2016/12/21(水) - 19:14
去る12月17日(土)、毎年恒例となったエキップアサダイヤーエンドパーティーが赤坂シュビアにて開催された。チームの後援会員を中心に約50名が参加したこの会で、浅田顕監督より今季の活動報告や来季の所属選手発表などが行われた。
浅田監督の中学時代からの先輩である富澤一慶さんの乾杯で始まったパーティーは、日本代表合宿参加の蠣崎優仁と、所用により欠席した3名を除く8名の選手が参加。歓談を挟んで浅田顕監督による2016年の活動報告が行われ、選手を1人1人壇上に上げながら、個別の成績やキャラクターなどが紹介されていった。
そこで発表されたのが、城田大和の引退と内野直也の卒業だ。城田、内野ともにエカーズがカバーするU23の最終年を終了し、人生の次なるステージへと進む。宇都宮ブリッツェンから欧州挑戦を望みやってきた城田は、レースの世界からは退き、今後についてはひと息入れてこれから決めていくと言う。今季キャプテンとして選手達のまとめ役も担ってきた内野は、神奈川を拠点にサイクルイベントやセミナーを手がけるウォークライドのクラブチームへと移籍し、競技活動を続ける予定だ。
残り僅かとなったU23の時間を欧州遠征に賭けた津村翔平は、4月のロックフォール・ド・コルビエールで総合優勝も、プロ入りには届かずエカーズでの活動を終了することとなった。他、小野寛斗、椙田明仁がエカーズでの活動を今季限りで終える。
新城雄大は初めての欧州レースへの順応に苦戦しながら過ごした1年だったようだが、U23最終年となる来季に望みを繋ぎ、エカーズでの挑戦を続ける。ジュニア世代では、蠣崎優仁がカナダのネイションズカップで総合7位に入るなど、頭角を現してきた。浜田大雅はインターハイロードレースで準優勝、最年少の中学生ライダー・津田悠義はチャンレンジロードレースA-Yクラスで優勝を遂げるなどしており、両名とも昨年末よりひと回り大きくなった印象だ。
石上優大は、前半の欧州でこそ大きな成績を収められなかったものの、全日本選手権ロードレースのエリート男子で17位、ジャパンカップで31位でUCIポイント獲得と、着実なステップを踏んだ。石上と同学年ながら生まれ年の関係でジュニアカテゴリーを走った渡邉歩は、初めて欧州でシーズンを過ごし、フランスアマチュア第2カテゴリーで1勝を挙げた。渡邉も来季よりU23で走ることになる。
またこの両名は、エカーズとは別にフランスの名門クラブチームへと派遣され、2017年のレース活動を行う。所属先は、石上がフランス・ブロヴァンス地方のAVC AIXOIS(アミカル・ヴェロクラブ・エクス)、渡邉がフランス・ミディーピレネー地方のTeam cycliste Morning(現Team Payname、16年は面手利輝が所属)で走り、本格的に自らの力を試し、高めていく。
興味深いのは彼らが同じチームで走るのではなく、各チーム1人ずつの派遣となっている事だ。チームの受け入れ体制など諸事情もあろうかと思うが、日本人同士で固まることなくフランス語でのコミュニケーション能力を高め、本場のレース環境に順応するには、厳しくもより良い環境が準備されたと言えよう。
選手紹介の最後には小笠原匠海の準所属選手としての加入が発表された。小笠原は2000年生まれ180cm、現在八王子桑志高校の2年生で、今年の全日本選手権タイムトライアルU17+U15で2位の成績を収めている。公式戦は八王子桑志高の選手として走りながら、エカーズの活動にも参加する。
厳しい現実との戦いに道筋を示すEQADSの活動
続く2017年の活動案内では、「プロレーサーへの道」と言う図とともに、ロードレース界のみに限らず、スポーツ界を取り巻く現実の厳しさが示された。その中における浅田監督率いるエカーズの活動趣旨はこうだ。
