2015/09/08(火) - 09:19
カンブリア難関山岳3連戦のクライマックスで、序盤のエスケープに乗ったフランク・シュレックが逃げ切り勝利。総合勢でも熾烈な争いが繰り広げられ、先着したホアキン・ロドリゲスがファビオ・アルに対して1秒差で総合首位に浮上した。
熾烈な勝負が繰り広げられてきた難関山岳ステージ連戦もいよいよ最終日。休息日を前にした第16ステージは、太西洋に面したルアルカからエルミタ・デ・アルバ/キロスまで移動する185km。その中には3級、2級、3級、2級、2級、1級、超級と7つものカテゴリー山岳が詰め込まれ、獲得標高は5010mにも達する。
残り19km地点で頂点を迎える1級山岳アルト・デラ・コベルトリア(登坂距離10.5km/高低差855m/平均勾配8.1%)で人数を減らした集団を待つのが、今大会最難関とも言われる超級山岳アルト・エルミタ・デ・アルバ(登坂距離6.8km/高低差755m/平均勾配11.1%)。20%以上の勾配も登場するこのクライマックスで、この日も予想通り、激しい登り勝負が繰り広げられることとなった。
この日はスタート直後から逃げが決まり、山岳賞獲得へとひた走るオマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)や、2日連続で逃げるピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)、フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)らが先行し、追ってモレノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン)、シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)らが追いつき、強力な10名が先行する展開となる。
総合争いを脅かす選手を含まなかったため、カチューシャがコントロールを担うプロトンはマイペースで走り、3つ目の山岳を超えた時点でタイムギャップは22分にまで広がった。
暫く落ち着いた展開で距離を消化していったものの、ゴールまで40kmを切ると総合3位のラファル・マイカ(ポーランド)を抱えるティンコフ・サクソ勢が組織だったペースアップ。本格的な振り落としこそ掛からなかったものの、タイム差は一気に5分短縮した。
ティンコフ・サクソの牽きは一旦勢いを弱めたものの、間髪入れずにファビオ・アル(イタリア)擁するアスタナがハイペースをキープ。ディエゴ・ローザ(イタリア)やダリオ・カタルド(イタリア)など屈強なアシスト陣が牽いたことで、1級山岳アルト・デラ・コベルトリアでは集団の人数は20名ほどまでに減少した。
一方先頭グループも次々と人数を減らし、ローランやモゼールも遅れを喫してしまう。ロドルフォ・トレス(コロンビア、コロンビア)とシュレクという2名が先頭に残り、快調なテンポを刻んでカンブリア山岳決戦の大トリ、超級山岳アルト・エルミタ・デ・アルバへと登り始めた。
苦しい表情を見せるシュレクとトレスは互いにペースアップを仕掛けつつ、ゴールまでの距離を減らしていく。すると勾配が一段階上がる残り2.8kmでシュレクがアタック。トレスはこの攻撃に対処できず、シュレクのゴールまで続く独走が始まった。
観客の応援に湧く急勾配をよじのぼるようにクリアしたシュレクはトレスを1分10秒引き離し、長いガッツポーズの末にフィニッシュ。35歳のシュレクにとって、2011年のクリテリウム・アンテルナシオナル以来4年半ぶりという勝利。低迷や怪我で苦しい年月を送ってきたが、今年はブエルタ前のツアー・オブ・ユタ(UCI.HC)で総合4位に入るなど復調を見せていた。ブエルタでのステージ優勝はキャリア初であり、トレックファクトリーレーシングとしては昨日のアイマル・スベルディア(スペイン)が逃した勝利を取り返した。
その後方、メイン集団ではマイカが積極的な走りを見せるものの、チーム力を見せたのはやはりアスタナ勢。緩めすぎず、かつアタックも許さないスピードで集団を牽き、いよいよ最終盤の勝負所へと入っていく。
総合上位勢では、まずトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が遅れるものの、緩斜面で追いつく粘りの走りを見せる。6位のダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)も遅れる一方、残り1kmの急勾配で遂にロドリゲスが発進した。
リードを広げたロドリゲスだったが、苦しげな様子を見せていたアルも急速に追い上げる。逆にマイカらは遅れ、総合1秒差で争うロドリゲスとアルの一騎打ちとなり、詰められながらも最初に奪ったリードを2秒維持したプリートが先着。この着タイムの結果、ロドリゲスが総合首位を逆転し、1秒差でアルが追いかける構図となった。
3日間続いた難関山岳決戦は、着実にリードを奪ったロドリゲスに軍配。しかしステージ終了後から300kmを移動してから休息日空けには個人タイムトライアルが控えており、TTを得意とするトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は1分51秒差の4位という状態。頂上ゴールこそ終えたものの、まだまだ総合争いの行方は分からない。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第16ステージ結果
1位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング) 5h49'56"
2位 ロドルフォ・トレス(コロンビア、コロンビア) +1'10"
3位 モレノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン) +1'48"
4位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) +2'42"
5位 ピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー) +2'49"
6位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) +3'05"
7位 カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ) +4'26"
8位 ローレンス・ワーバス(アメリカ、IAMサイクリング) +6'02"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +8'51"
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +8'53"
11位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) +9'03"
12位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
13位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +9'05"
14位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +9'06"
15位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +9'07"
16位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +9'18"
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 67h52'44"
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +01"
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) +1'35"
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +1'51"
5位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +2'32"
6位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +2'38"
7位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'49"
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +3'11"
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3'58"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +5'22"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 106pts
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 96pts
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 86pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) 82pts
2位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング) 30pts
3位 ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ) 27pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 13pts
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 19pts
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 27pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 204h04'27"
2位 モビスター +2'30"
3位 アスタナ +6'32"
