2016/03/02(水) - 21:18
マラッカ周回コースで繰り広げられたランカウイの最終スプリントでアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が4勝目。黒枝士揮(愛三工業レーシング)が3位に入って表彰台に上るとともに、UCIポイントを獲得した。
ツール・ド・ランカウイの終着地は、古くから港湾都市として栄えたマラッカ(現地名ムラカ)だ。歴史的にポルトガルやオランダ、イギリス、日本の統治を経験してきた人口45万人の都市は、第2ステージで訪れたジョージタウンとともに「マラッカ海峡の歴史的都市群」としてユネスコ世界遺産に登録されている。
第8ステージはバトゥパハットをスタートして一路マラッカへ。観光名所のジョンカー通り、オランダ広場、海の博物館を通過する7.9kmの周回コースを3周し、巨大なアウトレット&ショッピングセンター前でフィニッシュを迎える。
119kmコースは真っ平らで、3つのスプリントポイントが総合成績に変動をもたらす。しかし総合首位レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)は集団スプリントでも上位に絡むスピードの持ち主。対して総合2位ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)と総合3位ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)はピュアクライマーであり、逆転を狙うには分が悪い。
案の定、レースは序盤からスプリントポイントへの思惑が絡み合うアタック合戦となり、逃げが決まらないまま16km地点の第1スプリントポイントに差し掛かる。総合リードを守る立場のヤンセファンレンズバーグが自らスプリントを繰り出すと、他を寄せ付けずに先頭通過してボーナスタイム3秒を獲得した。その後方ではルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)が3位通過し、ボーナスタイム1秒によって総合12位から総合9位にジャンプアップすることに成功している。
その後もアタック合戦は止まらず、アジアンライダー賞2位の伊藤雅和(愛三工業レーシング)が逃げに乗るシーンも見られたが、やがては吸収。総合成績に関係しないセオ・ジョンヨン(韓国、KSPO)、ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)、チウ・ホーサン(香港、HKSI)の3名が飛び出したところで集団はスピードを弱め、マラッカ周回コースへのクルーズを開始した。
観光客が足を止めるマラッカ周回コースに入ると逃げグループは吸収。まだ勝利を手にしていないドラパックやティンコフ、バルディアーニCSFが積極的に隊列を組んで集団前方に上がる。道幅のある海岸通りと複雑な街中のコーナーを抜け、縦に長く伸びた状態で集団スプリントが始まった。
残り600mの最終コーナーを抜けて3枚を揃えるティンコフが先頭に立ったが、その後ろからポイント賞ジャージが加速する。残り250mからスプリントを開始したグアルディーニをヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)が追撃したが届かない。
グアルディーニが勝利し、マレツコの後ろでもがき続けた黒枝が、ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)をかわして3位に入った。
グアルディーニがステージ4勝目で文句なしのポイント賞獲得。第1ステージでアシストを1人失う苦しい状況下でも独裁的な強さを見せた。グアルディーニはランカウイでのステージ通算成績を22勝にまで伸ばしている。
そして同時にヤンセファンレンズバーグの総合優勝が決定。スプリントポイントでのボーナスタイム3秒に、さらに集団分裂による4秒リードを加えて、最終的に総合2位ハラミーリョディアスとのタイム差は18秒だった。
「久々の大きな勝利を掴むことができてスーパーハッピーだ。ステージレースの総合優勝は2012年ぶり。そしてプロレースの勝利は2013年ぶり。それもこれも、ボディーガードのように前を固めてくれたチームメイトのおかげ」と少し照れくさそうな表情でヤンセファンレンズバーグはコメントする。ディメンションデータに大会連覇をもたらした27歳はティレーノ〜アドリアティコとミラノ〜サンレモ、そしてクラシックレースを転戦予定だ。
スプリントで3位に入り、スカイダイブドバイを除いてUCIコンチネンタルチーム所属選手として唯一ステージトップスリーの表彰台に上った黒枝は「これまでのステージで、スプリントで戦える実感を得ていました。残り4kmの登りで一旦チームメイトとバラバラになってしまったんですが、そこから綾部さんに集団先頭まで連れていってもらいました。綾部さんが離れてからは他のチームのリードアウトを転々としてスプリント。ヤコブ・マレツコらの後ろから踏みました」と言う。ステージ3位でUCIポイントを5ポイント獲得した。
愛三工業レーシングは伊藤雅和をアジアンライダー賞2位に送り込むことに成功。同賞1位のオスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ)が4秒遅れでフィニッシュしたが、逆転には2秒足らなかった。最終的に愛三工業レーシングは伊藤が総合22位(5ポイント)、平塚吉光が総合34位(3ポイント)、早川朋宏が総合37位(3ポイント)で、そこに黒枝の5ポイントが加わって合計16ポイント獲得。
別府匠監督は「今回のツールドランカウイの目標はUCIポイント2桁獲得と表彰台だったので、目標のクリアはできました。今回の選手たちの走りで日本人だけでも戦えるということを証明してくれました。総合では昨年の早川朋宏の16位を越えることはできませんでしたが、アジア総合1位の選手が21位だったことを考えると、今年も善戦したと言えます。伊藤は大腿骨の骨折を乗り越えてよく戻ってきてくれました」と、スプリントと総合を狙い続けたメンバーの走りを評価する。
「ゴールスプリントの連携も日に日に良くなり、選手の話だとスプリントで前にいてもあまり罵声を浴びせられなくなったと言っていました。それはチームが認められたからだと感じています。また今年は黒枝士揮の加入でスプリントのやり方も幅が広がり、毎回生き生きとゴール勝負をしていたという印象です」。
「山岳ではトップチームにスピードを見せつけられた印象ですが、クイーンステージのキャメロンハイランドを先頭グループでフィニッシュすることができれば、総合10位以内も不可能な数字ではないことがわかりました。今後はそのレベルを目指していきたいと思います。そして光る走りをする日本人選手を、海外のチームやメディアに見てもらい、さらに上のレベルへのステップにして欲しいと思っています」。
ツール・ド・ランカウイ2016第8ステージ結果
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 2h42’55”
2位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
3位 黒枝士揮(日本、愛三工業レーシング)
4位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
