2016/05/10(火) - 15:02
フランスのロワール地方を舞台に開催されたステージレース「ツール・ド・ロワール=エ=シェール」に出場したキナンサイクリングチーム。カメラマンとして帯同した筆者・加藤智が、そこで見たもの、感じたことをレポートする。
第1ステージ ブロワ-ヌーアン=ルー=フュズリエ
初日は朝から快晴。ブロワのスタートを見送った後、裏道を使って先回り。コース中盤にある山岳賞ポイントに向かう。日本と違い、なだらかな丘陵地が多いフランス。ブロワの市街地を抜けると広々とした田園風景が広がる。ぶっちゃけた話、北海道みたい……。コース図とにらめっこし、レースを追いかけて写真を撮って……と、やってる事はツール・ド・北海道と同じ。そう思うと、ますますフランスという実感がなくなってくる。
1時間ほど車を走らせて目的のポイントに到着。レースを待っているとキャラバン隊がやってくる。ツール・ド・フランスほど華やかではないものの、音楽を流し、クラクションを鳴らしながら、お菓子やサンプル品をばら撒いていく。あぁ、やっぱり北海道じゃないな、と実感した瞬間。
第2ステージ オルシェーズ-シェールズ
2日目。朝は晴れていたものの、スタート地点のオルシェーズに移動するうちに雲が広がり、時々小雨が落ちてくる。この日は、マルコス・ガルシア選手がレース序盤にリタイアしたため、回収車から彼を引き取って一緒に回る。同行してもらってる通訳のKさんがなだめるが、ご機嫌ナナメな様子・・・。
ゴールのシェールズでは、周回コースを4周してゴールする。ゴール前で待っていると、あと1周あるのに先頭の選手が派手にガッツポーズ。すぐに間違いだと気付いたようだが・・・。
レース終了後の夕食で、この日が誕生日の阿曽圭佑選手のお祝いをする。加藤代表が内緒でホテルにお願いして用意してもらったケーキとシャンパンで乾杯。同席出来なかった南野メカニックも自転車整備をしながらシャンパンで乾杯した。私も1杯頂いたが、すきっ腹に本場のシャンパンはとてもよく効いた。
第3ステージ フレテヴァル-バンドーム
3日目の天気予報は「晴れ、のち、曇り、のち、雨」。予報になってないじゃん!とチームの全員が突っ込みを入れていたが、その意味が良くわかった1日だった。スタート直後は晴れていたが、その後曇ってきたなと思ったらいきなり豪雨になり、やんだと思ったら急激に晴れ間が出てくる。まさに「晴れ、のち、曇り、のち、雨」。
スタート地点のフレテヴァルは古い街並の小さな街。街中にデコレーションした自転車が飾られたり屋台が出ていたりと、かなりにぎやかだ。
この日の序盤は晴れていたので、菜の花畑の黄色が映える。高いところから撮影してみようと、車の屋根によじ登ってみた。さすがにこんな事をする人は他にはいないらしく、通過する審判車や関係車両に乗る人達から注目を集めてしまった。風が強かったので思ったより車が揺れてちょっと怖かったが。
この日キナンチームは一気に4人がレースを終える事になってしまった。こういう時、選手にコメントをもらいに行くのが辛い。キャプテンのジャイ・クロフォード選手は「話す事は何もないよ」とつれない……。もちろん、それ以上は何も聞けない。
第4ステージ アンジェ-アンジェ
この日も朝から曇り。時々雨が落ちてきて、晴れ間が出る事はなく、寒い一日。小雨程度で済んだのは幸いだった。
この日は、補給所にいるマッサージャーの藤間さんから昼食を受け取らないといけない。レースが通り過ぎてしまえば藤間マッサーはゴールに向かってしまうので、その前に補給所に着かないと昼食抜き・・・。
藤間さんはキナンチームの専属マッサージャー。普段は鍼灸院に勤務しており、レースの時に帯同する。マッサージャーは選手のマッサージだけしているわけではない。補給食の準備やレース後の後片付け、機材運搬車の運転など、朝から晩まで休む間もなく働く。補給食の他に、レース後に選手が食べる軽食を用意するのも藤間マッサーの仕事。
時間に余裕があればスタッフの昼食も用意してくれる。今回のレースでは、現地のスーパーで調達したハムやチーズ、野菜をフランスパンに挟んだサンドイッチを作ってくれた。これがとても美味しく、選手だけでなくスタッフにも評判。飽きないように毎日中身を少しずつ変えてくれるのも嬉しい。
撮影もそこそこに、なんとか補給所へ先回り。サンドイッチのおかげでレース後半も集中できた。
第5ステージ ブロワ市内周回コース
最終日はブロワ市内の周回コース。歩いてコースを回る。ブロワの中心街がレースコースになっていて、日本だったら沿道のお店が商売にならないと文句が出そうだ。でも日曜日なのでほとんどのお店がお休み……。だからこそ中心街でレースが出来るのかもしれない。