ステージ敢闘賞
ロドルフォ・トレス(コロンビア、コロンビア)
text:So.Isobe
photo:CorVos
熾烈な勝負が繰り広げられてきた難関山岳ステージ連戦もいよいよ最終日。休息日を前にした第16ステージは、太西洋に面したルアルカからエルミタ・デ・アルバ/キロスまで移動する185km。その中には3級、2級、3級、2級、2級、1級、超級と7つものカテゴリー山岳が詰め込まれ、獲得標高は5010mにも達する。
残り19km地点で頂点を迎える1級山岳アルト・デラ・コベルトリア(登坂距離10.5km/高低差855m/平均勾配8.1%)で人数を減らした集団を待つのが、今大会最難関とも言われる超級山岳アルト・エルミタ・デ・アルバ(登坂距離6.8km/高低差755m/平均勾配11.1%)。20%以上の勾配も登場するこのクライマックスで、この日も予想通り、激しい登り勝負が繰り広げられることとなった。
この日はスタート直後から逃げが決まり、山岳賞獲得へとひた走るオマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)や、2日連続で逃げるピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)、フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)らが先行し、追ってモレノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン)、シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)らが追いつき、強力な10名が先行する展開となる。
総合争いを脅かす選手を含まなかったため、カチューシャがコントロールを担うプロトンはマイペースで走り、3つ目の山岳を超えた時点でタイムギャップは22分にまで広がった。
暫く落ち着いた展開で距離を消化していったものの、ゴールまで40kmを切ると総合3位のラファル・マイカ(ポーランド)を抱えるティンコフ・サクソ勢が組織だったペースアップ。本格的な振り落としこそ掛からなかったものの、タイム差は一気に5分短縮した。
ティンコフ・サクソの牽きは一旦勢いを弱めたものの、間髪入れずにファビオ・アル(イタリア)擁するアスタナがハイペースをキープ。ディエゴ・ローザ(イタリア)やダリオ・カタルド(イタリア)など屈強なアシスト陣が牽いたことで、1級山岳アルト・デラ・コベルトリアでは集団の人数は20名ほどまでに減少した。
一方先頭グループも次々と人数を減らし、ローランやモゼールも遅れを喫してしまう。ロドルフォ・トレス(コロンビア、コロンビア)とシュレクという2名が先頭に残り、快調なテンポを刻んでカンブリア山岳決戦の大トリ、超級山岳アルト・エルミタ・デ・アルバへと登り始めた。
苦しい表情を見せるシュレクとトレスは互いにペースアップを仕掛けつつ、ゴールまでの距離を減らしていく。すると勾配が一段階上がる残り2.8kmでシュレクがアタック。トレスはこの攻撃に対処できず、シュレクのゴールまで続く独走が始まった。
観客の応援に湧く急勾配をよじのぼるようにクリアしたシュレクはトレスを1分10秒引き離し、長いガッツポーズの末にフィニッシュ。35歳のシュレクにとって、2011年のクリテリウム・アンテルナシオナル以来4年半ぶりという勝利。低迷や怪我で苦しい年月を送ってきたが、今年はブエルタ前のツアー・オブ・ユタ(UCI.HC)で総合4位に入るなど復調を見せていた。ブエルタでのステージ優勝はキャリア初であり、トレックファクトリーレーシングとしては昨日のアイマル・スベルディア(スペイン)が逃した勝利を取り返した。
その後方、メイン集団ではマイカが積極的な走りを見せるものの、チーム力を見せたのはやはりアスタナ勢。緩めすぎず、かつアタックも許さないスピードで集団を牽き、いよいよ最終盤の勝負所へと入っていく。
総合上位勢では、まずトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が遅れるものの、緩斜面で追いつく粘りの走りを見せる。6位のダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)も遅れる一方、残り1kmの急勾配で遂にロドリゲスが発進した。
リードを広げたロドリゲスだったが、苦しげな様子を見せていたアルも急速に追い上げる。逆にマイカらは遅れ、総合1秒差で争うロドリゲスとアルの一騎打ちとなり、詰められながらも最初に奪ったリードを2秒維持したプリートが先着。この着タイムの結果、ロドリゲスが総合首位を逆転し、1秒差でアルが追いかける構図となった。
3日間続いた難関山岳決戦は、着実にリードを奪ったロドリゲスに軍配。しかしステージ終了後から300kmを移動してから休息日空けには個人タイムトライアルが控えており、TTを得意とするトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は1分51秒差の4位という状態。頂上ゴールこそ終えたものの、まだまだ総合争いの行方は分からない。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第16ステージ結果
1位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング) 5h49'56"
2位 ロドルフォ・トレス(コロンビア、コロンビア) +1'10"
3位 モレノ・モゼール(イタリア、キャノンデール・ガーミン) +1'48"
4位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) +2'42"
5位 ピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー) +2'49"
6位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) +3'05"
7位 カルロス・ベローナ(スペイン、エティックス・クイックステップ) +4'26"
8位 ローレンス・ワーバス(アメリカ、IAMサイクリング) +6'02"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +8'51"
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +8'53"
11位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) +9'03"
12位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
13位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +9'05"
14位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +9'06"
15位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +9'07"
16位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +9'18"
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 67h52'44"
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +01"
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) +1'35"
4位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +1'51"
5位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) +2'32"
6位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +2'38"
7位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'49"
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +3'11"
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3'58"
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ) +5'22"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 106pts
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 96pts
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 86pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) 82pts
2位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング) 30pts
3位 ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ) 27pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 13pts
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 19pts
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 27pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 204h04'27"
2位 モビスター +2'30"
3位 アスタナ +6'32"
ステージ敢闘賞
ロドルフォ・トレス(コロンビア、コロンビア)
text:So.Isobe
photo:CorVos
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