2009/02/13(金) - 20:45
第1回目はデュアルコントロールレバーST-7900を取り上げたが、今回はブレーキキャリパーBR-7900に斬り込んでみる。スタイリッシュに進化を遂げた79デュラのブレーキをトップ市民レーサーはどう評価したのだろうか?
シマノ・デュラエースBR-7900 photo:(c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
7900系デュラエースのブレーキキャリパーBR-7900は、形こそこれまでのデュアルピボットブレーキと変わらないが、その中身は大きく変わっている。今から19年前の1990年に初めてデュアルピボットブレーキBR-7403が登場して以来、初めて「レバー比」を変更したのである。
これはシマノとしても大きな冒険であった。というのも、シマノはこれまで「互換性」をとても重視して、製品開発を進めてきたからだ。
レバー比を変更したということは、BR-7900はこれまでのデュアルコントロールレバーと組み合わせることができないということを意味している。BR-7900と唯一組み合わせることができるのは、ST-7900だけなのだ。
しかし、シマノがそこまでしてレバー比を変更したのには、もちろんそれなりの理由がある。「コントロール性と絶対的な効きの良さを同時に向上させるには、もはやレバー比の変更しか考えられない」というのがその理由だ。
シマノという会社は、物を売らんがための「変更のための変更」は決して行わない。モデルチェンジ時には必ず、誰もが納得する機構の変更がある。レバー比変更についても、その理由はあるのだ。
アーチには徹底的に肉抜きが施され、293.3g(前後セット)の軽量化が計られている。
アーチには徹底した肉抜き加工が施される
他にもケーブル固定ボルト、シュー固定ボルトにチタンボルトを採用したり、スプリングテンション・アジャスターにより好みに合わせたレバータッチに調整可能な機構を採用するなど、盛りだくさんだ。
新配合ブレーキシューは、雨天時を含め制動力を向上(ウェット210%、ドライ120%)。また、摩耗量も1/2になり、悪天候時のブレーキストローク変化を最小限にするなど、外観以上に性能アップを謳う部分は大きい。
さてさっそく、西谷雅史さんのインプレッションをご紹介しよう!
ブレーキキャリパー BR-7900
新しいブレーキキャリパーBR-7900を使い初めて、最初はとても違和感を覚えた。これまでのBR-7800とは、まったく制動感が違っていたからだ。BR-7800はブレーキレバーを引いて最初からガツンと効く印象があったが、このBR-7900にはそれが感じられなかったのだ。
そのため、最初は「コイツは効かないブレーキだな」とさえ思ってしまった。しかし、しばらく使ってみると、その印象はだいぶ変わった。レバーを引いて、効き始めの「ガツン」がない分、コントロール性に極めて優れているのだ。
BR-7800では指先の微妙な調整で効きをコントロールしていたのに、BR-7900ではかなり大ざっぱに引いてもちゃんと効き具合をコントロールしてくれるのである。これは、特に長距離を走って疲れている時などに有効だろう。
西谷さんは、調整レバーをいちばん開いた位置にセットしてる。雨天などでシューが減った場合、調整レバーを閉めて対処するためだ コントロール性だけではない。絶対的な効きも、BR-7800より確実に向上している。パニックブレーキなどで、それが明らかに感じられるだろう。これは非力な女性ライダーやキッズライダーなどにとってもありがたいものだ。
また、特にハイスピードの下りなどでは、この「絶対的な効き」というのが生きてくるから、レース指向の人にとってもとても有効なブレーキだといえよう。
ブレーキシューのコンパウンドも、良く考えられた配合になっているようだ。たまたま、あるケミカルメーカーから「ブレーキ制動力向上剤」なる試作品を預かっていたので、それをBR-7900で試してみたのだが、結論から言うと、何もしないノーマルの状態が一番良かった。
この「ブレーキ制動力向上剤」は、もともとディスクブレーキの「鳴き防止剤」として開発されたもので、ブレーキシューに吹き付けることによって成分がゴムの中に浸透し、制動力アップがしばらく持続するというものだ。
西谷さんがテストした試作品の「ブレーキ制動力向上剤」。もともとはディスクブレーキの「鳴き防止剤」として開発された製品だとのこと 試してみると、確かに絶対的な制動力はアップしたが、あまりにガツンと効きすぎてしまい、コントロール性が犠牲になってしまったのである。いわゆる「カックンブレーキ」というヤツだ。
これでは、レーシングブレーキとして失格である。吹き付ける量を変えたり、薄めて使ったりもしてみたが、結局何もしないノーマルの状態が一番良かった。
シマノのブレーキシューは、シマノレーシングのメンバーによってあれこれプロトタイプがテストされ、最も理想的なモノが製品化されているという。さすがにキッチリとテストして製品化されているのだな、と、このBR-7900を使ってみて改めて感じた。
インプレライダーのプロフィール
にしたに・まさふみ。東京・調布にあるロードバイク系プロショップ「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、各レースで活躍中。ツール・ド・おきなわ市民200km、ジャパンカップアマチュアレースなどで優勝経験を持つ。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに、「日本最速の店長」だ!
