IRCのMTBクロスカントリータイヤ往年の名作「SERAC XC」が復刻リニューアル。チューブレスレディ化と、27.5インチと29インチに対応して登場している。一世を風靡したと言っても過言ではない名タイヤをインプレッションした。



IRC SERAC XC TUBELESS READYIRC SERAC XC TUBELESS READY photo:Makoto.AYANO
今回登場したMTB用チューブレスレディタイヤ「SERAC XC(シラク)」は、過去マウンテンバイククロスカントリーレース現場で絶大な信頼性を誇った同名のタイヤの復刻盤とも言って良いモデル。昨今のMTB情勢に合わせるべく、27.5インチと29インチ化、そしてチューブレスレディに対応しリニューアルを果たした。

グリップ性能を重視するブロックパターンは高いノブが特長的で、連続したセンターノブが舗装路やハードパック上でも軽快かつスムーズな走行を実現させつつ、サイド部分に鋭角に張り出したエンドブロックがコーナリング時に路面に食いつき、優れたコントロール性を発揮する。高速レースでアドバンテージを生み出す設計だ。

ケーシング数は60TPIであり、多少ラフに扱ってもサイドカットなどのダメージを受けづらい耐久性を確保した。27.5インチモデルで690g、29インチモデルでも720gと十分軽量に仕上がっている。

タイヤサイドには回転方向の指示が記載されているタイヤサイドには回転方向の指示が記載されている 連続したセンターノブにより優れた転がり性能を発揮連続したセンターノブにより優れた転がり性能を発揮

鋭角に張り出したエンドブロックがコーナリング時に路面に食いつきグリップを確保鋭角に張り出したエンドブロックがコーナリング時に路面に食いつきグリップを確保 チューブレスレディタイヤのため装着時のシーラントの注入は必須だチューブレスレディタイヤのため装着時のシーラントの注入は必須だ


もちろんチューブレスレディに対応したことで、チューブとタイヤとの摩擦によるエネルギーの浪費を無くし、転がり抵抗を低減させている。軽快な乗り心地を実現するとともに、耐パンク性能も向上していることから低い空気圧の設定も可能となり、グリップ性能と振動吸収性能を向上させている。レースユースであればぜひともチューブレス化させて臨んでほしい。

価格は27.5インチモデル、29インチモデル双方とも5,500円(税抜)と買い求めやすい設定であることも嬉しい。なおチューブレスレディとなるため、装着には必ずチューブレスレディ用シーラントの併用が必要だ。ではインプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「際立つトータルバランス。これ1本あればレースで安心」鈴木祐一(RiseRide)

当時レーサー間ではSERAC XCの信頼性と言ったら絶大で、IRCのサポートライダーのみならず、サポート外の選手や一般のサラリーマンライダーまでみんな自費で購入し、MTBクロスカントリーレースのスタートラインに並ぶバイクのほとんどがSERAC XCを履いている時代がありました。

「際立つトータルバランス。これ1本あればレースで安心」鈴木祐一(RiseRide)「際立つトータルバランス。これ1本あればレースで安心」鈴木祐一(RiseRide)
今回新しくチューブレスレディ化したSERAC XCに乗ってみて、その良さを再認識できた部分があるのですが、その最たる部分がバランスの良さ。日本のクロスカントリーレースのコースには林道区間があったり、セミウェットの部分があったり、木の根っこや滑りやすい石があったりと変化に富んでいることが沢山あります。そのような様々なシチュエ―ションで求められるグリップ力、ブレーキング力、走りの軽さというタイヤに必要な要素全体を高いレベルでまとめていることが特徴だと感じます。

「タイヤに必要なグリップ力、ブレーキング力、走りの軽さなど要素全体のレベルが高い」「タイヤに必要なグリップ力、ブレーキング力、走りの軽さなど要素全体のレベルが高い」 今回はドライコンディションでのテストでした。一見するとノブが高くセミウェットくらいの路面状況に適しているのかな?と思うのですが、コンパウンドが柔らかいため、今回のような完全ドライな状態でもしっかりグリップしてくれますし、もちろん見た目通りにウェットなコンディションでもノブが路面に食い込み高いグリップ力を発揮してくれるはず。

もちろん更に軽いタイヤであるとか、ハイグリップなタイヤというのもあります。しかし、軽量であればグリップ性を犠牲にしてしまいますし、ハイグリップであればペダリングが重くなってしまう。そういった前提を踏まえてこのタイヤを改めて使うと「ああ、これで十分だよね、いいねこれ」となるわけです。

「クロスカントリーレースを一日走る上で出てくるであろう走行シーン全てで適正な走行性能を得ることが出来ます」「クロスカントリーレースを一日走る上で出てくるであろう走行シーン全てで適正な走行性能を得ることが出来ます」
マウンテンバイクのレースは天候の急変や様々な路面状況などをこなしていく必要がありますが、このSERAC XCを選択さえしておけばどんな状況にもしっかり対応できる安心感があります。昔のSERAC XCを知っている人はもちろんまた使いたくなるだろうし、逆に最近の方でもこのバランスの良さは誰でも感じることができると思います。またこのタイヤが日本のMTBシーンで幅を利かせてくる日が訪れるのではないかという予感すらさせてくれました。

IRC SERAC XC TUBELESS READY
サイズ:27.5×2.25、29×2.10
タイプ:チューブレスレディ
重量:690g(27.5)、720g(29)
価格:5,500円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

鈴木祐一(RiseRide)鈴木祐一(RiseRide) 鈴木祐一(RiseRide)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。

サイクルショップ・ライズライドHP

ウェア協力:アソス

text:Kosuke Kamata
photo:Makoto.AYANO
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