2016/07/04(月) - 17:10
朝からノルマンディらしい霧雨が降り続く。天気予報は一日じゅうの雨を告げる。コンタドールもユキヤも怪我を負った選手には辛い一日になる。たくさんの選手の身体のあちこちに、包帯や擦り傷の治療の痕跡が伺える。
夏の雨のなかのレースは怪我の治癒にとっていいことが無い。レインギアを着込めば蒸れれて汗をかくうえに、路面からの泥の跳ね上げで不衛生に。牧畜地帯はとくに感染症の危険が増えることになる。
小高い城壁の周りをぐるりと取り巻くように新市街が発達したサンローの街。その城壁沿いに設けられたスタート地点に、マイヨジョーヌを着たカヴェンデュッシュが笑顔でやってきた。イエローバイクの用意は無いが、バーテープはイエローに巻き替えられた。ナンバープレートには小さく「V27」のステッカー。これはこの数年、ツールでステージを勝つたびに貼り替えられている。
フレンチカンカンの衣装を着た女性たちがスタートラインに並び、カブを迎えた。ご機嫌でおどけた表情でカメラに収まるカヴ。
今日は3級山岳通過後に待つ勾配6%の登りスプリントフィニッシュがフィナーレに待つ。登れないスプリンターのカヴが今日のレースでマイヨをキープできないことは織り込み済み。可能性はゼロに近いが「最後までこのマイヨジョーヌをリスペクトする」と話す。つまり最初から失うつもりでは走らないということ。
ユキヤは左手の親指と薬指、そして右肩にテーピングを巻いてスタート地点に現れた。打撲した肩が痛くてハンドルを引くのが苦痛だけれど、指の怪我と突き指はブレーキ操作などへの影響は少なく、3週間走り切るのに問題があるほどの深刻な怪我ではないとのこと。
コンタドールはレインギアをしっかり着こみ、外からは包帯などは見えない。メディアに対応する言葉はしっかりと力強く、レース継続への強い意志を感じた。ツールを捨ててはいないようだ。家に帰るかとの心配は杞憂だ。
スタート後しばらくのコースは細い農道となる。アップダウンが繰り返すうえに路面は荒れて、泥が浮き、滑りやすいことこのうえない。そしてまた今日も落車は起こった。有力選手の多くの名前がコールされるが、再びコンタドールの名前が含まれる衝撃。今度は怪我のある身体の反対側、左半身を路面に打ち付けた。ホイールを交換し、追走。コンタドールはツイていない。ホイールを壊したルイ・コスタにはユキヤが自身のホイールを差し出した。
雨は小止みになったり、ときおり晴れ間がのぞいたりとノルマンディーに似つかわしい天候だが、フランス全土が異常気象ということだそうだ。色鮮やかなフランスの7月はどこへ?
マイヨアポアのポール・ヴォス(ボーラ・アルゴン18)のアタックを皮切りに、チームメイトのチェザーレ・ベネデッティ、そしてヴェーガル・ブレーン(フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)、ヤスパー・ストゥイフェン(トレック・セガフレード)が合流。序盤に3つ連続する4級山岳でポイントを重ねたいヴォスだが、ひとつめはブレーンに、続く2つをストゥイフェンにことごとくさらわれてしまう。
メイン集団はおもにスティーブ・クミングスが引くディメンションデータが前に出てコントロール。ティンコフ、スカイ、モビスター、各チームごとに固まって走る姿が見られるのは、トラブルがあればチームメイト内でも対応できるからだ。
残り25km地点でタイム差は3分35秒。濡れた路面に曲がりくねったコースも逃げに味方した。すわ逃げ切りか?と期待が膨らむ。
ベネデッティが脱落し、ストゥイフェン、ブレーン、ヴォスの3名に。そして残り10kmで3人の協調をやめたストゥイフェンがひとり飛び出す。元ジュニア世界チャンピオンのタイトルを持つベルギー期待の若手は、今春は母国での北のクラシック、クールネ~ブリュッセル~クールネを独走で制しているルーラーだ。登りは得意とはいえないが、差を持って逃げ切る覚悟を決めた。スタート前にビデオでコース地形を予習して、最後の坂が自分にとって難しすぎることは十分に理解していたという。