とかく競技をやる選手達は、やればやるほど専門性を追いかけてしまうが、歳を取るほどに夢や憧れよりも現実が大きな存在となる。いざ競技生活を辞めた時にそれでは何も出来ない人間になってしまう。そのため準所属となっているより若い選手達は、まず勉強や様々なスポーツをして、多くの事を吸収していくこと。その上でエカーズで走る決断をした選手、即ち欧州トッププロを目指す選手に、そのための環境を与えていく、と言う。
チームは例年通り3月にフランスへ渡り、欧州各地のネイションズカップ等を転戦、その最終戦であるツール・ド・ラヴニール出場を目標に戦っていく。また、日本代表への選抜も目標とし、そうなった場合はアジア選や世界選、ジャパンカップ等の国内UCIレースも見据えた活動がプラスされ、より多くの経験を積むこととなる。
これにより、エカーズ、石上・渡邉が進む欧州クラブチーム派遣、そこから日本代表へと、3本の柱でジュニア〜U23の若手を育て上げる道筋が見えたこととなる。浅田監督は現在ロード日本代表ヘッドコーチでもあり、変わらずフラットな目で選手を選ぶとしつつも、これらの柱を連携し選手の実力を高めていくためには、自らの目で年間の活動状況を把握出来るエカーズが良い受け皿となっている事は間違いない。
殿、ご乱心!? ラップフリースタイルバトル勃発
パーティーと言うからには真面目な話だけで終わらないのが世の常。余興では、チーム広報の山崎健一氏の「山崎健一は不満である」と言うプレゼンに端を発したラップフリースタイルバトルが勃発。筆者も恥ずかしながらアフロのMCとして進行をお手伝いすることに。山崎氏が遠慮がちに「つーる、つーるって、いつ連れてってくれるんですか?」とラップを繰り出すと、浅田監督がいつもの姿からは想像出来ないほどにヒートしたラップで応戦し、観客の大拍手を得て圧勝。
その直後にピンクのアフロを被ったエキップアサダ後援会長・田之頭氏が乱入。殿(浅田監督)とチームへの想いをラップのビートに乗せてソロで綴ると、続いて選手達がステージに上がりラップバトルを繰り広げた。
初戦は浜田大雅vs津田悠義。スタイルからノリノリの浜田に対し、学生服姿のまま応戦した津田が互角の戦いを見せ引き分け。サイタマノラッパー内野直也と沖縄の巨艦城田大和の対戦は、一見互角もエカーズの先輩として内野が僅差で勝利。
最後は同学年ライバル対決となった石上優大と渡邉歩。お互い似たようなクリスマスビートを使い、ネタが被った事に苦笑いしつつも見事なラップを披露。これも判定に迷う接戦となり、山崎氏の「決着はロードの上で」の一言で、この場では引き分けに持ち込まれた。
「いつも選手に全力でやれと言っている大人達が、まず全力を出すところを見せなければ!」と山崎氏の発案で始まったこの企画だが、選手達の準備はレースに臨む姿勢さながら、その度胸とスピーディーなラップに、大人がやられた形となった(一応大人の我々もあれで全力だったんです)。
ラップフリースタイルバトルの後は歓談を挟んで選手挨拶へと移り、内野と城田が浅田監督より花束を受け取った。また、普通の人に戻った田之頭後援会長は、「練習の鬼」と呼ばれた一流選手達の日々の鍛錬ぶりを引き合いに出し、選手達を鼓舞した。
そして浅田監督がアカペラで「When you wish upon a star(星に願いを)」を英語で熱唱し、パーティーは幕を閉じた。アカペラで人に聴かせられるほどの歌声を持つ日本の自転車競技関係者は、恐らく浅田監督以外、片手ほどもいないだろう。
今年の結果はそれぞれだが、選手達の話しぶりを見ていると、人間としての成長が見てとれ、若者の未来に幸多かれと思わずにいられないパーティーであった。しかし、日本代表となっている選手には翌年2月のアジア選手権が迫る。3月の欧州遠征もそこから間もなくとなる。戦いはもう、始まっている。
EQADS 2017年所属選手(2016年12月17日時点)
石上優大(AVC AIXOISへ派遣)
渡邉歩(Team cycliste Morningへ派遣)
新城雄大
浜田大雅
蠣崎優仁
ユース選手
津田悠義
準所属選手
小笠原匠海(八王子桑志高)
