウット・シリロナチャイ(タイコンチネンタルサイクリングチーム)が獲得しなおも集団前方は激しいアタックが続く。ここからダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)が抜け出し、メイン集団がこれを追いながらも活性化した状態が続く。モニエはリーダーのホセ・ビセンテとは7分17秒差でありこの逃げは容認される。
3周目にはモニエを追って数人が抜け出し4周目にはそれらがまとまり7人の追走ができる。メンバーは早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)、入部正太朗(シマノレーシング)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、エドガー・ノアレス・ニエト(セブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズ)、リカルド・ガルシア(キナンサイクリングチーム)、土井雪広(マトリックスパワータグ)、石橋学(ブリヂストンアンカー)で、のちにジョン・アベラストゥリ・イザガ(チーム右京)が単独でブリッジし逃げは8人に。
個人総合逆転からステージ狙いへ
総合2分10秒差9位の早川は順位アップを、阿部はポイント賞を、入部とアベラストゥリはステージ優勝を狙う一方、ガルシア、土井、石橋は押さえで逃げに入る。追走は8人いるが引くのは実質半分だ。レースはしばらく先頭モニエ、追走8人、メイン集団の構図で進む。タイム差はそれぞれの間で30秒から1分ほど。
途中のスプリントポイントは2回とも追走8人の中では阿部が先着してポイント賞1位を見据える。総合狙いでは、マトリックスは追走の早川とのタイム差だけを見ればいい。その観点ではチーム右京やキナン、タブリーズシャハルダリらに40〜50秒のアドバンテージがありマトリックスだけが引く必要性もない。そのためレースはステージ優勝に関心が移っていく。マトリックスはこのままフィニッシュすればいい。
95%を逃げたダミアン・モニエがステージを制する
周回を重ねてもモニエの勢いは衰えず追走8人とのタイム差は1分を超え、メイン集団が追走8人を吸収しそうな勢いに。最終周回はさすがに追走8人そしてメイン集団ともにペースを上げるがそれぞれに届かず、結局モニエが38秒差で逃げ切って優勝、2位にはアベラストゥリ、そして3位に土井が入った。メイン集団は追走集団に6秒遅れでパク・サンホン(LXサイクリングチーム)先頭にフィニッシュした。
優勝したモニエは2003年から10年間コフィディスに所属しジロ・デ・イタリアステージ優勝やフランス選手権個人追い抜き優勝など実績があり、2013年からブリヂストンアンカーに所属する34歳。独走力に定評があり、この日は全行程の95%の距離を逃げ切り8人の追走とのタイム差をむしろ離すほどの離れ業を見せた。
熊野で2度目の総合優勝のマトリックスパワータグ
マトリックスパワータグは前日までに2人を失い4人での出走だったが、土井と吉田隼人がリードしてホセ・ビセンテの総合を守り切った。特に土井の存在は大きく、2年前の総合優勝時は後半になるまで他チームの激しい攻撃に晒されたが、今回そのようなことはなくチームとして総合力が上がったことを示している。
結果
第3ステージ 100.0km
1位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)2時間27分15秒
2位 ジョン・アベラストゥリ・イザガ(チーム右京)+38秒
3位 土井雪広(マトリックスパワータグ)
4位 入部正太朗(シマノレーシング)
5位 石橋学(ブリヂストンアンカー)
6位 リカルド・ガルシア(キナンサイクリングチーム)
7位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)
8位 エドガー・ノアレス・ニエト(セブンイレブン・ロードバイク・フィリピンズ)+40秒
9位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
10位 パク・サンホン(LXサイクリングチーム)+44秒
個人総合時間賞 最終成績
1位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)7時間41分59秒
2位 オスカル・プジョル(チーム右京)+43秒
3位 マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)+46秒
4位 西薗良太(ブリヂストンアンカー)+48秒
5位 ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(タブリーズシャハルダリ)+53秒
6位 イリヤ・ダビデノク(タブリーズシャハルダリ)+56秒
7位 山本元喜(キナンサイクリングチーム)+1分02秒
8位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)+1分22秒
9位 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)+2分04秒
10位 ペーラポル・チャウチャンクワン(タイコンチネンタルサイクリングチーム)+2分15秒
個人総合ポイント賞 最終成績
1位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)44点
2位 入部正太朗(シマノレーシング)40点
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)37点
個人総合山岳賞 最終成績
1位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ・チーム)22点
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)15点
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)10点
個人総合U23賞 最終成績
1位 田窪賢次(マトリックスパワータグ)7時間46分07秒
チーム総合 最終成績
1位 キナンサイクリングチーム 23時間09分10秒
2位 タブリーズ・シャハルダリ・チーム +3分29秒
3位 マトリックスパワータグ +8分18秒
photo&text:Hideaki TAKAGI
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