2017/01/17(火) - 21:25
サントス・ツアー・ダウンアンダーが開幕したこの日、南オーストラリア州のアデレードは気温41度の猛暑に見舞われた。暑さによってコースが短縮される中、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が勝利を収めている。
ダウンアンダー第1ステージはアデレード中心部を通り抜け、ワインの一大産地として知られるバロッサバレーのリンドックを目指す。今大会最初の(そしてこの日唯一の)KOMカースブルックロードを越えて丘陵地帯に入ると、そこから沿道はブドウ畑のオンパレードだ。
フィニッシュ地点リンドックの周回コースは細かいアップダウンと平坦路が組み合わされたもの。26.5kmの周回コースを3周する全長145kmで争われる予定だったが、南オーストラリア州を覆う熱波によってコース全長がレース中に短縮されることになる。
10kmの長いニュートラル走行が終わって正式スタートが切られると、広い幹線道路でローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)がするりとメイン集団から抜け出す。山岳賞ジャージを獲得するチャンスがあるにもかかわらず、静観する集団はあっさりとデヴリーズの動きを見送った。
「誰もアクションを起こさなかったので自分から動いたら、誰もついてこなかった」というデヴリーズが単独でエスケープを敢行し、タイム差は4分まで拡大。しかしデヴリーズが「向かい風が吹く区間も長かったので、集団がその気になればすぐ捕まってしまうとわかっていた」と語る通り、集団はタイム差を周到に調整するオリカ・スコットのコントロール下に置かれた。
単独逃げと暑さの相乗効果で、レースは予定よりもずっと低速で進む(この日の平均スピードは34.8km/h)。すると、最高気温が41度まで上がる過酷なコンディションによって、UCIコミッセールはフィニッシュまで約60kmを残した時点でリンドック周回の周回数を3周から2周に減らすことを決定。急遽コース全長が145kmから118.5kmに変更された。
UCIエクストリームウェザープロトコルの適用に踏み切ったことについて、大会ディレクターのマイク・ターター氏は「最優先すべきは選手と観客、レース関係者全員の安全と健康であり、選手代表のアダム・ハンセンとUCIチーフコミッセールのアレクサンダー・ドニケ氏と話し合った結果、コースの短縮が適切であると判断した」との声明を出している。
レース中にCPA(プロ選手協会)の代表として主催者とコミッセールと話し合ったアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)は「多くの選手が自分のところにやってきて話をした。ゆっくり走っていたにもかかわらず暑くて、ペースが上がれば身に危険を及ぼすような暑さだった。今まで経験したロードレースの中で一番暑かったかもしれない」と、酷暑のステージを振り返っている。
逃げていたデヴリーズは散々泳がされた末に残り20kmで吸収。ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が与えられるスプリントポイントではジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)やネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)、サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)らが積極的に動き、数秒ではあるがライバルたちからリードを奪うことに成功している。
フィニッシュまで15kmを切った細かいアップダウン区間でヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)が抜け出して独走。瞬く間に55秒までリードを広げたバークランツだったが、単独追走したハンセンともどもフィニッシュまでの向かい風区間で失速してしまう。バークランツとハンセンはそれぞれ残り2kmで吸収された。
一日中ずっと集団を牽引し続けたオリカ・スコットのリードアウトトレインに力はなく、ゆるい最終コーナーを曲がって集団先頭に立ったのはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)だった。この日もサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)のリードアウトを担った世界チャンピオンは、残り200m前後でユアンが発進したところで腰を下ろす。
ベネットとダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)、ユアンの3名がそれぞれ別ラインでスプリント。3名揃ってハンドルを投げ込み、写真判定の結果ユアンの勝利が決まった。
ユアンは同じリンドックにフィニッシュする1年前の開幕ステージでも勝利しており、2年連続初日勝利&リーダージャージ獲得。2日前のクリテリウムに続く勝利で、総合争いにおいても注目の地元オーストラリアチームに早速UCIワールドツアーレース初勝利をもたらした。
「1年前と全く同じフィニッシュだったので、余計に大きなプレッシャーがあったのも事実。同じことを再現する難しさを感じた」と、プレッシャーから解き放たれたユアンは語る。「強い向かい風が吹いていたので、どのチームもリードアウト要員が足りていない状況だった。接戦だったけど勝ててよかったよ」。
コース短縮についてユアンは「たとえ最後の周回数が3周のままでも、1周多くクルーズするだけだったので状況は変わらなかったはず。でもとにかく賢明な判断だった」と、コミッセールの判断を支持。また、山頂フィニッシュが設定された翌日の第2ステージについては「明日のステージは自分には到底無理。リーダージャージを着ているけどチームメイトのために走るよ」と語っている。
サントス・ツアー・ダウンアンダー2017第1ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 3h24’18”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 マルコ・クンプ(スロベニア、UAEアブダビ)
5位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
6位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
7位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
8位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位 マイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 ショーン・ドゥビー(ベルギー、ロット・ソウダル)
個人総合成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 3h24’08”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) +04”
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) +06”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +07”
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ) +08”
6位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)
7位 ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)
8位 マルコ・クンプ(スロベニア、UAEアブダビ) +10”
9位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 15pts
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) 14pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 13pts
山岳賞
1位 ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) 10pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 6pts
3位 ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール) 4pts
ヤングライダー賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 3h24’08”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) +04”
3位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ) +10”
チーム総合成績
1位 ボーラ・ハンスグローエ 10h12’54”
2位 エフデジ
3位 ロット・ソウダル
敢闘賞
ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
