2009/02/21(土) - 07:55
デュラエース7900シリーズのインプレッション第3回目は、リアディレイラー RD-7900とカセットスプロケット CS-7900、チェーン CN-7900を取り上げる。まずは各パーツの詳細を解説した上で、トップ市民レーサー・西谷雅史のインプレッションをお届けしよう。意外にも、西谷雅史は「79デュラ」のリア変速系に辛口の評価を下した!?
シマノ・デュラエース RD-7900 photo:shimano
まず、リアディレイラー RD-7900の新機軸をご紹介しておこう。外見上、最も目立つのは、プーリープレートがカーボン化されたことだ。カンパニョーロ・レコードはアウタープレートのみカーボンだが、デュラエースはインナープレートにもカーボンを採用。さらに、本体(プレート体)にはエンジニアリングプラスチックを採用した。重量的にはRD-7800の180gから14gの軽量化を果たし、166gという軽量に仕上がっている。
しかし、RD-7900の改良点で最も大切なのは、ケーブルの引き方を改善し、クリック音と同時に変速が完了するようにしたことだ。つまり、変速がより速くなっているのだ。また、変速のアジャスト幅が拡大され、外的要因を受けにくくなり、安定した変速性能が長期間持続すると言う。
リアスプロケットの最大歯数は、RD-7800では27Tだったが、RD-7900では28Tとなった。トータルキャパシティも29Tから33Tと大きくなっている。これも見逃せない変更点だ。
シマノ・デュラエース CS-7900(表側) photo:shimano
シマノ・デュラエース CS-7900(裏側) photo:shimano
CS-7900はギヤの歯先が新設計となり、シマノの美点である「スムースな変速」をよりリファインするとともに、トルクが掛かった状態での変速など、ハードなギヤチェンジにも応える設計となった。
また、カセットスパイダーの形状も新設計となり、軽量化と高剛性化を同時に実現している。
しかし、ガンガン乗るライダーにとって最もありがたいのは、これまでになかった歯数構成が増えたことだろう。近年、プロレースでは「トップ11T」が必須ギヤになりつつある。それに応えて、11Tトップの歯数構成が中心となったのだ。歯数構成は11-21T、11-23T、11-25T、11-27T、11-28T、12-23T、12-25T、12-27Tの8種類。もちろん、ロー側4枚のスプロケットはチタニウム製である。
重量は11-23Tで比較した場合、CS-7800の173gより10gの軽量化を果たして163gとなっている。
シマノ・デュラエース CN-7900チェーン チェーン CN-7900は穴あきプレートや中空ピンの採用による軽量化ばかりが注目されているが、実はもっと根本的な改良が施されている。アウタープレートが新形状となり、ギヤとの噛み込みを大幅に軽減しているのだ。
また、アウター・インナープレートとも歯先との接触部分を改良し、よりスムースな変速、高負荷シフティングを実現している。ペダリングの効率はCN-7801と比較して0.6%アップされた。その結果、静かな駆動を実現しており、チェーン落ちのトラブルも圧倒的に減少したと言う。
重量はさすがに軽くなった。CN-7801が280g(116リンク)であったのに対して、CN-7900は252g(114リンク)だ。2リンク少ない数値とは言え、チェーンとしては飛躍的な軽量化を果たしたと言えるだろう。また、シマノのチェーンとしては初めてワンタッチで脱着できるリンクピンが採用された。
さて、パーツの詳細に関する解説はこれくらいにして、さっそく「日本最速の店長」西谷雅史のインプレッションをご紹介しよう!
