2016/05/25(水) - 03:57
序盤から逃げを許さないハイスピードな展開に持ち込まれたジロ・デ・イタリア第16ステージ。総合上位陣が活発にアタックを繰り出し、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がステージ優勝。ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が総合リードを広げた。
スタート地点はブレッサノーネのドゥオモ広場 photo:Kei Tsuji
5月24日(火)第16ステージ ☆☆☆ ブレッサノーネ〜アンダロ 132km image:Giro d'Italia2級山岳パッソ・デッラ・メンドラ(14.8km/平均6.5%)と2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラ(10.2km/平均7.4%/最大15%)を越え、最後は3級山岳アンダロを駆け上がる今大会最短132kmコースで行われたジロ第16ステージ。逃げ切りにチャンスがある中級山岳ステージと見られたが、総合タイム挽回を狙う総合系チームが序盤からレースをかき回した。
逃げグループを率いるダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji下り基調の渓谷路を超ハイスピードで進んだメイン集団からダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)やマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)、サイモン・クラーク(オーストラリア、キャノンデール)を含む9名が飛び出したものの、タイム差は1分を超えることなくむしろ縮小。38km地点のスプリントポイント通過後に逃げグループは引き戻される。
マリアビアンカを着るボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)がアタック photo:Kei Tsujiその後のアタック合戦も終わりが見えず、逃げが決まらないままレースは2級山岳パッソ・デッラ・メンドラに突入。集団後方で早くもグルペットが形成される中、フィニッシュまで80km近くを残したタイミングで総合6位のイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)がアタックを仕掛けた。
ザッカリンにはタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)がチェックに入る。メイン集団からリードを奪えないザッカリンがペースを弱めると、代わってディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)とダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)がカンゲルトに合流。しかし、総合に影響しない3名による逃げグループの形成も集団の安定化にはつながらなかった。
総合上位陣によるアタックとカウンターアタックの応酬。マリアビアンカを着るボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)や第15ステージ4位のセルゲイ・フィルサノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)がまずは集団を抜け出して先頭3名に合流する。続いてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が飛び出すといよいよマリアローザも動いた。
ハイスピードを維持したまま2級山岳パッソ・デッラ・メンドラを登る photo:Kei Tsuji
2級山岳パッソ・デッラ・メンドラで先行するタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
2級山岳パッソ・デッラ・メンドラでアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
先頭グループを吸収し、2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラを目指すヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
出遅れたエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が追走する photo:Kei Tsuji
2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラの登りに突入する精鋭グループ photo:Kei Tsuji
2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラで先行を開始したイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)ら3名 photo:Kei Tsujiニーバリのアタックにはマリアローザのクルイスウィクと総合4位バルベルデ、そして総合5位イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)が反応し、先頭6名から21秒遅れで2級山岳パッソ・デッラ・メンドラをクリアする。総合2位エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)や総合5位ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)はこの動きに乗り遅れた。
イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)の様子を確認するステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiニーバリやクルイスウィクを含む追走グループは下り区間で先頭6名をキャッチし、オリカ・グリーンエッジが懸命に率いる追走集団から30秒のリード。先頭はクルイスウィク、ニーバリ、バルベルデ、ザッカリン、ユンヘルス、フィルサノフ、ロペスガルシア、カンゲルト、ウリッシの9名(ドンブロウスキーは集団に戻る)の状態のまま2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラに突入した。
27秒遅れで頂上を目指すエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji8%の勾配が延々と続く登りでカンゲルトやウリッシが脱落した一方で、追走集団の中からアタックしたシャベスがマリアローザの17秒後方にまで迫る。続くバルベルデのアタックにはクルイスウィクとザッカリンだけが反応。ニーバリやユンヘルスらはこの決定的なペースアップに対抗できなかった。
ライバルたちのペースに対応できずにヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が脱落 photo:Kei Tsujiこうして先行を開始したバルベルデ、クルイスウィク、ザッカリンの3名は、2級山岳ファイ・デッラ・パガネッラ頂上手前の急勾配区間をハイペースでこなし、シャベスやユンヘルスを含む追走グループを27秒、そこからさらに遅れたニーバリらを42秒引き離して短いダウンヒルを終える。フィニッシュに向かう3級山岳に入っても状況は変わらず、ニーバリらから少しでもタイム差を奪いたいザッカリンが先頭固定でクルイスウィクとバルベルデをフィニッシュまで連れて行った。
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)をスプリントで下したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji最後は3名によるスプリントに持ち込まれ、残り250mでクルイスウィクとバルベルデが横並びでスプリント。力尽きたザッカリンを置き去りにした一騎打ちはバルベルデに軍配が上がった。獲得標高差2600mの中級山岳ステージながら平均スピードは44.271km/hに達した。
「今日はレースをかき回したかった」という36歳のバルベルデが初出場のジロでステージ初優勝。「このジロには2つの目標を胸に出場している。1つはステージ優勝で、もう1つが総合表彰台だ。1つ目の目標を今日クリアして、さらに総合でも3位に浮上した」と喜ぶ。
ニーバリが1分47秒遅れでフィニッシュしたため、クルイスウィクがマリアローザを守り、3分00秒差でシャベス、そして3分23秒差でバルベルデが続く。ニーバリは4分43秒差の総合4位にダウンした。「生粋のアタッカーであるニーバリが総合表彰台の座を奪いにくるのは間違いないけど、今はこのステージ初優勝の喜びを味わいたい」とバルベルデはコメントしている。
総合首位クルイスウィクは「全てがコントロール下にあったように見えたかも知れないけど、レース前半はとにかくアタックの連続で混沌としていた。ニーバリとバルベルデのアタックにはすかさず反応。上手くレースを運べたと思う。毎日これが人生最大のレースだと捉えて走っている」と語る。バルベルデにボーナスタイム4秒(1位10秒、2位6秒)を奪われたものの、クルイスウィクは総合ライバルたちからリードを奪うことに成功。マリアローザを着たままクルイスウィクは最終週のアルプスステージに挑む。
18分遅れのグルペットでフィニッシュを目指す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
42秒遅れでフィニッシュするエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
ステージ優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji
安定した走りでマリアローザを守ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリア2016第16ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 2h58’54”
2位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +08”
4位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +37”
5位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)
6位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ) +38”
7位 セルゲイ・フィルサノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)
