国内のホビーレースで一世を風靡したエヴァディオのカーボンレーシングフレーム、VENUS(ヴィーナス)がカムバック。持ち味だったダイレクト感はそのままに振動吸収性を高め、トータルバランスを引き上げた新型「RS」をインプレッションした。



エヴァディオ VENUS RS(カーボンブラック)エヴァディオ VENUS RS(カーボンブラック) (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
2008年のデビュー以来、レースを前提とした確かな走行性能とリーズナブルなプライスで、瞬く間にホビーレーサー界で人気を博したエヴァディオのレーシングバイク、VENUS。日本国内のプロショップのネットワークから産声を上げ、高剛性をテーマにしたシャープな乗り味は実業団レベルの選手や学連選手など、上級者から強い支持を受けてきた。

デビューモデルの「SL」、2010年にはヘッドチューブとフロントフォークの剛性アップを果たした「01」、更にはスモールサイズの「α」の追加など変化を遂げてきたVENUSだが、ここ数年、エヴァディオは生産工場の都合からチタンロードのPEGASUS(ペガサス)シリーズに主力をシフト。VENUSは期待の声を受けながらも影を潜めてきた。そんな3年間にも及ぶ沈黙を破ってフルモデルチェンジを遂げ、更にはエヴァディオオリジナルホイールのアナウンスと共にデビューしたのが、今回インプレッションを行うVENUS「RS」である。

扁平形状となったシートステー。トップチューブを合わせて乗り心地を高めている扁平形状となったシートステー。トップチューブを合わせて乗り心地を高めている どこか先代の面影を漂わせるヘッドチューブどこか先代の面影を漂わせるヘッドチューブ 内部にリブを設けた、エヴァディオオリジナルのフロントフォーク内部にリブを設けた、エヴァディオオリジナルのフロントフォーク


フレーム形状はエアロ形状を取り入れ一新されている。ホリゾンタル化されたトップチューブ、カムテール断面を採用した力強いダウンチューブ、リアホイールに沿った形状を持つエアロシートチューブとシートポストなど、最新スタイルに変化しながらも従来の面影が色濃く残されており、かつてのVENUSユーザーにとっても馴染みやすい。

先代VENUSシリーズは高剛性をテーマにしていた分、ピュアレーサー受けはしたものの、反対に一般ユーザーからは「硬すぎて乗れない」という声が多く上がっていたという。そこでVENUS RSはペダリング時のダイレクト感や加速感はそのままに振動吸収性を増し、シッティング時の快適性を上げ乗りやすいよう工夫されている。

直線的なラインを描くチューブ集合部。シートポストのクランプは2本締めだ直線的なラインを描くチューブ集合部。シートポストのクランプは2本締めだ 扁平なトップチューブ。振動吸収性に貢献している扁平なトップチューブ。振動吸収性に貢献している

トップチューブ後端に入るRSロゴ。シートクランプはインテグレートされているトップチューブ後端に入るRSロゴ。シートクランプはインテグレートされている カムテール断面を採用した力強いダウンチューブカムテール断面を採用した力強いダウンチューブ


快適性に関してはトップチューブとシートステーを扁平形状にし、使用するカーボン素材をT1000とT800に使い分けることで、剛性と振動吸収性の両立をクリア。これによって振動吸収性はもとより脚への負担も減らし、マイルドな味付けになるよう調整が行なわれており、大多数のホビーユーザーにとっては歓迎すべき設計変更と言えるだろう。

フレーム構造面での変更は無く、フレーム内部にリブを設けることで剛性を高める「RPS(リブパワーシステム)」は先代より継続され、引き続きフロントフォークのブレードとダウンチューブに採用されている。ボトムブラケットのプレスフィット化や、非常に力強いBB〜チェーンステーのフォルム、そしてストレート形状のフォークで持ち味の走行性能を追求した。

力強さを漂わせる、直線的なデザインのチェーンステー力強さを漂わせる、直線的なデザインのチェーンステー アルミストレートプルスポークを使用するRS25ホイール。ハブもオリジナルだアルミストレートプルスポークを使用するRS25ホイール。ハブもオリジナルだ


