2016/07/22(金) - 18:17
スタート待つ街サランシュのチームバスエリアは各選手のバイクセットアップに追われていた。機材選択が重要になる登り個人TTのステージに、各チームや選手はそれぞれの考え方で組み合わせを選んだ。
第1ライダーのスタートが11時45分。それまでチームの監督・コーチ陣はチームカーでコースをインスペクション。選手もチームカーに乗り込んで、またはスタート時間に余裕のある選手たちはバイク実走で試走するなど、モチベーションのある選手たちはこのコースをどう攻略するかを盛んに研究していた。
17kmかけて高低差659mを登るタイムトライアルコース。スタートから4km平坦路が続き、勾配のあるコート・ド・ドマンシー(2.5km/平均9.4%)まで一気に駆け上がり、5%ほどの緩斜面を経て標高1,219mのコート・ド・ショゾー(3.1km/平均5.4%)でピークを迎える。最後は約2kmのダウンヒルを経てフィニッシュ地点のメジェーヴへ。ただひたすら登りっぱなしではなく、上りも平坦も、緩斜面も、ダウンヒルもフルミックスされている。
総合争いとステージ上位狙いに関係ない選手はロードステージと変わらないノーマルバイクだ。しかしそれ以上を狙っていこうとすると、機材選択も走り方に大きく影響する。とくに総合上位系はTTバイク、ノーマルバイクのカスタム版、ハンドルとホイールの組み合わせをいくつか用意し、選択の幅をもたせたようだ。もちろんこの短い17kmのTTでは途中でタイムロスをとってバイクを乗り換えることはできない。
これほどまで機材選択にバラつきがでたTTは過去に無いかもしれない。選択は選手自身の自由だが、希望を伝えるメカニックたちとの共同作業だ。
クリス・フルームはTTバイクに前後ディスクという完全武装で臨んだ。チームスカイはそのセットアップをメカニックバス内で行うため外から伺うことはできない。しかし出走前に義務付けられているUCIの規定チェックには、ほぼ同じ仕様のTTバイク2台が持ち込まれた。2台ともがTTバイク+TTハンドル、前バトン、後ディスクホイール。ギア歯数はアウターが54T。インナー歯数は確認できなかったが、リアは30Tスプロケットにノーマルケージディレイラーを使用していることから、前の歯数を小さくしたと思われる。
フルームは自身で試走を行い、通常のロードバイクをベースとしたものがふさわしいと判断したが、チームはコースを分析した結果、TTバイクのほうが速いと結論を出した。フルームはその決定に従った。この日バトンホイールとディスクホイールのセットを選んで走ったのはフルームだけだ。
第13ステージのTTの覇者トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) はTTバイクに前後ディープリムホイールを採用した。フレームとハンドルセットは平坦系13ステージで優勝したものののままのセッティング。ホイールのリム高は50mmと控えめで、もちろん上りで軽い選択だ。
優勝候補にも挙がったリッチー・ポート(BMCレーシング)のピットでは、ノーマルバイク+クリップオンバー仕様のバイクとディスクホイールをセットしたTTバイクの両方(両極端)が用意されていた。十分に試走を行ったことで、かつて勝利したパリ〜ニース最終ステージのエズ峠のタイムトライアルと似ていると感じたポートは、迷わずにノーマルバイク版のほうを選んだ。ホイールもリムハイト低めの前24mmm,後50mmをチョイス。フルームとはまったく対象的なセッティングになった。
バウク・モレマ(トレック・セガフレード)のピットはホイール選択に迷いがあったようだ。選んだベースバイクは上りステージでモレマが通常から乗るトレック・エモンダにクリップオンバーの組み合わせ。ホイールはマークを消した社外品を含め数本を出し、時間を経るごとに組み合わせが変わっていた。最終的には前50、後30mmハイトのものをセットしたバイクと、後輪に軽量のテンション構造ディスクをセットしたものの2台を用意した。
ロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)はノーマルバイクをチョイス。電動メカのスラムeTapを好むが、Rディレイラーにロングケージのものが無いため、ケージを差し替えたものを使用して対応していた。32Tといった大スプロケットを使用するためだ。
