ジロ・デ・イタリアにはマリアローザの他に3賞ジャージがある。赤からシクラメン色に戻されたポイント賞ジャージのマリアチクラミーノや山岳賞ジャージのマリアアッズーラ、ヤングライダー賞ジャージのマリアビアンカの仕組みと有力候補をチェックしておこう。


マリアチクラミーノ ポイント賞

2009年以来の登場となるマリアチクラミーノ2009年以来の登場となるマリアチクラミーノ photo:Kei Tsujiステージレースに花を添えるのがビッグスプリンターたちによる華々しい集団スプリント。最強スプリンターの証であるポイント賞ジャージは、スポンサー変更に伴って真っ赤なマリアロッサからシクラメン色のマリアチクラミーノに戻された。今年からセガフレード社がジャージスポンサーについている。

長年ジロではステージの種類に関わらず一律のポイントが与えられてきたため、総合狙いの選手たちがポイント賞のトップに輝くパターンが多く発生している。2009年から2012年までのポイント賞受賞者はいずれも総合上位に絡むようなオールラウンダー&クライマーだ。しかし2014年にポイントシステムに変更が加えられ、平坦ステージでより多くのポイントを稼ぐことができる配分になり、ずばりスプリンター向きの賞になったと言っていい。例えば平坦ステージで優勝すれば50ポイント獲得だが、険しい山岳ステージやタイムトライアルで勝利しても15ポイント(平坦ステージの中間スプリント以下)しか獲得できない。ポイント配分は以下の通り。


フィニッシュ ポイント配分
A&Bカテゴリー(平坦:第1,2,3,5,6,7,12,13ステージ):
50pts, 35pts, 25pts, 18pts, 14pts, 12pts, 10pts, 8pts, 7pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt
Cカテゴリー(中級山岳:第8,14,15,17ステージ):
25pts, 18pts, 12pts, 8pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt
D&Eカテゴリー(超級山岳/TT:第4,9,10,11,16,18,19,20,21ステージ):
15pts, 12pts, 9pts, 7pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt

スプリントポイント ポイント配分
A&Bカテゴリー(平坦:第1,2,3,5,6,7,12,13ステージ):
20pts, 12pts, 8pts, 6pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt
Cカテゴリー(中級山岳:第8,14,15,17ステージ):
10pts, 6pts, 3pts, 2pts, 1pt
D&Eカテゴリー(超級山岳/TT:第4,9,10,11,16,18,19,20,21ステージ):
8pts, 4pts, 1pt


頭一つ抜け出したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が勝利頭一つ抜け出したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が勝利 photo: TDWsportステージ優勝者の賞金は11,010ユーロ(約1,348,000円)で、マリアチクラミーノ着用は1日につき500ユーロ(約61,200円)。最終的なポイント賞獲得者には賞金10,000ユーロ(約1,224,000円)が与えられる。

スプリンター向きに設定された平坦ステージは合計6ステージ。グランツールでステージ通算21勝を飾っているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が実績の上では頭ひとつ抜け出ている。グライペルは2016年にステージ3勝を飾っており、これまでステージ通算6勝。今シーズンはパリ〜ニースのステージ優勝を含めて3勝を飾っている。

グライペルの脅威となるのが、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)とカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)という22歳コンビだ。グランツール初出場のガビリアは経験豊かなマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)らのリードアウトを受ける。ダウンアンダーやアブダビでビッグスプリンターを打ち負かした身長165cmのユアンは2年連続のジロ出場。2016年は第12ステージの2位が最高だった。

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo: TDWSportカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji

もちろん地元イタリア勢も強力だ。ステージ通算2勝を飾っているイタリアチャンピオンのジャコモ・ニッツォーロ(トレック・セガフレード)やサーシャ・モードロ(UAEチームエミレーツ)を筆頭に、ヤコブ・マレツコ(ウィリエール・トリエスティーナ)、ニコラ・ルッフォニ(バルディアーニCSF)、マッテーオ・ペルッキ(ボーラ・ハンスグローエ)、クリスティアン・ズバラーリ(ディメンションデータ)らがスプリントに絡んでくるだろう。

ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード) (c)www.abudhabitour.comサーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:www.tourofcroatia.com

歴代ポイント賞受賞者
2016年 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
2015年 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
2014年 ナセル・ブアニ(フランス)
2013年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2012年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)



マリアアッズーラ 山岳賞

山岳ポイントによって争われるマリアアッズーラ山岳ポイントによって争われるマリアアッズーラ photo:Kei Tsujiグランツールの中で最も山岳の難易度が高いと言われるジロ・デ・イタリア。それだけにジロの山岳賞ジャージには大きな価値がある。

