2015/08/03(月) - 09:24
ロードに加え、MTB界でもシェアNo1を誇るアイウェアブランド、オークリー。開発に15年もの歳月を費やしたという新レンズ「PRIZM」シリーズより、土、泥、石、芝、木々の枝葉などの視認性を高めたオフロード用モデル「 PRIZM TRAIL」をインプレッションした。
スタイリングもさることながら、オークリーが圧倒的なシェアを誇る背景には「レンズ」がある。物理的衝撃や紫外線から目を守る優れた保護性能や歪みのない自然な視界、様々なコンディションに対応する豊富なカラーバリエーションがプロアマ問わず数多くのアスリートに支持されてきた。
そんなオークリーが15年もの月日をかけて開発した新レンズが「PRIZM」シリーズである。そのコンセプトは「それぞれの環境において『視たいもの』が何かを深く理解し、可能な限りそれらを明確にみせること」。
独自に開発した新テクノロジーにより、これまでにないほどに鮮明な視界を実現することに成功したのだ。
開発過程でポイントとなったのが「ハイパースペクトルカメラ」。これは人間の目やデジタルカメラが赤・緑・青の3色を用いるのに対して、数十種類以上の色の情報を用いて1つの色を分析できるという機器で、軍事衛星にも搭載されているという。
オークリーはこれを用いて、あらゆるシチュエーション、場所、時間における光波長の分析。そして、眼が非常に敏感に捉えられることが可能な色をより多く通過させ、人の色彩感覚を弱くする色をほぼ全て取り除くレンズの開発に成功する。これが「PRIZM」シリーズである。
もちろん、レンズ素材にはアイウェア用として最高峰の光学純度を誇る「PLUTONITE」を使用。透明度を高める「HDO」テクノロジーとあわせてクリアかつ歪みのない視界を実現した。また、耐衝撃性にもすぐれ、目に有害な紫外線及び青色光を100%カットするなど、プロテクション性能に優れることも特徴である。
「PRIZM」シリーズの中で、オフロードでの使用に適したのが今回インプレッションする「PRIZM TRAIL」。土、泥、石、芝、木々の枝葉などの視認性を高めており、マウンテンバイクやシクロクロスの他、トレイルランにも対応。既にワールドカップでもプロライダーたちが多く使用している話題のレンズのインプレッションをお届けする。
「トレイルライドでのメリットが大きい レース用アイウェアとしてもいい選択」
三上和志(サイクルハウスミカミ/Cycleclub 3up)
普段からオークリーのRacing Jacketを愛用していて、レンズも数タイプを替えながら使用しますが、トレイルでは主に無色透明のクリアを使用しています。まずクリアレンズを使用する理由は、里山を走っている時なら、ハイカーや散歩する人と出会った時に威圧感がなくて、レンズ越しでも目を合わせて挨拶をしたいからです。
期待のPRIZM TRAILをかけて地元のトレイルを一日走ってみました。とてもメリハリが効いている感じですね。見えるものが同じトーンに揃って、やや赤みの強いアンバーがかった色調で見えます。青空も樹木も土もそのレンズカラーが被ったような色で、かつクッキリと見える。色ではなく、凹凸や陰影だけが強調されるような印象です。そのため路面状況はとても把握しやすいですね。
木漏れ陽の射す林のなかのトレイルを走っているときのように、明暗差の大きな光線状態の連続する状況でも、明るさの変化が気にならないまま目にスムーズに情報が入ってくる感じです。晴れて明るい状況、曇っていてフラットな状況、日の当たる場所、日陰などを通じて一定な感じで見えるので、光の変化が気にならなくなるんです。晴れた、曇ったも意識しなくなる。明るいところからいきなり暗いところに入っても目が戸惑わない。集中力を高めて走っている時には路面などの情報が伝わりやすいため、非常に良いと感じました。
一方で、景色を楽しんだり、花や新緑の独自の色彩を楽しみたい乗り方の時には必要ないですね。今回は暗くなった状況でのテストが出来ませんでしたが、レンズの色が濃いだけに日暮れが近づくと光量不足にならないかどうか、やや心配になりました。
PRIZM TRAILは、走ることやライン取りに集中するとき、威力を発揮してくれます。それはつまり安全なライドにつながります。今まで読めなかったいろいろな路面の状況が読めるようになるので、トレイルライドではメリットが大きい。テクニック向上の一助になるし、レース用アイウェアとしてもいい選択ですね。
「コントラストが強くシャープな視界 明暗差の激しい状況も対応する」
綾野真(シクロワイアード編集部)
PRIZM TRAILはXCレースとトレイルライドで数日間に渡って使用し、天候についても時間帯についても、十分な体験テストができた。まずPRIZM TRAILをかけると、ぱっと赤みがかった明るい視界になる。
普段は同オークリーのRacing Jacketに、トレイルではレンズにPersimmon Vented(パーシモン)を常用しているが、その組み合わせよりも格段に明るく感じるのは赤みがかった色味のせいか。ただしレンズ表面がミラーのようなコーティングとなっているため、日なたでもその明るさから心配するような眩しさは感じない。
