2016/07/17(日) - 21:39
富士見パノラマで開催されたMTB全日本選手権XCO。共に安定感ある走りを見せつけた末政実緒と平林安里がそれぞれ女子エリートと男子U23のナショナルチャンピオンに輝いた。
2年連続のダブルタイトルを成し遂げた末政実緒
2016年のMTB全日本選手権の場に選ばれたのは、昨年同様、長野県諏訪郡富士見町にあるスキー場、富士見パノラマリゾート。スキーゲレンデをつづら折りに上るセクション、木立の中のシングルトラック、ロックセクションが盛り込まれたコースは1周4600m。昨年よりもおよそ200m長くなった。
コースのほとんどは登りか下りで、平坦路はごくわずか。前日までの雨によって朝の段階では森林区間のシングルトラックはぬかるみを残していたものの、スケジュールの進行と共に路面は締まりを増していく。
男子U23、ジュニア、マスターズ(11:45)と、女子エリート、U23、マスターズ、ジュニア(11:47)という7カテゴリー出走のタイミングでは予報通り雨がパラついたものの、路面を完全に濡らす前に再び天候は回復を取り戻す。それによって以降のレースでは高い湿度が選手たちを苦しめることになった。
2790mのスタートループと4600mのコースを4周回=21.19kmで争われた女子エリート。前年度3位、一昨年の優勝者である與那嶺恵理がオリンピックを優先して出場を見送る中、前日のダウンヒルで優勝したディフェンディングチャンピオン、末政実緒(SRAM/LITEC/PRIVATE PARK)がスタートの号砲と共に飛び出した。
パワフルな走りと、持ち前のダウンヒルテクニックで前を行く男子選手を次々とパスしていく末政。後続では今シーズン途中からMTBレースに参戦している武田和佳(Liv)や、昨年2位の小林可奈子(MTBクラブ安曇野)が食らい付いていく。
レース中盤、男子選手の追い抜きに手間取った末政に対して、武田が一時18秒差まで詰め寄ってくる。しかし「後ろが詰めてきているのは分かっていたけれど、下りで差を広げる自信があったので落ち着いていた」と言う末政の走りは王者の余裕を感じさせるものだった。
結局、末政は武田を3分弱引き離す圧倒的な走りでフィニッシュラインを切り、昨年に続くクロスカントリーとダウンヒルのダブルタイトル2連覇を成し遂げた。3位には小林が、4位にはエクステラアスリートでもあるケリー美枝子が入った。
「2つのゼッケン1を守り抜きたいと思っていましたし、成し遂げることができてホッとしています。私が活躍することで、ダウンヒルの人達にクロスカントリーの面白さを知って欲しいし、その逆も同じ。2つの競技を結ぶ架け橋になりたいですね」と語る末政。17回のダウンヒル連覇と、昨年に続くクロスカントリー連覇。エリートナショナルタイトルの獲得数を19にまで伸ばしてみせた。末政の優勝タイムは、距離が同じ男子マスターズの16位相当だった。
一方2位に終わった武田だが、「もっとMTBの走らせ方、レースの進め方を理解して、来年は本気で優勝を獲りに行きます」と鼻息を荒くする。「今日は路面がウェットだという意識が下りでのスピードに影響してしまった。経験を積めば改善できると思うし、シクロクロスシーズンインまでにもMTBレースに参戦していきたい」と加える。まだMTB経験が浅いながら2位表彰台という結果は讃えられるべきだろう。
女子エリート結果
男子U23初年度の平林安里が圧勝 2位竹内、3位宮津
女子エリートの2分前にスタートした男子U23。距離は2790mのスタートループと4600mのコースを5周回する25.79kmだ。
スタートダッシュでは世界選帰りの注目株、平林安里(SPECIALIZED RACING JAPAN)が抜け出し、ここに前田公平(BiORACER/Thompson)や竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)が続く形でレースが動き出す。
スタートループを終える頃には前述した3名が抜け出す形となり、少し間を空けて宮津旭(PAXPROJECT)や山田将輝(BH SR SUNTOUR)が続く。前田が遅れた先頭グループでは「最初から自分の持てる力を出し切っていこうと思っていた」と言う平林が竹内を突き放しに掛かる。食らいつきたかった竹内は痛恨の落車を喫してしまい、ここが勝負のターニングポイントになった。