標高169mの3級山岳コート・ド・ラ・グラスリーの登坂を経て、6%勾配の450mの上りでフィニッシュへ。ストゥイフェンと後続の差は独走開始8kmで2分。残り5kmで1分半。グラスリーの丘に取り付いた時に1分18秒。しかしグラスリーの丘の登り口にかけて、アップヒルスプリントで勝負に臨みたいパンチャーを擁するチーム、そして総合系ライダーを含む複数チームが激しい位置取り合戦を展開すると、差は見るまに縮まった。ゴール前450mで差はゼロに。
グラスリーの丘の登り口からペースを上げ猛烈な牽引をみせたのはロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)。番手に控えるサガン。最後の長い直線に入るとサガンが前に出て、後方の様子を伺いながら先行する。ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)に先行されても落ち着いて対処。そして追い抜いてフィニッシュしてもウィニングポーズは無し。
それもそのはず、ゴール後のインタビューでサガンは自分が勝ったことは後で知ったと打ち明けた。「自分が勝ったことに驚いた。フィニッシュしてから周りのみんなの様子と言葉で自分が勝ったことに気がついたんだ。まだ前に2人逃げていると思っていたから。ハッピーだ」。表彰台では受け取ったマイヨ・ジョーヌをアルカンシェルジャージに重ね着すると、背中のポケットからもう一枚虹色のジャージを取り出して掲げ、笑ってみせた。サガンにとっても初めて袖を通したマイヨジョーヌだ。
「すでに着ているこの(世界チャンピオンの)ジャージもナイスだけど、マイヨジョーヌもいいね! 特別なジャージに袖を通すことは誇らしいよ。明日からマイヨジョーヌを守るために走ることになる。でもマイヨジョーヌを失ってもマイヨヴェールがある。そしてマイヨヴェールを失ってもアルカンシェルがあるよ!」。
30人の先頭グループから脱落したコンタドールは48秒のタイムを失った。昨日の落車の影響、そしてまた今日も落車。身体へのダメージは隠せなかった。
サガンは落車が続くことに、そしてチームリーダーのコンタドールが落車したことで、一言意見を言いたかったようだ。記者会見で喜びの言葉に付け加えて言った。
「アルベルトは僕のすぐ脇で転んだ。僕も転んだかもしれないし、誰がいつ転んでもおかしくない状況だ。選手たちはみな命を顧みないような危険な走りをしている。昨年も状況は良くなかったけど、今年も酷い。これは選手自身の勝手であって、口を出すことではないのかもしれないけど、何も考えずにただ突進している選手が多い。だから馬鹿げた落車が多発しているんだ。
集団内は危険な状態になっている。集団先頭で走る選手の多くがバイクの乗り方を知らない。かつては集団内にもリスペクトがあった。レースに出場し始めた2010年頃はこんな状況じゃなかった。初めて出場したツールと比べると、今のツールは別物になってしまった。少なくとも明日レースを走り終えることができるかどうか、誰にも分からない」。
残り5kmで、しかも上りフィニッシュに備えて先頭集団のスピードが上がるというこれ以上ない悪いタイミングでパンクしたリッチー・ポート(BMCレーシング)。その時チームメイトの姿も無し。先行していたマークス・ブルグハートが戻って助けたが、他の選手は優勝を掛けたファンアフェルマート、そしてもうひとりのリーダーのヴァンガードレンの近くにいて気づかなかったようだ。
「災難だ。先頭から2番手の完璧な位置にいたんだ。何を踏んだのかわからない。次の瞬間リアタイヤの空気が抜けた。でもいったい何をすることができたんだ? ホイール交換でマイナス2分のペナルティを受けた昨年のジロみたいだ」。
これはもちろん昨年のジロ第10ステージで起こったこと。最終局面でパンクしたポートにサイモン・クラーク(オリカ・グリーンエッジ)がホイールを提供。しかしチームの壁を越えてのサポートは規則違反としてレース後に2分のペナルティーを受けたこと。総合争いには痛い1分45秒。「2分のペナルティーを受けてでも他チームからホイールを受け取ったほうが早いんじゃないかとも思った」とポート。しかし今後も前向きに行くしかないという表情だ。
「ただ諦めずに前に進むしか無い。何もなかったかのように山岳に向かうだけだね。明日は晴れるはずだ。ツールは終わっていない。第3週に取り返すよ」。