photo:Yuichiro Hosoda, Midori Shimizu
text:Yuichiro Hosoda
浅田監督の中学時代からの先輩である富澤一慶さんの乾杯で始まったパーティーは、日本代表合宿参加の蠣崎優仁と、所用により欠席した3名を除く8名の選手が参加。歓談を挟んで浅田顕監督による2016年の活動報告が行われ、選手を1人1人壇上に上げながら、個別の成績やキャラクターなどが紹介されていった。
そこで発表されたのが、城田大和の引退と内野直也の卒業だ。城田、内野ともにエカーズがカバーするU23の最終年を終了し、人生の次なるステージへと進む。宇都宮ブリッツェンから欧州挑戦を望みやってきた城田は、レースの世界からは退き、今後についてはひと息入れてこれから決めていくと言う。今季キャプテンとして選手達のまとめ役も担ってきた内野は、神奈川を拠点にサイクルイベントやセミナーを手がけるウォークライドのクラブチームへと移籍し、競技活動を続ける予定だ。
残り僅かとなったU23の時間を欧州遠征に賭けた津村翔平は、4月のロックフォール・ド・コルビエールで総合優勝も、プロ入りには届かずエカーズでの活動を終了することとなった。他、小野寛斗、椙田明仁がエカーズでの活動を今季限りで終える。
新城雄大は初めての欧州レースへの順応に苦戦しながら過ごした1年だったようだが、U23最終年となる来季に望みを繋ぎ、エカーズでの挑戦を続ける。ジュニア世代では、蠣崎優仁がカナダのネイションズカップで総合7位に入るなど、頭角を現してきた。浜田大雅はインターハイロードレースで準優勝、最年少の中学生ライダー・津田悠義はチャンレンジロードレースA-Yクラスで優勝を遂げるなどしており、両名とも昨年末よりひと回り大きくなった印象だ。
石上優大は、前半の欧州でこそ大きな成績を収められなかったものの、全日本選手権ロードレースのエリート男子で17位、ジャパンカップで31位でUCIポイント獲得と、着実なステップを踏んだ。石上と同学年ながら生まれ年の関係でジュニアカテゴリーを走った渡邉歩は、初めて欧州でシーズンを過ごし、フランスアマチュア第2カテゴリーで1勝を挙げた。渡邉も来季よりU23で走ることになる。
またこの両名は、エカーズとは別にフランスの名門クラブチームへと派遣され、2017年のレース活動を行う。所属先は、石上がフランス・ブロヴァンス地方のAVC AIXOIS(アミカル・ヴェロクラブ・エクス)、渡邉がフランス・ミディーピレネー地方のTeam cycliste Morning(現Team Payname、16年は面手利輝が所属)で走り、本格的に自らの力を試し、高めていく。
興味深いのは彼らが同じチームで走るのではなく、各チーム1人ずつの派遣となっている事だ。チームの受け入れ体制など諸事情もあろうかと思うが、日本人同士で固まることなくフランス語でのコミュニケーション能力を高め、本場のレース環境に順応するには、厳しくもより良い環境が準備されたと言えよう。
選手紹介の最後には小笠原匠海の準所属選手としての加入が発表された。小笠原は2000年生まれ180cm、現在八王子桑志高校の2年生で、今年の全日本選手権タイムトライアルU17+U15で2位の成績を収めている。公式戦は八王子桑志高の選手として走りながら、エカーズの活動にも参加する。
厳しい現実との戦いに道筋を示すEQADSの活動
続く2017年の活動案内では、「プロレーサーへの道」と言う図とともに、ロードレース界のみに限らず、スポーツ界を取り巻く現実の厳しさが示された。その中における浅田監督率いるエカーズの活動趣旨はこうだ。
とかく競技をやる選手達は、やればやるほど専門性を追いかけてしまうが、歳を取るほどに夢や憧れよりも現実が大きな存在となる。いざ競技生活を辞めた時にそれでは何も出来ない人間になってしまう。そのため準所属となっているより若い選手達は、まず勉強や様々なスポーツをして、多くの事を吸収していくこと。その上でエカーズで走る決断をした選手、即ち欧州トッププロを目指す選手に、そのための環境を与えていく、と言う。