ぐいぐいと突き進む平林に対して、一度リズムを崩してしまった竹内のペースは思うように上がらない。安定した走りを刻んだ平林はペースを落とすことなく残り距離を消化し、観衆の前で余裕のウイリーフィニッシュを見せつけた。「4年後の東京オリンピックに向けて、エリートのトップに食い込めるよう力を付けたい。今日は良いレースができました」と語る平林は昨年、一昨年のユース連覇に続き、全日本選手権での勝ち星を3に伸ばした。
同じくU23初挑戦の年に2位となった竹内だが、「勝つことだけを考えて練習を重ねてきたので、本当に悔しい」と少しも納得はしていない。「今日のレースで自分の得意な箇所、平林が優っている箇所が分かった。じっくりと1年掛けてマイナスポイントを修正していく」と、唇を噛み締めながら決意を語った。3位にはペースを維持した宮津が入った。
また、U23と同時出走となった男子ジュニアでは、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を抑えた北林力(ProRide)が圧勝。「ただ前を追いかける気持ちだけで走っていた」と語る北林はU23トップ陣の中に食い込み、全体の3位で1周早くレースを終えている。
そして注目の男子マスターズは「春の富士見で品川(真寛)さんに負けているので、ここは元MTBプロとしての意地を見せたかった。面白いレースができたので、これからもマスターズレースを盛り上げていきたい」と語る竹谷賢二(SPECIALIZED RACING JAPAN)が2連覇を達成。
その他男子ユースは山口創平(ProRide)が、女子U23は佐藤寿美(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)が、女子ユースは小林あか里(MTBクラブ安曇野)が、女子マスターズは辻瑞穂(HEART VIEW)がそれぞれ制している。
男子U23結果
男子ジュニア
男子ユース
女子U23
女子ジュニア
女子ユース
男子マスターズ
女子マスターズ
text&photo:So.Isobe
2年連続のダブルタイトルを成し遂げた末政実緒
2016年のMTB全日本選手権の場に選ばれたのは、昨年同様、長野県諏訪郡富士見町にあるスキー場、富士見パノラマリゾート。スキーゲレンデをつづら折りに上るセクション、木立の中のシングルトラック、ロックセクションが盛り込まれたコースは1周4600m。昨年よりもおよそ200m長くなった。
コースのほとんどは登りか下りで、平坦路はごくわずか。前日までの雨によって朝の段階では森林区間のシングルトラックはぬかるみを残していたものの、スケジュールの進行と共に路面は締まりを増していく。
男子U23、ジュニア、マスターズ(11:45)と、女子エリート、U23、マスターズ、ジュニア(11:47)という7カテゴリー出走のタイミングでは予報通り雨がパラついたものの、路面を完全に濡らす前に再び天候は回復を取り戻す。それによって以降のレースでは高い湿度が選手たちを苦しめることになった。
2790mのスタートループと4600mのコースを4周回=21.19kmで争われた女子エリート。前年度3位、一昨年の優勝者である與那嶺恵理がオリンピックを優先して出場を見送る中、前日のダウンヒルで優勝したディフェンディングチャンピオン、末政実緒(SRAM/LITEC/PRIVATE PARK)がスタートの号砲と共に飛び出した。
パワフルな走りと、持ち前のダウンヒルテクニックで前を行く男子選手を次々とパスしていく末政。後続では今シーズン途中からMTBレースに参戦している武田和佳(Liv)や、昨年2位の小林可奈子(MTBクラブ安曇野)が食らい付いていく。
レース中盤、男子選手の追い抜きに手間取った末政に対して、武田が一時18秒差まで詰め寄ってくる。しかし「後ろが詰めてきているのは分かっていたけれど、下りで差を広げる自信があったので落ち着いていた」と言う末政の走りは王者の余裕を感じさせるものだった。
結局、末政は武田を3分弱引き離す圧倒的な走りでフィニッシュラインを切り、昨年に続くクロスカントリーとダウンヒルのダブルタイトル2連覇を成し遂げた。3位には小林が、4位にはエクステラアスリートでもあるケリー美枝子が入った。