PRIZM TRAILを通した視界は、コントラストが上がり、陰影や輪郭がより際立ってモノがクッキリと見えるようになる。写真のデジタルデータで例えるなら、逆光で撮影した不鮮明な写真を画像処理ソフトでコントラスト補正したときのような変化だと言えるだろうか。アドビ系画像処理ソフトなら「自動補正」のように、被写体のどの部分もおしなべてコントラストが強くなるのだ。結果、シャープに見えるような印象を受ける。
例えば路面の小石や荒れ具合がくっきりと、砂地の柔らかい所、硬いところがよく見分けられる。笹やぶの繁った感じ、落ち葉の積もり具合などもよりよく把握できるようになる。
カラマツ林に入った時、木肌のゴツゴツした質感がリアルに伝わってくるので、木々が群立した感じを一層強く感じた。視界に入るものの存在をより強く感じるようになる。
普段使いのPersimmonレンズと比べて、PRIZM TRAILは一見してそれよりも透過率の低い暗いレンズに思えるが、パーシモンレンズなら暗い森に入った時や日暮れ近くの状況でアイウェアを外したくなることがあったが、PRIZM TRAILはかけたままでいける。そのほうが路面状況がよく分かるからだ。
伊豆CSCで行われたXCレースでもテストを行い、コースの半分以上が陰無しで、深くて暗い日陰の森のセクションがあったが、そのような明暗差の激しい中でもかけっぱなしで行くことができた。今まではトレイルなら薄い色味のレンズが適すると思っていたが、透過率だけでは判断のつかない不思議な性能をPRIZM TRAILは備えているようだ。
陰のないところ(つまり日なた)は守備範囲外かというとそうでもなく、視界の明るさ、暖かさを感じるが、眩しさはしっかりカットしてくれるので、クリアよりは確実に目が楽だ。もちろん舗装路にはロード用のPRIZM ROADがあるが、TRAILでも充分機能を果たしていると感じた。
オークリー PRIZM TRAIL ラインアップ
搭載モデル(フレームカラー)/価格:
Radar EV Path(Polished Black) 32,400円
RadarLock Path(Polished Black) 33,480円
Racing Jacket(Polished Black) 32,400円
Flak Jacket(Polished Black) 25,920円
レンズ単体価格:
RadarLock Path用、Radar Path用 16,200円
Racing Jacket用、Flak Jacket用 11,880円
Half Jacket2.0用 10,800円
text&photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
スタイリングもさることながら、オークリーが圧倒的なシェアを誇る背景には「レンズ」がある。物理的衝撃や紫外線から目を守る優れた保護性能や歪みのない自然な視界、様々なコンディションに対応する豊富なカラーバリエーションがプロアマ問わず数多くのアスリートに支持されてきた。
そんなオークリーが15年もの月日をかけて開発した新レンズが「PRIZM」シリーズである。そのコンセプトは「それぞれの環境において『視たいもの』が何かを深く理解し、可能な限りそれらを明確にみせること」。
独自に開発した新テクノロジーにより、これまでにないほどに鮮明な視界を実現することに成功したのだ。
開発過程でポイントとなったのが「ハイパースペクトルカメラ」。これは人間の目やデジタルカメラが赤・緑・青の3色を用いるのに対して、数十種類以上の色の情報を用いて1つの色を分析できるという機器で、軍事衛星にも搭載されているという。
オークリーはこれを用いて、あらゆるシチュエーション、場所、時間における光波長の分析。そして、眼が非常に敏感に捉えられることが可能な色をより多く通過させ、人の色彩感覚を弱くする色をほぼ全て取り除くレンズの開発に成功する。これが「PRIZM」シリーズである。
もちろん、レンズ素材にはアイウェア用として最高峰の光学純度を誇る「PLUTONITE」を使用。透明度を高める「HDO」テクノロジーとあわせてクリアかつ歪みのない視界を実現した。また、耐衝撃性にもすぐれ、目に有害な紫外線及び青色光を100%カットするなど、プロテクション性能に優れることも特徴である。
「PRIZM」シリーズの中で、オフロードでの使用に適したのが今回インプレッションする「PRIZM TRAIL」。土、泥、石、芝、木々の枝葉などの視認性を高めており、マウンテンバイクやシクロクロスの他、トレイルランにも対応。既にワールドカップでもプロライダーたちが多く使用している話題のレンズのインプレッションをお届けする。
「トレイルライドでのメリットが大きい レース用アイウェアとしてもいい選択」
三上和志(サイクルハウスミカミ/Cycleclub 3up)
普段からオークリーのRacing Jacketを愛用していて、レンズも数タイプを替えながら使用しますが、トレイルでは主に無色透明のクリアを使用しています。まずクリアレンズを使用する理由は、里山を走っている時なら、ハイカーや散歩する人と出会った時に威圧感がなくて、レンズ越しでも目を合わせて挨拶をしたいからです。