ダウンアンダー第1ステージはアデレード中心部を通り抜け、ワインの一大産地として知られるバロッサバレーのリンドックを目指す。今大会最初の(そしてこの日唯一の)KOMカースブルックロードを越えて丘陵地帯に入ると、そこから沿道はブドウ畑のオンパレードだ。
フィニッシュ地点リンドックの周回コースは細かいアップダウンと平坦路が組み合わされたもの。26.5kmの周回コースを3周する全長145kmで争われる予定だったが、南オーストラリア州を覆う熱波によってコース全長がレース中に短縮されることになる。
10kmの長いニュートラル走行が終わって正式スタートが切られると、広い幹線道路でローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)がするりとメイン集団から抜け出す。山岳賞ジャージを獲得するチャンスがあるにもかかわらず、静観する集団はあっさりとデヴリーズの動きを見送った。
「誰もアクションを起こさなかったので自分から動いたら、誰もついてこなかった」というデヴリーズが単独でエスケープを敢行し、タイム差は4分まで拡大。しかしデヴリーズが「向かい風が吹く区間も長かったので、集団がその気になればすぐ捕まってしまうとわかっていた」と語る通り、集団はタイム差を周到に調整するオリカ・スコットのコントロール下に置かれた。
単独逃げと暑さの相乗効果で、レースは予定よりもずっと低速で進む(この日の平均スピードは34.8km/h)。すると、最高気温が41度まで上がる過酷なコンディションによって、UCIコミッセールはフィニッシュまで約60kmを残した時点でリンドック周回の周回数を3周から2周に減らすことを決定。急遽コース全長が145kmから118.5kmに変更された。
UCIエクストリームウェザープロトコルの適用に踏み切ったことについて、大会ディレクターのマイク・ターター氏は「最優先すべきは選手と観客、レース関係者全員の安全と健康であり、選手代表のアダム・ハンセンとUCIチーフコミッセールのアレクサンダー・ドニケ氏と話し合った結果、コースの短縮が適切であると判断した」との声明を出している。
レース中にCPA(プロ選手協会)の代表として主催者とコミッセールと話し合ったアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)は「多くの選手が自分のところにやってきて話をした。ゆっくり走っていたにもかかわらず暑くて、ペースが上がれば身に危険を及ぼすような暑さだった。今まで経験したロードレースの中で一番暑かったかもしれない」と、酷暑のステージを振り返っている。
逃げていたデヴリーズは散々泳がされた末に残り20kmで吸収。ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が与えられるスプリントポイントではジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)やネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)、サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)らが積極的に動き、数秒ではあるがライバルたちからリードを奪うことに成功している。
フィニッシュまで15kmを切った細かいアップダウン区間でヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)が抜け出して独走。瞬く間に55秒までリードを広げたバークランツだったが、単独追走したハンセンともどもフィニッシュまでの向かい風区間で失速してしまう。バークランツとハンセンはそれぞれ残り2kmで吸収された。
一日中ずっと集団を牽引し続けたオリカ・スコットのリードアウトトレインに力はなく、ゆるい最終コーナーを曲がって集団先頭に立ったのはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)だった。この日もサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)のリードアウトを担った世界チャンピオンは、残り200m前後でユアンが発進したところで腰を下ろす。
ベネットとダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)、ユアンの3名がそれぞれ別ラインでスプリント。3名揃ってハンドルを投げ込み、写真判定の結果ユアンの勝利が決まった。
ユアンは同じリンドックにフィニッシュする1年前の開幕ステージでも勝利しており、2年連続初日勝利&リーダージャージ獲得。2日前のクリテリウムに続く勝利で、総合争いにおいても注目の地元オーストラリアチームに早速UCIワールドツアーレース初勝利をもたらした。
「1年前と全く同じフィニッシュだったので、余計に大きなプレッシャーがあったのも事実。同じことを再現する難しさを感じた」と、プレッシャーから解き放たれたユアンは語る。「強い向かい風が吹いていたので、どのチームもリードアウト要員が足りていない状況だった。接戦だったけど勝ててよかったよ」。
コース短縮についてユアンは「たとえ最後の周回数が3周のままでも、1周多くクルーズするだけだったので状況は変わらなかったはず。でもとにかく賢明な判断だった」と、コミッセールの判断を支持。また、山頂フィニッシュが設定された翌日の第2ステージについては「明日のステージは自分には到底無理。リーダージャージを着ているけどチームメイトのために走るよ」と語っている。
サントス・ツアー・ダウンアンダー2017第1ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 3h24’18”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 マルコ・クンプ(スロベニア、UAEアブダビ)
5位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
6位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
7位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
8位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位 マイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)
10位 ショーン・ドゥビー(ベルギー、ロット・ソウダル)
個人総合成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 3h24’08”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) +04”
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) +06”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +07”
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ) +08”
6位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)
7位 ジョセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)
8位 マルコ・クンプ(スロベニア、UAEアブダビ) +10”
9位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
10位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 15pts
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) 14pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 13pts
山岳賞
1位 ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) 10pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 6pts
3位 ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール) 4pts
ヤングライダー賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 3h24’08”
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) +04”
3位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ) +10”
チーム総合成績
1位 ボーラ・ハンスグローエ 10h12’54”
2位 エフデジ
3位 ロット・ソウダル
敢闘賞
ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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