2009/02/03(火) - 18:05
2008年12月に発売が開始されたデュラエース7900シリーズ。さっそく「日本最速の店長」西谷雅史さんが約2ヶ月間にわたって実使用インプレを敢行! これから数回の連載で、各部品ごとに徹底的に解説してもらう。
第1回目はニューデュラエースの要、デュアルコントロールレバー"ST-7900"を取り上げる。西谷雅史さん(サイクルポイント・オーベスト店長)は、発売当初にいち早く入手し、マイバイクにインストール。日々の練習に酷使してきた。
西谷さんはご存知のようにJツアーのBR-1カテゴリーでさえ優勝を飾る実力の持ち主。かつショップ店長だけあってメカにはウルサイ。果たして、トップ市民レーサーは「79デュラ」をどう評価するのだろうか?
まずここで79デュラの要点をおさらいしてから本題に入ろう。
ロードバイクファン待望の「デュラエース7900シリーズ」が、ついに2008年12月に発売された。今回のフルモデルチェンジでは、評価の高かったデュラエース7800シリーズ(2003年発表)の完成度をあえて切り崩し、現在シマノが持っている最高の技術をフル動員して、新たなる高精度コンポーネントへと再構築された。
7900シリーズ開発時のシマノの設計者たちの合い言葉は、「デュラエースは常にベストであらねばならない」であったという。そこには、ライバルであるカンパニョーロやスラムを圧倒的に凌駕しようという心意気があったのだろう。
とはいっても、今回のフルモデルチェンジは、表面的には今までのフルモデルチェンジよりちょっと地味に見えるかもしれない。これまで、デュラエースはフルモデルチェンジのたびに自転車ファンをアッといわせる新機軸を導入していたものだが、7900シリーズでは「中空チェーンリング」くらいしか新しい機構が見あたらないからだ。
しかし、よく観察してみると、デュアルコントロールレバーからディレイラー、ブレーキアーチ、チェーンホイールに至るまで、あらゆる部分が徹底的に作り直されている。
デュアルコントロールレバーは内部部品をレバー先端からブラケット内部へ移動しているし、ブレーキアーチもレバー比率から完全に変更されている。
フロントディレイラーも、これまでの「トリム操作」が不要な設計となった。実はこれまでのフルモデルチェンジの中で、今回のモデルチェンジが一番大きな変革であったのだ。
それでは、さっそく西谷雅史さんのインプレッションをご紹介しよう! まずはデュアルコントロールレバーを「めった斬り」だ。
シフトケーブルが内蔵されたことによって、外観はずいぶんスッキリした印象となった。しかし、この変更は個人的には特に評価している部分ではない。というのも、今までシフトワイヤーが外に出ているからといって、特に空気抵抗などのマイナス面を感じていたわけではないからだ。
カンパニョーロからシマノに換えて、空気抵抗で遅くなった話なんて聞いたことがない。むしろ、ハンドルバーにワイヤーを沿わせることによって、ブレーキの引きが重たくなってしまったら、「改良」ではなく「改悪」だと思っていたくらいである。
しかし、実際に使ってみると、引きはST-7800同様に軽いから、まったく問題は感じていない。これは、素直に評価できる点だろう。
ただ、ブラケットのシフトワイヤーが通る部分が少々出っ張っており、これが手のひらに当たるのがちょっと気になる。私の場合は、その部分を削って対処している。
ブラケットの握り部分はST-7800の細さが好きだったのだが、ST-7900では少々太くなり、最初は違和感を感じていた。しかし慣れてくると、「これはこれで握りやすい」と感じるようになってきた。ブラケットの握り心地は、カンパニョーロやスラムに近い感じになった。
取り付けバンド&ボルトがチタン製となったのは、「軽量化」ということよりも、「錆びなくなった」ということがありがたい。特に夏など、バーテープを剥がすと、取り付けバンドが真っ赤に錆びていたなんていうこともあったから、これは非常にありがたい改良だ。
「リーチアジャスト・メカニズム」は、特に手の小さい人にとって朗報だと言われていたが、私のように手の大きなライダーにとってもかなり有効である。あれこれアジャストしてみると、「これだ!」というベストポジションが見つかるのだ。
ライダーの手に合わせたシフト&ブレーキポジション調整が可能というのは、かなりプロの機材っぽいモノであると言えるだろう。
その他にも、7800シリーズと比べてピボットを近づけることにより、ブラケット上部からブレーキレバーに手が届きやすくしたり、右解除レバーの操作をショートストローク化したりと、細かい改良が随所に施されている。
全体の使い勝手は、ST-7800より確実に向上していると言えるだろう。
次回、連載vol.2では、79デュラのさらに細部に斬りこんで行く。どのパーツを取り上げるかはお楽しみに。
さらにシクロワイアード編集部ではライバルのコンポーネントである、カンパニョーロ・スーパーレコード、スラム・レッドのテスト、インプレ取材も進行中だ。2009年に出揃った3大コンポーネント最高峰の比較から、何が明らかになるだろうか。請うご期待!
インプレライダーのプロフィール
にしたに・まさふみ。東京・調布にあるロードバイク系プロショップ「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、各レースで活躍中。ツール・ド・おきなわ市民200km、ジャパンカップアマチュアレースなどで優勝経験を持つ。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに、「日本最速の店長」だ!
