2016/01/19(火) - 09:04
世界選手権やツール・ド・フランスをはじめとした、数々のビッグレースで勝利に貢献しているスペシャライズドのロード用ハイエンドクリンチャータイヤ「S-WORKS TURBO」。独自開発のコンパウンドにより、あらゆる走行性能を追求したレーシングモデルの新サイズ・28Cをインプレッションした。
ロード用レーシングタイヤとしては珍しい28Cというワイドザイズがラインアップに加わったのは、スペシャライズドのハイエンドモデル「S-WORKS TURBO」クリンチャーだ。昨シーズンだけでもペーター・サガンとリジー・アーミステッドの世界選手権優勝や、アルベルト・コンタドールのジロ・デ・イタリア総合優勝に貢献。数々のビッグレースで、その優れた性能を証明してきた(チューブラーモデルを含む)。
この優れたレース性能を実現するのが「GRIPTON(グリプトン)」と呼ばれるコンパウンド。これは、30年以上に渡って自動車やオートバイのタイヤ開発に携わってきたヴォルフガング・アレンツ氏の協力や、プロの実走テストのフィードバックを元に、スペシャライズドが独自に開発したもの。理想的な性能を実現するために、以前は1つの工場で行われてたタイヤの生産工程を分離し、コンパウンドの配合工程のみ原材料メーカーで行うというこだわりようだ。
さらに「S-WORKS TURBO」では、サイドとセンターでラバー素材の配合比率を変更。サイドは独自のヤスリ目でセンターはスリックと2種類のトレッドパターンを使い分けることと合わせて、コーナリンググリップと転がりという相反する性能を同時に高めることに成功した。
ケーシングは繊維密度を120TPIとし、全体に余すこと無くラバーを染みこませている。この構造により従来モデルのより耐久性を高めつつ、路面の凹凸により繊細に順応する程のしなやかさを実現した。優れた耐突き刺し性能と耐カット性能に、高い柔軟性を兼ね備える耐パンクベルト「BLACK BELT」が内部にインサートされている。
今回登場した新サイズ28Cは、既存のラインアップより更にエアボリュームを高めることで、転がり性能や振動吸収性、グリップを高めたというもの。重量は240g。スペシャライズドがプロデュースするロヴァールのRapide CLX40ホイール(リム内幅16.1mm)に装着し、6Barを充填した際の実測幅は28.8mmであった。
凸凹な路面でのレースやタイムトライアルにはもちろんのこと、これから普及することが予想されるディスクブレーキロードや、ロングライド派にも最適といえる「S-WORKS TURBO」。スペシャライズドが示すロード用タイヤの新たな一手は、どのような性能を秘めているのだろうか。スタンダードサイズの24Cと比較しながら、その性能を探った。インプレを担当してくれたのはなるしまフレンドのスタッフ、若生正剛さんだ。
ーインプレッション
「ボリュームある見た目とは裏腹な軽快感 ロングライドでもハイペースで走りたい方に最適」
若生正剛(なるしまフレンド)
24Cとの比較で試乗しましたが、見ためのボリュームとは裏腹に、走りが重くなったり、挙動が悪くなったりということはあまり感じません。28Cというタイヤサイズは私自身初めての経験でしたが、想像以上に走りが軽く、これは「アリ」だな、と思わされました。
正直言うと、乗る前は「重たそうだな」「動きもダルそうだな」と思っていました。でもそのイメージを良い意味で覆してくれましたね。クセもありませんし、驚きました。
タイヤのフィーリングも硬すぎず、かといって柔らかすぎることもありません。比較的コシがあって、路面の状況も掴みやすかったですね。ボワンボワンと浮遊しているような感覚も無く、れっきとした「軽快なロードタイヤ」と言うことができます。
24Cに対して最も向上したのは、走りの安定性です。私はダウンヒルに苦手意識があるのですが、24Cと比較してぐっと接地感が増しているため、どんな場面でも常に安心感を持って走ることができました。平地でもよりハンドルが安定しますし、荒れた路面でも急にハンドルが取られることもありませんした。
また見た目とは違って、踏み出しの軽さもなかなかのものです。カタログ重量だけで判断すると避けてしまう方もいるでしょうが、実際はコンパウンドの兼ね合いもあってか「重たいものを転がしている感じ」はほとんどありません。
もちろん太くなったことで、TURBO 24Cや一般的な23Cレースタイヤと比較すれば、軽快感は少々削がれています。レース志向の方であれば好き嫌いがはっきりと分かれるかもしれませんが、ホビーレーサーである私自身はかなり気に入りましたね。