期待のPRIZM TRAILをかけて地元のトレイルを一日走ってみました。とてもメリハリが効いている感じですね。見えるものが同じトーンに揃って、やや赤みの強いアンバーがかった色調で見えます。青空も樹木も土もそのレンズカラーが被ったような色で、かつクッキリと見える。色ではなく、凹凸や陰影だけが強調されるような印象です。そのため路面状況はとても把握しやすいですね。
木漏れ陽の射す林のなかのトレイルを走っているときのように、明暗差の大きな光線状態の連続する状況でも、明るさの変化が気にならないまま目にスムーズに情報が入ってくる感じです。晴れて明るい状況、曇っていてフラットな状況、日の当たる場所、日陰などを通じて一定な感じで見えるので、光の変化が気にならなくなるんです。晴れた、曇ったも意識しなくなる。明るいところからいきなり暗いところに入っても目が戸惑わない。集中力を高めて走っている時には路面などの情報が伝わりやすいため、非常に良いと感じました。
一方で、景色を楽しんだり、花や新緑の独自の色彩を楽しみたい乗り方の時には必要ないですね。今回は暗くなった状況でのテストが出来ませんでしたが、レンズの色が濃いだけに日暮れが近づくと光量不足にならないかどうか、やや心配になりました。
PRIZM TRAILは、走ることやライン取りに集中するとき、威力を発揮してくれます。それはつまり安全なライドにつながります。今まで読めなかったいろいろな路面の状況が読めるようになるので、トレイルライドではメリットが大きい。テクニック向上の一助になるし、レース用アイウェアとしてもいい選択ですね。
「コントラストが強くシャープな視界 明暗差の激しい状況も対応する」
綾野真(シクロワイアード編集部)
PRIZM TRAILはXCレースとトレイルライドで数日間に渡って使用し、天候についても時間帯についても、十分な体験テストができた。まずPRIZM TRAILをかけると、ぱっと赤みがかった明るい視界になる。
普段は同オークリーのRacing Jacketに、トレイルではレンズにPersimmon Vented(パーシモン)を常用しているが、その組み合わせよりも格段に明るく感じるのは赤みがかった色味のせいか。ただしレンズ表面がミラーのようなコーティングとなっているため、日なたでもその明るさから心配するような眩しさは感じない。
PRIZM TRAILを通した視界は、コントラストが上がり、陰影や輪郭がより際立ってモノがクッキリと見えるようになる。写真のデジタルデータで例えるなら、逆光で撮影した不鮮明な写真を画像処理ソフトでコントラスト補正したときのような変化だと言えるだろうか。アドビ系画像処理ソフトなら「自動補正」のように、被写体のどの部分もおしなべてコントラストが強くなるのだ。結果、シャープに見えるような印象を受ける。
例えば路面の小石や荒れ具合がくっきりと、砂地の柔らかい所、硬いところがよく見分けられる。笹やぶの繁った感じ、落ち葉の積もり具合などもよりよく把握できるようになる。
カラマツ林に入った時、木肌のゴツゴツした質感がリアルに伝わってくるので、木々が群立した感じを一層強く感じた。視界に入るものの存在をより強く感じるようになる。
普段使いのPersimmonレンズと比べて、PRIZM TRAILは一見してそれよりも透過率の低い暗いレンズに思えるが、パーシモンレンズなら暗い森に入った時や日暮れ近くの状況でアイウェアを外したくなることがあったが、PRIZM TRAILはかけたままでいける。そのほうが路面状況がよく分かるからだ。
伊豆CSCで行われたXCレースでもテストを行い、コースの半分以上が陰無しで、深くて暗い日陰の森のセクションがあったが、そのような明暗差の激しい中でもかけっぱなしで行くことができた。今まではトレイルなら薄い色味のレンズが適すると思っていたが、透過率だけでは判断のつかない不思議な性能をPRIZM TRAILは備えているようだ。
陰のないところ(つまり日なた)は守備範囲外かというとそうでもなく、視界の明るさ、暖かさを感じるが、眩しさはしっかりカットしてくれるので、クリアよりは確実に目が楽だ。もちろん舗装路にはロード用のPRIZM ROADがあるが、TRAILでも充分機能を果たしていると感じた。
オークリー PRIZM TRAIL ラインアップ
搭載モデル(フレームカラー)/価格:
Radar EV Path(Polished Black) 32,400円
RadarLock Path(Polished Black) 33,480円
Racing Jacket(Polished Black) 32,400円
Flak Jacket(Polished Black) 25,920円
レンズ単体価格:
RadarLock Path用、Radar Path用 16,200円
Racing Jacket用、Flak Jacket用 11,880円
Half Jacket2.0用 10,800円
text&photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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