サイクルポイントオーベスト
text&photo:仲沢 隆
photo:綾野 真、シマノ(製品写真)
第1回目はニューデュラエースの要、デュアルコントロールレバー"ST-7900"を取り上げる。西谷雅史さん(サイクルポイント・オーベスト店長)は、発売当初にいち早く入手し、マイバイクにインストール。日々の練習に酷使してきた。
西谷さんはご存知のようにJツアーのBR-1カテゴリーでさえ優勝を飾る実力の持ち主。かつショップ店長だけあってメカにはウルサイ。果たして、トップ市民レーサーは「79デュラ」をどう評価するのだろうか?
まずここで79デュラの要点をおさらいしてから本題に入ろう。
5年ぶりのフルモデルチェンジ
ロードバイクファン待望の「デュラエース7900シリーズ」が、ついに2008年12月に発売された。今回のフルモデルチェンジでは、評価の高かったデュラエース7800シリーズ(2003年発表)の完成度をあえて切り崩し、現在シマノが持っている最高の技術をフル動員して、新たなる高精度コンポーネントへと再構築された。
7900シリーズ開発時のシマノの設計者たちの合い言葉は、「デュラエースは常にベストであらねばならない」であったという。そこには、ライバルであるカンパニョーロやスラムを圧倒的に凌駕しようという心意気があったのだろう。
これまでで最大の変革
とはいっても、今回のフルモデルチェンジは、表面的には今までのフルモデルチェンジよりちょっと地味に見えるかもしれない。これまで、デュラエースはフルモデルチェンジのたびに自転車ファンをアッといわせる新機軸を導入していたものだが、7900シリーズでは「中空チェーンリング」くらいしか新しい機構が見あたらないからだ。
しかし、よく観察してみると、デュアルコントロールレバーからディレイラー、ブレーキアーチ、チェーンホイールに至るまで、あらゆる部分が徹底的に作り直されている。
デュアルコントロールレバーは内部部品をレバー先端からブラケット内部へ移動しているし、ブレーキアーチもレバー比率から完全に変更されている。
フロントディレイラーも、これまでの「トリム操作」が不要な設計となった。実はこれまでのフルモデルチェンジの中で、今回のモデルチェンジが一番大きな変革であったのだ。
それでは、さっそく西谷雅史さんのインプレッションをご紹介しよう! まずはデュアルコントロールレバーを「めった斬り」だ。
デュアルコントロールレバーST-7900 インプレッション
西谷 雅史(サイクルポイント・オーベスト店長)
シフトケーブル内蔵でも引きは軽い!
シフトケーブルが内蔵されたことによって、外観はずいぶんスッキリした印象となった。しかし、この変更は個人的には特に評価している部分ではない。というのも、今までシフトワイヤーが外に出ているからといって、特に空気抵抗などのマイナス面を感じていたわけではないからだ。
カンパニョーロからシマノに換えて、空気抵抗で遅くなった話なんて聞いたことがない。むしろ、ハンドルバーにワイヤーを沿わせることによって、ブレーキの引きが重たくなってしまったら、「改良」ではなく「改悪」だと思っていたくらいである。
しかし、実際に使ってみると、引きはST-7800同様に軽いから、まったく問題は感じていない。これは、素直に評価できる点だろう。
ブラケットの握りが少々気になる
ただ、ブラケットのシフトワイヤーが通る部分が少々出っ張っており、これが手のひらに当たるのがちょっと気になる。私の場合は、その部分を削って対処している。
ブラケットの握り部分はST-7800の細さが好きだったのだが、ST-7900では少々太くなり、最初は違和感を感じていた。しかし慣れてくると、「これはこれで握りやすい」と感じるようになってきた。ブラケットの握り心地は、カンパニョーロやスラムに近い感じになった。
振りが軽くなった!
大きくフィーリングが変わったのは、ハンドルを振ったときの挙動だ。内部部品がブラケット内部に入ったことにより、重心が内側に寄り、振りがとても軽くなったのだ。もちろん、ブレーキレバーがカーボン製になり軽くなったのも、これに影響している。取り付けバンド&ボルトがチタン製となったのは、「軽量化」ということよりも、「錆びなくなった」ということがありがたい。特に夏など、バーテープを剥がすと、取り付けバンドが真っ赤に錆びていたなんていうこともあったから、これは非常にありがたい改良だ。
ありがたいリーチ調整機構
「リーチアジャスト・メカニズム」は、特に手の小さい人にとって朗報だと言われていたが、私のように手の大きなライダーにとってもかなり有効である。あれこれアジャストしてみると、「これだ!」というベストポジションが見つかるのだ。
ライダーの手に合わせたシフト&ブレーキポジション調整が可能というのは、かなりプロの機材っぽいモノであると言えるだろう。
その他にも、7800シリーズと比べてピボットを近づけることにより、ブラケット上部からブレーキレバーに手が届きやすくしたり、右解除レバーの操作をショートストローク化したりと、細かい改良が随所に施されている。
全体の使い勝手は、ST-7800より確実に向上していると言えるだろう。
次回、連載vol.2では、79デュラのさらに細部に斬りこんで行く。どのパーツを取り上げるかはお楽しみに。
さらにシクロワイアード編集部ではライバルのコンポーネントである、カンパニョーロ・スーパーレコード、スラム・レッドのテスト、インプレ取材も進行中だ。2009年に出揃った3大コンポーネント最高峰の比較から、何が明らかになるだろうか。請うご期待!
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)
にしたに・まさふみ。東京・調布にあるロードバイク系プロショップ「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、各レースで活躍中。ツール・ド・おきなわ市民200km、ジャパンカップアマチュアレースなどで優勝経験を持つ。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに、「日本最速の店長」だ!
サイクルポイントオーベスト
text&photo:仲沢 隆
photo:綾野 真、シマノ(製品写真)