2017/01/30(月) - 12:10
パンクに泣いたマテュー・ファンデルポールを置き去りにし、圧倒的なラップを刻んだワウト・ファンアールトが文句無しの圧勝。2年連続のアルカンシエルを達成した。
2日間続いたシクロクロス世界選手権の最終種目を務める男子エリート。ルクセンブルク、ベルヴォーに特設されたアップダウンコースは、にわかに上がった気温によって午前のU23のレースよりも路面が締まった。
とは言え、これまでのレースで選手を苦しめ続けた過酷かつテクニカルなアップダウン、ミスを許さないキャンバー下り、担ぎを強いられる階段を含むコースの難易度は高いまま。誰もが手を焼くサーキットが順当に強者を選別していった。
優勝候補筆頭のマテュー・ファンデルポール(オランダ)と、今シーズン好調をキープしているケヴィン・パウエルス(ベルギー)が好ダッシュを見せたその後方、3番手で続いたトム・メーウセン(ベルギー)がわずか数十秒でバイク破損によってレースを降りてしまう。1週間前のワールドカップで2位と万全のコンディションで臨んだサブエースだったが、「ピットまでの2分が遠すぎた。調子が良かっただけにあまりにも苦痛だ」と波乱の幕開けで60分間の世界選手権が動きだす。
ファンデルポールとパウエルスの二人が飛び出し、勢いのあるファンデルポールは徐々に独走態勢を築いて1周回終了時点でのリードは7秒。膝に懸念を抱えながら参加したベルギーのエース、ワウト・ファンアールトはマイケル・ファントーレンハウトやティム・メルリエなどベルギー勢中心の3位グループで展開したが、「2位争いになると感じていたが、2周目にリズムを掴むことができた」と追撃を開始。これまでのレースで見せることの少ない、苦しい表情のままファンデルポールとの差を徐々に詰めていった。
およそ5秒の間隔で攻防を続けていた2人だが、ちょうど30分、折り返しのタイミングでファンデルポールがパンクしたバイクを交換をしたことを機に遂に合流。インを奪うジャブを打ち合いながら、もつれあいながらレースを進めていく。
ファンアールトがピットインしたタイミングでファンデルポールが加速し差が生まれたが、残り3周回突入を前に、またしてもファンデルポールのリアタイヤがパンク。この時点でピットは遠く、差の広がりを最小限に留めるべく踏み続けたファンデルポールだったが、交換後のタイム差は20秒にまで広がってしまった。
この男子エリートではパンクが頻発し、絶好調のまま臨んだラース・ファンデルハール(オランダ)は6回、3位に入ったケヴィン・パウエルス(ベルギー)は3回、8位に入ったジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー)は8回ものパンクに見舞われた。ファンデルポールは「ナミュールのように石がたくさん隠れていた」と語っており、すべてのスペアホイールを使い切ってしまったフェルメールシュは合計30分以上にも渡ってパンクしたまま走らざるを得なくなったという。
マッド用の特製タイヤを用意してきたファンアールトはトラブルを防ぎつつ、終盤に掛けてラップタイムを上げていく圧巻の走りで2年連続となるアルカンシエルに向けて邁進していく。ファンデルポールも3位争いを放棄した昨年とは異なり粘り強くプッシュしていたものの、タイム差の開きを受けて最終回に追走の手を緩めた。
勝利を決定付けたファンアールトは最終盤に拳を振り上げながら、普段のレースであまり見せることの無い歓喜の表情でフィニッシュ。その44秒後には、追い上げ叶わなかったファンデルポールが悔し涙を流しながらゴールした。
「正直勝てるとは思っていなかった。先週は膝の回復のためにまるまる1週間自転車に乗れなかったことも含めて、様々な準備が不十分だったんだ。ただ60分間だけ全開で走れれば良いと思っていた」とレース後のインタビューで語ったファンアールト。「もちろんマテューがメカトラで沈んだことは残念だが、それが自分の勝利に結びついたこともまた事実。昨年よりもメンタル的にキツかったけれど、勝利できて本当に良かった。自分、チーム家族、サポートしてくれる全員を誇りに思う」と加えた。
一方で「悪運で勝てるレースを落とすほど面白くないことはない」と落胆しきった表情でコメントしたのはファンデルポール。序盤にも複数回パンクしており、最後のパンクがレースを左右する結果に。「フィジカル的には勝てるだけの仕上りだった」と語り、表彰式を終えても悔し涙が止まることはなかった。
また、パンクで遅れたファンデルハールを抜き3位に入ったケヴィン・パウエルス(ベルギー)は、5度目の世界選手権銅メダル獲得。日本勢は小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)マイナス3ラップ51位、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)はマイナス4ラップ53位、沢田時(ブリヂストンアンカー)はDNFに終わった。
シクロクロス世界選手権2017男子エリート結果
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー) 1h02’08”
2位 マテュー・ファンデルポール(オランダ) +44”
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー) +2’09”
4位 ラース・ファンデルハール(オランダ) +2’52”
5位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ) +3’09”
6位 ローレンス・スウィーク(ベルギー) +3’29”
7位 マヌエル・ボロス(チェコ) +3'47"
8位 ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー) +4'02"
9位 シモン・ザーナー(スイス) +4'08"
10位 サーシャ・ウェーバー(ドイツ) +4’29”
51位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) -3Lap
53位 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) -4Lap