8位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +42”
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +50”
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +1’47”
11位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
14位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ) +3’20”
18位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)
19位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
124位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +17’57”
マリアローザ 個人総合成績
1位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) 63h40’10”
2位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +3’00”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3’23”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +4’43”
5位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +4’50”
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +5’34”
7位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +7’57”
8位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +8’53”
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +10’05”
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ) +11’03”
マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード) 138pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) 130pts
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) 86pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 134pts
2位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング) 72pts
3位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) 69pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 63h48’07”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ) +14’17”
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール) +34’11”
チーム総合成績
1位 アスタナ 191h30’47”
2位 モビスター +7’46”
3位 AG2Rラモンディアール +23’23”
text&photo:Kei Tsuji in Andalo, Italy
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総合上位陣によるアタックとカウンターアタックの応酬。マリアビアンカを着るボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)や第15ステージ4位のセルゲイ・フィルサノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)がまずは集団を抜け出して先頭3名に合流する。続いてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が飛び出すといよいよマリアローザも動いた。
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ニーバリが1分47秒遅れでフィニッシュしたため、クルイスウィクがマリアローザを守り、3分00秒差でシャベス、そして3分23秒差でバルベルデが続く。ニーバリは4分43秒差の総合4位にダウンした。「生粋のアタッカーであるニーバリが総合表彰台の座を奪いにくるのは間違いないけど、今はこのステージ初優勝の喜びを味わいたい」とバルベルデはコメントしている。
総合首位クルイスウィクは「全てがコントロール下にあったように見えたかも知れないけど、レース前半はとにかくアタックの連続で混沌としていた。ニーバリとバルベルデのアタックにはすかさず反応。上手くレースを運べたと思う。毎日これが人生最大のレースだと捉えて走っている」と語る。バルベルデにボーナスタイム4秒(1位10秒、2位6秒)を奪われたものの、クルイスウィクは総合ライバルたちからリードを奪うことに成功。マリアローザを着たままクルイスウィクは最終週のアルプスステージに挑む。
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ジロ・デ・イタリア2016第16ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 2h58’54”
2位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +08”
4位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +37”
5位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)
6位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ) +38”
7位 セルゲイ・フィルサノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)
8位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +42”
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +50”
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +1’47”
11位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
14位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ) +3’20”
18位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)
19位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
124位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) +17’57”
マリアローザ 個人総合成績
1位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) 63h40’10”
2位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +3’00”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3’23”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +4’43”
5位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) +4’50”
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +5’34”
7位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +7’57”
8位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +8’53”
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール) +10’05”
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ) +11’03”
マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード) 138pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) 130pts
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ) 86pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 134pts
2位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング) 72pts
3位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) 69pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 63h48’07”
2位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ) +14’17”
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール) +34’11”
チーム総合成績
1位 アスタナ 191h30’47”
2位 モビスター +7’46”
3位 AG2Rラモンディアール +23’23”
text&photo:Kei Tsuji in Andalo, Italy