トップ10に返り咲きたいロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)はノーマルバイクの無塗装版フレームを用意。塗装が無いと150g程度軽いというデータがある。クリップオンバーはカーボンのワンオフもの。ビッグプーリーに差し替えられ、摩擦抵抗を減らすパウダーコートのチェーンを使用する。
タイヤにはクリンチャーを選ぶ。タイヤ太さは後:26mm、前:24mm。後輪タイヤに採用した26cタイヤは外径は太いがトレッドは24c等と同じもので重量増は少なめ。太いタイヤは転がり抵抗が少ないというが、26cでしかもクリンチャーという選択。ティンコフなどスペシャライズドのサポートチームにはかつての選手パチ・ビラがテクニカル系のアドバイスを行っているという。
「パチは様々な細かいデータを持っていて思いもよらないアドバイスをしてくれるので興味深いですね」と中野喜文マッサーは話す。ちなみにリタイアしたコンタドールのためにはノーマルバイクにTTハンドルをセットしたカラーリングまで特別なバイクが用意されていたそうだが、使われずじまいでお蔵入りだ。
午前は涼しかったもののスタート時間の昼近くになると急に日差しが強くなり、夕方までうだる暑さが続いた。ツールの行方を決める上りTTとあって、細いローカル道のコース沿道にはたくさんの観客が詰めかけた。モンヴァントゥーの混乱以来のカオスが心配されるほどの人出だったが、この日の観客たちは選手の横を走って追いかけたり、顔に近いところで旗を振ったり、下品なコスプレをしてはしゃいだりという行為は(見た範囲で)ほとんど無かった。あの一件以来、著しいマナーの向上を感じる。
勝負を分けたのは機材選択とペース配分、そして何より脚の状態。昨日の難関山岳ステージは30分以上遅れたグルペットでフィニッシュし、より脚をフレッシュな状態で今日のステージに臨んだトム・ドゥムランは、中盤スタートで暫定トップを記録して長くホットシートに座ったが、緩勾配区間でスピードに乗せられなかったことで、ステージ優勝できない走りであることを悟っていた。
「満足行く走りだけど、ステージを勝つまでには十分なものじゃなかった。ベストな調子のフルームならきっと僕のタイムを上回る」。
フルームとドゥムランの走りは、見た目にも大きく違っていたように感じた。急勾配の上り区間でドゥムランがシッティングに徹してペースを保ったのに対し、序盤の平坦路で抑え気味に走ったフルームは急勾配で一気にペースを上げた。
ハンドルを握りしめ、ダンシングスタイルで高ケイデンスでペダルを回す。上りでは重さで不利になるディスクホイールを勢い良く回し、つけた慣性力でデメリットを帳消しにするかのように。フルームはTTバイクの取り回しとは思えない動きの軽さで上りを駆け上がった。しかし登り以外の区間ではしっかりサドルに腰を落ち着け、一定のペダリングでケイデンスを保った。
後半ペースを上げ、フィニッシュではドゥムランを21秒上回ったフルーム。
「トム(ドゥムラン)に勝てるとは思っていなかった。今日はペーシングのことだけを考えて走っていた。ワット数を確認しながら、失速しないように前半は抑えめに走り、後半に全てをぶつけた。機材選択が勝利につながった」。
試走の結果ノーマルバイクで走ることを考えたフルームに対し、フル装備のTTバイクが速いという結論をもってフルームにTTバイクの使用を勧めたチームスカイ。ブレイルスフォードGMも「クリス(フルーム)はディスクホイールを使った数少ない選手の一人だった。しかし我々はその計算に多大な時間を割いた。それが正しい結果となって現れたことに感謝したい」と、ほっとした表情で語った。
総合2位とのタイム差を2分27秒から3分52秒へ。2位以下のライバルたちに対してもさらに差を広げたことで、フルームはすでにマイヨジョーヌを確実にしたという実感があるようだ。もちろん落車やトラブルで覆るリスクはあるものの、優勝争いは決したいう自信を覗かせる。
パリまで3日、山岳は2つ。マイヨジョーヌを着てパリに着く自信はある。明日からの山岳ステージは厳しいけれど、もう山頂フィニッシュでアタックする必要はない。繰り広げられるのは2位以下の争いだろう。チームメイトとともにリスク無く確実に走りきりたい」。