ユキヤは後方集団の最後尾でフィニッシュ。苦しい表情はとくに無し。ゴール後の飯島美和さんの「大丈夫?」の呼びかけにうなずくだけで言葉は口にしなかった。第2、3週に向けて調子を上げていく日が続く。
この日は同宿のティンコフのホテルへ。記者会見や番組出演などを済ませ、20時半ごろにサガンはようやくマイヨジョーヌを着てホテルに帰ってきた。松葉杖をつくオレグ・ティンコフ氏も祝福。待ち構えたファンのサインもこなし、チームスタッフひとりひとりにハグ。ハッピーな雰囲気だ。コンタドールがビターな状況におかれても、サガンの茶目っ気が打ち消してくれるだろう。
ホテル内を忙しそうに動く中野喜文マッサーの姿。選手がホテルに帰ってすぐマッサージを始めるのだ。「不運は誰にでも順番のように起こること。45秒は長いツールでは大きな差ではないです。山岳は先ですし、アルベルトは諦めていませんよ」と中野さん。
今回ティンコフはすべての選手にひとりづつ専属マッサーをつけるという、他のチームにも例がない体制で臨んでいる。効率化は人海戦術で解決するという考え方で、中野さんはクロイツィゲルの担当だ。コンタドールは落車の影響があることを語っている。そして同時に戦い続ける意志を。
「左の膝とふくらはぎ、肩に違和感がある。両脚に落車の影響を感じる。本来のペダリングもできていない。身体的にダメージを受けている。こんな酷い開幕を乗り切るには強いメンタルが必要だ。特に今年はトレーニングに多大な時間と努力を費やしてきた。でもロードレースに落車はつきものであり、自信を無くさず気を強く持ち続けたい。山岳に到着するまでに回復可能だと考えなければならない。戦い続けないのであれば、この場から今すぐ立ち去る。自分はこれからも戦い続ける」。
photo&text:Makoto.AYANO in Manche, France.
夏の雨のなかのレースは怪我の治癒にとっていいことが無い。レインギアを着込めば蒸れれて汗をかくうえに、路面からの泥の跳ね上げで不衛生に。牧畜地帯はとくに感染症の危険が増えることになる。
小高い城壁の周りをぐるりと取り巻くように新市街が発達したサンローの街。その城壁沿いに設けられたスタート地点に、マイヨジョーヌを着たカヴェンデュッシュが笑顔でやってきた。イエローバイクの用意は無いが、バーテープはイエローに巻き替えられた。ナンバープレートには小さく「V27」のステッカー。これはこの数年、ツールでステージを勝つたびに貼り替えられている。
フレンチカンカンの衣装を着た女性たちがスタートラインに並び、カブを迎えた。ご機嫌でおどけた表情でカメラに収まるカヴ。
今日は3級山岳通過後に待つ勾配6%の登りスプリントフィニッシュがフィナーレに待つ。登れないスプリンターのカヴが今日のレースでマイヨをキープできないことは織り込み済み。可能性はゼロに近いが「最後までこのマイヨジョーヌをリスペクトする」と話す。つまり最初から失うつもりでは走らないということ。
ユキヤは左手の親指と薬指、そして右肩にテーピングを巻いてスタート地点に現れた。打撲した肩が痛くてハンドルを引くのが苦痛だけれど、指の怪我と突き指はブレーキ操作などへの影響は少なく、3週間走り切るのに問題があるほどの深刻な怪我ではないとのこと。
コンタドールはレインギアをしっかり着こみ、外からは包帯などは見えない。メディアに対応する言葉はしっかりと力強く、レース継続への強い意志を感じた。ツールを捨ててはいないようだ。家に帰るかとの心配は杞憂だ。
スタート後しばらくのコースは細い農道となる。アップダウンが繰り返すうえに路面は荒れて、泥が浮き、滑りやすいことこのうえない。そしてまた今日も落車は起こった。有力選手の多くの名前がコールされるが、再びコンタドールの名前が含まれる衝撃。今度は怪我のある身体の反対側、左半身を路面に打ち付けた。ホイールを交換し、追走。コンタドールはツイていない。ホイールを壊したルイ・コスタにはユキヤが自身のホイールを差し出した。
雨は小止みになったり、ときおり晴れ間がのぞいたりとノルマンディーに似つかわしい天候だが、フランス全土が異常気象ということだそうだ。色鮮やかなフランスの7月はどこへ?