サイクルポイントオーベスト
text&photo:仲沢 隆
photo:綾野 真、シマノ(製品写真)
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レバー比を変更
7900系デュラエースのブレーキキャリパーBR-7900は、形こそこれまでのデュアルピボットブレーキと変わらないが、その中身は大きく変わっている。今から19年前の1990年に初めてデュアルピボットブレーキBR-7403が登場して以来、初めて「レバー比」を変更したのである。
これはシマノとしても大きな冒険であった。というのも、シマノはこれまで「互換性」をとても重視して、製品開発を進めてきたからだ。
レバー比を変更したということは、BR-7900はこれまでのデュアルコントロールレバーと組み合わせることができないということを意味している。BR-7900と唯一組み合わせることができるのは、ST-7900だけなのだ。
しかし、シマノがそこまでしてレバー比を変更したのには、もちろんそれなりの理由がある。「コントロール性と絶対的な効きの良さを同時に向上させるには、もはやレバー比の変更しか考えられない」というのがその理由だ。
シマノという会社は、物を売らんがための「変更のための変更」は決して行わない。モデルチェンジ時には必ず、誰もが納得する機構の変更がある。レバー比変更についても、その理由はあるのだ。
アーチには徹底的に肉抜きが施され、293.3g(前後セット)の軽量化が計られている。
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他にもケーブル固定ボルト、シュー固定ボルトにチタンボルトを採用したり、スプリングテンション・アジャスターにより好みに合わせたレバータッチに調整可能な機構を採用するなど、盛りだくさんだ。
新配合ブレーキシューは、雨天時を含め制動力を向上(ウェット210%、ドライ120%)。また、摩耗量も1/2になり、悪天候時のブレーキストローク変化を最小限にするなど、外観以上に性能アップを謳う部分は大きい。
さてさっそく、西谷雅史さんのインプレッションをご紹介しよう!
インプレッション
西谷 雅史(サイクルポイント・オーベスト店長)
ブレーキキャリパー BR-7900
最初は違和感があった
新しいブレーキキャリパーBR-7900を使い初めて、最初はとても違和感を覚えた。これまでのBR-7800とは、まったく制動感が違っていたからだ。BR-7800はブレーキレバーを引いて最初からガツンと効く印象があったが、このBR-7900にはそれが感じられなかったのだ。
そのため、最初は「コイツは効かないブレーキだな」とさえ思ってしまった。しかし、しばらく使ってみると、その印象はだいぶ変わった。レバーを引いて、効き始めの「ガツン」がない分、コントロール性に極めて優れているのだ。
BR-7800では指先の微妙な調整で効きをコントロールしていたのに、BR-7900ではかなり大ざっぱに引いてもちゃんと効き具合をコントロールしてくれるのである。これは、特に長距離を走って疲れている時などに有効だろう。
絶対的な効きもBR-7800より上

また、特にハイスピードの下りなどでは、この「絶対的な効き」というのが生きてくるから、レース指向の人にとってもとても有効なブレーキだといえよう。
シューのコンパウンドも素晴らしい
ブレーキシューのコンパウンドも、良く考えられた配合になっているようだ。たまたま、あるケミカルメーカーから「ブレーキ制動力向上剤」なる試作品を預かっていたので、それをBR-7900で試してみたのだが、結論から言うと、何もしないノーマルの状態が一番良かった。
この「ブレーキ制動力向上剤」は、もともとディスクブレーキの「鳴き防止剤」として開発されたもので、ブレーキシューに吹き付けることによって成分がゴムの中に浸透し、制動力アップがしばらく持続するというものだ。

これでは、レーシングブレーキとして失格である。吹き付ける量を変えたり、薄めて使ったりもしてみたが、結局何もしないノーマルの状態が一番良かった。
シマノのブレーキシューは、シマノレーシングのメンバーによってあれこれプロトタイプがテストされ、最も理想的なモノが製品化されているという。さすがにキッチリとテストして製品化されているのだな、と、このBR-7900を使ってみて改めて感じた。
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)
にしたに・まさふみ。東京・調布にあるロードバイク系プロショップ「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、各レースで活躍中。ツール・ド・おきなわ市民200km、ジャパンカップアマチュアレースなどで優勝経験を持つ。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに、「日本最速の店長」だ!
サイクルポイントオーベスト
text&photo:仲沢 隆
photo:綾野 真、シマノ(製品写真)
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