2015/12/05(土) - 09:08
世界でも有数の規模を誇る台湾の総合自転車メーカー、メリダ。今回はフルモデルチェンジによって軽さ、空力、快適性、安定性の全方位に進化を遂げた「SCULTURA(スクルトゥーラ)」をインプレッション。2015シーズンのランプレ・メリダの活躍を支えたオールラウンドマシンにフォーカスする。
同じく台湾に生産拠点を持つジャイアントに次ぎ、世界第2位の規模を誇る総合自転車メーカーがメリダ。低価格で良質なバイク造りを得意とする一方で、ドイツに開発拠点を置き、自転車競技の本場ヨーロッパでその性能を磨くことでレーシングブランドとしての地位を高め続けている。
MTB界では世界選手権優勝に貢献するなど2000年代よりトップブランドとして認知されており、2013年からランプレ・メリダの共同スポンサーとしてロードレース界に参入。イタリア随一の老舗チームの活躍を後押しすると共に、ロードレーシングブランドとしての地位も確立させつつある。
現在3タイプがラインアップされるメリダのロードバイク。エアロロード「REACTO」、エンデュランスロード「RIDE」とあって、オールラウンドモデルに位置付けられているのが「SCULTURA(スクルトゥーラ)」である。「彫刻」を意味するイタリア語を車名に冠し、初代が2006年にデビューして以来世界各国のレースで勝利に貢献。特に2012年に登場した3代目は、山岳レースでのメインバイクとしてイタリアの老舗プロチームであるランプレ・メリダに選ばれてきた。
今回フルモデルチェンジを果たしたことで4代目となった新型「SCULTURA」。その開発コンセプトは「軽量化と空力性能の向上」である。春先のクラシックレースでプロトタイプが姿を現すと、正式デビューとなった5月のジロ・デ・イタリアではヤン・ポラン(スロベニア)の難関山岳ステージ制覇に貢献。元世界王者のルイ・コスタ(ポルトガル)も好んで使用しており、来季ランプレへと移籍する新城幸也も使用することになるだろう。
さて、新型SCULTURAのフォルムを見てみると、従来モデルの面影を多く見てとることができる。逆を言えば変化が小さいようにも思えるが、翼断面の後半部分をカットしたチューブ形状「NACA Fastback」をダウンチューブやシートチューブ、フォークブレードに導入。加えて、オールラウンドモデルながらCFD解析やモックアップを用いた風洞実験によって設計を煮詰めることで、大幅な空力性能の向上を図った。
空力性能に優れるフレームを形作るのは、部位によって細かく形状を最適化した400枚ものカーボンプレプリグシートで、これを熟練の職人が手作業によりレイアップ。トップチューブの最薄部では0.4mmと軽量化を徹底しつつ、応力集中の原因となる内面のシワや積層間の空隙を徹底的に排除し剛性と強度を確保した。
そして、エアロ性能の向上や軽量化と並ぶ新型SCULTURAの大きな改良点がジオメトリーの変更だ。ランプレ・メリダからのリクエストに応え、ヘッドチューブを短くすることでアグレッシブなポジショニングを可能に。そして、リアセンターを全サイズ共通で、通常のバイクよりも5~10mm短い400mmとすることで反応性の向上を図った。
メイン素材となるのは、ナノテクノロジーによって強化したレジンを採用する「Nano Matrix Carbon」。チューブ内にリブを設ける「ダブルチャンバーテクノロジー」や、BB386規格のボトムブラケットとあわせてプロのハイパワーにも対応しながらもフレーム+フォークのセット重量で1,065g(56サイズ)を達成した。
また、従来モデルでも好評だった振動吸収性も更に強化されている。植物繊維由来の「Bio Fiber Damping Compound」をカーボンレイアップの間に挿入。シートポスト径を27.2mmへとサイズダウンし、ダイレクトマウント式のブレーキをBB下に配置することでシートステー間のブレーキブリッジを省略。リアトライアングルの柔軟性を高め、快適性の向上へと繋げている。
結果、従来モデルと比較して30%高い快適性を実現し、同時にランプレ・メリダの選手たちが求める「下りでの安定感」が更に向上。また、25Cタイヤを装着可能とすべくクリアランスを拡大しており、より振動吸収性に優れるアッセンブルが可能となった。
