2017/03/13(月) - 11:53
マルケ州らしい丘の上の街に向かって激坂ヒルクライム。連続する急勾配の上りで登坂力を競い合った総合上位陣をスプリントで下し、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が今大会2勝目を飾った。
前日のクイーンステージを終えた総合首位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が「今日よりも明日のほうが危険だ」と警戒した第5ステージの丘陵コース。ラツィオ州のリエーティからアペニン山脈を越えてマルケ州に入り、標高319mの丘の街フェルモに至る209kmコースには短い激坂がいくつも組み込まれた。
選手たちが「ティレーノらしい」と口を揃えるコースは、残り50kmを切ってから最大20%に達する激坂アップダウンの繰り返し。最も勾配のある最大22%の激坂「レプトロ通り」が残り4km地点に登場する。そこからさらにフェルモ旧市街を駆け上がるパンチの効いたレイアウトが設定された。
気管支炎によってDNSのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)らを欠いた165名がスタートを切ると、ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)やスティーヴン・カミングス(イギリス、ディメンションデータ)を含む11名が先行を開始。強力なメンバーを揃えた逃げだったが、最大4分のリードしか築くことができず。レース中盤に逃げは早くも吸収されてしまう。
続いて総合で1分52秒しか遅れていないボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)やミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)を含むグループが先行したものの、この動きも集団によってシャットダウン。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)のアタックも封じ込められた。
アタックに次ぐアタックでレースのスピードが上がる中、消化器関係のトラブルを抱えていた総合2位アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)は集団から脱落。ヤングライダー賞ジャージを着たままリタイアを余儀なくされている。
フェルモにある最大22%の激坂「レプトロ通り」を一旦通過後、断続的なアップダウンコースで残り20km地点からヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)とルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)が先行を開始する。30秒のリードを得て逃げる2人をエフデジやボーラ・ハンスグローエが追いかける展開。
やがて先頭はLLサンチェスが独走状態に。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が脱落したメイン集団からは、残り9km地点の20%激坂区間でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)がカウンターアタックし、単独で先頭LLサンチェスに追いついた。
そして迎えた最後の激坂「レプトロ通り」。先頭で最大勾配22%に挑んだヴァンガーデレンとLLサンチェスは吸収され、青いリーダージャージを着るキンタナがゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)らと肩を並べながら先頭でペースメイクする。
勾配が激しさを増したポイントでアタックしたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)に反応する形でキンタナがカウンターアタック。軽いダンシングで激坂を駆け上がったキンタナだったが、単独で飛び出すほどのリードは奪えない。Velon(ヴェロン)の公開データによると、先頭で上りをこなしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)は最も勾配のある区間を平均524Wで1分15秒間踏んでいる。
「レプトロ通り」を終えた時点で先頭グループは約10名に絞られた。脱落選手の復帰を阻止したいトーマスやピノがペースを上げたが、遅れを最小限に抑えたサガンが先頭グループに追いつく。
引き続きコースはフィニッシュラインに向けて上り基調。石畳が敷かれたフェルモの旧市街をエフデジ先頭に駆け抜ける。ポジションを上げることも難しい細い道に突入すると、残り1kmを切ってウランがアタックを仕掛けるが決まらない。
トーマスを先頭に勾配10%の最終ストレートに差し掛かると、好位置をキープしたサガンやピノが腰を上げてスプリントを開始した。5時間におよぶ獲得標高差3,000mレースを締めくくるスプリントでもサガンの爆発力は冴えていた。
ピノを振り切り、第3ステージに続く今大会2勝目を飾ったサガンは「終盤に厳しい上りが連続するのに、みんなロードブックを読んでないんじゃないかと疑ってしまうほどレースは序盤から高速化した。今日はラファル・マイカが身を粉にして尽くしてくれたよ。これがもしワンデーレースなら勝負に残っていなかったと思う。総合上位のクライマーたちは昨日のテルミニッロで疲労を溜めた状態だったので、比較的フレッシュな自分が勝負できたんだ。アタックの連続で、リズム変化が大きなレースに疲れたよ」と語る。
フェルモでは1987年のティレーノでも世界チャンピオンのモレーノ・アルゼンティン(イタリア)が勝利。30年後の2017年、再び世界チャンピオンが丘陵コースを攻略した。サガンはティレーノでステージ通算7勝目。
リーダージャージを守ったキンタナは「壁に例えられるような激坂はどれも距離が短く、ライバルたちからリードを奪うことはできなかった。ステージ優勝は逃したものの、総合リードを失うことなく乗り切ることができてよかった。明日は平穏な1日になると予想されるので、また一歩総合優勝に近づいたよ」とコメント。イェーツのリタイアによりピノが50秒差の総合2位に。さらに最終日の個人TTでタイムを伸ばすと見られるローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が1分06秒差の総合3位に浮上した。
ティレーノ〜アドリアティコ2017第5ステージ結果
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 5h00'05"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
3位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
5位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)
7位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)
15位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) +31"
16位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +34"
21位 ダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
22位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +50"
39位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +3'32"
DNF アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
DNS ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 21h34'51"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +50"
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'06"
4位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) +1'15"
5位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +1'19"
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1'23"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック) +1'30"
8位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) +1'32"
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1'37"
10位 シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン) +1'59"
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 32pts
2位 ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF) 30pts
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 29pts
山岳賞
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 15pts
2位 ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ) 15pts
3位 アラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 11pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ) 21h37'31"
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +16"
3位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) +13'32"
チーム総合成績
1位 モビスター 64h01'08"
2位 BMCレーシング +3'22"
3位 チームスカイ +7'38"