「2つのゼッケン1を守り抜きたいと思っていましたし、成し遂げることができてホッとしています。私が活躍することで、ダウンヒルの人達にクロスカントリーの面白さを知って欲しいし、その逆も同じ。2つの競技を結ぶ架け橋になりたいですね」と語る末政。17回のダウンヒル連覇と、昨年に続くクロスカントリー連覇。エリートナショナルタイトルの獲得数を19にまで伸ばしてみせた。末政の優勝タイムは、距離が同じ男子マスターズの16位相当だった。
一方2位に終わった武田だが、「もっとMTBの走らせ方、レースの進め方を理解して、来年は本気で優勝を獲りに行きます」と鼻息を荒くする。「今日は路面がウェットだという意識が下りでのスピードに影響してしまった。経験を積めば改善できると思うし、シクロクロスシーズンインまでにもMTBレースに参戦していきたい」と加える。まだMTB経験が浅いながら2位表彰台という結果は讃えられるべきだろう。
女子エリート結果
1位 末政実緒(SRAM/LITEC/PRIVATE PARK)
2位 武田和佳(Liv)
3位 小林可奈子(MTBクラブ安曇野)
4位 ケリー美枝子
5位 橋口陽子(TEAM 轍屋)
6位 真川好美(Team Nipopo)
7位 加納尚子(ストラーダレーシング)
8位 川崎路子(USM)
9位 布袋田沙織(BH ASTIFO)
10位 鈴木美香子(Cyclery KIRIN/KM)
2位 武田和佳(Liv)
3位 小林可奈子(MTBクラブ安曇野)
4位 ケリー美枝子
5位 橋口陽子(TEAM 轍屋)
6位 真川好美(Team Nipopo)
7位 加納尚子(ストラーダレーシング)
8位 川崎路子(USM)
9位 布袋田沙織(BH ASTIFO)
10位 鈴木美香子(Cyclery KIRIN/KM)
1:30'36"
+2'55"
+3'17
+6'29"
+9'37"
+18'40"
+21'36"
-1Lap
+2'55"
+3'17
+6'29"
+9'37"
+18'40"
+21'36"
-1Lap
男子U23初年度の平林安里が圧勝 2位竹内、3位宮津
女子エリートの2分前にスタートした男子U23。距離は2790mのスタートループと4600mのコースを5周回する25.79kmだ。
スタートダッシュでは世界選帰りの注目株、平林安里(SPECIALIZED RACING JAPAN)が抜け出し、ここに前田公平(BiORACER/Thompson)や竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)が続く形でレースが動き出す。
スタートループを終える頃には前述した3名が抜け出す形となり、少し間を空けて宮津旭(PAXPROJECT)や山田将輝(BH SR SUNTOUR)が続く。前田が遅れた先頭グループでは「最初から自分の持てる力を出し切っていこうと思っていた」と言う平林が竹内を突き放しに掛かる。食らいつきたかった竹内は痛恨の落車を喫してしまい、ここが勝負のターニングポイントになった。
ぐいぐいと突き進む平林に対して、一度リズムを崩してしまった竹内のペースは思うように上がらない。安定した走りを刻んだ平林はペースを落とすことなく残り距離を消化し、観衆の前で余裕のウイリーフィニッシュを見せつけた。「4年後の東京オリンピックに向けて、エリートのトップに食い込めるよう力を付けたい。今日は良いレースができました」と語る平林は昨年、一昨年のユース連覇に続き、全日本選手権での勝ち星を3に伸ばした。
同じくU23初挑戦の年に2位となった竹内だが、「勝つことだけを考えて練習を重ねてきたので、本当に悔しい」と少しも納得はしていない。「今日のレースで自分の得意な箇所、平林が優っている箇所が分かった。じっくりと1年掛けてマイナスポイントを修正していく」と、唇を噛み締めながら決意を語った。3位にはペースを維持した宮津が入った。
また、U23と同時出走となった男子ジュニアでは、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を抑えた北林力(ProRide)が圧勝。「ただ前を追いかける気持ちだけで走っていた」と語る北林はU23トップ陣の中に食い込み、全体の3位で1周早くレースを終えている。
