2015/08/27(木) - 06:53
登り基調のスプリントでデゲンコルブとサガンを下したのは21歳の新星カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。韓国人の母親をもつ弾丸スプリンターがグランツール初勝利を掴んだ。
地中海の入り口として古くから栄えた港湾都市ロタからアンダルシア州の州都セビリアに向かうブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。スペイン第4の都市(人口70万人)の中心部に設置されたスプリントポイント通過後に、郊外のアルカラ・デ・グアダイラでフィニッシュを迎える。
平野を駆け抜ける167.3kmコースは起伏に乏しく、今大会最も平坦なコースレイアウトと言える。残り1kmアーチを切ってから高低差40mを駆け上がり、登り基調のストレートの先にフィニッシュラインが引かれている。
ブエルタ初のエチオピア出身選手であるツガブ・グルメイ(エチオピア、ランプレ・メリダ)がこの日のファーストアタッカー。しばらくしてイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とアントワーヌ・デュシェーヌ(カナダ、ユーロップカー)が合流し、3名でスプリンターチームに立ち向かうことに。
メイン集団先頭で仕事をこなしたのは総合首位キープとスプリントを同時に狙うオリカ・グリーンエッジと、総合首位奪取とスプリント狙いのジャイアント・アルペシン。ここにティンコフ・サクソも加わり、最大7分まで広がったエスケープトリオとのタイム差を調整した。
気温34度前後の熱い空気に包まれたアンダルシア州の内陸部を逃げたグルメイ、ケイセ、デュシェーヌ。やがてメイン集団とのタイム差は2分を割り込むと逃げグループの中で脚の差が出始める。ジロ・デ・イタリア最終ステージで逃げを打ち、持ち前のスピードでスプリンターチームの計算を狂わせてステージ優勝を飾ったケイセが独走に持ち込んだ一方で、グルメイとデュシェーヌは鼻息荒いメイン集団に飲み込まれた。
抵抗を見せたケイセだったが、スプリンターチームが束になってかかるとタイム差は縮小。残り9km地点でケイセがメイン集団に吸収されると、そこからフィニッシュまで、アタックの余地のない集団ハイスピード走行が始まった。
MTNキュベカが一時的に集団先頭に立ったものの、残り3kmでオリカ・グリーンエッジとジャイアント・アルペシンが再び先頭へ。残り1kmを切って始まった登り基調と、連続するロータリーやコーナーによって集団は縦に長く伸びる。
残り700mの最終コーナーを先頭で抜けたのは、ポイント賞ジャージのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を連れるダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ・サクソ)。しかしフィニッシュまで距離があったため再びジャイアント・アルペシンが主導権を奪い、クーン・デコルト(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が残り200mでジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)を解き放った。
デゲンコルブにイワンとサガンが続き、3人で登り勾配の最終ストレートを突き進む。少し出遅れたサガンを加速力で引き離し、先行するデゲンコルブを抜き去ったイワンが先頭に立つ。身長165cmの小柄なオージースプリンターがフィニッシュラインで両手拳を突き上げた。
「人生で一番幸せな日だ。サガンやデゲンコルブといった世界のトップスプリンターに登りスプリントで勝ったなんて。彼らと一緒に走るだけでも栄誉なことなのに、彼らに勝つなんて非現実的だ」。プロ入り2年目の21歳イワンは喜びを爆発させた。
ジュニア時代からロードレースとトラックレースで好成績を残し、2011年ジュニアトラック世界選手権オムニアムで優勝。2014年にスタジエールとしてオリカ・グリーンエッジ入りし、同年ロード世界選手権U23ロードレースで2位。2015年ツール・ド・ランカウイでステージ2勝、ツール・ド・コリアでステージ4勝&総合優勝を飾ったイワンが初出場のグランツールで結果を残した。
「タフなフィニッシュだったけど、チームメイトの力を借りて集団前方で最終ストレートに到着。そこから力を使ってポジションを上げる必要はなく、むしろ少しポジションを下げる余裕まであった。これまでUCIワールドツアーレースでも勝ったことがなかったので、この勝利は予想していなかったよ」。次世代の弾丸スプリンターとして注目を集めるイワンがキャリアに大きな勝利を付け加えた。
一方、登り勾配とハイスピードな展開によって集団は分裂した状態でフィニッシュ。2秒差のステージ15位に入った総合2位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)に対し、総合首位エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が8秒差のステージ21位。両者の間に生まれた6秒差が総合順位を逆転させ、ドゥムランが1秒差で総合首位に立った。
スプリントではオリカ・グリーンエッジがジャイアント・アルペシンに勝利したが、マイヨロホ争いではジャイアント・アルペシンがオリカ・グリーンエッジに勝利した。総合リーダーの座に着いたドゥムランは「当初は3週目の個人タイムトライアルが一番の目標だったけど、今はこのリーダージャージを出来る限り守りたい。これから厳しい登りが登場するけど、諦めることなく戦うよ」とコメントしている。
選手コメントはチーム公式サイトより。
Summary - Stage 5 (Rota / Alcalá de Guadaíra... 投稿者 la_vuelta
Onboard camera / Cámara a bordo - Stage 5 (Rota... 投稿者 la_vuelta
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第5ステージ結果
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 3h57’28”
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
4位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
5位 ホアホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) +02”
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
9位 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
15位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
21位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +08”
64位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +17”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 17h09’06”
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +01”
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +16”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +25”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +29”
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +31”
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +35”
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +36”
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +37”
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +48”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 61pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 36pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 35pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) 13pts
2位 ワルテル・ペドラサ(コロンビア、コロンビア) 7pts
3位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) 7pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 11pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 16pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) 17pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 51h38’26”
2位 アスタナ +27”
3位 BMCレーシング +2’20”
ステージ敢闘賞
イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
地中海の入り口として古くから栄えた港湾都市ロタからアンダルシア州の州都セビリアに向かうブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。スペイン第4の都市(人口70万人)の中心部に設置されたスプリントポイント通過後に、郊外のアルカラ・デ・グアダイラでフィニッシュを迎える。
平野を駆け抜ける167.3kmコースは起伏に乏しく、今大会最も平坦なコースレイアウトと言える。残り1kmアーチを切ってから高低差40mを駆け上がり、登り基調のストレートの先にフィニッシュラインが引かれている。
ブエルタ初のエチオピア出身選手であるツガブ・グルメイ(エチオピア、ランプレ・メリダ)がこの日のファーストアタッカー。しばらくしてイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とアントワーヌ・デュシェーヌ(カナダ、ユーロップカー)が合流し、3名でスプリンターチームに立ち向かうことに。
メイン集団先頭で仕事をこなしたのは総合首位キープとスプリントを同時に狙うオリカ・グリーンエッジと、総合首位奪取とスプリント狙いのジャイアント・アルペシン。ここにティンコフ・サクソも加わり、最大7分まで広がったエスケープトリオとのタイム差を調整した。
気温34度前後の熱い空気に包まれたアンダルシア州の内陸部を逃げたグルメイ、ケイセ、デュシェーヌ。やがてメイン集団とのタイム差は2分を割り込むと逃げグループの中で脚の差が出始める。ジロ・デ・イタリア最終ステージで逃げを打ち、持ち前のスピードでスプリンターチームの計算を狂わせてステージ優勝を飾ったケイセが独走に持ち込んだ一方で、グルメイとデュシェーヌは鼻息荒いメイン集団に飲み込まれた。
抵抗を見せたケイセだったが、スプリンターチームが束になってかかるとタイム差は縮小。残り9km地点でケイセがメイン集団に吸収されると、そこからフィニッシュまで、アタックの余地のない集団ハイスピード走行が始まった。
MTNキュベカが一時的に集団先頭に立ったものの、残り3kmでオリカ・グリーンエッジとジャイアント・アルペシンが再び先頭へ。残り1kmを切って始まった登り基調と、連続するロータリーやコーナーによって集団は縦に長く伸びる。
残り700mの最終コーナーを先頭で抜けたのは、ポイント賞ジャージのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を連れるダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ・サクソ)。しかしフィニッシュまで距離があったため再びジャイアント・アルペシンが主導権を奪い、クーン・デコルト(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が残り200mでジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)を解き放った。
デゲンコルブにイワンとサガンが続き、3人で登り勾配の最終ストレートを突き進む。少し出遅れたサガンを加速力で引き離し、先行するデゲンコルブを抜き去ったイワンが先頭に立つ。身長165cmの小柄なオージースプリンターがフィニッシュラインで両手拳を突き上げた。
「人生で一番幸せな日だ。サガンやデゲンコルブといった世界のトップスプリンターに登りスプリントで勝ったなんて。彼らと一緒に走るだけでも栄誉なことなのに、彼らに勝つなんて非現実的だ」。プロ入り2年目の21歳イワンは喜びを爆発させた。
ジュニア時代からロードレースとトラックレースで好成績を残し、2011年ジュニアトラック世界選手権オムニアムで優勝。2014年にスタジエールとしてオリカ・グリーンエッジ入りし、同年ロード世界選手権U23ロードレースで2位。2015年ツール・ド・ランカウイでステージ2勝、ツール・ド・コリアでステージ4勝&総合優勝を飾ったイワンが初出場のグランツールで結果を残した。
「タフなフィニッシュだったけど、チームメイトの力を借りて集団前方で最終ストレートに到着。そこから力を使ってポジションを上げる必要はなく、むしろ少しポジションを下げる余裕まであった。これまでUCIワールドツアーレースでも勝ったことがなかったので、この勝利は予想していなかったよ」。次世代の弾丸スプリンターとして注目を集めるイワンがキャリアに大きな勝利を付け加えた。
一方、登り勾配とハイスピードな展開によって集団は分裂した状態でフィニッシュ。2秒差のステージ15位に入った総合2位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)に対し、総合首位エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が8秒差のステージ21位。両者の間に生まれた6秒差が総合順位を逆転させ、ドゥムランが1秒差で総合首位に立った。
スプリントではオリカ・グリーンエッジがジャイアント・アルペシンに勝利したが、マイヨロホ争いではジャイアント・アルペシンがオリカ・グリーンエッジに勝利した。総合リーダーの座に着いたドゥムランは「当初は3週目の個人タイムトライアルが一番の目標だったけど、今はこのリーダージャージを出来る限り守りたい。これから厳しい登りが登場するけど、諦めることなく戦うよ」とコメントしている。
選手コメントはチーム公式サイトより。
Summary - Stage 5 (Rota / Alcalá de Guadaíra... 投稿者 la_vuelta
Onboard camera / Cámara a bordo - Stage 5 (Rota... 投稿者 la_vuelta
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第5ステージ結果
1位 カレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 3h57’28”
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
4位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
5位 ホアホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) +02”
6位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
9位 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
15位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
21位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +08”
64位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +17”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 17h09’06”
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +01”
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +16”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +25”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +29”
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +31”
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +35”
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +36”
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +37”
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +48”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 61pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 36pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 35pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) 13pts
2位 ワルテル・ペドラサ(コロンビア、コロンビア) 7pts
3位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) 7pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 11pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 16pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) 17pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 51h38’26”
2位 アスタナ +27”
3位 BMCレーシング +2’20”
ステージ敢闘賞
イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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