2015/12/01(火) - 17:42
熱き戦いが繰り広げられた2日間のRaphaスーパークロス野辺山。当記事では竹之内悠や山本幸平など、5人のトップ選手が駆ったバイクを取り上げます。
竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)
東洋フレーム 新型ハイブリッドモデル
怪我の不安を抱えながらも全日本チャンピオンとして土曜日に出走し、見事優勝を掴んだ竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)。今シーズン序盤からベルギーでテストを行っていた、スチール+カーボンの新型ハイブリッドバイクを用意してレースに臨んだ。
従来はグラファイトデザイン製のカーボンパイプをトップチューブとダウンチューブに使っていたが、新型ではトップチューブのみに変更。よりウィップを活かしたスチールバイクらしい乗り味を狙った造りに仕上げられた。スチール部分のクローム処理も見所だろう。
来春の市販化を目標にしているというこのバイクだが、チェーンステーの潰し加工は「縦にしなり、横に動かないように」という竹之内の要望に応えたスペシャルチューニング。レース中は従来のバイクとフィーリングの差で使い分けているそうだ。なお、ヘッドチューブの下側ベアリングは1.5インチ。
ハンドルとステムは今シーズンからグラファイトデザインに変更され、シートポストは東洋フレームのオリジナル品。ペダルは好んで使用を続ける旧型のタイムATACだ。なおシフトワイヤーは泥・砂対策のためにライナーを使ってフルコーティング。ヨーロッパでの激しい使用にもケーブル交換の必要が無いという。
またディスクブレーキの導入は「今のところヨーロッパでも普及率が少ないですし、機材を全て入れ替えるほどの圧倒的なメリットを感じていませんので」と見送っている。
山本幸平(トレックファクトリーレーシング)
トレック BOONE DISC
「3年ぶりのシクロクロスレースですが、MTBに慣れているのでほぼぶっつけ本番です。レース中に少しずつ感覚を掴めれば」と初日のレース前に語った、MTBクロスカントリーの全日本王者である山本幸平(トレックファクトリーレーシング)。しかしながら両日ともに3位表彰台を獲得するなど、世界基準の走りを垣間見せてくれることに。
そんな山本が野辺山のために準備したのが、トレックが誇るハイエンドレーシングバイク、BOONE DISC。600シリーズのOCLVカーボンや、振動吸収性を引き上げるための独自のIsoSpeedテクノロジー、スルーアクスルのフロントフォークなど、トレックの技術の粋を結集したバイクだ。
「普段乗るPROCALIBERにも使われているIsospeedのおかげで、シートチューブ〜シートポストがしなってくれるんです。振動吸収性にも繋がるのですが、僕にとっては一瞬”タメ”が生まれることで車体を倒した際に路面をより掴んでくれる部分がアドバンテージだと感じます。MTBよりもバイクコントロールがシビアですから、不安無くコーナーに突っ込める部分は大きいですね」とは山本。
コンポーネントはデュラエースDi2+油圧ディスクブレーキを基本に、チェーンリングのみアルテグラの46-36Tで、STAGESを装着したクランクの長さは175mm。市販品に忠実なアッセンブルだが、バーテープはスポンサーのESI製にカスタムされている。写真のボントレガー・aeolus3 TLRホイールはスペアとして持ち込まれた。
リサ・ジェイコブス(オーストラリア、ラファ・フォーカス)
フォーカス MARES CX
女子UCIレースを両日ともに制した、オーストラリアナショナルチャンピオンのリサ・ジェイコブス(ラファ・フォーカス) 。バイクはフォーカスのMARES CX、スルーアクスルのレバーを90°回すだけで簡単にロック&リリースできるR.A.T(Rapid Axle Technology)という独自システムや、ボリュームがありながらも1000g程度まで抑えられた重量など、フォーカスのハイエンドモデルだ。
来日の直前にペイントが完了したばかりというオーストラリアカラーに彩られたMARES CX。スラムのシクロクロス用フロントシングル専用コンポーネント、Force1を中心に、クランク式パワーメーターのQUARQを組み合わせている。
また最も特徴的なホイールは、オーストラリアの小規模ホイール・フレームブランドであるCURVE CYCLINGのカーボンリムにtuneのディスクブレーキ用ハブを組み合わせたもの。特徴的なFMBのチューブラータイヤは今シーズンから登場したシリカを配合した新コンパウンド採用のタイヤ。かつて野辺山クロスにも参加したモリー・キャメロンがアメリカ・ポートランドで営むサイクルショップ「PORTLAND BICYCLE STUDIO」のレターが記されていた。なおスペアバイクにはラファ・フォーカスのノーマルカラーバイクを使っていた。
ティム・ジョンソン(Cannondale Cyclocrossworld)
キャノンデール SUPER X カスタム
