海風に加えて激しい雨に見舞われたツール・ド・フランス第2ステージ。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のスプリント1勝目が決まり、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)がマイヨジョーヌを射止めた。



ドム塔に向かってユトレヒトをパレード走行ドム塔に向かってユトレヒトをパレード走行 photo:Kei Tsuji
ツール・ド・フランス2015第2ステージツール・ド・フランス2015第2ステージ image:A.S.O.ツール・ド・フランス2015第2ステージツール・ド・フランス2015第2ステージ image:A.S.O.


マイヨジョーヌを先頭にユトレヒトの市街地をパレード走行するマイヨジョーヌを先頭にユトレヒトの市街地をパレード走行する photo:Kei Tsujiツール主催者ASOによると第2ステージのフィニッシュ地点は「海の中」。ユトレヒトを発った一行はロッテルダムを通過後に「海の国」を意味するゼーラント州に入る。166kmの大半が海抜0mというド平坦コースは、北海と内海を分かつ浮島でフィニッシュを迎える。

ドム塔を背にスターティングセレモニーが行われたドム塔を背にスターティングセレモニーが行われた photo:Tim de Waele前日のフィニッシュラインに集まった198名の選手たちは、ユトレヒトの旧市街をパレード走行。街の中心にあるドム塔を通過し、セレモニーを経て正式なスタートが切られた。

逃げグループを形成するペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)ら逃げグループを形成するペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)ら photo:Tim de Waeleディレクターカーに乗るクリスティアン・プリュドム氏が旗を振るとすぐにアルマンド・フォンセカ(フランス、ブルターニュ・セシェ)がファーストアタック。スタート直後のこの動きにペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)とヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・アルゴン18)、スタフ・クレメント(オランダ、IAMサイクリング)が反応し、早速4名でのエスケープが始まった。

タイム差は順調に2分45秒まで広がったものの、集団スプリントの持ち込みたいエティックス・クイックステップが休む間もなくコントロールを開始。横風が吹き付ける平野に差し掛かると、集団先頭では位置取り合戦が始まった。

フィニッシュまで110km以上を残したタイミングで始まった横風集団分裂大作戦。ティンコフ・サクソやチームスカイによるペースアップの餌食になったのは、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やバウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)ら。降り始めた雨と風が荒れた展開を演出したが、ロッテルダムのスプリントポイント(80km地点)を前に一旦バルベルデらは集団に復帰する。。

先頭では4年連続チェコTTチャンピオンに輝いているバルタが独走に持ち込み、そのままスプリントポイントを先頭通過。1分後方ではジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が集団先頭を取る。その後も集団内では断続的に落車が発生し、ナーバスな状態を保ったままステージ後半に差し掛かった。



雨の中、エティックス・クイックステップとティンコフ・サクソが集団のペースを上げる雨の中、エティックス・クイックステップとティンコフ・サクソが集団のペースを上げる photo:Tim de Waele
第2集団を自ら率いるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)第2集団を自ら率いるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele第2集団内で走るマイヨジョーヌのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)第2集団内で走るマイヨジョーヌのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele
巨大な風力発電が選手たちの視界に入ってくる巨大な風力発電が選手たちの視界に入ってくる photo:Kei Tsuji


脱落したキンタナのためにモビスターが第2集団を牽引する脱落したキンタナのためにモビスターが第2集団を牽引する photo:Tim de Waeleフィニッシュまで70kmを切ると今度はチームスカイによるペースアップが始まり、逃げを捕まえた集団後方ではアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)らを含む落車が立て続けに発生。大雨と横風、落車による混乱の末、先頭集団は26名に絞られた。

パンクしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)がスペアバイクに向かって走るパンクしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)がスペアバイクに向かって走る photo:Tim de Waeleチームスカイやティンコフ・サクソ、エティックス・クイックステップの攻撃によって脱落し、1分後方での走りを強いられたのはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、ティボー・ピノ(フランス、FDJ)、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)、マイヨジョーヌのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)ら。

アルカンシェルのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が先頭集団を牽引アルカンシェルのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が先頭集団を牽引 photo:Tim de Waele残り30kmを切ると雨は止み、風は収まったものの、嵐の中で生まれた先頭集団と第2集団の1分のタイム差は最後まで縮まることはなかった。