西谷 雅史(サイクルポイント・オーベスト)
リアディレイラー RD-7900
カセットスプロケット CS-7900
チェーン CN-7900
これまで2ヶ月間、約4000kmほど79デュラ(7900系デュラエース)を試してきたのだが、ハッキリ言ってリア変速系が一番感動の薄かったパーツだ。「78デュラと何が違うの?」というのが正直な感想である。
「リア変速系が一番感動が薄かった。でも、それだけシマノは高性能ということですね」(西谷雅史) まあ、78デュラのリア変速系は相当良く出来ていたから、あの性能を凌駕するのは並大抵のことではない。また人間の感覚として、かなりフィーリングがアップしないと「良くなったなぁ!」という印象は得られないから、そんなことも「何が違うの?」という印象を持った原因なのかもしれない。
神経を集中してその変速フィールを感じ取ってみると、確かに変速が速くなったような気はする。性能アップとは言っても、もともと高性能だった78デュラと比較すると、そのくらいの違いなのだろう。
まあ、走りに集中していると「変速の速さ」よりも「確実に変速する」ことや「トラブルを起こさないこと」の方がよっぽど大切だから、これまでノートラブルで、使っていて何も気にならないというのは、すごい進歩なのかもしれない。
私はカセットスプロケットに12-25Tを使用している。だから、11Tトップの歯数構成が増えたことに、個人的には大きなメリットを感じていない。
でも、プロ選手やトップのアマチュア選手は今や11Tを使うのが当たり前になってきている。また、79デュラで新たに加わったコンパクトクランクの場合には11Tトップが必須だから、やはりこれらの歯数構成は必要だ。こんど機会があったら試してみたいと思う。
シマノ・デュラエース CN-7900には表裏がある。上が表、下が裏。表側はアウタープレートのみ、裏側はインナーリンクにも穴あき加工が施されている。表と裏を見分ける最も簡単な方法だ チェーン音は明らかに静かになった。チェーン音だって、人間のエネルギーによって出ているものだから、静かになったということは「エネルギーロスが少なくなった」ということだ。
また、エネルギーロスうんぬんはともかくとして、静かな山の中を走っている時など、チェーン音は意外と気になるものだから、静かになったのは大いに評価できる部分だろう。
チェーンのコネクト部。ワンタッチで着脱が可能だ
ワンタッチで脱着できる機能は非常に便利だ。これまで他社のチェーンでそのような機構を持つものを試してみたが、意外と外すのが大変だった。力をかけてもなかなか外れない製品が多かったのだ。しかし、CN-7900は本当にワンタッチで外れてしまう。メンテナンスをする時に、これは本当にありがたい。
西谷さんご推薦の潤滑剤。タクリーノの「ロードチェーンオイル」と「ロードギヤ」、「シーリンググリス」。「79デュラの性能を100%発揮させてくれる潤滑剤」だという ちなみに、私はチェーンのメンテナンスにはタクリーノの「ロードチェーンオイル」と「ロードギヤ」を使用しており、雨の日には「シーリンググリス」も使用する。79デュラの性能を100%発揮させてくれる潤滑剤だ。
79デュラは初期の変速性能が長期間持続するということだが、こればかりは半年なり1年なり使ってみないと評価は下せないだろう。もちろん、これまで2ヶ月間使ってきて変速性能が落ちた感じはまったくない。そして、チェーン落ちのトラブルもいまのところまったくない。
インプレライダーのプロフィール
サイクルポイントオーベスト
text&photo:仲沢 隆
photo:綾野 真、シマノ(製品写真)
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カーボンプーリープレートを採用したリアディレイラー
まず、リアディレイラー RD-7900の新機軸をご紹介しておこう。外見上、最も目立つのは、プーリープレートがカーボン化されたことだ。カンパニョーロ・レコードはアウタープレートのみカーボンだが、デュラエースはインナープレートにもカーボンを採用。さらに、本体(プレート体)にはエンジニアリングプラスチックを採用した。重量的にはRD-7800の180gから14gの軽量化を果たし、166gという軽量に仕上がっている。
しかし、RD-7900の改良点で最も大切なのは、ケーブルの引き方を改善し、クリック音と同時に変速が完了するようにしたことだ。つまり、変速がより速くなっているのだ。また、変速のアジャスト幅が拡大され、外的要因を受けにくくなり、安定した変速性能が長期間持続すると言う。
リアスプロケットの最大歯数は、RD-7800では27Tだったが、RD-7900では28Tとなった。トータルキャパシティも29Tから33Tと大きくなっている。これも見逃せない変更点だ。
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バリエーション豊かな歯数構成
CS-7900はギヤの歯先が新設計となり、シマノの美点である「スムースな変速」をよりリファインするとともに、トルクが掛かった状態での変速など、ハードなギヤチェンジにも応える設計となった。
