2017/05/30(火) - 10:42
オスカル・プジョルの2連覇で幕を閉じた今年のツアー・オブ・ジャパン。注目に値する活躍を見せた日本人3選手、初山翔、中根英登、山本大喜にインタビューした。
20年ぶりの日本人山岳賞 初山翔(ブリヂストンアンカー)
今年のツアー・オブ・ジャパン最大のトピックは、山岳賞を獲得した初山翔の活躍だろう。南信州ステージで山岳賞をほぼ確定させた後も逃げに乗って見せ、見る者を沸かせた。最終日の東京ステージ終了後に話を聞いた。
「全日本チャンピオンとして出場すること自体にプレッシャーはありませんでした。優勝候補だったわけでもないし、昨年の全日本の方が100倍は緊張してましたね。でも山岳賞ジャージを着てからは、守らなければいけないという重圧と、守るために絶対逃げに乗らなければいけないという使命を負っていたので、スタート前はかなりナーバスな毎日でした。
山岳賞をほぼ決めた飯田(南信州ステージ)は特にきつかったです。前日の美濃はみんな集団の中で休んでいたけれど、僕は孫崎選手と2人で90km逃げた翌日でしたからね。でもリタイアしなければ大丈夫なだけのポイント差をつける事が出来たので、翌日からはだいぶリラックスする事が出来ました。総合順位が関係なくなったので富士山はゆっくり登って休ませてもらって、うまく切り替えられたのも良かったと思ってます。
伊豆で逃げに乗ったのは自分で勝ちたかったからです。それでここまで逃げにのってきたから、東京でも!と思って、半分意地みたいなものですね。毎年ツアー・オブ・ジャパンでは逃げに乗りたいと思っていてもなかなか出来なかったので、ロードレースの全ステージで逃げる事が出来たのは嬉しいです。
この後はツール・ド・熊野はスキップしてツール・ド・コリアに出場し、その後全日本選手権です。チームにとっても会社(ブリヂストン)にとっても重要なレースなので、2連覇を目指します。」
美濃ステージの後の記者会見で、一緒に逃げた孫崎選手に申し訳無いとコメントした事について改めて聞くと、「僕が山岳賞を獲る事に協力してくれたのに、終わったらすぐに集団に戻った事にちょっとうしろめたい気持ちがあったのは確かです。勝つ可能性は低かったかもしれないけれどそれに賭けて彼は攻撃してきたので、一緒に逃げた者同士敬意を表したかったのです。」と説明してくれた。
アシストに徹した中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)
マルコ・カノラがステージ3勝を上げたNIPPOヴィーニファンティーニ。そのカノラがコメントする時に必ず名前を挙げていたのが中根英登だ。5月初旬に行われたツール・ド・アゼルバイジャンで総合9位に入る活躍を見せ、その好調を維持してツアー・オブ・ジャパンに臨んだ。インタビューを行ったのは伊豆ステージ終了後。
「カノラが3勝してくれてチームの雰囲気を良くしてくれました。彼が強いのもあるけれど、チーム全員がしっかり仕事をしたから揚げられた3勝だと思います。伊藤(雅和)さんの落車(右大腿骨骨折)は残念でしたけれど、彼の仕事もあって達成できた事だと思います。今日の伊豆ステージは4勝目を狙いにいきましたが、難しい展開になってしまいました。僕自身も不完全燃焼というか、もっとうまく助けられたのではないかと思っています。
自分では南信州ステージは特に良い動きが出来たと思います。序盤のアタック合戦だったり、位置取りだったり、(アラン)マランゴーニや伊藤さんが良い仕事をしてくれたからこそ、自分が最後にしっかり仕事が出来たと思うので、6人がしっかり機能していた結果だと思います。
アゼルバイジャンでは自分もチーム全体も良い連携が出来ていたので、ツアー・オブ・ジャパンでも良い結果が出せると感じていました。今回は個人的に総合10位以内を目指していたのですが、その点はダメでした。僕の中ではツアー・オブ・ジャパンは特殊なレースで、他のレースには無いキツさがありますね。富士山ステージが鬼門になるので、そこで良い走りが出来なかったのは今後の課題です。
NIPPOには以前にも所属していましたが、その時の自分より成長して戻って来られたと感じています。今は周りの選手は強い人ばかりなので、ひっぱり上げてもらって歯を食いしばってついて行ってる感じですが、それでさらにレベルアップしていければと思っています。」
話を伺っている間、近くにいたマランゴーニが日本語でジョークを入れて笑わせようとしているあたりに、チームの良い雰囲気を感じることができた。