スタート地点に着いて車を止めると、選手にサインを貰おうと観客が寄ってくる。フランスのロードレースファンはとにかく熱心だ。
選手が過去に所属していたチームのポストカードを持ってきたり、ワインを1本持ってきてボトルやサコッシュと交換してと言ってくる人も。ちなみに昨年は、石田哲也監督が現役の頃のポストカードを持ってきた人がいたとか。
一方で、今年は昨年に比べて観客が少なめだったとか。フランスでの開催だが、出場23チーム中、フランスのチームは1チーム、フランス人選手はたった6人しかいない。やはり地元の選手が少ないと感心も薄いという事だろうか。ちなみに、唯一のフランスチームは、今年徳田鍛造選手などが所属するノジョンだった。
5日間を終えて
フランスのロードレースと言うと、「ツール・ド・フランス」が筆頭に挙げられる。私も現地で何度か観戦したが、イベントの規模が桁違いすぎて、すでにロードレースという枠を超えていると感じる。今回のツール・ド・ロワール=エ=シェールは、大会規模としては日本の同クラスのステージレース「ツール・ド・北海道」と同じくらいと感じた。
もちろん、日本との違いを感じるところは随所にある。例えば、コース途中に集落があればその中を通すとか、ゴールの街では必ず周回コースにするとか、第3ステージのフレテヴァルのように街全体がレースを盛り上げてくれるとか。そういうところを見ると、ロードレースが根付いていると感じる。
一方で、キナンチームの加藤代表によれば、最近はフランスでもレースのための交通規制が難しくなってきているそうだ。一部では反対運動もあるそうで、出来るだけ幹線道路を通らないようにコースを設定しているという。
その点でも、ツール・ド・フランスはやはり別格なのだそうだ。2月に帯同させてもらったスペイン・バレンシアのステージレースも幹線道路を通らないようなコース設定になっていたから、道路規制の問題はフランスに限った事ではないのだろう。
かなり前に、「ツール・ド・フランスだけを見て、ロードレースはこういうものだと思われるのは困る」と仰られた方がいらした。その言葉の意味がよく理解できた5日間だった。
text&photo:Satoru KATO
第1ステージ ブロワ-ヌーアン=ルー=フュズリエ
初日は朝から快晴。ブロワのスタートを見送った後、裏道を使って先回り。コース中盤にある山岳賞ポイントに向かう。日本と違い、なだらかな丘陵地が多いフランス。ブロワの市街地を抜けると広々とした田園風景が広がる。ぶっちゃけた話、北海道みたい……。コース図とにらめっこし、レースを追いかけて写真を撮って……と、やってる事はツール・ド・北海道と同じ。そう思うと、ますますフランスという実感がなくなってくる。
1時間ほど車を走らせて目的のポイントに到着。レースを待っているとキャラバン隊がやってくる。ツール・ド・フランスほど華やかではないものの、音楽を流し、クラクションを鳴らしながら、お菓子やサンプル品をばら撒いていく。あぁ、やっぱり北海道じゃないな、と実感した瞬間。
第2ステージ オルシェーズ-シェールズ
2日目。朝は晴れていたものの、スタート地点のオルシェーズに移動するうちに雲が広がり、時々小雨が落ちてくる。この日は、マルコス・ガルシア選手がレース序盤にリタイアしたため、回収車から彼を引き取って一緒に回る。同行してもらってる通訳のKさんがなだめるが、ご機嫌ナナメな様子・・・。
ゴールのシェールズでは、周回コースを4周してゴールする。ゴール前で待っていると、あと1周あるのに先頭の選手が派手にガッツポーズ。すぐに間違いだと気付いたようだが・・・。
レース終了後の夕食で、この日が誕生日の阿曽圭佑選手のお祝いをする。加藤代表が内緒でホテルにお願いして用意してもらったケーキとシャンパンで乾杯。同席出来なかった南野メカニックも自転車整備をしながらシャンパンで乾杯した。私も1杯頂いたが、すきっ腹に本場のシャンパンはとてもよく効いた。
第3ステージ フレテヴァル-バンドーム
3日目の天気予報は「晴れ、のち、曇り、のち、雨」。予報になってないじゃん!とチームの全員が突っ込みを入れていたが、その意味が良くわかった1日だった。スタート直後は晴れていたが、その後曇ってきたなと思ったらいきなり豪雨になり、やんだと思ったら急激に晴れ間が出てくる。まさに「晴れ、のち、曇り、のち、雨」。
スタート地点のフレテヴァルは古い街並の小さな街。街中にデコレーションした自転車が飾られたり屋台が出ていたりと、かなりにぎやかだ。