今回インプレッションする「SCULTURA 6000」は、新型SCULTURAの販売パッケージの中では末弟モデルにあたるものの、フレームはランプレ・メリダが使用するモデルと共通。メインコンポーネントをシマノULTEGRA、ホイールをフルクラムRacing7とすることで、プロユースのフレームを採用した完成車としては最もリーズナブルな1台となっている。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「プロユースモデルならではのレーシーな味付け 高い剛性と軽さが急勾配で活きる」
小室雅成(ウォークライド)
ランプレ・メリダが使うバイクという通り、レーシーな味付けの1台です。おそらく良質なカーボンを使用することで、軽いながらも高い剛性感を実現しているのでしょう。登りやアップダウンではロス無く入力を登坂力に変換してくれますし、BBのウィップやタメがほとんど無いことから、非常にリニアな走りを味わうことができます。特に急勾配の登りが得意ですね。
少し話は逸れますが、最近のメリダはスゴく良くなっている印象があります。従来からMTBに強い印象はあったのですが、ロードバイクについては特に意識することもありませんでしたし、読者の皆さんもきっと同様でしょう。しかし、最近はロードにも注力しており、その成果が今回試乗したSCULTURAにも表れているように感じました。新型SCULTURA以上に重量剛性比の高いフレームは中々ないですね。
同様にキビキビとしたハンドリングにもレーシングバイクらしさを感じられた一方で、直進安定性にはやや劣るかなという印象です。突き上げが大きいことも相まって、石畳や荒い路面でのレース、ツーリングは苦手ですが、そういったシチュエーションにはエンデュランス系の「RIDE」があります。新型SCULTURAは空力にも凝っているとのことでしたが、今回インプレッションした範囲では感じとれませんでした。
このバイクが適するのはパワー系のライダーで、体重が軽めなホビーレーサーの中には硬すぎると感じる方もいるかもしれません。コースとしては、前述の通り急勾配の登りが得意なことから、国内レースではお馴染みである伊豆の日本CSCや群馬CSCが合っているでしょう。激坂で勝負をかけたいという時に、そのポテンシャルを遺憾なく発揮してくれるはずです。
昨今では同クラスのレーシングバイクでもフレームセットで30万円台中盤~後半というモデルも少なくありませんから、そういった中にあっては妥当な金額といえるのではないでしょうか。フレームの持つポテンシャルが高く、パーツをグレードアップしながら乗るのも良いでしょう。
真っ先に交換したいパーツはブレーキですね。ブレーキ本体の剛性が低いのか、絶対的な制動力が高くないため、可能であればメインコンポーネントと同じくシマノULTEGRAに変更したいところ。カーボン製のシートクランプは「これが標準仕様なのか」と少し驚きましたが、軽さに貢献している部分でもあるので、そのまま使用しても良いかなとも思いますし、不安感があれば交換しても良いでしょう。
また、既に手持ちのレーシングホイールがある方にも良い選択肢になりますね。個人的には反応性の高いホイールがオススメで、疲れやすくはなるかもしれませんが、フレーム剛性の高さをより活かすことができるでしょう。国内のホビーレースにおいては長距離を走ることはまれですし、60km程度までであれば、どのクラスのレーサーでも耐えられるはず。短距離のレースで新型SCULTURAの反応性は武器になってくれることでしょう。
オールラウンドに使用したいのであれば、剛性の高いアルミホイールを組み合わせるのも良いでしょう。群馬CSCの場合にはカンパニョーロBORAなど軽量ながらハイトのあるエアロホイール、修善寺であればローハイトの軽量モデルがオススメです。
「高速域での平地巡航に優れる1台 体重のあるパワー系ライダーにオススメ」
二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
一言で例えるならば「スゴく乗りごたえのある自転車」。乗りこなすには高い脚力レベルが要求されますが、高速域での安定感は非常に高い1台です。ランプレ・メリダからのフィードバックが存分に取り入れられた、さずがはプロユースモデルという印象ですね。
