2017/05/28(日) - 20:29
ツアー・オブ・ジャパン最終日の東京ステージが行われ、レース中盤に形成された逃げ集団から飛び出したヨン・イラストルサ(バーレーン・メリダ)が逃げきってステージ優勝。オスカル・プジョル(チーム右京)が個人総合優勝連覇を決めた。
ツアーオブジャパン最後の第8ステージは東京。皇居や東京駅もほど近い日比谷シティ前をパレードスタートし、大井埠頭の1周7kmの周回コースを14周する計112.7kmで千秋楽を迎える。
昨日に引き続き朝から良く晴れた1日。日曜日という事もあり、11万2千人が最終ステージを観戦した。
リアルスタートが切られると、大井埠頭に入る前からアタック合戦が始まる。各チームのアタッカーが何度も飛び出すが、集団がすぐに追いかける。アタックと吸収の応酬はレース半ばまで続き、7周目にようやく13人の逃げが容認される。その後2人がメイン集団に戻り、11人が逃げ続ける。
メンバーは、ヨン・イラストルサ(バーレーン・メリダ)、中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)、ジョーン・レイクアイソウェイスポーツ・スイスウェルネス)、ミルサマ・ポルセイエディコラホール(タブリーズ・シャハルダリ)、アレクサンダー・クスタース(チーム・ダウナーD&DQアーコン)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、初山翔、大久保陣(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、ホセ・ビセンテ、田窪賢次(マトリックスパワータグ)、入部正太朗(シマノレーシング)。
逃げを見送った後のメイン集団はチーム右京がコントロールを開始。逃げ集団に、2分35秒遅れで個人総合4位のビセンテ、3分29秒遅れで9位のポルセイエディコラホールが含まれていた事から、1分30秒前後の差を維持するようコントロールしていく。
残り3周を切ると、ユナイテッドヘルスケアや愛三工業レーシングチームなどがメイン集団の牽引に加担し始め、逃げ終段との差が1分を切ったところで最終周回に入る。しかし逃げ集団のペースが落ちず、その後数十秒のタイム差が縮まらなくなる。
残り3㎞を前に、逃げ集団からイラストルサがアタック。これに阿部が飛びついて2人が先行する。後方からはメイン集団が迫る中、2人が先行して残り500mへ。残り250mを切ったところで先頭を引き続ける阿部の背後からイラストルサが前に出る。ハンドルを叩いてくやしがる阿部を後ろに、イラストルサが逃げ切りでステージ優勝を決めた。
「チームとしてもステージ優勝を目標にしていたので、最後の東京ステージで達成出来て本当に嬉しい。」と話すイラストルサ。「今日の序盤はクレイジーなレースだった。僕じゃなくてもチームの誰かが逃げに乗れたと思うけれど、タイミング的に僕が乗る事になった。最後の局面で飛び出した後、阿部選手が追いついてきた。地元日本でのレースなので彼は最後までプッシュしてくるだろうと思ったけれど、僕も勝ちたいという気持ちを強く持って挑んだよ。」と、この日のレースを振り返った。
一方、「2位という結果が一番悔しい結果。勝つチャンスが目の前にあったのでなおさらですね。」と言う阿部。「今日はチームとして積極的に行くというよりは、勝ちにつながりそうな逃げを選んで乗っていくという作戦でした。今回はたまたま僕が逃げに乗る事が出来ました。最後にイラストルサ選手と2人になったら前に出てこなくなったので自分が引くしかなくなり、最後に差されてしまいました。」と、残念がる。それでも「引かなければ2位にもなれなかったかもしれない」と、結果を受け入れた。
リーダージャージのプジョルはメイン集団後方でゴール。個人総合2連覇を決めた。
記者会見でプジョルは、「私は(I)」と言いかけてすぐ「私達は(We)」と言い直しながら、「今日はみんながアタックしたがっていてハードなレースになった。昨日の伊豆よりも難しいレースだったけれど、チームメイトが逃げとのタイム差を管理してくれていたので、信頼してリラックスしてレースをする事ができた。リーダージャージを守って2年連続で総合優勝する事が出来てハッピーだ。日本のレースで日本のチーム右京が勝った事はとても重要な事だと思う。チームメイトとスタッフに心から感謝したい。」と、連覇の感想を語った。