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
前日のクイーンステージを終えた総合首位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が「今日よりも明日のほうが危険だ」と警戒した第5ステージの丘陵コース。ラツィオ州のリエーティからアペニン山脈を越えてマルケ州に入り、標高319mの丘の街フェルモに至る209kmコースには短い激坂がいくつも組み込まれた。
選手たちが「ティレーノらしい」と口を揃えるコースは、残り50kmを切ってから最大20%に達する激坂アップダウンの繰り返し。最も勾配のある最大22%の激坂「レプトロ通り」が残り4km地点に登場する。そこからさらにフェルモ旧市街を駆け上がるパンチの効いたレイアウトが設定された。
気管支炎によってDNSのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)らを欠いた165名がスタートを切ると、ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)やスティーヴン・カミングス(イギリス、ディメンションデータ)を含む11名が先行を開始。強力なメンバーを揃えた逃げだったが、最大4分のリードしか築くことができず。レース中盤に逃げは早くも吸収されてしまう。
続いて総合で1分52秒しか遅れていないボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)やミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)を含むグループが先行したものの、この動きも集団によってシャットダウン。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)のアタックも封じ込められた。
アタックに次ぐアタックでレースのスピードが上がる中、消化器関係のトラブルを抱えていた総合2位アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)は集団から脱落。ヤングライダー賞ジャージを着たままリタイアを余儀なくされている。
フェルモにある最大22%の激坂「レプトロ通り」を一旦通過後、断続的なアップダウンコースで残り20km地点からヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)とルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)が先行を開始する。30秒のリードを得て逃げる2人をエフデジやボーラ・ハンスグローエが追いかける展開。
やがて先頭はLLサンチェスが独走状態に。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が脱落したメイン集団からは、残り9km地点の20%激坂区間でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)がカウンターアタックし、単独で先頭LLサンチェスに追いついた。
そして迎えた最後の激坂「レプトロ通り」。先頭で最大勾配22%に挑んだヴァンガーデレンとLLサンチェスは吸収され、青いリーダージャージを着るキンタナがゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)らと肩を並べながら先頭でペースメイクする。
勾配が激しさを増したポイントでアタックしたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)に反応する形でキンタナがカウンターアタック。軽いダンシングで激坂を駆け上がったキンタナだったが、単独で飛び出すほどのリードは奪えない。Velon(ヴェロン)の公開データによると、先頭で上りをこなしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)は最も勾配のある区間を平均524Wで1分15秒間踏んでいる。
「レプトロ通り」を終えた時点で先頭グループは約10名に絞られた。脱落選手の復帰を阻止したいトーマスやピノがペースを上げたが、遅れを最小限に抑えたサガンが先頭グループに追いつく。
引き続きコースはフィニッシュラインに向けて上り基調。石畳が敷かれたフェルモの旧市街をエフデジ先頭に駆け抜ける。ポジションを上げることも難しい細い道に突入すると、残り1kmを切ってウランがアタックを仕掛けるが決まらない。
トーマスを先頭に勾配10%の最終ストレートに差し掛かると、好位置をキープしたサガンやピノが腰を上げてスプリントを開始した。5時間におよぶ獲得標高差3,000mレースを締めくくるスプリントでもサガンの爆発力は冴えていた。
ピノを振り切り、第3ステージに続く今大会2勝目を飾ったサガンは「終盤に厳しい上りが連続するのに、みんなロードブックを読んでないんじゃないかと疑ってしまうほどレースは序盤から高速化した。今日はラファル・マイカが身を粉にして尽くしてくれたよ。これがもしワンデーレースなら勝負に残っていなかったと思う。総合上位のクライマーたちは昨日のテルミニッロで疲労を溜めた状態だったので、比較的フレッシュな自分が勝負できたんだ。アタックの連続で、リズム変化が大きなレースに疲れたよ」と語る。
フェルモでは1987年のティレーノでも世界チャンピオンのモレーノ・アルゼンティン(イタリア)が勝利。30年後の2017年、再び世界チャンピオンが丘陵コースを攻略した。サガンはティレーノでステージ通算7勝目。
リーダージャージを守ったキンタナは「壁に例えられるような激坂はどれも距離が短く、ライバルたちからリードを奪うことはできなかった。ステージ優勝は逃したものの、総合リードを失うことなく乗り切ることができてよかった。明日は平穏な1日になると予想されるので、また一歩総合優勝に近づいたよ」とコメント。イェーツのリタイアによりピノが50秒差の総合2位に。さらに最終日の個人TTでタイムを伸ばすと見られるローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が1分06秒差の総合3位に浮上した。
ティレーノ〜アドリアティコ2017第5ステージ結果
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 5h00'05"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)
3位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
5位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)
7位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)
15位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) +31"
16位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +34"
21位 ダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
22位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +50"
39位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +3'32"
DNF アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)
DNS ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 21h34'51"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +50"
3位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'06"
4位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) +1'15"
5位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +1'19"
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1'23"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック) +1'30"
8位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター) +1'32"
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1'37"
10位 シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン) +1'59"
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 32pts
2位 ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF) 30pts
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 29pts
山岳賞
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 15pts
2位 ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ) 15pts
3位 アラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 11pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、アンドローニジョカトリ) 21h37'31"
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +16"
3位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) +13'32"
チーム総合成績
1位 モビスター 64h01'08"
2位 BMCレーシング +3'22"
3位 チームスカイ +7'38"
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
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