5位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
6位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
7位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ドラパック)
8位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
9位 マシュー・ゴス(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
10位 マルコ・ベンファット(イタリア、アンドローニジョカトリ)
個人総合成績
1位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)28h31’21”
2位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) +18”
3位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) +19”
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ) +23”
5位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ)
6位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング)
7位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ) +25”
8位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック) +29”
9位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィクソールサイクルズ)
22位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +1’12”
34位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング) +4’15”
37位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング) +4’39”
ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 88pts
2位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト) 58pts
3位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ) 53pts
山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) 49pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) 31pts
3位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア) 28pts
アジアンライダー賞
1位 オスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ) 28h32’31”
2位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +02”
3位 ザオ・ジンビャオ(中国、ヘンシャンサイクリング) +03”
text&photo:Kei Tsuji in Melaka, Malaysia
ツール・ド・ランカウイの終着地は、古くから港湾都市として栄えたマラッカ(現地名ムラカ)だ。歴史的にポルトガルやオランダ、イギリス、日本の統治を経験してきた人口45万人の都市は、第2ステージで訪れたジョージタウンとともに「マラッカ海峡の歴史的都市群」としてユネスコ世界遺産に登録されている。
第8ステージはバトゥパハットをスタートして一路マラッカへ。観光名所のジョンカー通り、オランダ広場、海の博物館を通過する7.9kmの周回コースを3周し、巨大なアウトレット&ショッピングセンター前でフィニッシュを迎える。
119kmコースは真っ平らで、3つのスプリントポイントが総合成績に変動をもたらす。しかし総合首位レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)は集団スプリントでも上位に絡むスピードの持ち主。対して総合2位ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)と総合3位ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)はピュアクライマーであり、逆転を狙うには分が悪い。
案の定、レースは序盤からスプリントポイントへの思惑が絡み合うアタック合戦となり、逃げが決まらないまま16km地点の第1スプリントポイントに差し掛かる。総合リードを守る立場のヤンセファンレンズバーグが自らスプリントを繰り出すと、他を寄せ付けずに先頭通過してボーナスタイム3秒を獲得した。その後方ではルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)が3位通過し、ボーナスタイム1秒によって総合12位から総合9位にジャンプアップすることに成功している。
その後もアタック合戦は止まらず、アジアンライダー賞2位の伊藤雅和(愛三工業レーシング)が逃げに乗るシーンも見られたが、やがては吸収。総合成績に関係しないセオ・ジョンヨン(韓国、KSPO)、ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア)、チウ・ホーサン(香港、HKSI)の3名が飛び出したところで集団はスピードを弱め、マラッカ周回コースへのクルーズを開始した。
観光客が足を止めるマラッカ周回コースに入ると逃げグループは吸収。まだ勝利を手にしていないドラパックやティンコフ、バルディアーニCSFが積極的に隊列を組んで集団前方に上がる。道幅のある海岸通りと複雑な街中のコーナーを抜け、縦に長く伸びた状態で集団スプリントが始まった。
残り600mの最終コーナーを抜けて3枚を揃えるティンコフが先頭に立ったが、その後ろからポイント賞ジャージが加速する。残り250mからスプリントを開始したグアルディーニをヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)が追撃したが届かない。
グアルディーニが勝利し、マレツコの後ろでもがき続けた黒枝が、ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)をかわして3位に入った。
グアルディーニがステージ4勝目で文句なしのポイント賞獲得。第1ステージでアシストを1人失う苦しい状況下でも独裁的な強さを見せた。グアルディーニはランカウイでのステージ通算成績を22勝にまで伸ばしている。