ヘッドパーツは従来のゼロスタック仕様からインテグラル仕様へと変更することで軽量化され、フレーム重量は520で1003g(塗装無し)。昨今のカーボンロードバイクにおいては決して軽量ではないが、耐久性や、月に1000km以上乗り込むようなレーサーからすれば安心できる数値と言えるだろう。

また、今回のテストバイクにセットされた、エヴァディオオリジナルのRS25ホイールについても少々解説しておきたい。前後セット99,800円のペア重量1472gというアルミレーシングホイールであり、エアロ形状のアルミストレートプルスポークなどで剛性を強化した製品だ。エヴァディオでは価格に合わせて全5種類のオリジナルホイールを用意しており、新型VENUSと合わせて注目の存在である。

エアロを意識したシートチューブ。カーボン素材はT800だエアロを意識したシートチューブ。カーボン素材はT800だ 専用のエアロ形状カーボンシートポスト専用のエアロ形状カーボンシートポスト ダウンチューブにさりげなくあしらわれたVENUS RSの文字ダウンチューブにさりげなくあしらわれたVENUS RSの文字


本来のAVEDIOのコンセプトである、ハイクオリティー、ハイコストパフォーマンスを貫いたまま、復活を遂げたVENUS。新なエヴァディオ神話の始まりを告げる、ホビーレーサー大注目の一台の性能に迫る。



ー インプレッション

「高負荷の状況でも、パワーを上手く推進力に繋げてくれる」藤岡徹也(シルベストサイクル)

初代VENUSが荒削りに感じてしまう、高い完成度があるバイクです。剛性感は高いのですが、長距離を乗っても後半に踏める絶妙な味付けですね。普段トレーニングを積んでいる方がレースに出たり、練習会でハイテンポの走りをするような状況に向いています。

その理由は、大きなパワーを掛けてもしっかりと受け止めて、そんなストレスがかかる状態でも推進力に繋げてくれる部分。高い速度域で活きるバイクですし、そしてそこからの勝負をかけた時の加速感にも優れています。ダウンチューブやフロントフォークの強さがよく目立っていて、個人的にもとても好み。負荷が掛かっていてもキチンと走って、曲がって、そして減速できるレースバイクだと言えます。

「高負荷の状況でも、パワーを上手く推進力に繋げてくれる」藤岡徹也(シルベストサイクル)「高負荷の状況でも、パワーを上手く推進力に繋げてくれる」藤岡徹也(シルベストサイクル)
しなりは感じるものの、おかしなロスや逃げはありません。初代と違ってガチガチではなく、バランスに優れているためどんな方でも乗りやすくなりました。直進安定性が強く乗りやすい部分もポイントです。スローペースで乗るだけですと、剛性があるだけに重たく感じてしまうかもしれませんが、大きなパワーをかけた時に伸びてくれるんです。

振動吸収性に関してもまずまず。最近のバイクはどれも振動吸収性が上がって目立たなくなってきましたが、レースバイクとして考えれば合格ライン。平均点以上の乗り心地はありますし、前述の通り長距離を走っても足残りが高いと考えられますね。

つまりは登りや下り、アタック合戦やお見合いなどペースの緩急が連続して現れるロードレース向けだと感じました。嫌なたわみが無いためスプリントに参加しても引けを取りませんし、ホイール次第でどんな場所にも対応してくれるはずです。

今回のRS25ホイールはかなり出来が良いですね。アルミスポークで10万円以下の製品は貴重ですし、明らかに値段以上の価値を感じます。伸びはディープリムに負けますが、剛性が高いため負荷を掛けたコーナリングでもヨレや不安がありません。全体的にバランスが取れて軽快感があり、アルミスポークのマヴィック・キシリウムやフルクラム・レーシングゼロに近い乗り味でしょうか。普段使いホイールにあまり予算をかけたく無い方にドンピシャはまる製品。そういえば山崎店長が痛く気に入って、シルベストサイクルで在庫を多く仕入れたんですよ(笑)。