チームは例年通り3月にフランスへ渡り、欧州各地のネイションズカップ等を転戦、その最終戦であるツール・ド・ラヴニール出場を目標に戦っていく。また、日本代表への選抜も目標とし、そうなった場合はアジア選や世界選、ジャパンカップ等の国内UCIレースも見据えた活動がプラスされ、より多くの経験を積むこととなる。
これにより、エカーズ、石上・渡邉が進む欧州クラブチーム派遣、そこから日本代表へと、3本の柱でジュニア〜U23の若手を育て上げる道筋が見えたこととなる。浅田監督は現在ロード日本代表ヘッドコーチでもあり、変わらずフラットな目で選手を選ぶとしつつも、これらの柱を連携し選手の実力を高めていくためには、自らの目で年間の活動状況を把握出来るエカーズが良い受け皿となっている事は間違いない。
殿、ご乱心!? ラップフリースタイルバトル勃発
パーティーと言うからには真面目な話だけで終わらないのが世の常。余興では、チーム広報の山崎健一氏の「山崎健一は不満である」と言うプレゼンに端を発したラップフリースタイルバトルが勃発。筆者も恥ずかしながらアフロのMCとして進行をお手伝いすることに。山崎氏が遠慮がちに「つーる、つーるって、いつ連れてってくれるんですか?」とラップを繰り出すと、浅田監督がいつもの姿からは想像出来ないほどにヒートしたラップで応戦し、観客の大拍手を得て圧勝。
その直後にピンクのアフロを被ったエキップアサダ後援会長・田之頭氏が乱入。殿(浅田監督)とチームへの想いをラップのビートに乗せてソロで綴ると、続いて選手達がステージに上がりラップバトルを繰り広げた。
初戦は浜田大雅vs津田悠義。スタイルからノリノリの浜田に対し、学生服姿のまま応戦した津田が互角の戦いを見せ引き分け。サイタマノラッパー内野直也と沖縄の巨艦城田大和の対戦は、一見互角もエカーズの先輩として内野が僅差で勝利。
最後は同学年ライバル対決となった石上優大と渡邉歩。お互い似たようなクリスマスビートを使い、ネタが被った事に苦笑いしつつも見事なラップを披露。これも判定に迷う接戦となり、山崎氏の「決着はロードの上で」の一言で、この場では引き分けに持ち込まれた。
「いつも選手に全力でやれと言っている大人達が、まず全力を出すところを見せなければ!」と山崎氏の発案で始まったこの企画だが、選手達の準備はレースに臨む姿勢さながら、その度胸とスピーディーなラップに、大人がやられた形となった(一応大人の我々もあれで全力だったんです)。
ラップフリースタイルバトルの後は歓談を挟んで選手挨拶へと移り、内野と城田が浅田監督より花束を受け取った。また、普通の人に戻った田之頭後援会長は、「練習の鬼」と呼ばれた一流選手達の日々の鍛錬ぶりを引き合いに出し、選手達を鼓舞した。
そして浅田監督がアカペラで「When you wish upon a star(星に願いを)」を英語で熱唱し、パーティーは幕を閉じた。アカペラで人に聴かせられるほどの歌声を持つ日本の自転車競技関係者は、恐らく浅田監督以外、片手ほどもいないだろう。
今年の結果はそれぞれだが、選手達の話しぶりを見ていると、人間としての成長が見てとれ、若者の未来に幸多かれと思わずにいられないパーティーであった。しかし、日本代表となっている選手には翌年2月のアジア選手権が迫る。3月の欧州遠征もそこから間もなくとなる。戦いはもう、始まっている。
EQADS 2017年所属選手(2016年12月17日時点)
石上優大(AVC AIXOISへ派遣)
渡邉歩(Team cycliste Morningへ派遣)
新城雄大
浜田大雅
蠣崎優仁
ユース選手
津田悠義
準所属選手
小笠原匠海(八王子桑志高)
photo:Yuichiro Hosoda, Midori Shimizu
text:Yuichiro Hosoda
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