2016/08/30(火) - 04:08
ブエルタ中盤戦最大の山場である超級山岳ラゴス・デ・コバドンガでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタック。圧倒的な登坂力を見せたコロンビアンクライマーがステージ優勝とマイヨロホを手にした。
長い長い1週目の最後を飾るのが超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ(12.2km/平均7.2%)の山頂フィニッシュ。海岸線近くの緩いアップダウンをこなし、残り40km地点の1級山岳ミラドル・デル・フィト(6.2km/平均7.8%)を経て内陸へ。残り12km地点からアストゥリアスを代表するラゴス・デ・コバドンガの登坂が始まる。
平均勾配は7.2%だが、山頂近くに何ヶ所か下り区間が登場することから実質的な勾配が10%近いコバドンガ。1983年の初登場以来、実に19回もフィニッシュを迎えてきた標高1110mの超級山岳でのバトルを経てブエルタは最初の休息日を迎える。
この日の朝、会場まで徒歩5分の場所に住む小林海がスタート地点に登場。ツール・ド・ラヴニールから前夜に帰宅したというU23全日本チャンピオンが別府史之(トレック・セガフレード)や新城幸也(ランプレ・メリダ)を訪問した。
正式なスタートが切られるとともに集団先頭はアタックと吸収の繰り返し。新城と別府もアタック合戦に加わったが先行するには至らない。
ハイスピードで進行する集団内では落車が断続的に発生し、ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)、マルケル・イリサール(スペイン、トレック・セガフレード)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ボーラ・アルゴン18)がリタイアを強いられている。
マイヨプントスを着るジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)や総合9位ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)も落車に巻き込まれたが、長い追走の末に集団に復帰。逃げが決まったのはレース開始から1時間半が経ってからだった。
70km地点で抜け出したのはロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)やファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)、ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)、オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)を含む16名。キャノンデール・ドラパックはピエール・ロラン(フランス)、モレーノ・モゼール(イタリア)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)の3名を逃げに送り込むことに成功する。
逃げグループとメイン集団のタイム差は残り66kmの時点で5分30秒。エティックス・クイックステップとモビスターの集団コントロールによってタイム差は縮まり、逃げグループは4分リードで1級山岳ミラドル・デル・フィトの麓に到着する。
大西洋を見下ろす峠の頂上が近づくと、2年連続山岳賞を狙うフライレがアタック。単独で頂上を通過したフライレには他の逃げメンバーが追いつき、メイン集団から3分リードで超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登坂を開始した。
勝負を決める超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登りで逃げグループは崩壊。残り8km地点でロランが独走に持ち込んだものの、しばらくしてヘーシンクが追いつく。ツール・ド・スイスで落車して脳震盪を負い、その影響でしばらくレースから遠ざかっていたヘーシンクが先頭を奪った。
一方のメイン集団ではメンバーを多く残したモビスターがハイペースを刻んでコバドンガを突き進む。すると頂上まで10kmを残してツール・ド・フランス総合優勝者クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が脱落。チームメイトにサポートされながらもフルームは40秒近いタイムを失ってしまう。
モビスターの集団牽引が終わると残り6km地点でアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)がアタック。ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がすぐ反応したのに対し、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)やマイヨロホを着るダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)は脱落した。
攻撃の手を弱めずにハイペースを維持したキンタナは残り4kmでコンタドールをふるい落とすと、先頭ヘーシンクまで一気にジャンプし、そして追い抜いてしまう。先頭に躍り出たキンタナは最大勾配17.5%の最終ストレートを駆け上がり、曇ったコバドンガの空に右手の拳を突き上げた。
一旦は失速しながらも一定ペースを刻んで挽回したフルームは、キンタナから遅れたコンタドールやバルベルデを追い抜いて2番手に浮上。逃げていたヘーシンクやフライレとともに残り1kmを切り、キンタナから25秒遅れのステージ3位でフィニッシュした。積極的に動きながらも終盤に失速したコンタドールは1分05秒遅れている。
自身初のブエルタステージ初優勝を飾り、総合首位に返り咲いたキンタナ。「今日の走りでブエルタ総合優勝に向けた戦いに自信がついた。モビスターが献身的に走ってくれたので、ステージ優勝で報いたいと強く思ったんだ。今までこのコバドンガでの勝利を夢見てきた」と、笑顔を浮かべて記者の質問に答える。
「ちょうどフェルナンデスのペースメイクが終了したタイミングでアルベルトがアタックし、反応してついていった。そこからフルームを引き離すために2回ほどアタックしたんだ。でもフルームとのタイム差は広がらなかった。これからもチームとして攻撃を続け、彼をふるい落とす必要がある」とブエルタ総合リーダーはコメント。モビスターはキンタナとバルベルデの総合ワンツー体制を築いている。
休息日を前にフルームはキンタナから58秒遅れの総合3位に。チャベスが2分09秒遅れの総合4位、コンタドールが2分54秒遅れの総合5位で続いている。マイヨプントスはバルベルデが獲得。1級山岳を先頭通過するとともにステージ4位に入ったフライレがマイヨモンターニャを手にしている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージ結果
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 4h50’31”
2位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ) +24”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +25”
4位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) +28”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
7位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +1’02”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +1’05”