今回は6Barからテストしましたが、さすがワイドタイヤだけに衝撃吸収性能は良好です。24Cでゴツゴツした場所でも「ボンボン」と衝撃の角を消し去ってくれる。アスファルトの細かいザラつきもいなしてくれるため、長距離でも必要以上の疲れを感じないはずです。
ですから、ロングライドやグランフォンドなどを、ある程度ハイペースでこなしたい方にはベストマッチするのでは?と思います。走りも軽いので登りがあまり苦になりませんし、下りでの安定感が際立ちますから。
ただし気をつけなければいけないのが、ご自分のバイクに装着できるのか、というところ。私のスペシャライズドS-WORKS TARMAC(56サイズ)とロヴァール Rapide CLX40の組み合わせでは本当にギリギリ。サイズによっては装着できないことも多いに考えられます。リム幅との兼ね合いもありますので、できるのであれば事前に装着テストをした方が良いでしょう。
最近ではお客さんの中でも、24C程度の太さを持つタイヤに交換する方が多くなってきました。まだ21Cや23Cを使っている方、そして25Cを使う方でも、このTURBO 28Cは選択の範疇外に感じてしまうことがあると思います。実は私もそう思っていたのですが、今回のテストで考えが変わりました。これからより一層伸びていくジャンルだと感じましたし、このTURBO 28Cがピッタリとはまる方も少なくないはずです。
スペシャライズド S-WORKS TURBOクリンチャー 700x28C
コンパウンド:GRIPTON
ケーシング:120TPI
耐パンクベルト:BlackBelt
ビード:フォルダブル
実測幅:28.8mm(6Bar/リム内幅16.1mm)
推奨空気圧:6~6.5Bar
重 量:240g
価 格:7,200円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
若生正剛(なるしまフレンド)
高校卒業後からなるしまフレンドに籍を置き、今年で8年目を迎えた立川店勤務のメカニック。仕事の傍らロードレースに打ち込み、国内トップカテゴリーのJPTにも在籍した経験を持つ。ツール・ド・おきなわ国際レースやツール・ド・熊野、ツール・ド・北海道といった国内UCIレースを走った。脚質はパンチャータイプ。スタッフとしてお客さんのイメージ通りの自転車を形にすることがモットー。愛車はスペシャライズド S-WORKS TARMAC。
なるしまフレンド立川店 / CWレコメンドショップ
text&photo:So.Isobe
text:Yuya.Yamamoto
ロード用レーシングタイヤとしては珍しい28Cというワイドザイズがラインアップに加わったのは、スペシャライズドのハイエンドモデル「S-WORKS TURBO」クリンチャーだ。昨シーズンだけでもペーター・サガンとリジー・アーミステッドの世界選手権優勝や、アルベルト・コンタドールのジロ・デ・イタリア総合優勝に貢献。数々のビッグレースで、その優れた性能を証明してきた(チューブラーモデルを含む)。
この優れたレース性能を実現するのが「GRIPTON(グリプトン)」と呼ばれるコンパウンド。これは、30年以上に渡って自動車やオートバイのタイヤ開発に携わってきたヴォルフガング・アレンツ氏の協力や、プロの実走テストのフィードバックを元に、スペシャライズドが独自に開発したもの。理想的な性能を実現するために、以前は1つの工場で行われてたタイヤの生産工程を分離し、コンパウンドの配合工程のみ原材料メーカーで行うというこだわりようだ。
さらに「S-WORKS TURBO」では、サイドとセンターでラバー素材の配合比率を変更。サイドは独自のヤスリ目でセンターはスリックと2種類のトレッドパターンを使い分けることと合わせて、コーナリンググリップと転がりという相反する性能を同時に高めることに成功した。
ケーシングは繊維密度を120TPIとし、全体に余すこと無くラバーを染みこませている。この構造により従来モデルのより耐久性を高めつつ、路面の凹凸により繊細に順応する程のしなやかさを実現した。優れた耐突き刺し性能と耐カット性能に、高い柔軟性を兼ね備える耐パンクベルト「BLACK BELT」が内部にインサートされている。
今回登場した新サイズ28Cは、既存のラインアップより更にエアボリュームを高めることで、転がり性能や振動吸収性、グリップを高めたというもの。重量は240g。スペシャライズドがプロデュースするロヴァールのRapide CLX40ホイール(リム内幅16.1mm)に装着し、6Barを充填した際の実測幅は28.8mmであった。