シャンゼリゼの表彰台でのフルームの真ん中の立ち位置が決まったとしても、両脇はまだ不確定だ。フルームから1分25秒遅れとタイムを落としながら総合2位にとどまることができたバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)以下、総合2位以下の上位争いのタイム差は切迫してきている。上位争いの選手たちの中では今日の勝者はロメン・バルデ(フルームから42秒遅れ)、リッチー・ポート(33秒遅れ)、ファビオ・アル(33秒遅れ)の3人だろう。
「攻撃的にならないといけない。日曜日のパリで後悔したくないので、明日からの2日間は全力で挑む。フルームの総合リードは揺るぎないけど、総合2位以下は激しいバトルになる」(バルデ)。
「表彰台の可能性がまだ残っているので、これからも攻撃を継続したい。自分につきまとった不運は過去のものになり、これからのステージに向けて自信を得ている。厳しい山岳ステージで総合ライバルたちをさらに引き離したい」(ポート)。
「ニーバリをはじめ、チーム力は揃っている。アシストに徹してくれている彼に感謝しながら、今の良い状態を保ってパリまで戦い抜きたい」(アル)。
第3週のアルプスで調子を上げるはずのナイロ・キンタナ(モビスター)は今日も謎の不振に見舞われた。もともとこのステージの難易度が不足していることに「山岳TTとは言えないから差をつけるのは難しい」と話していたこのステージだが、タイムを失ってしまうのは予想外だ。不振にはアレルギーを疑う。
「もちろん疲れているけど、疲労が原因ではない。このあたり特有のアレルギー物質が、ここ数日の低迷の原因になっている可能性はある。もしそうであれば、明日から天候が悪化することが予想されているので、雨によって症状が緩和されることを望む。コンディションが悪いにもかかわらず総合表彰台を狙えるポジションにいることは悪くない」(キンタナ)。
予報通り明日からは天候が崩れ、雨が降る予報だ。暑さが和らぎ、空気中に漂う物質も落ち着く。山岳で発揮されるキンタナの爆発力は、このツールでまだ一瞬しか見れていない。
photo&text:Makoto.AYANO in Megeve, FRANCE
photo:Kei.TSUJI, TimDeWaele
第1ライダーのスタートが11時45分。それまでチームの監督・コーチ陣はチームカーでコースをインスペクション。選手もチームカーに乗り込んで、またはスタート時間に余裕のある選手たちはバイク実走で試走するなど、モチベーションのある選手たちはこのコースをどう攻略するかを盛んに研究していた。
17kmかけて高低差659mを登るタイムトライアルコース。スタートから4km平坦路が続き、勾配のあるコート・ド・ドマンシー(2.5km/平均9.4%)まで一気に駆け上がり、5%ほどの緩斜面を経て標高1,219mのコート・ド・ショゾー(3.1km/平均5.4%)でピークを迎える。最後は約2kmのダウンヒルを経てフィニッシュ地点のメジェーヴへ。ただひたすら登りっぱなしではなく、上りも平坦も、緩斜面も、ダウンヒルもフルミックスされている。
総合争いとステージ上位狙いに関係ない選手はロードステージと変わらないノーマルバイクだ。しかしそれ以上を狙っていこうとすると、機材選択も走り方に大きく影響する。とくに総合上位系はTTバイク、ノーマルバイクのカスタム版、ハンドルとホイールの組み合わせをいくつか用意し、選択の幅をもたせたようだ。もちろんこの短い17kmのTTでは途中でタイムロスをとってバイクを乗り換えることはできない。
これほどまで機材選択にバラつきがでたTTは過去に無いかもしれない。選択は選手自身の自由だが、希望を伝えるメカニックたちとの共同作業だ。
クリス・フルームはTTバイクに前後ディスクという完全武装で臨んだ。チームスカイはそのセットアップをメカニックバス内で行うため外から伺うことはできない。しかし出走前に義務付けられているUCIの規定チェックには、ほぼ同じ仕様のTTバイク2台が持ち込まれた。2台ともがTTバイク+TTハンドル、前バトン、後ディスクホイール。ギア歯数はアウターが54T。インナー歯数は確認できなかったが、リアは30Tスプロケットにノーマルケージディレイラーを使用していることから、前の歯数を小さくしたと思われる。