20回記念のツアー・オブ・ジャパンが終わった。結果だけを見れば昨年と変わらない感じもするが、内容は大きく違う。昨年の伊豆ステージでプジョルはほぼ1人でリーダージャージを守ったが、今年はチームの総合力を上げてきた事で危なげなく総合優勝を勝ち取った。それはチーム総合優勝という結果にも表れている。表彰式で片山右京監督は「プロコンチネンタルチームに昇格し、ワールドチームを目指す事に変わりありません。」と、宣言した。それが実現する日は近いているように感じた。
一方で、マルコ・カノラでステージ3勝を挙げたNIPPOヴィーニファンティーニのチーム総合力が光った。そのメンバーの半分を日本人が構成していた事は明るい材料と言えるだろう。南信州ステージでの伊藤雅和の負傷リタイアは残念だったが、早い復帰を願いたい。
日本人選手では、西薗良太(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)の総合12位が最高位だが、初山の山岳賞は最大のトピックだろう。ポイント賞は2012年に西谷泰治(愛三工業レーシング)が獲得しているが、山岳賞は1997年の第2回大会で住田修(シマノレーシング)が獲得して以来、20年ぶりに日本人が獲得した。
初山は、「個人総合優勝を狙うというのは簡単だが、現実には難しい。実現可能な事をやった結果だと思う。」と、山岳賞獲得の感想を語った。
昨年から8日間連続のステージとなったが、開催地の盛り上げ方や観戦スタイルなど、各ステージの「色」がはっきりしてきたように感じられる。日本最大のステージレースが、年に一度のお祭りのように各地に定着して行く事を願ってやまない。
2017ツアー・オブ・ジャパン第8ステージ東京 結果
1位 ヨン・イラストルサ(バーレーン・メリダ) 2時間14分47秒
2位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +0秒
3位 大久保陣(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +5秒
4位 入部正太朗(シマノレーシング)
5位 アレクサンダー・クスタース(チーム・ダウナーD&DQアーコン)
6位 イヴァン・ガルシア(バーレーン・メリダ)
7位 シモン・サジノック(アタッキ・チームグスト)
8位 中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)
9位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)
10位 ショーン・レイク(アイソウェイスポーツ・スイスウェルネス)
個人総合順位
1位 オスカル・プジョル(チーム右京) 19時間0分52秒
2位 ネイサン・アール(チーム右京) +1分40秒
3位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ) +1分42秒
4位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +2分22秒
5位 ラックラン・ノリス(ユナイテッドヘルスケア) +2分46秒
6位 ティモシー・ロー(アイソウェイスポーツ・スイスウェルネス) +2分56秒
7位 ドメン・ノヴァク(バーレーン・メリダ) +3分7秒
8位 マルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ) +3分12秒
9位 ミルサマ・ポルセイエディコラホール(タブリーズ・シャハルダリ) +3分17秒
10位 イヴァン・サンタロミータ(NIPPOヴィーニファンティーニ) +3分21秒
個人総合新人賞
1位 ドメン・ノヴァク(バーレーン・メリダ) 19間3分59秒
ポイント賞
1位 マルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ) 119p
2位 イヴァン・ガルシア(バーレーン・メリダ) 73p
3位 ジョン・アベラストゥリ(チーム右京) 69p
山岳賞
1位 初山翔(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) 41p
2位 オスカル・プジョル(チーム右京) 15p
3位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ) 12p
チーム総合
1位 チーム右京 57時間7分27秒
2位 アイソウェイスポーツ・スイスウェルネス +3分34秒
3位 タブリーズ・シャハルダリ +6分14秒