今年の野辺山ではシクロクロススクールを開講するなど、気さくな人柄で国内でも大人気のティム・ジョンソン(Cannondale Cyclocrossworld)。バイクは軽量シクロクロスバイクの走りでもあるキャノンデールのSUPER X。フロントフォークにLeftyサスペンションを投入したカスタムモデルを持ち込み、大きな注目を集めていた。
このフォークは2015モデルとしてデビューしているSLATE用の30mmトラベルサス「OLIVER」で、既存のフレームを加工して組み合わせていると思われる。本人に話を聞いたところ「元々フレームが軽いので、サスペンション投入はメリットでしかない」という返答。ここにマヴィックのキシリウムプロディスクホイールを組み合わせている。
スラムのシクロクロス用フロントシングル専用コンポーネント、Force1を投入しており、ディスクローター径はフロント160mm、リア140mmというアッセンブリーだった。サドルはファブリックのScoop。ハンドル周りやシートポストはジップで統一され、なぜか小さなフロントライトを装着したままUCIレースを走った。
ベン・ベルデン(ベルギー、WCupスタンパー)
STOEMPER RONNY
マキノと野辺山を連戦したベン・ベルデン(ベルギー、WCupスタンパー)のバイクは、アメリカ・オレゴン州のハンドメイドブランド「STOEMPER」のアルミバイク「Ronny」。今回の野辺山で最もマニア要素の高いバイクだったことは間違いないだろう。
特徴的なのは、市販化へ向けて細部を煮詰めているというスルーアクスル仕様のTRP製カーボンフォークを使い、リアもスルーアクスル仕様とされていること。コンポーネントもTRP製品が中心となっており、ブレーキレバー及びキャリパーは油圧式の「Hylex」で、アルテグラDi2のリアディレイラーを動かすために、Di2のサテライトシフターを加工して取り付ける専用アダプターを使っている。ブレーキレバーのドリリング加工も見所の一つだ。ディスクローター径は前後160mm。
更にボトムブラケットはBB386を採用しており、クランクはFSA製K-FORCE LIGHTグレードの専用品。42Tのチェーンリングは同じくFSAのシングルスピード専用であるMEGATOOTHを用いた。例年ベルデンのバイクにはアウターギアの代わりに装着するチェーンガードが用意されていたが、今回は無し。フロントディレイラー部分に設けたK-Edgeのチェーンキャッチャー、クロスシングルXLのみであった。
text&photo:So.Isobe
竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)
東洋フレーム 新型ハイブリッドモデル
怪我の不安を抱えながらも全日本チャンピオンとして土曜日に出走し、見事優勝を掴んだ竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)。今シーズン序盤からベルギーでテストを行っていた、スチール+カーボンの新型ハイブリッドバイクを用意してレースに臨んだ。
従来はグラファイトデザイン製のカーボンパイプをトップチューブとダウンチューブに使っていたが、新型ではトップチューブのみに変更。よりウィップを活かしたスチールバイクらしい乗り味を狙った造りに仕上げられた。スチール部分のクローム処理も見所だろう。
来春の市販化を目標にしているというこのバイクだが、チェーンステーの潰し加工は「縦にしなり、横に動かないように」という竹之内の要望に応えたスペシャルチューニング。レース中は従来のバイクとフィーリングの差で使い分けているそうだ。なお、ヘッドチューブの下側ベアリングは1.5インチ。
ハンドルとステムは今シーズンからグラファイトデザインに変更され、シートポストは東洋フレームのオリジナル品。ペダルは好んで使用を続ける旧型のタイムATACだ。なおシフトワイヤーは泥・砂対策のためにライナーを使ってフルコーティング。ヨーロッパでの激しい使用にもケーブル交換の必要が無いという。
またディスクブレーキの導入は「今のところヨーロッパでも普及率が少ないですし、機材を全て入れ替えるほどの圧倒的なメリットを感じていませんので」と見送っている。
山本幸平(トレックファクトリーレーシング)
トレック BOONE DISC
「3年ぶりのシクロクロスレースですが、MTBに慣れているのでほぼぶっつけ本番です。レース中に少しずつ感覚を掴めれば」と初日のレース前に語った、MTBクロスカントリーの全日本王者である山本幸平(トレックファクトリーレーシング)。しかしながら両日ともに3位表彰台を獲得するなど、世界基準の走りを垣間見せてくれることに。
そんな山本が野辺山のために準備したのが、トレックが誇るハイエンドレーシングバイク、BOONE DISC。600シリーズのOCLVカーボンや、振動吸収性を引き上げるための独自のIsoSpeedテクノロジー、スルーアクスルのフロントフォークなど、トレックの技術の粋を結集したバイクだ。