フルームは自身で試走を行い、通常のロードバイクをベースとしたものがふさわしいと判断したが、チームはコースを分析した結果、TTバイクのほうが速いと結論を出した。フルームはその決定に従った。この日バトンホイールとディスクホイールのセットを選んで走ったのはフルームだけだ。
第13ステージのTTの覇者トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) はTTバイクに前後ディープリムホイールを採用した。フレームとハンドルセットは平坦系13ステージで優勝したものののままのセッティング。ホイールのリム高は50mmと控えめで、もちろん上りで軽い選択だ。
優勝候補にも挙がったリッチー・ポート(BMCレーシング)のピットでは、ノーマルバイク+クリップオンバー仕様のバイクとディスクホイールをセットしたTTバイクの両方(両極端)が用意されていた。十分に試走を行ったことで、かつて勝利したパリ〜ニース最終ステージのエズ峠のタイムトライアルと似ていると感じたポートは、迷わずにノーマルバイク版のほうを選んだ。ホイールもリムハイト低めの前24mmm,後50mmをチョイス。フルームとはまったく対象的なセッティングになった。
バウク・モレマ(トレック・セガフレード)のピットはホイール選択に迷いがあったようだ。選んだベースバイクは上りステージでモレマが通常から乗るトレック・エモンダにクリップオンバーの組み合わせ。ホイールはマークを消した社外品を含め数本を出し、時間を経るごとに組み合わせが変わっていた。最終的には前50、後30mmハイトのものをセットしたバイクと、後輪に軽量のテンション構造ディスクをセットしたものの2台を用意した。
ロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)はノーマルバイクをチョイス。電動メカのスラムeTapを好むが、Rディレイラーにロングケージのものが無いため、ケージを差し替えたものを使用して対応していた。32Tといった大スプロケットを使用するためだ。
トップ10に返り咲きたいロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)はノーマルバイクの無塗装版フレームを用意。塗装が無いと150g程度軽いというデータがある。クリップオンバーはカーボンのワンオフもの。ビッグプーリーに差し替えられ、摩擦抵抗を減らすパウダーコートのチェーンを使用する。
タイヤにはクリンチャーを選ぶ。タイヤ太さは後:26mm、前:24mm。後輪タイヤに採用した26cタイヤは外径は太いがトレッドは24c等と同じもので重量増は少なめ。太いタイヤは転がり抵抗が少ないというが、26cでしかもクリンチャーという選択。ティンコフなどスペシャライズドのサポートチームにはかつての選手パチ・ビラがテクニカル系のアドバイスを行っているという。
「パチは様々な細かいデータを持っていて思いもよらないアドバイスをしてくれるので興味深いですね」と中野喜文マッサーは話す。ちなみにリタイアしたコンタドールのためにはノーマルバイクにTTハンドルをセットしたカラーリングまで特別なバイクが用意されていたそうだが、使われずじまいでお蔵入りだ。
午前は涼しかったもののスタート時間の昼近くになると急に日差しが強くなり、夕方までうだる暑さが続いた。ツールの行方を決める上りTTとあって、細いローカル道のコース沿道にはたくさんの観客が詰めかけた。モンヴァントゥーの混乱以来のカオスが心配されるほどの人出だったが、この日の観客たちは選手の横を走って追いかけたり、顔に近いところで旗を振ったり、下品なコスプレをしてはしゃいだりという行為は(見た範囲で)ほとんど無かった。あの一件以来、著しいマナーの向上を感じる。
勝負を分けたのは機材選択とペース配分、そして何より脚の状態。昨日の難関山岳ステージは30分以上遅れたグルペットでフィニッシュし、より脚をフレッシュな状態で今日のステージに臨んだトム・ドゥムランは、中盤スタートで暫定トップを記録して長くホットシートに座ったが、緩勾配区間でスピードに乗せられなかったことで、ステージ優勝できない走りであることを悟っていた。
「満足行く走りだけど、ステージを勝つまでには十分なものじゃなかった。ベストな調子のフルームならきっと僕のタイムを上回る」。