軽量クライミングバイクという位置づけで、確かに重量的にも軽いのですが、得意なのは高速巡航ですね。剛性が高いためか低速域では重さを感じがちなのですが、時速40kmを越えてくると、直進安定性の高さと相まってラクに気持よく踏み続けることができます。
大きなギアでトルクフルに踏んでも良いですし、今回は試せませんでしたが、全力でもがいての高速スプリントでもスピードが伸びてくれるでしょう。プロのパワーを余すことなく推進力へと変換するべく、剛性はかなり高いレベルとされています。全くしならないということはないのですが全体的に硬いという印象です。
それ故に、一般的なホビーレーサーレベルだと踏み負けてしまいそうになりますし、私のような体重の軽いライダーですと使いこなせないということもあるでしょう。平地巡航が得意な体重のあるパワー系ライダーにオススメしたいです。
登りについては、今回のインプレッションでは乗りこなしきれなかったというのが正直な所です。しかし、従来モデルですが宇都宮ブリッツェンの増田成幸選手はSCULTURAを使用して国内レースで活躍している点を考えると、走らせ方次第では、軽快に登ってくれるということでしょう。しいて言えば、ダンシングを多用するよりも、シッティングでじわじわっとペースを上げながら登るのが得意ですね。
下りでは直進安定性の高さが活きていきますね。直線基調の下りでは、道が荒れていても弾かれてラインを乱されるということがない安心感の高さがあります。全体的に硬い一方で、リアブレーキをBB下に移動し、シートステーのブリッジを廃した影響か、レーシングバイクとして必要レベルの快適性は確保されています。ホイールを変えることで振動吸収性を高めることもできるでしょう。
パーツアッセンブルでは、サードパーティのブレーキの制動力に不満が残ります。私でしたら、まず最初にシマノの純正品に交換したいですね。同様にクランクも予算があればシマノに交換したい所です。ただ、プロユースのフレームを採用した完成車ながらアッセンブリーで価格を抑えてきたという点は評価できるのではないでしょうか。
もし、自分でメンテナンスされる方がいらっしゃれば、ワイヤーの取り回しを気をつけてあげたいですね。ワイヤーが折れ曲がらないという点では良いのですが、シフトは左右とも横方向への張り出しが大きく、長すぎるとダンシング時に脚にあたってしまうので、注意したいところです。
新型SCULTURAをオススメしたいのは、体重があってハイパワーなレーサーの方ですね。加えて、プロと同じフレームに乗れるという点では、ランプレ・メリダや宇都宮ブリッツェンなど、メリダのサポートチームのファンという方にも良いでしょう。
メリダ SCULTURA 6000(完成車)
フレーム:Scultura CF4 lite MC
フォーク:Scultura Mid Superlite
メインコンポーネント:シマノ ULTEGRA
ホイール:フルクラム Racing7
サイズ(cm):44、47、50、52、54
カラー:シルクUD/グリーン(ホワイト)
価 格:349,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
小室雅成(ウォークライド)
1971年埼玉生まれ。中学生の時にTVで見たツール・ド・フランスに憧れ、高校生から自転車競技を始める。卒業と同時に渡仏しジュニアクラスで5勝。帰国後は国内に戻りトップ選手の仲間入りを果たす。ハードトレーニングが原因で一時引退するも、12年の休養期間を経て32歳で復活。42歳の際にJプロツアーいわきクリテリウムで優勝を飾って以降も現役を貫いている。国内プロトンでは最も経験豊かな選手の一人。ウォークライド所属。
小室雅成公式サイト
ウォークライド
二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
高校時代から自転車競技を始め、卒業後は日本鋪道レーシングチーム(現 TEAM NIPPO)に5年間所属しツール・ド・北海道などで活躍。引退後は13年間なるしまフレンドに勤務し、現在は東京都立川市を拠点とする地域密着型ロードレースチーム「東京ヴェントス」を監督として率いる。同時に立川市に「Punto Ventos」をオープンし、最新の解析機材や動画を用いて、初心者からシリアスレーサーまで幅広い層を対象としたスキルアップのためのカウンセリングを行っている。
