北京・延慶県で行われた第1戦に続いた千森杯2戦目は、海南島中央に位置する苗族自治区琼中での「Qiongzhong Station」で開催。日本からも7選手が参加したその模様を、現地帯同スタッフによるレポートでお伝えします。



女子エリート。17名がスタートを切る女子エリート。17名がスタートを切る
レース中はドリンクの補給がコミッセールから指示されたレース中はドリンクの補給がコミッセールから指示された 8月30日、北京でのレースを終えた各国チームはそれぞれが手配したフライトで海南島へ向かった。

粘りの走りでトップと同一周回の13位フィニッシュした須藤むつみ(Ready Go JAPAN)粘りの走りでトップと同一周回の13位フィニッシュした須藤むつみ(Ready Go JAPAN) 伊藤千紘(Ready Go JAPAN)伊藤千紘(Ready Go JAPAN) 熱帯であるため暑さが選手を苦しめると言われていたが、実際には日中も30℃を越えるほどで、朝晩は随分と涼しい。高温多湿とサマーシクロクロスに慣れた日本チームには大した暑さには感じないようだ。しかし欧米選手にはこの気温湿度は応えるようで、イギリスやカルフォルニアの選手からも「なんでこの時期にやるんだ?」という声があった。

レース前日のブリーフィングではチーフコッミセールから、北京に引き続きシクロクロスとしては例外的な補水の導入の指示があった。ボトル装着を認め、また長いホームストレート入り口でチーム要員または主催側ボランティアが給水を行うことに。ただボランティアによる給水は不慣れなこともあり、競り合っている状況では対応できなかったようだ。

北京は緑地公園内に設定された華やかなメイン会場を中心にしたコースだったが、ここ海南島は亜熱帯ジャングルの中のシングルトラックと、重機で切り開いたダートを組み合わせたワイルドな3kmのコース。恐竜の化石のような「Dinosaur Bridge」という木橋もあった。

51名が出走した男子エリート。一斉にスタートを切る51名が出走した男子エリート。一斉にスタートを切る 女子エリートは17名がスタートし、日本からの出場は須藤むつみと伊藤千紘(Ready Go JAPAN)。レースはアーサ・エランドソン(スウェーデン)とエミリー・カトーレック(アメリカ)がリードし、最後はエランドソンが5秒差で勝利。須藤がこらえる走りでトップと同一周回の13位、伊藤は-3ラップの15位。どちらも遠征目標だったUCIポイントを獲得した。

男子エリートの出走は51名。女子レース中に空模様も怪しくなっていたが、男子のスタート直後に降り始める。1コーナーには北京で3位に入ったラドミール・シムネク(チェコ、コレンドン・クワドロ)を先頭にスティーブ・シェネル(フランス)らが続き、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)も8番手ほどで序盤を終える。朝から不調を訴えていた松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)はスタートこそしたものの、1周目でレースを降りた。

雨が勢いを増す中レース先頭ではワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)がシムネクを引き離し、ゴール後に倒れながらも優勝。3位以下の追走パックには小坂も着き、目標一桁入賞圏内を狙ったものの、落車で足止めを食らいタイムロス。北京と同じ12位でフィニッシュした。

またSNELシクロクロスチームの向山と金子は中盤を走り、それぞれ26位と39位。テクニックに長ける松本駿(TEAM SCOTT)は粘り強くレースを続け23位でレースを終えた。以下に各選手のコメントを紹介しよう。

ワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)とラドミール・シムネク(チェコ、コレンドン・クワドロ)の先頭争いワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)とラドミール・シムネク(チェコ、コレンドン・クワドロ)の先頭争い 男子エリート表彰台。ワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)が倒れたため、メカニックが表彰を受けた男子エリート表彰台。ワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)が倒れたため、メカニックが表彰を受けた

12位でフィニッシュした小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)12位でフィニッシュした小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
「スタートは狙い通りスムーズにいき、6番手あたりで森の中に入りましたが、前の選手のスリップに巻き込まれ、一気に順位を下げてしまいました。そこからの追い上げに力を使ってしまい、終盤にペースダウン、初戦と同じ結果でした。初戦以上に一桁でのフィニッシュが見えていただけに悔しいです。2レースを走り、今シーズンに向けての強化すべきことが分かったし、モチベーションも上がりました。10月から改めてシーズンインするのが楽しみです。」