フルームとドゥムランの走りは、見た目にも大きく違っていたように感じた。急勾配の上り区間でドゥムランがシッティングに徹してペースを保ったのに対し、序盤の平坦路で抑え気味に走ったフルームは急勾配で一気にペースを上げた。
ハンドルを握りしめ、ダンシングスタイルで高ケイデンスでペダルを回す。上りでは重さで不利になるディスクホイールを勢い良く回し、つけた慣性力でデメリットを帳消しにするかのように。フルームはTTバイクの取り回しとは思えない動きの軽さで上りを駆け上がった。しかし登り以外の区間ではしっかりサドルに腰を落ち着け、一定のペダリングでケイデンスを保った。
後半ペースを上げ、フィニッシュではドゥムランを21秒上回ったフルーム。
「トム(ドゥムラン)に勝てるとは思っていなかった。今日はペーシングのことだけを考えて走っていた。ワット数を確認しながら、失速しないように前半は抑えめに走り、後半に全てをぶつけた。機材選択が勝利につながった」。
試走の結果ノーマルバイクで走ることを考えたフルームに対し、フル装備のTTバイクが速いという結論をもってフルームにTTバイクの使用を勧めたチームスカイ。ブレイルスフォードGMも「クリス(フルーム)はディスクホイールを使った数少ない選手の一人だった。しかし我々はその計算に多大な時間を割いた。それが正しい結果となって現れたことに感謝したい」と、ほっとした表情で語った。
総合2位とのタイム差を2分27秒から3分52秒へ。2位以下のライバルたちに対してもさらに差を広げたことで、フルームはすでにマイヨジョーヌを確実にしたという実感があるようだ。もちろん落車やトラブルで覆るリスクはあるものの、優勝争いは決したいう自信を覗かせる。
パリまで3日、山岳は2つ。マイヨジョーヌを着てパリに着く自信はある。明日からの山岳ステージは厳しいけれど、もう山頂フィニッシュでアタックする必要はない。繰り広げられるのは2位以下の争いだろう。チームメイトとともにリスク無く確実に走りきりたい」。
シャンゼリゼの表彰台でのフルームの真ん中の立ち位置が決まったとしても、両脇はまだ不確定だ。フルームから1分25秒遅れとタイムを落としながら総合2位にとどまることができたバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)以下、総合2位以下の上位争いのタイム差は切迫してきている。上位争いの選手たちの中では今日の勝者はロメン・バルデ(フルームから42秒遅れ)、リッチー・ポート(33秒遅れ)、ファビオ・アル(33秒遅れ)の3人だろう。
「攻撃的にならないといけない。日曜日のパリで後悔したくないので、明日からの2日間は全力で挑む。フルームの総合リードは揺るぎないけど、総合2位以下は激しいバトルになる」(バルデ)。
「表彰台の可能性がまだ残っているので、これからも攻撃を継続したい。自分につきまとった不運は過去のものになり、これからのステージに向けて自信を得ている。厳しい山岳ステージで総合ライバルたちをさらに引き離したい」(ポート)。
「ニーバリをはじめ、チーム力は揃っている。アシストに徹してくれている彼に感謝しながら、今の良い状態を保ってパリまで戦い抜きたい」(アル)。
第3週のアルプスで調子を上げるはずのナイロ・キンタナ(モビスター)は今日も謎の不振に見舞われた。もともとこのステージの難易度が不足していることに「山岳TTとは言えないから差をつけるのは難しい」と話していたこのステージだが、タイムを失ってしまうのは予想外だ。不振にはアレルギーを疑う。
「もちろん疲れているけど、疲労が原因ではない。このあたり特有のアレルギー物質が、ここ数日の低迷の原因になっている可能性はある。もしそうであれば、明日から天候が悪化することが予想されているので、雨によって症状が緩和されることを望む。コンディションが悪いにもかかわらず総合表彰台を狙えるポジションにいることは悪くない」(キンタナ)。
予報通り明日からは天候が崩れ、雨が降る予報だ。暑さが和らぎ、空気中に漂う物質も落ち着く。山岳で発揮されるキンタナの爆発力は、このツールでまだ一瞬しか見れていない。
photo&text:Makoto.AYANO in Megeve, FRANCE
photo:Kei.TSUJI, TimDeWaele
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