このVENUSは2台目に所有するバイクとしても満足できるコストパフォーマンスが特徴です。ヨーロッパブランドよりずっとリーズナブルですし、レースでガンガン使うとなると破損の恐れも当然付きまとうため、できれば投資は抑えたいですから。とても好みのバイクでした。

「レースとロングライドをどちらも楽しむ方に」渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)

一言でVenus RSを表すならエアロ形状のオールラウンドバイクでしょうか。登場当時のVENUSにあった、もの凄く硬いイメージと比較すると、とても優しい乗り味になりました。パワーを掛けるとダイレクトに反応してくれる剛性がありますが、決して足に負担を強いるようなスパルタンさはありません。レースやロングライドの最終盤まで足を残すことができるバイクと言えるでしょう。

「レースとロングライドをどちらも楽しむ方に」渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)「レースとロングライドをどちらも楽しむ方に」渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)
とても硬そうな見た目なのですが、扁平形状のシートステーがによって振動吸収性が高められています。他社のレーシングバイクよりも体に優しく、どのような状況でも乗り心地の良さが活きてくるでしょう。

全体的にはニュートラルかつマイルドな味付けであり、ルーラーやパンチャーに向いている印象を持ちました。レース派、非レース派を問わず、淡々と踏んでいくのが好みの方には良いでしょう。ハンドリングがゆったりめで、車体の倒れ込みが遅いため、俊敏な動きを求める方にはどうかな?と思いますが、ロングライドにはもってこいですし、常に巡行している高速サーキットレースには向いていると感じます。

それから、ダンシング時の車体の振りがとても軽いことにも気づきました。剛性のためか特にフロント周りが軽く、ダンシングを多用してヒルクライムを楽しむ方にもオススメです。ルックスがエアロ形状ですから、ディープリムホイールを組み合わせてアップダウンのあるレースに参加するのも良いでしょう。私はリムハイト35〜50mmのホイールを使って安定感を目立たせるのが良いかもしれないと感じました。

フレームセットの価格が27万円と聞いて驚きました。とても安いですね。戦闘機のような雰囲気も感じますし、優秀な万能フレームだと言えるでしょう。

エヴァディオ VENUS RS(カーボンブラック)エヴァディオ VENUS RS(カーボンブラック) (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
エヴァディオ VENUS RSフレームセット
フレームサイズ:460、490、520、550
カラー:カーボンブラック、イエロー、レッド
FD:直付
BB規格:BB86
価格:278,000円(税抜)、シマノ105完成車参考上代:378,000円(税抜)
付属パーツ:カーボンシートポスト、トップキャップ、アンカーナット、ヘッドセット、アルミライトスペーサー、ボトル用アルミボルト、ワイヤーリード、Di2専用グロメット、ビルトインバッテリーアダプター



インプレッションライダーのプロフィール

藤岡徹也(シルベストサイクル)藤岡徹也(シルベストサイクル) 藤岡徹也(シルベストサイクル)

シルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める28歳。プロロードレーサーとしてマトリックスやNIPPOに所属し国内外のレースを転戦。ツール・ド・フクオカでは優勝、ツール・ド・熊野の個人TTで2位などの実績を持つ。今もシルベストの一員として実業団レースに参戦中。スタッフとして乗り方や最適なアイテムの提案、走行会を通じて「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。

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渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)渡辺匡(スポーツサイクルサカモト) 渡辺匡(スポーツサイクルサカモト)

新潟県三条市のスポーツサイクル サカモトで、メカニック作業から接客まで幅広く担当する。自転車にのめり込んだきっかけはオートバイレースのトレーニング。ロードバイクやMTB、小径車などジャンルを問わず探求し、特にブロンプトンに関しては造詣が深い。接客では製品のメリットとデメリットを丁寧に説明した上で、ユーザーに適したサービスや製品を提案することを大切にしている。

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ウェア協力:ピアソン

text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO

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