残り15km地点でパンクしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が集団復帰を目指す残り15km地点でパンクしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が集団復帰を目指す photo:Tim de Waele残り15km地点でパンクしたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)はバイク交換後に集団復帰。積極性を見せたのは暫定マイヨジョーヌのトニ・マルティン(ドイツ)とエーススプリンターのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を先頭集団に送り込んだエティックス・クイックステップで、最終的に24名に絞られた集団がフィニッシュに突入する。

落車したアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)がフィニッシュに向かう落車したアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)がフィニッシュに向かう photo:Kei Tsujiマーク・レンショー(オーストラリア)に残り250mで発射されたカヴェンディッシュを先頭にスプリントがスタート。絶好の位置から勝負に持ち込んだカヴをグライペルやサガン、カンチェラーラが追い上げる。最後まで踏み切ることが出来ないカヴを追い抜いて、グライペル、サガン、カンチェラーラが横一線でフィニッシュ。グライペルの加速が勝った。

スプリントで先頭に立つアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)スプリントで先頭に立つアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele「先頭集団は常にスピードが上がりっぱなしだった。向かい風が吹いていたので、残り2kmの時点でトニー(ギャロパン)とマルセル(シーベルグ)に出来るだけ長い時間待つように言ったんだ。状況判断に秀でたスマートな選手で、親友でもあるマルセルに連れられてスプリント。クイックステップは人数を揃えていたものの、レンショーのリードアウト開始が早すぎた。タイミングを待って、先行するカヴェンディッシュを追い抜いたんだ」とグライペルは語る。

グライペルは2011年から毎年欠かさずツールでステージ優勝を飾っており、これがステージ通算7勝目。ポイント賞で自身初の首位に立った。「大会2日目のステージ優勝には大変満足している。明日は初めてマイヨヴェールを着ての出走だ」。

最後の追い込みで3位に入ったカンチェラーラはボーナスタイム4秒を獲得。マイヨジョーヌは、デニスの脱落によって暫定リーダーの座についていたマルティンではなく、「あとフィニッシュラインが10m先であれば勝っていたかもしれない」と振り返るカンチェラーラの手に渡った。

「来年のツール初日はタイムトライアルではなくロードレース。だから昨日のステージが自分のキャリアの中でマイヨジョーヌ獲得のラストチャンスだと思っていた。そのチャンスを逃したことに落胆したし、悔しくてよく眠ることが出来なかった」というカンチェラーラがマイヨジョーヌを獲得。マイヨジョーヌの着用日数を29日間に伸ばしている。

マルティンが3秒差の総合2位、トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が6秒差の総合3位で続く。フルームやコンタドール、ヴァンガーデレンが先頭集団でフィニッシュした一方で、ニーバリやキンタナを含む第2集団は1分28秒ものタイムロスを被った。「平坦ステージで稼ぎ出したこのリードはとてつもなく大きい。でもツールは先が長く、毎日展開が変化する。今日はリードしたけど、来週どうなるかは分からない」とフルームはコメントしている。




第2ステージのスプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)第2ステージのスプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele
ステージ通算7勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)ステージ通算7勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waeleボーナスタイムによってファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)がマイヨジョーヌを獲得ボーナスタイムによってファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)がマイヨジョーヌを獲得 photo:Tim de Waele


Flamme Rouge - Le dernier kilomètre - Étape 2... par tourdefrance

ツール・ド・フランス2015第2ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)            3h29’03”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
4位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
5位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
8位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
9位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
10位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)

11位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)        +04”
12位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
13位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
14位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)

28位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)            +1’28”
39位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
44位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
45位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
47位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
49位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
50位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
56位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
67位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
72位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
77位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)
88位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)   3h44’01”
2位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)         +03”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)           +06”
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)             +33”
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                +35”
6位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)                 +42”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
8位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)         +44”
9位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)         +48”
10位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)              55pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)             39pts
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)    35pts

マイヨアポワ(山岳賞)
設定なし

マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)         3h44’07”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)             +27”
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)+1’13”

チーム総合成績
1位 BMCレーシング                             11h13’27”
2位 エティックス・クイックステップ                       +04”
3位 チームスカイ                                +51”

ステージ敢闘賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)

text:Kei Tsuji in Zeeland, Netherlands

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