そして同時にヤンセファンレンズバーグの総合優勝が決定。スプリントポイントでのボーナスタイム3秒に、さらに集団分裂による4秒リードを加えて、最終的に総合2位ハラミーリョディアスとのタイム差は18秒だった。
「久々の大きな勝利を掴むことができてスーパーハッピーだ。ステージレースの総合優勝は2012年ぶり。そしてプロレースの勝利は2013年ぶり。それもこれも、ボディーガードのように前を固めてくれたチームメイトのおかげ」と少し照れくさそうな表情でヤンセファンレンズバーグはコメントする。ディメンションデータに大会連覇をもたらした27歳はティレーノ〜アドリアティコとミラノ〜サンレモ、そしてクラシックレースを転戦予定だ。
スプリントで3位に入り、スカイダイブドバイを除いてUCIコンチネンタルチーム所属選手として唯一ステージトップスリーの表彰台に上った黒枝は「これまでのステージで、スプリントで戦える実感を得ていました。残り4kmの登りで一旦チームメイトとバラバラになってしまったんですが、そこから綾部さんに集団先頭まで連れていってもらいました。綾部さんが離れてからは他のチームのリードアウトを転々としてスプリント。ヤコブ・マレツコらの後ろから踏みました」と言う。ステージ3位でUCIポイントを5ポイント獲得した。
愛三工業レーシングは伊藤雅和をアジアンライダー賞2位に送り込むことに成功。同賞1位のオスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ)が4秒遅れでフィニッシュしたが、逆転には2秒足らなかった。最終的に愛三工業レーシングは伊藤が総合22位(5ポイント)、平塚吉光が総合34位(3ポイント)、早川朋宏が総合37位(3ポイント)で、そこに黒枝の5ポイントが加わって合計16ポイント獲得。
別府匠監督は「今回のツールドランカウイの目標はUCIポイント2桁獲得と表彰台だったので、目標のクリアはできました。今回の選手たちの走りで日本人だけでも戦えるということを証明してくれました。総合では昨年の早川朋宏の16位を越えることはできませんでしたが、アジア総合1位の選手が21位だったことを考えると、今年も善戦したと言えます。伊藤は大腿骨の骨折を乗り越えてよく戻ってきてくれました」と、スプリントと総合を狙い続けたメンバーの走りを評価する。
「ゴールスプリントの連携も日に日に良くなり、選手の話だとスプリントで前にいてもあまり罵声を浴びせられなくなったと言っていました。それはチームが認められたからだと感じています。また今年は黒枝士揮の加入でスプリントのやり方も幅が広がり、毎回生き生きとゴール勝負をしていたという印象です」。
「山岳ではトップチームにスピードを見せつけられた印象ですが、クイーンステージのキャメロンハイランドを先頭グループでフィニッシュすることができれば、総合10位以内も不可能な数字ではないことがわかりました。今後はそのレベルを目指していきたいと思います。そして光る走りをする日本人選手を、海外のチームやメディアに見てもらい、さらに上のレベルへのステップにして欲しいと思っています」。
ツール・ド・ランカウイ2016第8ステージ結果
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 2h42’55”
2位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト)
3位 黒枝士揮(日本、愛三工業レーシング)
4位 ミカル・コラー(スロバキア、ティンコフ)
5位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ)
6位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
7位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、ドラパック)
8位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)
9位 マシュー・ゴス(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
10位 マルコ・ベンファット(イタリア、アンドローニジョカトリ)
個人総合成績
1位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)28h31’21”
2位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) +18”
3位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) +19”
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ) +23”
5位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ)
6位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング)
7位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ) +25”
8位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック) +29”
9位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィクソールサイクルズ)
22位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +1’12”
34位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング) +4’15”
37位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング) +4’39”
ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) 88pts
2位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、サウスイースト) 58pts
3位 アンドレア・パリーニ(イタリア、スカイダイブドバイ) 53pts
山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング) 49pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) 31pts
3位 ロー・シーキョン(マレーシア、マレーシア) 28pts
アジアンライダー賞
1位 オスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ) 28h32’31”
2位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) +02”
3位 ザオ・ジンビャオ(中国、ヘンシャンサイクリング) +03”
text&photo:Kei Tsuji in Melaka, Malaysia
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