東京ヴェントス
Punto Ventos
ウェア協力:アソス
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
同じく台湾に生産拠点を持つジャイアントに次ぎ、世界第2位の規模を誇る総合自転車メーカーがメリダ。低価格で良質なバイク造りを得意とする一方で、ドイツに開発拠点を置き、自転車競技の本場ヨーロッパでその性能を磨くことでレーシングブランドとしての地位を高め続けている。
MTB界では世界選手権優勝に貢献するなど2000年代よりトップブランドとして認知されており、2013年からランプレ・メリダの共同スポンサーとしてロードレース界に参入。イタリア随一の老舗チームの活躍を後押しすると共に、ロードレーシングブランドとしての地位も確立させつつある。
現在3タイプがラインアップされるメリダのロードバイク。エアロロード「REACTO」、エンデュランスロード「RIDE」とあって、オールラウンドモデルに位置付けられているのが「SCULTURA(スクルトゥーラ)」である。「彫刻」を意味するイタリア語を車名に冠し、初代が2006年にデビューして以来世界各国のレースで勝利に貢献。特に2012年に登場した3代目は、山岳レースでのメインバイクとしてイタリアの老舗プロチームであるランプレ・メリダに選ばれてきた。
今回フルモデルチェンジを果たしたことで4代目となった新型「SCULTURA」。その開発コンセプトは「軽量化と空力性能の向上」である。春先のクラシックレースでプロトタイプが姿を現すと、正式デビューとなった5月のジロ・デ・イタリアではヤン・ポラン(スロベニア)の難関山岳ステージ制覇に貢献。元世界王者のルイ・コスタ(ポルトガル)も好んで使用しており、来季ランプレへと移籍する新城幸也も使用することになるだろう。
さて、新型SCULTURAのフォルムを見てみると、従来モデルの面影を多く見てとることができる。逆を言えば変化が小さいようにも思えるが、翼断面の後半部分をカットしたチューブ形状「NACA Fastback」をダウンチューブやシートチューブ、フォークブレードに導入。加えて、オールラウンドモデルながらCFD解析やモックアップを用いた風洞実験によって設計を煮詰めることで、大幅な空力性能の向上を図った。
空力性能に優れるフレームを形作るのは、部位によって細かく形状を最適化した400枚ものカーボンプレプリグシートで、これを熟練の職人が手作業によりレイアップ。トップチューブの最薄部では0.4mmと軽量化を徹底しつつ、応力集中の原因となる内面のシワや積層間の空隙を徹底的に排除し剛性と強度を確保した。
そして、エアロ性能の向上や軽量化と並ぶ新型SCULTURAの大きな改良点がジオメトリーの変更だ。ランプレ・メリダからのリクエストに応え、ヘッドチューブを短くすることでアグレッシブなポジショニングを可能に。そして、リアセンターを全サイズ共通で、通常のバイクよりも5~10mm短い400mmとすることで反応性の向上を図った。
メイン素材となるのは、ナノテクノロジーによって強化したレジンを採用する「Nano Matrix Carbon」。チューブ内にリブを設ける「ダブルチャンバーテクノロジー」や、BB386規格のボトムブラケットとあわせてプロのハイパワーにも対応しながらもフレーム+フォークのセット重量で1,065g(56サイズ)を達成した。
また、従来モデルでも好評だった振動吸収性も更に強化されている。植物繊維由来の「Bio Fiber Damping Compound」をカーボンレイアップの間に挿入。シートポスト径を27.2mmへとサイズダウンし、ダイレクトマウント式のブレーキをBB下に配置することでシートステー間のブレーキブリッジを省略。リアトライアングルの柔軟性を高め、快適性の向上へと繋げている。
結果、従来モデルと比較して30%高い快適性を実現し、同時にランプレ・メリダの選手たちが求める「下りでの安定感」が更に向上。また、25Cタイヤを装着可能とすべくクリアランスを拡大しており、より振動吸収性に優れるアッセンブルが可能となった。
今回インプレッションする「SCULTURA 6000」は、新型SCULTURAの販売パッケージの中では末弟モデルにあたるものの、フレームはランプレ・メリダが使用するモデルと共通。メインコンポーネントをシマノULTEGRA、ホイールをフルクラムRacing7とすることで、プロユースのフレームを採用した完成車としては最もリーズナブルな1台となっている。早速インプレッションに移ろう。