TOJ初出場の山本大喜(日本ナショナルチーム・鹿屋体育大学)
最後は日本ナショナルチームから出場した鹿屋体育大学の山本大喜。ツアー・オブ・ジャパン初出場ながら、個人総合でトップから7分58秒遅れの18位で完走。富士山ステージ終了後のインタビューで語った自身の目標を達成しており、現役大学生としては大健闘と言って良いだろう。
「ツアー・オブ・ジャパンは、自分の脚質的には合ってる気がします。3月にナショナルチームで欧州遠征に行った時のレースは、スタートからアタック合戦が長い時間続くのできつかったです。ツアー・オブ・ジャパンは、逃げが出来て、集団コントロールが入って、終盤にペースアップして人数が減っていくというパターンが多いので、自分向きなレースだと感じてます。
ずっと出たいレースでしたが、タイムトライアルの大学選手権と重なってしまうので機会がありませんでした。でも今年は出られると決まった時から楽しみにしていて、大学4年間で一番というくらいに仕上げてきました。総合20位以内を目標にしていますが、ここまでは合格点が出せるかなと思います。南信州ステージは20人ほどの先頭集団に残れましたが、自分の足を活かせたと思います。でも今日の富士山は、もうちょと上の順位でゴールしたかったです(23位:45分50秒)。同じU23の雨澤選手(宇都宮ブリッツェン)が自分よりさらに上でゴールしているので(17位:44分11秒)。明日の伊豆がきつそうですが、前の集団に残って順位を落とさずに最終日の東京につなげたいです。
兄(山本大喜:キナンサイクリングチーム)の事はやはり意識しますね。京都で一緒に逃げたのはたまたまでしたが、兄が行ったのが見えたので反応してしまいました。カッとするとすぐ反応するタイプなので(笑)。逃げてる間は「ここ危ないからな」って声かけてくれる事もありましたし、レース後は「今日何位やったでー」とか、やり取りしてます。
今は大学の4年で、卒業後の事も色々考えています。やはり自転車始めた時からの目標でもあるヨーロッパで走りたいので、海外で活動するチームに入りたいですね。そのためにこういうUCIレースに出る事はプロと直接比較になるしアピールにもなるので、意識しています。早生まれなのであと1年U23で走れるのですが、まずは今年の全日本選手権で優勝する事が目標です。」
text&photo:Satoru.Kato
20年ぶりの日本人山岳賞 初山翔(ブリヂストンアンカー)
今年のツアー・オブ・ジャパン最大のトピックは、山岳賞を獲得した初山翔の活躍だろう。南信州ステージで山岳賞をほぼ確定させた後も逃げに乗って見せ、見る者を沸かせた。最終日の東京ステージ終了後に話を聞いた。
「全日本チャンピオンとして出場すること自体にプレッシャーはありませんでした。優勝候補だったわけでもないし、昨年の全日本の方が100倍は緊張してましたね。でも山岳賞ジャージを着てからは、守らなければいけないという重圧と、守るために絶対逃げに乗らなければいけないという使命を負っていたので、スタート前はかなりナーバスな毎日でした。
山岳賞をほぼ決めた飯田(南信州ステージ)は特にきつかったです。前日の美濃はみんな集団の中で休んでいたけれど、僕は孫崎選手と2人で90km逃げた翌日でしたからね。でもリタイアしなければ大丈夫なだけのポイント差をつける事が出来たので、翌日からはだいぶリラックスする事が出来ました。総合順位が関係なくなったので富士山はゆっくり登って休ませてもらって、うまく切り替えられたのも良かったと思ってます。
伊豆で逃げに乗ったのは自分で勝ちたかったからです。それでここまで逃げにのってきたから、東京でも!と思って、半分意地みたいなものですね。毎年ツアー・オブ・ジャパンでは逃げに乗りたいと思っていてもなかなか出来なかったので、ロードレースの全ステージで逃げる事が出来たのは嬉しいです。
この後はツール・ド・熊野はスキップしてツール・ド・コリアに出場し、その後全日本選手権です。チームにとっても会社(ブリヂストン)にとっても重要なレースなので、2連覇を目指します。」
美濃ステージの後の記者会見で、一緒に逃げた孫崎選手に申し訳無いとコメントした事について改めて聞くと、「僕が山岳賞を獲る事に協力してくれたのに、終わったらすぐに集団に戻った事にちょっとうしろめたい気持ちがあったのは確かです。勝つ可能性は低かったかもしれないけれどそれに賭けて彼は攻撃してきたので、一緒に逃げた者同士敬意を表したかったのです。」と説明してくれた。