また、カセットスパイダーの形状も新設計となり、軽量化と高剛性化を同時に実現している。
しかし、ガンガン乗るライダーにとって最もありがたいのは、これまでになかった歯数構成が増えたことだろう。近年、プロレースでは「トップ11T」が必須ギヤになりつつある。それに応えて、11Tトップの歯数構成が中心となったのだ。歯数構成は11-21T、11-23T、11-25T、11-27T、11-28T、12-23T、12-25T、12-27Tの8種類。もちろん、ロー側4枚のスプロケットはチタニウム製である。
重量は11-23Tで比較した場合、CS-7800の173gより10gの軽量化を果たして163gとなっている。
地味だが大幅に進化したチェーン
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また、アウター・インナープレートとも歯先との接触部分を改良し、よりスムースな変速、高負荷シフティングを実現している。ペダリングの効率はCN-7801と比較して0.6%アップされた。その結果、静かな駆動を実現しており、チェーン落ちのトラブルも圧倒的に減少したと言う。
重量はさすがに軽くなった。CN-7801が280g(116リンク)であったのに対して、CN-7900は252g(114リンク)だ。2リンク少ない数値とは言え、チェーンとしては飛躍的な軽量化を果たしたと言えるだろう。また、シマノのチェーンとしては初めてワンタッチで脱着できるリンクピンが採用された。
さて、パーツの詳細に関する解説はこれくらいにして、さっそく「日本最速の店長」西谷雅史のインプレッションをご紹介しよう!
インプレッション
西谷 雅史(サイクルポイント・オーベスト)
リアディレイラー RD-7900
カセットスプロケット CS-7900
チェーン CN-7900
79デュラの中で一番感動が少なかった変速系
これまで2ヶ月間、約4000kmほど79デュラ(7900系デュラエース)を試してきたのだが、ハッキリ言ってリア変速系が一番感動の薄かったパーツだ。「78デュラと何が違うの?」というのが正直な感想である。
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神経を集中してその変速フィールを感じ取ってみると、確かに変速が速くなったような気はする。性能アップとは言っても、もともと高性能だった78デュラと比較すると、そのくらいの違いなのだろう。
まあ、走りに集中していると「変速の速さ」よりも「確実に変速する」ことや「トラブルを起こさないこと」の方がよっぽど大切だから、これまでノートラブルで、使っていて何も気にならないというのは、すごい進歩なのかもしれない。
カセットは12-25Tを使用
私はカセットスプロケットに12-25Tを使用している。だから、11Tトップの歯数構成が増えたことに、個人的には大きなメリットを感じていない。
でも、プロ選手やトップのアマチュア選手は今や11Tを使うのが当たり前になってきている。また、79デュラで新たに加わったコンパクトクランクの場合には11Tトップが必須だから、やはりこれらの歯数構成は必要だ。こんど機会があったら試してみたいと思う。
静かなチェーン音
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また、エネルギーロスうんぬんはともかくとして、静かな山の中を走っている時など、チェーン音は意外と気になるものだから、静かになったのは大いに評価できる部分だろう。
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外せるチェーンはメンテンナンス性最高
ワンタッチで脱着できる機能は非常に便利だ。これまで他社のチェーンでそのような機構を持つものを試してみたが、意外と外すのが大変だった。力をかけてもなかなか外れない製品が多かったのだ。しかし、CN-7900は本当にワンタッチで外れてしまう。メンテナンスをする時に、これは本当にありがたい。

79デュラは初期の変速性能が長期間持続するということだが、こればかりは半年なり1年なり使ってみないと評価は下せないだろう。もちろん、これまで2ヶ月間使ってきて変速性能が落ちた感じはまったくない。そして、チェーン落ちのトラブルもいまのところまったくない。
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)
にしたに・まさふみ。東京・調布にあるロードバイク系プロショップ「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、各レースで活躍中。ツール・ド・おきなわ市民200km、ジャパンカップアマチュアレースなどで優勝経験を持つ。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに、「日本最速の店長」だ!サイクルポイントオーベスト
text&photo:仲沢 隆
photo:綾野 真、シマノ(製品写真)
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