2015/07/10(金) - 05:06
ル・アーヴルの街を見下ろす丘でゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)がアタック。マイヨジョーヌが落車骨折リタイアに見舞われた一方で、元シクロクロス世界王者が勝利を飾った。
オート=ノルマンディー地域圏の美しき海岸線を行くツール・ド・フランス第6ステージ。67km地点で海岸線に出ると、そこから英仏海峡を右目に見ながら西進する。エトルタ断崖を含む風光明媚な海岸線を駆け抜け、4級山岳を含むアップダウンを経てル・アーヴルでフィニッシュを迎える。
前日までの荒れた天候と展開に別れを告げて、ツールにようやく平穏がやってきた。スタート地点アブヴィルは気温20度の快晴で、リラックスした表情の188名がスタートを切る。第5ステージの落車で上腕を骨折したミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がこの日唯一のDNS。
5km地点で逃げのきっかけを作ったのは第2ステージと第4ステージで逃げに乗っていたペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)で、ここにダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)、ケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス)が合流。すぐさまスピードを弱めたメイン集団とのタイム差は今大会最大の12分30秒まで広がった。
3つある4級山岳で動きを見せたのは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで山岳賞を獲得したエリトリア出身のテクレハイマノだった。4級山岳先頭通過に与えられる1ポイントを3つ積み上げたテクレハイマノは、3級山岳ミュール・ド・ユイ覇者ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)から山岳賞トップの座を奪取。表彰台でマイヨアポワに袖を通した。
ロット・ソウダルとジャイアント・アルペシンがコントロールするメイン集団は、海風によって時折ナーバスな状態になりながらも、比較的平穏に、淡々と逃げとのタイム差を詰める。中間スプリントポイントでは本格的なスプリントが繰り広げられ、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が集団先頭通過した。
タイム差が1分を下回ったところでトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がカウンターアタックを仕掛けたものの決まらず、フィニッシュまで12kmを残して先頭で独走に持ち込んだファンビルセンも残り3kmで吸収。海風やアップダウンでの分裂は起こらず、大集団がル・アーヴルの街に到着した。
最後に待ち構えるのは残り1.5kmから始まるアングヴィルの登り(登坂距離850m/平均勾配7%)。ハイスピードで登りに突入した集団先頭ではスプリンター、パンチャー、クライマーが入り混じり、競り合いながらフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過する。ステージ優勝に向けた動きが生まれると思われた矢先、マイヨジョーヌのトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がバランスを崩した。
並走するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)に衝突する形でマルティンが倒れこみ、すぐ後ろを走るナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)も地面に叩きつけられた。
落車の影響で分裂した集団の先頭ではスティバルがアタック。徐々に勾配が緩くなる登りでスティバルが加速し、後方ではスプリンターたちが牽制する。優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を取り囲むように牽制が続いたためスピードが上がらず、スティバルのリードは決定的に。後続に2秒差をつけてスティバルが独走フィニッシュした。
「ツール・ド・フランスでステージ優勝したなんて未だに信じられない。初めてシクロクロス世界選手権で勝った時の喜びに匹敵するよ。チームが与えてくれた最高のチャンスを生かすことが出来てよかった。最初はマーク・カヴェンディッシュを前に連れて行く予定が、彼は苦しんでいた。クリストフやサガン、ファンアフェルマートも苦しんでいたので、全開でアタックしたんだ」と、3度(2010年、2011年、2014年)のシクロクロス世界チャンピオンは語る。
今大会ステージ2勝目を飾ったエティックス・クイックステップ。スティバルが喜びを爆発させた一方で、落車したマイヨジョーヌのマルティンは自力で立ち上がることが出来ず、スタッフやチームメイトの力を借りて再スタート。左腕をかばいながら暗い表情でフィニッシュラインを切った。
残り3km以内の落車だったため集団と同タイム扱いとなり、マルティンはマイヨジョーヌをキープした。しかしレース後に移動式医療トラックでX線を受けた結果、マルティンの左鎖骨粉砕開放骨折が判明する。その後、マイヨジョーヌを着たまま会場を去ったマルティンのリタイアがチームから発表された。
「とてもアンラッキーだった。何が起こったのか正確に思い出すことが出来ない。前の選手のホイールに接触したのだと思う。幸運と不運が隣り合わせ。それがツール・ド・フランスだ」とマルティンはコメントしている。マイヨジョーヌを着てのリタイアはファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)に続く2人目。マルティンはドイツに帰国し、ハンブルグで手術を受ける予定だ。
落車に巻き込まれたフルームやキンタナ、ニーバリ、ヴァンガーデンらは大事に至らず。フルームは「膝を打って出血したけど問題はない」とコメント。フルームがマイヨジョーヌを着て第7ステージを走るかどうかは未定だ。
Summary - Stage 6 (Abbeville > Le Havre) - Tour... par tourdefrance_en
ツール・ド・フランス2015第6ステージ結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) 4h53’46”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +02”
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
5位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
8位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
10位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 22h13’14”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +12”
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +25”
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +27”
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +38”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +40”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +46”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +48”
9位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +1’04”
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’15”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 161pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 158pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 120pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ) 3pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 2pts
3位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 22h13’41”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +52”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’41”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 66h41’19”
2位 エティックス・クイックステップ +22”
3位 ティンコフ・サクソ +1’44”
ステージ敢闘賞
ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)
リタイア
DNS ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