text:Satoru.Kato
photo:Satoru.Kato,Hideaki.Takagi
ツアーオブジャパン最後の第8ステージは東京。皇居や東京駅もほど近い日比谷シティ前をパレードスタートし、大井埠頭の1周7kmの周回コースを14周する計112.7kmで千秋楽を迎える。
昨日に引き続き朝から良く晴れた1日。日曜日という事もあり、11万2千人が最終ステージを観戦した。
リアルスタートが切られると、大井埠頭に入る前からアタック合戦が始まる。各チームのアタッカーが何度も飛び出すが、集団がすぐに追いかける。アタックと吸収の応酬はレース半ばまで続き、7周目にようやく13人の逃げが容認される。その後2人がメイン集団に戻り、11人が逃げ続ける。
メンバーは、ヨン・イラストルサ(バーレーン・メリダ)、中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)、ジョーン・レイクアイソウェイスポーツ・スイスウェルネス)、ミルサマ・ポルセイエディコラホール(タブリーズ・シャハルダリ)、アレクサンダー・クスタース(チーム・ダウナーD&DQアーコン)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、初山翔、大久保陣(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、ホセ・ビセンテ、田窪賢次(マトリックスパワータグ)、入部正太朗(シマノレーシング)。
逃げを見送った後のメイン集団はチーム右京がコントロールを開始。逃げ集団に、2分35秒遅れで個人総合4位のビセンテ、3分29秒遅れで9位のポルセイエディコラホールが含まれていた事から、1分30秒前後の差を維持するようコントロールしていく。
残り3周を切ると、ユナイテッドヘルスケアや愛三工業レーシングチームなどがメイン集団の牽引に加担し始め、逃げ終段との差が1分を切ったところで最終周回に入る。しかし逃げ集団のペースが落ちず、その後数十秒のタイム差が縮まらなくなる。
残り3㎞を前に、逃げ集団からイラストルサがアタック。これに阿部が飛びついて2人が先行する。後方からはメイン集団が迫る中、2人が先行して残り500mへ。残り250mを切ったところで先頭を引き続ける阿部の背後からイラストルサが前に出る。ハンドルを叩いてくやしがる阿部を後ろに、イラストルサが逃げ切りでステージ優勝を決めた。
「チームとしてもステージ優勝を目標にしていたので、最後の東京ステージで達成出来て本当に嬉しい。」と話すイラストルサ。「今日の序盤はクレイジーなレースだった。僕じゃなくてもチームの誰かが逃げに乗れたと思うけれど、タイミング的に僕が乗る事になった。最後の局面で飛び出した後、阿部選手が追いついてきた。地元日本でのレースなので彼は最後までプッシュしてくるだろうと思ったけれど、僕も勝ちたいという気持ちを強く持って挑んだよ。」と、この日のレースを振り返った。
一方、「2位という結果が一番悔しい結果。勝つチャンスが目の前にあったのでなおさらですね。」と言う阿部。「今日はチームとして積極的に行くというよりは、勝ちにつながりそうな逃げを選んで乗っていくという作戦でした。今回はたまたま僕が逃げに乗る事が出来ました。最後にイラストルサ選手と2人になったら前に出てこなくなったので自分が引くしかなくなり、最後に差されてしまいました。」と、残念がる。それでも「引かなければ2位にもなれなかったかもしれない」と、結果を受け入れた。
リーダージャージのプジョルはメイン集団後方でゴール。個人総合2連覇を決めた。
記者会見でプジョルは、「私は(I)」と言いかけてすぐ「私達は(We)」と言い直しながら、「今日はみんながアタックしたがっていてハードなレースになった。昨日の伊豆よりも難しいレースだったけれど、チームメイトが逃げとのタイム差を管理してくれていたので、信頼してリラックスしてレースをする事ができた。リーダージャージを守って2年連続で総合優勝する事が出来てハッピーだ。日本のレースで日本のチーム右京が勝った事はとても重要な事だと思う。チームメイトとスタッフに心から感謝したい。」と、連覇の感想を語った。
20回記念のツアー・オブ・ジャパンが終わった。結果だけを見れば昨年と変わらない感じもするが、内容は大きく違う。昨年の伊豆ステージでプジョルはほぼ1人でリーダージャージを守ったが、今年はチームの総合力を上げてきた事で危なげなく総合優勝を勝ち取った。それはチーム総合優勝という結果にも表れている。表彰式で片山右京監督は「プロコンチネンタルチームに昇格し、ワールドチームを目指す事に変わりありません。」と、宣言した。それが実現する日は近いているように感じた。