凸凹な路面でのレースやタイムトライアルにはもちろんのこと、これから普及することが予想されるディスクブレーキロードや、ロングライド派にも最適といえる「S-WORKS TURBO」。スペシャライズドが示すロード用タイヤの新たな一手は、どのような性能を秘めているのだろうか。スタンダードサイズの24Cと比較しながら、その性能を探った。インプレを担当してくれたのはなるしまフレンドのスタッフ、若生正剛さんだ。
ーインプレッション
「ボリュームある見た目とは裏腹な軽快感 ロングライドでもハイペースで走りたい方に最適」
若生正剛(なるしまフレンド)
24Cとの比較で試乗しましたが、見ためのボリュームとは裏腹に、走りが重くなったり、挙動が悪くなったりということはあまり感じません。28Cというタイヤサイズは私自身初めての経験でしたが、想像以上に走りが軽く、これは「アリ」だな、と思わされました。
正直言うと、乗る前は「重たそうだな」「動きもダルそうだな」と思っていました。でもそのイメージを良い意味で覆してくれましたね。クセもありませんし、驚きました。
タイヤのフィーリングも硬すぎず、かといって柔らかすぎることもありません。比較的コシがあって、路面の状況も掴みやすかったですね。ボワンボワンと浮遊しているような感覚も無く、れっきとした「軽快なロードタイヤ」と言うことができます。
24Cに対して最も向上したのは、走りの安定性です。私はダウンヒルに苦手意識があるのですが、24Cと比較してぐっと接地感が増しているため、どんな場面でも常に安心感を持って走ることができました。平地でもよりハンドルが安定しますし、荒れた路面でも急にハンドルが取られることもありませんした。
また見た目とは違って、踏み出しの軽さもなかなかのものです。カタログ重量だけで判断すると避けてしまう方もいるでしょうが、実際はコンパウンドの兼ね合いもあってか「重たいものを転がしている感じ」はほとんどありません。
もちろん太くなったことで、TURBO 24Cや一般的な23Cレースタイヤと比較すれば、軽快感は少々削がれています。レース志向の方であれば好き嫌いがはっきりと分かれるかもしれませんが、ホビーレーサーである私自身はかなり気に入りましたね。
今回は6Barからテストしましたが、さすがワイドタイヤだけに衝撃吸収性能は良好です。24Cでゴツゴツした場所でも「ボンボン」と衝撃の角を消し去ってくれる。アスファルトの細かいザラつきもいなしてくれるため、長距離でも必要以上の疲れを感じないはずです。
ですから、ロングライドやグランフォンドなどを、ある程度ハイペースでこなしたい方にはベストマッチするのでは?と思います。走りも軽いので登りがあまり苦になりませんし、下りでの安定感が際立ちますから。
ただし気をつけなければいけないのが、ご自分のバイクに装着できるのか、というところ。私のスペシャライズドS-WORKS TARMAC(56サイズ)とロヴァール Rapide CLX40の組み合わせでは本当にギリギリ。サイズによっては装着できないことも多いに考えられます。リム幅との兼ね合いもありますので、できるのであれば事前に装着テストをした方が良いでしょう。
最近ではお客さんの中でも、24C程度の太さを持つタイヤに交換する方が多くなってきました。まだ21Cや23Cを使っている方、そして25Cを使う方でも、このTURBO 28Cは選択の範疇外に感じてしまうことがあると思います。実は私もそう思っていたのですが、今回のテストで考えが変わりました。これからより一層伸びていくジャンルだと感じましたし、このTURBO 28Cがピッタリとはまる方も少なくないはずです。
スペシャライズド S-WORKS TURBOクリンチャー 700x28C
コンパウンド:GRIPTON
ケーシング:120TPI
耐パンクベルト:BlackBelt
ビード:フォルダブル
実測幅:28.8mm(6Bar/リム内幅16.1mm)
推奨空気圧:6~6.5Bar
重 量:240g
価 格:7,200円(税込)
インプレッションライダーのプロフィール
若生正剛(なるしまフレンド)
高校卒業後からなるしまフレンドに籍を置き、今年で8年目を迎えた立川店勤務のメカニック。仕事の傍らロードレースに打ち込み、国内トップカテゴリーのJPTにも在籍した経験を持つ。ツール・ド・おきなわ国際レースやツール・ド・熊野、ツール・ド・北海道といった国内UCIレースを走った。脚質はパンチャータイプ。スタッフとしてお客さんのイメージ通りの自転車を形にすることがモットー。愛車はスペシャライズド S-WORKS TARMAC。
なるしまフレンド立川店 / CWレコメンドショップ
text&photo:So.Isobe
text:Yuya.Yamamoto
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