23位でレースを終えた松本駿(TEAM SCOTT)23位でレースを終えた松本駿(TEAM SCOTT) 向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は26位でフィニッシュ向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は26位でフィニッシュ 松本駿(TEAM SCOTT)
前回に引き続き最後尾スタートからレースは始まり、雨が降り出しと共に変わりゆくコース。第1コーナーから落車を交わし、縦一列で走るスキマに突入しようにもパスができなかった。タイヤに付いた泥がクセモノとなり、アスファルト路面と何も敷かれていない木の橋がとても滑る状態でパタパタ落車するライダーを次々とパスして順位を上げる事が出来た。コースも得意であったが、機材に慣れて無いせいで攻める走りが出来ずに無難に終わってしまった事が悔しい。今シーズンに向けた課題を見つけることが出来て、シクロクロスシーズンが待ち遠しい。

金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は39位金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は39位 向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
海南島のコースは自分が苦手とするテクニカルコースだったので、26位で完走できただけでも上出来なのですが、それ以上に、レース直前から降り出した雨でスリッピーになった路面に対応できず、序盤は後方に下がってしまったことが反省点。それが無ければもっと上位に行けたという悔しさが大きいです。とは言え、自分の限界ギリギリで走って、得るものが多いレースでした。

会場の実演販売会場の実演販売 少数民族の村を巡るツアー。大きな歓迎を受けた少数民族の村を巡るツアー。大きな歓迎を受けた 金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
予想外の雨で落車が多いレースでした。滑りやすいところが多く、コーナーや下りは慎重になりすぎるほどでした。下りと登りが連続するコースで中盤からバテてしまい、下りで慌てたところで頭を打つ落車をしてしまいました。そこからペースは上がらず、−4lapsで完走はなりませんでした。踏むパワーと競り合いの弱さを感じました。

松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)
前回のレースから中2日体は順調に回復し、コースの方も自分にとってとても得意なコースになっていました。 ですが、当日体調を急に崩し熱をもってしまい、試走の段階で全く走る事が出来ずスタートラインには並びましたが1周でレースを降り、目標には程遠いDNFという結果になりとても悔やまれます。今回は初めてシクロクロスでの遠征となり、レースの展開や内容、バイクの走らせ方等レースに関してはとても吸収出来る事が多かったです。 レースも上のレベルから下まで丁度よくいるので、どこに位置してもレースをしているという感覚を強く感じました。この経験をまた生かせるようにこれからも頑張っていきます。 スタッフの皆様本当にありがとうございました。

須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
2戦目となる海南島レースは、テクニカルな箇所が多く慎重にラインを走行すれば北京よりも手応えのある結果が出そうだったので、レース中は落ち着いて走ることを第一に、落車なく13位でゴール。UCIポイントをゲット出来ました。2試合を通して感じたのは、中国レース運営のホスピタリティーの高さで、時々レース運営に入ることのある私にとって非常に勉強になりました。このようなレースをキッカケに、今後のアジア圏シクロクロスの発展に繋がると嬉しいですね。

伊藤千紘(Ready Go JAPAN)
雨量の多い地域ということでマッドコースを予測していましたが、北京のようなハードパックでアップダウンの多い、富士見パノラマのようなコースでした。今回は完走を目標にしたものの途中で降ろされ非常に悔しい思いをしましたが、UCIポイントを獲得することができました。初めてのUCIレースの海外遠征でしたが、日本と現地のスタッフに支えられ、不安なく走ることができたことを感謝しています。今回の経験を生かして今シーズンに挑みたいと思います。

菅田代表
3年連続で招待頂いているQIANSEN TROPHY UCI CYCRO-CROSS。日本からの移動もあまり負担が大きくない中国での1週間の滞在で海外の選手と2レース走れるということは選手にとっても良い経験になると思います。 またこの大会は主催者のホスピタリティも素晴らしく、これからUCIレースを開催する側として非常に参考になります。そして、初年度から主催者が言っているように、是非ワールドカップも開催して欲しいと思います。また今回の遠征ではより一段とコミュニケーションが取ることができたので、シクロクロスでのアジアや海外との交流を更に深めて行きたいと思います。



第3回千森杯(QIANSEN TROPHY)第2戦結果
男子エリート

1位 ワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)
2位 ラドミール・シムネク(チェコ、コレンドン・クワドロ)
3位 スティーブ・シェネル(フランス)
12位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
23位 松本駿(TEAM SCOTT)
26位 向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
39位 金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
51位 松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)

女子エリート
1位 アーサ・エランドソン(スウェーデン)
2位 エミリー・カトーレック(アメリカ)
3位 アルダヴァ・レルデ(ラトビア)
13位  須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
15位 伊藤千紘(Ready Go JAPAN)

text: Masakazu ”abema” Abe
photo : Tomoko.Yasuda, abema


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