text:Kei Tsuji in Le Havre, France
オート=ノルマンディー地域圏の美しき海岸線を行くツール・ド・フランス第6ステージ。67km地点で海岸線に出ると、そこから英仏海峡を右目に見ながら西進する。エトルタ断崖を含む風光明媚な海岸線を駆け抜け、4級山岳を含むアップダウンを経てル・アーヴルでフィニッシュを迎える。
前日までの荒れた天候と展開に別れを告げて、ツールにようやく平穏がやってきた。スタート地点アブヴィルは気温20度の快晴で、リラックスした表情の188名がスタートを切る。第5ステージの落車で上腕を骨折したミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がこの日唯一のDNS。
5km地点で逃げのきっかけを作ったのは第2ステージと第4ステージで逃げに乗っていたペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)で、ここにダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)、ケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス)が合流。すぐさまスピードを弱めたメイン集団とのタイム差は今大会最大の12分30秒まで広がった。
3つある4級山岳で動きを見せたのは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで山岳賞を獲得したエリトリア出身のテクレハイマノだった。4級山岳先頭通過に与えられる1ポイントを3つ積み上げたテクレハイマノは、3級山岳ミュール・ド・ユイ覇者ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)から山岳賞トップの座を奪取。表彰台でマイヨアポワに袖を通した。
ロット・ソウダルとジャイアント・アルペシンがコントロールするメイン集団は、海風によって時折ナーバスな状態になりながらも、比較的平穏に、淡々と逃げとのタイム差を詰める。中間スプリントポイントでは本格的なスプリントが繰り広げられ、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が集団先頭通過した。
タイム差が1分を下回ったところでトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がカウンターアタックを仕掛けたものの決まらず、フィニッシュまで12kmを残して先頭で独走に持ち込んだファンビルセンも残り3kmで吸収。海風やアップダウンでの分裂は起こらず、大集団がル・アーヴルの街に到着した。
最後に待ち構えるのは残り1.5kmから始まるアングヴィルの登り(登坂距離850m/平均勾配7%)。ハイスピードで登りに突入した集団先頭ではスプリンター、パンチャー、クライマーが入り混じり、競り合いながらフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過する。ステージ優勝に向けた動きが生まれると思われた矢先、マイヨジョーヌのトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がバランスを崩した。
並走するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)に衝突する形でマルティンが倒れこみ、すぐ後ろを走るナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)も地面に叩きつけられた。
落車の影響で分裂した集団の先頭ではスティバルがアタック。徐々に勾配が緩くなる登りでスティバルが加速し、後方ではスプリンターたちが牽制する。優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を取り囲むように牽制が続いたためスピードが上がらず、スティバルのリードは決定的に。後続に2秒差をつけてスティバルが独走フィニッシュした。
「ツール・ド・フランスでステージ優勝したなんて未だに信じられない。初めてシクロクロス世界選手権で勝った時の喜びに匹敵するよ。チームが与えてくれた最高のチャンスを生かすことが出来てよかった。最初はマーク・カヴェンディッシュを前に連れて行く予定が、彼は苦しんでいた。クリストフやサガン、ファンアフェルマートも苦しんでいたので、全開でアタックしたんだ」と、3度(2010年、2011年、2014年)のシクロクロス世界チャンピオンは語る。
今大会ステージ2勝目を飾ったエティックス・クイックステップ。スティバルが喜びを爆発させた一方で、落車したマイヨジョーヌのマルティンは自力で立ち上がることが出来ず、スタッフやチームメイトの力を借りて再スタート。左腕をかばいながら暗い表情でフィニッシュラインを切った。
残り3km以内の落車だったため集団と同タイム扱いとなり、マルティンはマイヨジョーヌをキープした。しかしレース後に移動式医療トラックでX線を受けた結果、マルティンの左鎖骨粉砕開放骨折が判明する。その後、マイヨジョーヌを着たまま会場を去ったマルティンのリタイアがチームから発表された。
「とてもアンラッキーだった。何が起こったのか正確に思い出すことが出来ない。前の選手のホイールに接触したのだと思う。幸運と不運が隣り合わせ。それがツール・ド・フランスだ」とマルティンはコメントしている。マイヨジョーヌを着てのリタイアはファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)に続く2人目。マルティンはドイツに帰国し、ハンブルグで手術を受ける予定だ。
落車に巻き込まれたフルームやキンタナ、ニーバリ、ヴァンガーデンらは大事に至らず。フルームは「膝を打って出血したけど問題はない」とコメント。フルームがマイヨジョーヌを着て第7ステージを走るかどうかは未定だ。
Summary - Stage 6 (Abbeville > Le Havre) - Tour... par tourdefrance_en
ツール・ド・フランス2015第6ステージ結果
1位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) 4h53’46”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +02”
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
5位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
8位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
10位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 22h13’14”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +12”
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +25”
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +27”
5位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +38”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +40”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +46”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +48”
9位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +1’04”
10位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’15”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 161pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 158pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 120pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ) 3pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 2pts
3位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 22h13’41”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +52”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’41”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 66h41’19”
2位 エティックス・クイックステップ +22”
3位 ティンコフ・サクソ +1’44”
ステージ敢闘賞
ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)
リタイア
DNS ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
text:Kei Tsuji in Le Havre, France
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