9位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +1’09”
10位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +1’11”
11位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +1’24”
15位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +1’31”
19位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+1’34”
32位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ) +3’15”
86位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +13’31”
87位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +13’56”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 38h37’07”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +57”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +58”
4位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +2’09”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +2’54”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +2’57”
7位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ) +3’03
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +3’06”
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) +3’14”
10位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +3’20”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 65pts
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 60pts
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 53pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 20pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 19pts
3位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) 19pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 10pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 21pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 23pts
チーム総合成績
1位 モビスター 114h54’34”
2位 キャノンデール・ドラパック +3’40”
3位 チームスカイ +4’54”
敢闘賞
ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)
text&photo:Kei Tsuji in Oviedo, Spain
長い長い1週目の最後を飾るのが超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ(12.2km/平均7.2%)の山頂フィニッシュ。海岸線近くの緩いアップダウンをこなし、残り40km地点の1級山岳ミラドル・デル・フィト(6.2km/平均7.8%)を経て内陸へ。残り12km地点からアストゥリアスを代表するラゴス・デ・コバドンガの登坂が始まる。
平均勾配は7.2%だが、山頂近くに何ヶ所か下り区間が登場することから実質的な勾配が10%近いコバドンガ。1983年の初登場以来、実に19回もフィニッシュを迎えてきた標高1110mの超級山岳でのバトルを経てブエルタは最初の休息日を迎える。
この日の朝、会場まで徒歩5分の場所に住む小林海がスタート地点に登場。ツール・ド・ラヴニールから前夜に帰宅したというU23全日本チャンピオンが別府史之(トレック・セガフレード)や新城幸也(ランプレ・メリダ)を訪問した。
正式なスタートが切られるとともに集団先頭はアタックと吸収の繰り返し。新城と別府もアタック合戦に加わったが先行するには至らない。
ハイスピードで進行する集団内では落車が断続的に発生し、ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)、マルケル・イリサール(スペイン、トレック・セガフレード)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ボーラ・アルゴン18)がリタイアを強いられている。
マイヨプントスを着るジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)や総合9位ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)も落車に巻き込まれたが、長い追走の末に集団に復帰。逃げが決まったのはレース開始から1時間半が経ってからだった。
70km地点で抜け出したのはロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)やファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)、ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)、オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)を含む16名。キャノンデール・ドラパックはピエール・ロラン(フランス)、モレーノ・モゼール(イタリア)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)の3名を逃げに送り込むことに成功する。
逃げグループとメイン集団のタイム差は残り66kmの時点で5分30秒。エティックス・クイックステップとモビスターの集団コントロールによってタイム差は縮まり、逃げグループは4分リードで1級山岳ミラドル・デル・フィトの麓に到着する。
大西洋を見下ろす峠の頂上が近づくと、2年連続山岳賞を狙うフライレがアタック。単独で頂上を通過したフライレには他の逃げメンバーが追いつき、メイン集団から3分リードで超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登坂を開始した。
勝負を決める超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの登りで逃げグループは崩壊。残り8km地点でロランが独走に持ち込んだものの、しばらくしてヘーシンクが追いつく。ツール・ド・スイスで落車して脳震盪を負い、その影響でしばらくレースから遠ざかっていたヘーシンクが先頭を奪った。