アシストに徹した中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)
マルコ・カノラがステージ3勝を上げたNIPPOヴィーニファンティーニ。そのカノラがコメントする時に必ず名前を挙げていたのが中根英登だ。5月初旬に行われたツール・ド・アゼルバイジャンで総合9位に入る活躍を見せ、その好調を維持してツアー・オブ・ジャパンに臨んだ。インタビューを行ったのは伊豆ステージ終了後。
「カノラが3勝してくれてチームの雰囲気を良くしてくれました。彼が強いのもあるけれど、チーム全員がしっかり仕事をしたから揚げられた3勝だと思います。伊藤(雅和)さんの落車(右大腿骨骨折)は残念でしたけれど、彼の仕事もあって達成できた事だと思います。今日の伊豆ステージは4勝目を狙いにいきましたが、難しい展開になってしまいました。僕自身も不完全燃焼というか、もっとうまく助けられたのではないかと思っています。
自分では南信州ステージは特に良い動きが出来たと思います。序盤のアタック合戦だったり、位置取りだったり、(アラン)マランゴーニや伊藤さんが良い仕事をしてくれたからこそ、自分が最後にしっかり仕事が出来たと思うので、6人がしっかり機能していた結果だと思います。
アゼルバイジャンでは自分もチーム全体も良い連携が出来ていたので、ツアー・オブ・ジャパンでも良い結果が出せると感じていました。今回は個人的に総合10位以内を目指していたのですが、その点はダメでした。僕の中ではツアー・オブ・ジャパンは特殊なレースで、他のレースには無いキツさがありますね。富士山ステージが鬼門になるので、そこで良い走りが出来なかったのは今後の課題です。
NIPPOには以前にも所属していましたが、その時の自分より成長して戻って来られたと感じています。今は周りの選手は強い人ばかりなので、ひっぱり上げてもらって歯を食いしばってついて行ってる感じですが、それでさらにレベルアップしていければと思っています。」
話を伺っている間、近くにいたマランゴーニが日本語でジョークを入れて笑わせようとしているあたりに、チームの良い雰囲気を感じることができた。
TOJ初出場の山本大喜(日本ナショナルチーム・鹿屋体育大学)
最後は日本ナショナルチームから出場した鹿屋体育大学の山本大喜。ツアー・オブ・ジャパン初出場ながら、個人総合でトップから7分58秒遅れの18位で完走。富士山ステージ終了後のインタビューで語った自身の目標を達成しており、現役大学生としては大健闘と言って良いだろう。
「ツアー・オブ・ジャパンは、自分の脚質的には合ってる気がします。3月にナショナルチームで欧州遠征に行った時のレースは、スタートからアタック合戦が長い時間続くのできつかったです。ツアー・オブ・ジャパンは、逃げが出来て、集団コントロールが入って、終盤にペースアップして人数が減っていくというパターンが多いので、自分向きなレースだと感じてます。
ずっと出たいレースでしたが、タイムトライアルの大学選手権と重なってしまうので機会がありませんでした。でも今年は出られると決まった時から楽しみにしていて、大学4年間で一番というくらいに仕上げてきました。総合20位以内を目標にしていますが、ここまでは合格点が出せるかなと思います。南信州ステージは20人ほどの先頭集団に残れましたが、自分の足を活かせたと思います。でも今日の富士山は、もうちょと上の順位でゴールしたかったです(23位:45分50秒)。同じU23の雨澤選手(宇都宮ブリッツェン)が自分よりさらに上でゴールしているので(17位:44分11秒)。明日の伊豆がきつそうですが、前の集団に残って順位を落とさずに最終日の東京につなげたいです。
兄(山本大喜:キナンサイクリングチーム)の事はやはり意識しますね。京都で一緒に逃げたのはたまたまでしたが、兄が行ったのが見えたので反応してしまいました。カッとするとすぐ反応するタイプなので(笑)。逃げてる間は「ここ危ないからな」って声かけてくれる事もありましたし、レース後は「今日何位やったでー」とか、やり取りしてます。
今は大学の4年で、卒業後の事も色々考えています。やはり自転車始めた時からの目標でもあるヨーロッパで走りたいので、海外で活動するチームに入りたいですね。そのためにこういうUCIレースに出る事はプロと直接比較になるしアピールにもなるので、意識しています。早生まれなのであと1年U23で走れるのですが、まずは今年の全日本選手権で優勝する事が目標です。」
text&photo:Satoru.Kato