かつては緑色のマリアヴェルデが採用されていたが、2012年から青色に変更された。「クライミング」「俊敏さ」「スタミナ」を象徴するジャージの名称はマリアアッズーラ(青色ジャージ)。引き続きバンカ・メディオラヌムがスポンサーにつく。

登場するカテゴリー山岳は、チーマコッピ、1級山岳、2級山岳、3級山岳、4級山岳の5種類。当然のことながら難易度の高いカテゴリー山岳に高ポイントが与えられており、仮に連日逃げて4級山岳を11回先頭通過しても、1回の1級山岳通過でひっくり返る計算だ。なお、ツール・ド・フランスとは異なり、山頂フィニッシュのポイント2倍システムは無い。

山岳賞 ポイント配分
チーマコッピ:45pts, 30pts, 20pts, 14pts, 10pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
1級山岳:35pts, 18pts, 12pts, 9pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
2級山岳:15pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
3級山岳:7pts, 4pts, 2pts, 1pt
4級山岳:3pts, 2pts, 1pt


マリアアッズーラ着用は1日につき500ユーロ(約61,200円)。最終的なポイント賞の賞金5,000ユーロ(約612,000円)はマリアチクラミーノやマリアビアンカの半額だ。

ピュアクライマーの多くは山岳アシストとして総合狙いのチームリーダーに仕えるため、自由に動けないパターンが多い。例えば2015年の受賞者ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)はニーバリのアシストに100%注力することになるだろう。逆に、総合争いから脱落したクライマーたちが山岳賞に目標を切り替えることもあり得る。

2013年に山岳賞を獲得したステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)や、2016年ジロの山岳TTで勝利したアレクサンドル・フォリフォロフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)はきっと最初から山岳賞狙いで動いてくる。とにかく山岳賞を総合上位陣に奪われたくないクライマーたちは1日で100ポイント以上獲得可能な第16ステージや第18ステージでの逃げが必須だ。

ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF) photo:Kei Tsujiアレクサンドル・フォリフォロフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)アレクサンドル・フォリフォロフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) photo:Kei Tsuji

歴代山岳賞受賞者
2016年 ミケル・ニエベ(スペイン)
2015年 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
2014年 ジュリアン・アレドンド(コロンビア)
2013年 ステファノ・ピラッツィ(イタリア)
2012年 マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア)
2011年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)



マリアビアンカ ヤングライダー賞

若手を対象にしたマリアビアンカ若手を対象にしたマリアビアンカ photo:Kei Tsuji若手選手を対象としたヤングライダー賞。トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。長らくブルーの複合賞ジャージにその座を奪われていたが、9年前に復活した。対象となるのは誕生日が1992年1月1日以降の選手。ディスカウント系スーパーマーケットのユーロスピンがスポンサーを務める。

マリアビアンカ着用は1日につき500ユーロ(約61,200円)で、最終的なヤングライダー賞獲得者には賞金10,000ユーロ(約1,224,000円)が与えられる。

山岳賞と同様に、多くの場合、若手はアシストとして力を尽くさなければならず、本人の希望通りマリアビアンカに全力を注ぐことができる選手は少ない。しかしチームリーダーがヤングライダー賞の対象選手であれば話は別。1992年8月7日生まれのアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)がマリアビアンカ候補の筆頭だ。序盤ステージはイェーツのチームメイトのユアンやガビリアといったスプリンターたちがマリアビアンカを着ることになるだろう。

2016年にマリアビアンカを獲得した1992年9月22日生まれのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がイェーツの最大のライバルになる。平均年齢の低いキャノンデール・ドラパックには、2015年にステージ優勝を飾っている1992年10月25日生まれのダヴィデ・フォルモロ(イタリア)や、2014年ツアー・オブ・ジャパンで山岳賞とヤングライダー賞を獲得した1994年7月9日生まれのヒュー・カーシー(イギリス)がいる。

出場メンバーの中で最も若いのはヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)で、20歳と174日でジロデビューを迎える。年齢に関係なくジロ初出場の選手は52名。そのうち21名がグランツール初出場だ。

アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) photo:TDWsport

歴代ヤングライダー賞受賞者
2016年 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)
2012年 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
2011年 ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
2010年 リッチー・ポート(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ未設定



その他の特別賞

ステージ成績、総合成績、ポイント賞、山岳賞、ヤングライダー賞の他にも、ジロには中間スプリント賞(ステージ&総合)、10名以下のグループで逃げた距離で争われる逃げ賞(ステージ&総合)、ステージ成績と中間スプリントと山岳ポイントの合計で争われる敢闘賞(ステージ&総合)、時間制のチーム総合成績"ウィニングチーム"、ポイント制のチーム総合成績”スーパーチーム”、警告や罰金など処分の少ないチームを対象にしたフェアプレー賞が設定されている。既報の通りベストダウンヒラー賞は取り下げられた。

text:Kei Tsuji in Alghero, Italy

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