ーインプレッション
「プロユースモデルならではのレーシーな味付け 高い剛性と軽さが急勾配で活きる」
小室雅成(ウォークライド)
ランプレ・メリダが使うバイクという通り、レーシーな味付けの1台です。おそらく良質なカーボンを使用することで、軽いながらも高い剛性感を実現しているのでしょう。登りやアップダウンではロス無く入力を登坂力に変換してくれますし、BBのウィップやタメがほとんど無いことから、非常にリニアな走りを味わうことができます。特に急勾配の登りが得意ですね。
少し話は逸れますが、最近のメリダはスゴく良くなっている印象があります。従来からMTBに強い印象はあったのですが、ロードバイクについては特に意識することもありませんでしたし、読者の皆さんもきっと同様でしょう。しかし、最近はロードにも注力しており、その成果が今回試乗したSCULTURAにも表れているように感じました。新型SCULTURA以上に重量剛性比の高いフレームは中々ないですね。
同様にキビキビとしたハンドリングにもレーシングバイクらしさを感じられた一方で、直進安定性にはやや劣るかなという印象です。突き上げが大きいことも相まって、石畳や荒い路面でのレース、ツーリングは苦手ですが、そういったシチュエーションにはエンデュランス系の「RIDE」があります。新型SCULTURAは空力にも凝っているとのことでしたが、今回インプレッションした範囲では感じとれませんでした。
このバイクが適するのはパワー系のライダーで、体重が軽めなホビーレーサーの中には硬すぎると感じる方もいるかもしれません。コースとしては、前述の通り急勾配の登りが得意なことから、国内レースではお馴染みである伊豆の日本CSCや群馬CSCが合っているでしょう。激坂で勝負をかけたいという時に、そのポテンシャルを遺憾なく発揮してくれるはずです。
昨今では同クラスのレーシングバイクでもフレームセットで30万円台中盤~後半というモデルも少なくありませんから、そういった中にあっては妥当な金額といえるのではないでしょうか。フレームの持つポテンシャルが高く、パーツをグレードアップしながら乗るのも良いでしょう。
真っ先に交換したいパーツはブレーキですね。ブレーキ本体の剛性が低いのか、絶対的な制動力が高くないため、可能であればメインコンポーネントと同じくシマノULTEGRAに変更したいところ。カーボン製のシートクランプは「これが標準仕様なのか」と少し驚きましたが、軽さに貢献している部分でもあるので、そのまま使用しても良いかなとも思いますし、不安感があれば交換しても良いでしょう。
また、既に手持ちのレーシングホイールがある方にも良い選択肢になりますね。個人的には反応性の高いホイールがオススメで、疲れやすくはなるかもしれませんが、フレーム剛性の高さをより活かすことができるでしょう。国内のホビーレースにおいては長距離を走ることはまれですし、60km程度までであれば、どのクラスのレーサーでも耐えられるはず。短距離のレースで新型SCULTURAの反応性は武器になってくれることでしょう。
オールラウンドに使用したいのであれば、剛性の高いアルミホイールを組み合わせるのも良いでしょう。群馬CSCの場合にはカンパニョーロBORAなど軽量ながらハイトのあるエアロホイール、修善寺であればローハイトの軽量モデルがオススメです。
「高速域での平地巡航に優れる1台 体重のあるパワー系ライダーにオススメ」
二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
一言で例えるならば「スゴく乗りごたえのある自転車」。乗りこなすには高い脚力レベルが要求されますが、高速域での安定感は非常に高い1台です。ランプレ・メリダからのフィードバックが存分に取り入れられた、さずがはプロユースモデルという印象ですね。
軽量クライミングバイクという位置づけで、確かに重量的にも軽いのですが、得意なのは高速巡航ですね。剛性が高いためか低速域では重さを感じがちなのですが、時速40kmを越えてくると、直進安定性の高さと相まってラクに気持よく踏み続けることができます。