一方で、マルコ・カノラでステージ3勝を挙げたNIPPOヴィーニファンティーニのチーム総合力が光った。そのメンバーの半分を日本人が構成していた事は明るい材料と言えるだろう。南信州ステージでの伊藤雅和の負傷リタイアは残念だったが、早い復帰を願いたい。
日本人選手では、西薗良太(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)の総合12位が最高位だが、初山の山岳賞は最大のトピックだろう。ポイント賞は2012年に西谷泰治(愛三工業レーシング)が獲得しているが、山岳賞は1997年の第2回大会で住田修(シマノレーシング)が獲得して以来、20年ぶりに日本人が獲得した。
初山は、「個人総合優勝を狙うというのは簡単だが、現実には難しい。実現可能な事をやった結果だと思う。」と、山岳賞獲得の感想を語った。
昨年から8日間連続のステージとなったが、開催地の盛り上げ方や観戦スタイルなど、各ステージの「色」がはっきりしてきたように感じられる。日本最大のステージレースが、年に一度のお祭りのように各地に定着して行く事を願ってやまない。
2017ツアー・オブ・ジャパン第8ステージ東京 結果
1位 ヨン・イラストルサ(バーレーン・メリダ) 2時間14分47秒
2位 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +0秒
3位 大久保陣(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +5秒
4位 入部正太朗(シマノレーシング)
5位 アレクサンダー・クスタース(チーム・ダウナーD&DQアーコン)
6位 イヴァン・ガルシア(バーレーン・メリダ)
7位 シモン・サジノック(アタッキ・チームグスト)
8位 中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ)
9位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)
10位 ショーン・レイク(アイソウェイスポーツ・スイスウェルネス)
個人総合順位
1位 オスカル・プジョル(チーム右京) 19時間0分52秒
2位 ネイサン・アール(チーム右京) +1分40秒
3位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ) +1分42秒
4位 ホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ) +2分22秒
5位 ラックラン・ノリス(ユナイテッドヘルスケア) +2分46秒
6位 ティモシー・ロー(アイソウェイスポーツ・スイスウェルネス) +2分56秒
7位 ドメン・ノヴァク(バーレーン・メリダ) +3分7秒
8位 マルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ) +3分12秒
9位 ミルサマ・ポルセイエディコラホール(タブリーズ・シャハルダリ) +3分17秒
10位 イヴァン・サンタロミータ(NIPPOヴィーニファンティーニ) +3分21秒
個人総合新人賞
1位 ドメン・ノヴァク(バーレーン・メリダ) 19間3分59秒
ポイント賞
1位 マルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ) 119p
2位 イヴァン・ガルシア(バーレーン・メリダ) 73p
3位 ジョン・アベラストゥリ(チーム右京) 69p
山岳賞
1位 初山翔(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) 41p
2位 オスカル・プジョル(チーム右京) 15p
3位 ハミッド・ポルハーシェミー(タブリーズ・シャハルダリ) 12p
チーム総合
1位 チーム右京 57時間7分27秒
2位 アイソウェイスポーツ・スイスウェルネス +3分34秒
3位 タブリーズ・シャハルダリ +6分14秒
text:Satoru.Kato
photo:Satoru.Kato,Hideaki.Takagi
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