そして注目の男子マスターズは「春の富士見で品川(真寛)さんに負けているので、ここは元MTBプロとしての意地を見せたかった。面白いレースができたので、これからもマスターズレースを盛り上げていきたい」と語る竹谷賢二(SPECIALIZED RACING JAPAN)が2連覇を達成。
その他男子ユースは山口創平(ProRide)が、女子U23は佐藤寿美(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)が、女子ユースは小林あか里(MTBクラブ安曇野)が、女子マスターズは辻瑞穂(HEART VIEW)がそれぞれ制している。
男子U23結果
1位 平林安里(SPECIALIZED RACING JAPAN)
2位 竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)
3位 宮津旭(PAXPROJECT)
4位 山田将輝(BH SR SUNTOUR)
5位 本田彬(Green Grips)
2位 竹内遼(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)
3位 宮津旭(PAXPROJECT)
4位 山田将輝(BH SR SUNTOUR)
5位 本田彬(Green Grips)
1:29'31"
+2'29"
+5'15"
+6'39
+11'06"
+2'29"
+5'15"
+6'39
+11'06"
男子ジュニア
1位 北林力(ProRide)
2位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
3位 小林勇輝(イナーメ信濃山形)
4位 江越昇也(ProRide)
5位 黒瀬文也(TEAM BG8)
2位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
3位 小林勇輝(イナーメ信濃山形)
4位 江越昇也(ProRide)
5位 黒瀬文也(TEAM BG8)
1:16'16"
+3'10"
+3'54"
+6'14"
+3'10"
+3'54"
+6'14"
男子ユース
1位 山口創平(ProRide)
2位 神永真一(ProRide)
3位 石川絃(SASSA’S)
2位 神永真一(ProRide)
3位 石川絃(SASSA’S)
58'32
+1'01"
+1'37"
+1'01"
+1'37"
女子U23
1位 相野田静香(Club Glow)
2位 中島崚歩(WIAWIS)
2位 中島崚歩(WIAWIS)
1:21'17"
+2'02"
+2'02"
女子ジュニア
1位 佐藤寿美(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)
2位 吉田雪那(TEAM BG8)
3位 寺田早希(自転車村R)
4位 石田恵(リミテッドチーム 846)
2位 吉田雪那(TEAM BG8)
3位 寺田早希(自転車村R)
4位 石田恵(リミテッドチーム 846)
56'36"
+4'41"
+6'14"
+17'39"
+4'41"
+6'14"
+17'39"
女子ユース
1位 小林あか里(MTBクラブ安曇野)
2位 松本璃奈(Mashun Racing)
3位 光永翔香(バイクルームシンMOMO)
2位 松本璃奈(Mashun Racing)
3位 光永翔香(バイクルームシンMOMO)
47'54"
+4'45"
+5'16"
+4'45"
+5'16"
男子マスターズ
1位 竹谷賢二(SPECIALIZED RACING JAPAN)
2位 品川真寛(TEAM YOUCAN)
3位 多田尚史(TEAM SPORTSKID)
2位 品川真寛(TEAM YOUCAN)
3位 多田尚史(TEAM SPORTSKID)
1:17'34"
+1'07"
+4'47"
+1'07"
+4'47"
女子マスターズ
1位 辻瑞穂(HEART VIEW)
2位 久保田珠実(妄想自転車店)
2位 久保田珠実(妄想自転車店)
1:06'49"
+4'36"
+4'36"
text&photo:So.Isobe
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