マイヨアポアのポール・ヴォス(ボーラ・アルゴン18)のアタックを皮切りに、チームメイトのチェザーレ・ベネデッティ、そしてヴェーガル・ブレーン(フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)、ヤスパー・ストゥイフェン(トレック・セガフレード)が合流。序盤に3つ連続する4級山岳でポイントを重ねたいヴォスだが、ひとつめはブレーンに、続く2つをストゥイフェンにことごとくさらわれてしまう。
メイン集団はおもにスティーブ・クミングスが引くディメンションデータが前に出てコントロール。ティンコフ、スカイ、モビスター、各チームごとに固まって走る姿が見られるのは、トラブルがあればチームメイト内でも対応できるからだ。
残り25km地点でタイム差は3分35秒。濡れた路面に曲がりくねったコースも逃げに味方した。すわ逃げ切りか?と期待が膨らむ。
ベネデッティが脱落し、ストゥイフェン、ブレーン、ヴォスの3名に。そして残り10kmで3人の協調をやめたストゥイフェンがひとり飛び出す。元ジュニア世界チャンピオンのタイトルを持つベルギー期待の若手は、今春は母国での北のクラシック、クールネ~ブリュッセル~クールネを独走で制しているルーラーだ。登りは得意とはいえないが、差を持って逃げ切る覚悟を決めた。スタート前にビデオでコース地形を予習して、最後の坂が自分にとって難しすぎることは十分に理解していたという。
標高169mの3級山岳コート・ド・ラ・グラスリーの登坂を経て、6%勾配の450mの上りでフィニッシュへ。ストゥイフェンと後続の差は独走開始8kmで2分。残り5kmで1分半。グラスリーの丘に取り付いた時に1分18秒。しかしグラスリーの丘の登り口にかけて、アップヒルスプリントで勝負に臨みたいパンチャーを擁するチーム、そして総合系ライダーを含む複数チームが激しい位置取り合戦を展開すると、差は見るまに縮まった。ゴール前450mで差はゼロに。
グラスリーの丘の登り口からペースを上げ猛烈な牽引をみせたのはロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)。番手に控えるサガン。最後の長い直線に入るとサガンが前に出て、後方の様子を伺いながら先行する。ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)に先行されても落ち着いて対処。そして追い抜いてフィニッシュしてもウィニングポーズは無し。
それもそのはず、ゴール後のインタビューでサガンは自分が勝ったことは後で知ったと打ち明けた。「自分が勝ったことに驚いた。フィニッシュしてから周りのみんなの様子と言葉で自分が勝ったことに気がついたんだ。まだ前に2人逃げていると思っていたから。ハッピーだ」。表彰台では受け取ったマイヨ・ジョーヌをアルカンシェルジャージに重ね着すると、背中のポケットからもう一枚虹色のジャージを取り出して掲げ、笑ってみせた。サガンにとっても初めて袖を通したマイヨジョーヌだ。
「すでに着ているこの(世界チャンピオンの)ジャージもナイスだけど、マイヨジョーヌもいいね! 特別なジャージに袖を通すことは誇らしいよ。明日からマイヨジョーヌを守るために走ることになる。でもマイヨジョーヌを失ってもマイヨヴェールがある。そしてマイヨヴェールを失ってもアルカンシェルがあるよ!」。
30人の先頭グループから脱落したコンタドールは48秒のタイムを失った。昨日の落車の影響、そしてまた今日も落車。身体へのダメージは隠せなかった。
サガンは落車が続くことに、そしてチームリーダーのコンタドールが落車したことで、一言意見を言いたかったようだ。記者会見で喜びの言葉に付け加えて言った。