この日の序盤は晴れていたので、菜の花畑の黄色が映える。高いところから撮影してみようと、車の屋根によじ登ってみた。さすがにこんな事をする人は他にはいないらしく、通過する審判車や関係車両に乗る人達から注目を集めてしまった。風が強かったので思ったより車が揺れてちょっと怖かったが。
この日キナンチームは一気に4人がレースを終える事になってしまった。こういう時、選手にコメントをもらいに行くのが辛い。キャプテンのジャイ・クロフォード選手は「話す事は何もないよ」とつれない……。もちろん、それ以上は何も聞けない。
第4ステージ アンジェ-アンジェ
この日も朝から曇り。時々雨が落ちてきて、晴れ間が出る事はなく、寒い一日。小雨程度で済んだのは幸いだった。
この日は、補給所にいるマッサージャーの藤間さんから昼食を受け取らないといけない。レースが通り過ぎてしまえば藤間マッサーはゴールに向かってしまうので、その前に補給所に着かないと昼食抜き・・・。
藤間さんはキナンチームの専属マッサージャー。普段は鍼灸院に勤務しており、レースの時に帯同する。マッサージャーは選手のマッサージだけしているわけではない。補給食の準備やレース後の後片付け、機材運搬車の運転など、朝から晩まで休む間もなく働く。補給食の他に、レース後に選手が食べる軽食を用意するのも藤間マッサーの仕事。
時間に余裕があればスタッフの昼食も用意してくれる。今回のレースでは、現地のスーパーで調達したハムやチーズ、野菜をフランスパンに挟んだサンドイッチを作ってくれた。これがとても美味しく、選手だけでなくスタッフにも評判。飽きないように毎日中身を少しずつ変えてくれるのも嬉しい。
撮影もそこそこに、なんとか補給所へ先回り。サンドイッチのおかげでレース後半も集中できた。
第5ステージ ブロワ市内周回コース
最終日はブロワ市内の周回コース。歩いてコースを回る。ブロワの中心街がレースコースになっていて、日本だったら沿道のお店が商売にならないと文句が出そうだ。でも日曜日なのでほとんどのお店がお休み……。だからこそ中心街でレースが出来るのかもしれない。
スタート地点に着いて車を止めると、選手にサインを貰おうと観客が寄ってくる。フランスのロードレースファンはとにかく熱心だ。
選手が過去に所属していたチームのポストカードを持ってきたり、ワインを1本持ってきてボトルやサコッシュと交換してと言ってくる人も。ちなみに昨年は、石田哲也監督が現役の頃のポストカードを持ってきた人がいたとか。
一方で、今年は昨年に比べて観客が少なめだったとか。フランスでの開催だが、出場23チーム中、フランスのチームは1チーム、フランス人選手はたった6人しかいない。やはり地元の選手が少ないと感心も薄いという事だろうか。ちなみに、唯一のフランスチームは、今年徳田鍛造選手などが所属するノジョンだった。
5日間を終えて
フランスのロードレースと言うと、「ツール・ド・フランス」が筆頭に挙げられる。私も現地で何度か観戦したが、イベントの規模が桁違いすぎて、すでにロードレースという枠を超えていると感じる。今回のツール・ド・ロワール=エ=シェールは、大会規模としては日本の同クラスのステージレース「ツール・ド・北海道」と同じくらいと感じた。
もちろん、日本との違いを感じるところは随所にある。例えば、コース途中に集落があればその中を通すとか、ゴールの街では必ず周回コースにするとか、第3ステージのフレテヴァルのように街全体がレースを盛り上げてくれるとか。そういうところを見ると、ロードレースが根付いていると感じる。
一方で、キナンチームの加藤代表によれば、最近はフランスでもレースのための交通規制が難しくなってきているそうだ。一部では反対運動もあるそうで、出来るだけ幹線道路を通らないようにコースを設定しているという。
その点でも、ツール・ド・フランスはやはり別格なのだそうだ。2月に帯同させてもらったスペイン・バレンシアのステージレースも幹線道路を通らないようなコース設定になっていたから、道路規制の問題はフランスに限った事ではないのだろう。
かなり前に、「ツール・ド・フランスだけを見て、ロードレースはこういうものだと思われるのは困る」と仰られた方がいらした。その言葉の意味がよく理解できた5日間だった。
text&photo:Satoru KATO
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ロワールの古城、アンボワースの黄昏
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