大きなギアでトルクフルに踏んでも良いですし、今回は試せませんでしたが、全力でもがいての高速スプリントでもスピードが伸びてくれるでしょう。プロのパワーを余すことなく推進力へと変換するべく、剛性はかなり高いレベルとされています。全くしならないということはないのですが全体的に硬いという印象です。
それ故に、一般的なホビーレーサーレベルだと踏み負けてしまいそうになりますし、私のような体重の軽いライダーですと使いこなせないということもあるでしょう。平地巡航が得意な体重のあるパワー系ライダーにオススメしたいです。
登りについては、今回のインプレッションでは乗りこなしきれなかったというのが正直な所です。しかし、従来モデルですが宇都宮ブリッツェンの増田成幸選手はSCULTURAを使用して国内レースで活躍している点を考えると、走らせ方次第では、軽快に登ってくれるということでしょう。しいて言えば、ダンシングを多用するよりも、シッティングでじわじわっとペースを上げながら登るのが得意ですね。
下りでは直進安定性の高さが活きていきますね。直線基調の下りでは、道が荒れていても弾かれてラインを乱されるということがない安心感の高さがあります。全体的に硬い一方で、リアブレーキをBB下に移動し、シートステーのブリッジを廃した影響か、レーシングバイクとして必要レベルの快適性は確保されています。ホイールを変えることで振動吸収性を高めることもできるでしょう。
パーツアッセンブルでは、サードパーティのブレーキの制動力に不満が残ります。私でしたら、まず最初にシマノの純正品に交換したいですね。同様にクランクも予算があればシマノに交換したい所です。ただ、プロユースのフレームを採用した完成車ながらアッセンブリーで価格を抑えてきたという点は評価できるのではないでしょうか。
もし、自分でメンテナンスされる方がいらっしゃれば、ワイヤーの取り回しを気をつけてあげたいですね。ワイヤーが折れ曲がらないという点では良いのですが、シフトは左右とも横方向への張り出しが大きく、長すぎるとダンシング時に脚にあたってしまうので、注意したいところです。
新型SCULTURAをオススメしたいのは、体重があってハイパワーなレーサーの方ですね。加えて、プロと同じフレームに乗れるという点では、ランプレ・メリダや宇都宮ブリッツェンなど、メリダのサポートチームのファンという方にも良いでしょう。
メリダ SCULTURA 6000(完成車)
フレーム:Scultura CF4 lite MC
フォーク:Scultura Mid Superlite
メインコンポーネント:シマノ ULTEGRA
ホイール:フルクラム Racing7
サイズ(cm):44、47、50、52、54
カラー:シルクUD/グリーン(ホワイト)
価 格:349,000円(税抜)
インプレライダーのプロフィール
小室雅成(ウォークライド)
1971年埼玉生まれ。中学生の時にTVで見たツール・ド・フランスに憧れ、高校生から自転車競技を始める。卒業と同時に渡仏しジュニアクラスで5勝。帰国後は国内に戻りトップ選手の仲間入りを果たす。ハードトレーニングが原因で一時引退するも、12年の休養期間を経て32歳で復活。42歳の際にJプロツアーいわきクリテリウムで優勝を飾って以降も現役を貫いている。国内プロトンでは最も経験豊かな選手の一人。ウォークライド所属。
小室雅成公式サイト
ウォークライド
二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
高校時代から自転車競技を始め、卒業後は日本鋪道レーシングチーム(現 TEAM NIPPO)に5年間所属しツール・ド・北海道などで活躍。引退後は13年間なるしまフレンドに勤務し、現在は東京都立川市を拠点とする地域密着型ロードレースチーム「東京ヴェントス」を監督として率いる。同時に立川市に「Punto Ventos」をオープンし、最新の解析機材や動画を用いて、初心者からシリアスレーサーまで幅広い層を対象としたスキルアップのためのカウンセリングを行っている。
東京ヴェントス
Punto Ventos
ウェア協力:アソス
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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