一方のメイン集団ではメンバーを多く残したモビスターがハイペースを刻んでコバドンガを突き進む。すると頂上まで10kmを残してツール・ド・フランス総合優勝者クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が脱落。チームメイトにサポートされながらもフルームは40秒近いタイムを失ってしまう。
モビスターの集団牽引が終わると残り6km地点でアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)がアタック。ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がすぐ反応したのに対し、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)やマイヨロホを着るダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)は脱落した。
攻撃の手を弱めずにハイペースを維持したキンタナは残り4kmでコンタドールをふるい落とすと、先頭ヘーシンクまで一気にジャンプし、そして追い抜いてしまう。先頭に躍り出たキンタナは最大勾配17.5%の最終ストレートを駆け上がり、曇ったコバドンガの空に右手の拳を突き上げた。
一旦は失速しながらも一定ペースを刻んで挽回したフルームは、キンタナから遅れたコンタドールやバルベルデを追い抜いて2番手に浮上。逃げていたヘーシンクやフライレとともに残り1kmを切り、キンタナから25秒遅れのステージ3位でフィニッシュした。積極的に動きながらも終盤に失速したコンタドールは1分05秒遅れている。
自身初のブエルタステージ初優勝を飾り、総合首位に返り咲いたキンタナ。「今日の走りでブエルタ総合優勝に向けた戦いに自信がついた。モビスターが献身的に走ってくれたので、ステージ優勝で報いたいと強く思ったんだ。今までこのコバドンガでの勝利を夢見てきた」と、笑顔を浮かべて記者の質問に答える。
「ちょうどフェルナンデスのペースメイクが終了したタイミングでアルベルトがアタックし、反応してついていった。そこからフルームを引き離すために2回ほどアタックしたんだ。でもフルームとのタイム差は広がらなかった。これからもチームとして攻撃を続け、彼をふるい落とす必要がある」とブエルタ総合リーダーはコメント。モビスターはキンタナとバルベルデの総合ワンツー体制を築いている。
休息日を前にフルームはキンタナから58秒遅れの総合3位に。チャベスが2分09秒遅れの総合4位、コンタドールが2分54秒遅れの総合5位で続いている。マイヨプントスはバルベルデが獲得。1級山岳を先頭通過するとともにステージ4位に入ったフライレがマイヨモンターニャを手にしている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージ結果
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 4h50’31”
2位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ) +24”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +25”
4位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) +28”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
6位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
7位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +1’02”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +1’05”
9位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +1’09”
10位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +1’11”
11位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +1’24”
15位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +1’31”
19位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+1’34”
32位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ) +3’15”
86位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +13’31”
87位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +13’56”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 38h37’07”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +57”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +58”
4位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +2’09”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +2’54”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +2’57”
7位 ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ) +3’03
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +3’06”
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) +3’14”
10位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +3’20”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 65pts
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 60pts
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 53pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 20pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 19pts
3位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) 19pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 10pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 21pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 23pts
チーム総合成績
1位 モビスター 114h54’34”
2位 キャノンデール・ドラパック +3’40”
3位 チームスカイ +4’54”
敢闘賞
ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)
text&photo:Kei Tsuji in Oviedo, Spain
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