DNF 沢田時(ブリヂストンアンカー)
text:So.Isobe
photo:CorVos,Nobuhiko.Tanabe
2日間続いたシクロクロス世界選手権の最終種目を務める男子エリート。ルクセンブルク、ベルヴォーに特設されたアップダウンコースは、にわかに上がった気温によって午前のU23のレースよりも路面が締まった。
とは言え、これまでのレースで選手を苦しめ続けた過酷かつテクニカルなアップダウン、ミスを許さないキャンバー下り、担ぎを強いられる階段を含むコースの難易度は高いまま。誰もが手を焼くサーキットが順当に強者を選別していった。
優勝候補筆頭のマテュー・ファンデルポール(オランダ)と、今シーズン好調をキープしているケヴィン・パウエルス(ベルギー)が好ダッシュを見せたその後方、3番手で続いたトム・メーウセン(ベルギー)がわずか数十秒でバイク破損によってレースを降りてしまう。1週間前のワールドカップで2位と万全のコンディションで臨んだサブエースだったが、「ピットまでの2分が遠すぎた。調子が良かっただけにあまりにも苦痛だ」と波乱の幕開けで60分間の世界選手権が動きだす。
ファンデルポールとパウエルスの二人が飛び出し、勢いのあるファンデルポールは徐々に独走態勢を築いて1周回終了時点でのリードは7秒。膝に懸念を抱えながら参加したベルギーのエース、ワウト・ファンアールトはマイケル・ファントーレンハウトやティム・メルリエなどベルギー勢中心の3位グループで展開したが、「2位争いになると感じていたが、2周目にリズムを掴むことができた」と追撃を開始。これまでのレースで見せることの少ない、苦しい表情のままファンデルポールとの差を徐々に詰めていった。
およそ5秒の間隔で攻防を続けていた2人だが、ちょうど30分、折り返しのタイミングでファンデルポールがパンクしたバイクを交換をしたことを機に遂に合流。インを奪うジャブを打ち合いながら、もつれあいながらレースを進めていく。
ファンアールトがピットインしたタイミングでファンデルポールが加速し差が生まれたが、残り3周回突入を前に、またしてもファンデルポールのリアタイヤがパンク。この時点でピットは遠く、差の広がりを最小限に留めるべく踏み続けたファンデルポールだったが、交換後のタイム差は20秒にまで広がってしまった。
この男子エリートではパンクが頻発し、絶好調のまま臨んだラース・ファンデルハール(オランダ)は6回、3位に入ったケヴィン・パウエルス(ベルギー)は3回、8位に入ったジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー)は8回ものパンクに見舞われた。ファンデルポールは「ナミュールのように石がたくさん隠れていた」と語っており、すべてのスペアホイールを使い切ってしまったフェルメールシュは合計30分以上にも渡ってパンクしたまま走らざるを得なくなったという。
マッド用の特製タイヤを用意してきたファンアールトはトラブルを防ぎつつ、終盤に掛けてラップタイムを上げていく圧巻の走りで2年連続となるアルカンシエルに向けて邁進していく。ファンデルポールも3位争いを放棄した昨年とは異なり粘り強くプッシュしていたものの、タイム差の開きを受けて最終回に追走の手を緩めた。
勝利を決定付けたファンアールトは最終盤に拳を振り上げながら、普段のレースであまり見せることの無い歓喜の表情でフィニッシュ。その44秒後には、追い上げ叶わなかったファンデルポールが悔し涙を流しながらゴールした。
「正直勝てるとは思っていなかった。先週は膝の回復のためにまるまる1週間自転車に乗れなかったことも含めて、様々な準備が不十分だったんだ。ただ60分間だけ全開で走れれば良いと思っていた」とレース後のインタビューで語ったファンアールト。「もちろんマテューがメカトラで沈んだことは残念だが、それが自分の勝利に結びついたこともまた事実。昨年よりもメンタル的にキツかったけれど、勝利できて本当に良かった。自分、チーム家族、サポートしてくれる全員を誇りに思う」と加えた。
一方で「悪運で勝てるレースを落とすほど面白くないことはない」と落胆しきった表情でコメントしたのはファンデルポール。序盤にも複数回パンクしており、最後のパンクがレースを左右する結果に。「フィジカル的には勝てるだけの仕上りだった」と語り、表彰式を終えても悔し涙が止まることはなかった。
また、パンクで遅れたファンデルハールを抜き3位に入ったケヴィン・パウエルス(ベルギー)は、5度目の世界選手権銅メダル獲得。日本勢は小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)マイナス3ラップ51位、前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)はマイナス4ラップ53位、沢田時(ブリヂストンアンカー)はDNFに終わった。
シクロクロス世界選手権2017男子エリート結果
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー) 1h02’08”
2位 マテュー・ファンデルポール(オランダ) +44”
3位 ケヴィン・パウエルス(ベルギー) +2’09”
4位 ラース・ファンデルハール(オランダ) +2’52”
5位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ) +3’09”
6位 ローレンス・スウィーク(ベルギー) +3’29”
7位 マヌエル・ボロス(チェコ) +3'47"
8位 ジャンニ・フェルメールシュ(ベルギー) +4'02"
9位 シモン・ザーナー(スイス) +4'08"
10位 サーシャ・ウェーバー(ドイツ) +4’29”
51位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) -3Lap
53位 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) -4Lap
DNF 沢田時(ブリヂストンアンカー)
text:So.Isobe
photo:CorVos,Nobuhiko.Tanabe