「普段乗るPROCALIBERにも使われているIsospeedのおかげで、シートチューブ〜シートポストがしなってくれるんです。振動吸収性にも繋がるのですが、僕にとっては一瞬”タメ”が生まれることで車体を倒した際に路面をより掴んでくれる部分がアドバンテージだと感じます。MTBよりもバイクコントロールがシビアですから、不安無くコーナーに突っ込める部分は大きいですね」とは山本。
コンポーネントはデュラエースDi2+油圧ディスクブレーキを基本に、チェーンリングのみアルテグラの46-36Tで、STAGESを装着したクランクの長さは175mm。市販品に忠実なアッセンブルだが、バーテープはスポンサーのESI製にカスタムされている。写真のボントレガー・aeolus3 TLRホイールはスペアとして持ち込まれた。
リサ・ジェイコブス(オーストラリア、ラファ・フォーカス)
フォーカス MARES CX
女子UCIレースを両日ともに制した、オーストラリアナショナルチャンピオンのリサ・ジェイコブス(ラファ・フォーカス) 。バイクはフォーカスのMARES CX、スルーアクスルのレバーを90°回すだけで簡単にロック&リリースできるR.A.T(Rapid Axle Technology)という独自システムや、ボリュームがありながらも1000g程度まで抑えられた重量など、フォーカスのハイエンドモデルだ。
来日の直前にペイントが完了したばかりというオーストラリアカラーに彩られたMARES CX。スラムのシクロクロス用フロントシングル専用コンポーネント、Force1を中心に、クランク式パワーメーターのQUARQを組み合わせている。
また最も特徴的なホイールは、オーストラリアの小規模ホイール・フレームブランドであるCURVE CYCLINGのカーボンリムにtuneのディスクブレーキ用ハブを組み合わせたもの。特徴的なFMBのチューブラータイヤは今シーズンから登場したシリカを配合した新コンパウンド採用のタイヤ。かつて野辺山クロスにも参加したモリー・キャメロンがアメリカ・ポートランドで営むサイクルショップ「PORTLAND BICYCLE STUDIO」のレターが記されていた。なおスペアバイクにはラファ・フォーカスのノーマルカラーバイクを使っていた。
ティム・ジョンソン(Cannondale Cyclocrossworld)
キャノンデール SUPER X カスタム
今年の野辺山ではシクロクロススクールを開講するなど、気さくな人柄で国内でも大人気のティム・ジョンソン(Cannondale Cyclocrossworld)。バイクは軽量シクロクロスバイクの走りでもあるキャノンデールのSUPER X。フロントフォークにLeftyサスペンションを投入したカスタムモデルを持ち込み、大きな注目を集めていた。
このフォークは2015モデルとしてデビューしているSLATE用の30mmトラベルサス「OLIVER」で、既存のフレームを加工して組み合わせていると思われる。本人に話を聞いたところ「元々フレームが軽いので、サスペンション投入はメリットでしかない」という返答。ここにマヴィックのキシリウムプロディスクホイールを組み合わせている。
スラムのシクロクロス用フロントシングル専用コンポーネント、Force1を投入しており、ディスクローター径はフロント160mm、リア140mmというアッセンブリーだった。サドルはファブリックのScoop。ハンドル周りやシートポストはジップで統一され、なぜか小さなフロントライトを装着したままUCIレースを走った。
ベン・ベルデン(ベルギー、WCupスタンパー)
STOEMPER RONNY
マキノと野辺山を連戦したベン・ベルデン(ベルギー、WCupスタンパー)のバイクは、アメリカ・オレゴン州のハンドメイドブランド「STOEMPER」のアルミバイク「Ronny」。今回の野辺山で最もマニア要素の高いバイクだったことは間違いないだろう。
特徴的なのは、市販化へ向けて細部を煮詰めているというスルーアクスル仕様のTRP製カーボンフォークを使い、リアもスルーアクスル仕様とされていること。コンポーネントもTRP製品が中心となっており、ブレーキレバー及びキャリパーは油圧式の「Hylex」で、アルテグラDi2のリアディレイラーを動かすために、Di2のサテライトシフターを加工して取り付ける専用アダプターを使っている。ブレーキレバーのドリリング加工も見所の一つだ。ディスクローター径は前後160mm。
更にボトムブラケットはBB386を採用しており、クランクはFSA製K-FORCE LIGHTグレードの専用品。42Tのチェーンリングは同じくFSAのシングルスピード専用であるMEGATOOTHを用いた。例年ベルデンのバイクにはアウターギアの代わりに装着するチェーンガードが用意されていたが、今回は無し。フロントディレイラー部分に設けたK-Edgeのチェーンキャッチャー、クロスシングルXLのみであった。
text&photo:So.Isobe
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