「アルベルトは僕のすぐ脇で転んだ。僕も転んだかもしれないし、誰がいつ転んでもおかしくない状況だ。選手たちはみな命を顧みないような危険な走りをしている。昨年も状況は良くなかったけど、今年も酷い。これは選手自身の勝手であって、口を出すことではないのかもしれないけど、何も考えずにただ突進している選手が多い。だから馬鹿げた落車が多発しているんだ。
集団内は危険な状態になっている。集団先頭で走る選手の多くがバイクの乗り方を知らない。かつては集団内にもリスペクトがあった。レースに出場し始めた2010年頃はこんな状況じゃなかった。初めて出場したツールと比べると、今のツールは別物になってしまった。少なくとも明日レースを走り終えることができるかどうか、誰にも分からない」。
残り5kmで、しかも上りフィニッシュに備えて先頭集団のスピードが上がるというこれ以上ない悪いタイミングでパンクしたリッチー・ポート(BMCレーシング)。その時チームメイトの姿も無し。先行していたマークス・ブルグハートが戻って助けたが、他の選手は優勝を掛けたファンアフェルマート、そしてもうひとりのリーダーのヴァンガードレンの近くにいて気づかなかったようだ。
「災難だ。先頭から2番手の完璧な位置にいたんだ。何を踏んだのかわからない。次の瞬間リアタイヤの空気が抜けた。でもいったい何をすることができたんだ? ホイール交換でマイナス2分のペナルティを受けた昨年のジロみたいだ」。
これはもちろん昨年のジロ第10ステージで起こったこと。最終局面でパンクしたポートにサイモン・クラーク(オリカ・グリーンエッジ)がホイールを提供。しかしチームの壁を越えてのサポートは規則違反としてレース後に2分のペナルティーを受けたこと。総合争いには痛い1分45秒。「2分のペナルティーを受けてでも他チームからホイールを受け取ったほうが早いんじゃないかとも思った」とポート。しかし今後も前向きに行くしかないという表情だ。
「ただ諦めずに前に進むしか無い。何もなかったかのように山岳に向かうだけだね。明日は晴れるはずだ。ツールは終わっていない。第3週に取り返すよ」。
ユキヤは後方集団の最後尾でフィニッシュ。苦しい表情はとくに無し。ゴール後の飯島美和さんの「大丈夫?」の呼びかけにうなずくだけで言葉は口にしなかった。第2、3週に向けて調子を上げていく日が続く。
この日は同宿のティンコフのホテルへ。記者会見や番組出演などを済ませ、20時半ごろにサガンはようやくマイヨジョーヌを着てホテルに帰ってきた。松葉杖をつくオレグ・ティンコフ氏も祝福。待ち構えたファンのサインもこなし、チームスタッフひとりひとりにハグ。ハッピーな雰囲気だ。コンタドールがビターな状況におかれても、サガンの茶目っ気が打ち消してくれるだろう。
ホテル内を忙しそうに動く中野喜文マッサーの姿。選手がホテルに帰ってすぐマッサージを始めるのだ。「不運は誰にでも順番のように起こること。45秒は長いツールでは大きな差ではないです。山岳は先ですし、アルベルトは諦めていませんよ」と中野さん。
今回ティンコフはすべての選手にひとりづつ専属マッサーをつけるという、他のチームにも例がない体制で臨んでいる。効率化は人海戦術で解決するという考え方で、中野さんはクロイツィゲルの担当だ。コンタドールは落車の影響があることを語っている。そして同時に戦い続ける意志を。
「左の膝とふくらはぎ、肩に違和感がある。両脚に落車の影響を感じる。本来のペダリングもできていない。身体的にダメージを受けている。こんな酷い開幕を乗り切るには強いメンタルが必要だ。特に今年はトレーニングに多大な時間と努力を費やしてきた。でもロードレースに落車はつきものであり、自信を無くさず気を強く持ち続けたい。山岳に到着するまでに回復可能だと考えなければならない。戦い続けないのであれば、この場から今すぐ立ち去る。自分はこれからも戦い続ける」。
photo&text:Makoto.AYANO in Manche, France.
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