2015/06/15(月) - 10:59
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネを締めくくる1級山岳モダンヴァルフレジュスで総合ワンツーによるバトルが繰り広げられ、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がステージ2連勝を飾るとともに逆転総合優勝を達成した。
接戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合争いは1級山岳モダンヴァルフレジュス(8.4km/5.7%)で決着する。サンジェルヴェ=レ=バンからイタリア国境に近いアルプス山岳を目指す最終第8ステージの全長は156.5km。前半から2級〜4級の山岳を合計5つこなし、最後は1級山岳モダンヴァルフレジュスを駆け上がる。
ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)に後続が追いつく形で形成されたのは13名の逃げグループ。総合に大きく関係しないメンバー揃いの逃げだったが、フィニッシュ地点でのボーナスタイム獲得を念頭にチームスカイが積極的にメイン集団を牽引した。
やがてレース中盤に逃げグループからトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が飛び出し、そのまま個人タイムトライアルを開始。マルティンは後続グループを1分30秒、メイン集団を3分30秒引き離し、ツール第18ステージにも登場予定の美しいスイッチバックが続く2級山岳モンヴェルニエを先頭でクリアした。
しかし渓谷沿いの平坦路は独走向きとは言えず、残り17km地点でマルティンは逃げグループに吸収されてしまう。そこからスティーブ・クミングス(イギリス、MTNキュベカ)が単独で飛び出して独走で最後の1級山岳モダンヴァルフレジュスに突入。メイン集団からはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が飛び出すシーンも見られたがリードを広げることが出来ずに引き戻された。
フィニッシュに向かう登りで逃げメンバーは次々に吸収され、先頭クミングスも残り3kmを切って吸収される。全力でメイン集団を牽引し続けたチームスカイの最終アシスト、ワウテル・ポエルス(オランダ)が一段とペースを上げると集団の人数はすぐさま10名以下に。そこから総合逆転を狙うフルームが飛び立った。
第7ステージを終えた時点で総合首位ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)と総合2位フルームの総合タイム差は18秒。仮にフルームがステージ優勝し、ヴァンガーデレンがステージ2位に入った場合、それぞれ10秒と6秒のボーナスタイムが与えられる。つまりヴァンガーデレンが総合首位を守るためにはフルームから14秒以上遅れることは許されない。
前日同様にダンシングで加速したフルームにヴァンガーデレンは一時的に反応したものの、徐々にその距離は開いていく。フルームはハイケイデンスで楕円チェーンリングを回し続け、残り1kmを切ってからの緩斜面をダンシングで加速。他の追随を許さない走りでフィニッシュした。
ヴァンガーデレンはサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)とルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)に追いつかれ、フルームから18秒遅れでフィニッシュ。ボーナスタイム獲得を逃したため、最終的に10秒差でフルームがヴァンガーデレンから総合首位を奪った。
ステージ2連勝で総合逆転優勝を射止めたフルームは「信じられない。これ以上の結果は望めない。チーム全体がイエロージャージに向けて全力で走った。100kmにわたって先頭固定で走ったイアン・スタナードをはじめ、全員が最後の最後までファンタスティックな走りをした。1秒も無駄に出来ない状況だったけど、興奮しながらフィニッシュに向かったよ」とまず最初にチームの走りを讃えた。
フルームは2013年にドーフィネで総合優勝し、好調を維持してツールで総合優勝。逆に2014年はドーフィネの落車の影響でコンディションを落とし、ツールでも不運が重なって第5ステージでリタイアしている。
「チームタイムトライアルで後退したものの、そこからチームは持ち直し、こうやって締めくくることが出来てよかった。今日という日を忘れることはないだろう。今の自分の状態には満足しているし、ドーフィネはチームの結束力強化にも繋がった。最大の目標であるツールに向けて準備は出来ている。数週間後に迫った戦いが楽しみだ」。2015年のフルームはツールに向けて波に乗っている。
敗れながらもツールに向けて好調ぶりを示したヴァンガーデレンは「フルームのアタックは完璧なタイミングだった。食らいつこうとしたものの、フルームとの間に開いた5mを詰めるのは生半可なことじゃない。彼はファンタスティックな選手。でも決して無敵ではないと感じたよ」とコメントしている。
ジロ・デ・イタリアに続いて出場した別府史之(トレックファクトリーレーシング)は最終ステージ121位。総合120位でドーフィネを完走している。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015第8ステージ
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 3h59’27”
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +18”
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +28”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +31”
8位 ワウテル・ポエルス(オランダ、チームスカイ) +44”
9位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
121位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +23’20”
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 30h59’02”
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +10”
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +1’16”
4位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +1’21”
5位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +1’33”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +2’05”
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +2’52”
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +3’06”
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3’12”
10位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン) +4’17”
ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
山岳賞
ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)
ヤングライダー賞
サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
接戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合争いは1級山岳モダンヴァルフレジュス(8.4km/5.7%)で決着する。サンジェルヴェ=レ=バンからイタリア国境に近いアルプス山岳を目指す最終第8ステージの全長は156.5km。前半から2級〜4級の山岳を合計5つこなし、最後は1級山岳モダンヴァルフレジュスを駆け上がる。
ラース・ボーム(オランダ、アスタナ)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)に後続が追いつく形で形成されたのは13名の逃げグループ。総合に大きく関係しないメンバー揃いの逃げだったが、フィニッシュ地点でのボーナスタイム獲得を念頭にチームスカイが積極的にメイン集団を牽引した。
やがてレース中盤に逃げグループからトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が飛び出し、そのまま個人タイムトライアルを開始。マルティンは後続グループを1分30秒、メイン集団を3分30秒引き離し、ツール第18ステージにも登場予定の美しいスイッチバックが続く2級山岳モンヴェルニエを先頭でクリアした。
しかし渓谷沿いの平坦路は独走向きとは言えず、残り17km地点でマルティンは逃げグループに吸収されてしまう。そこからスティーブ・クミングス(イギリス、MTNキュベカ)が単独で飛び出して独走で最後の1級山岳モダンヴァルフレジュスに突入。メイン集団からはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が飛び出すシーンも見られたがリードを広げることが出来ずに引き戻された。
フィニッシュに向かう登りで逃げメンバーは次々に吸収され、先頭クミングスも残り3kmを切って吸収される。全力でメイン集団を牽引し続けたチームスカイの最終アシスト、ワウテル・ポエルス(オランダ)が一段とペースを上げると集団の人数はすぐさま10名以下に。そこから総合逆転を狙うフルームが飛び立った。
第7ステージを終えた時点で総合首位ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)と総合2位フルームの総合タイム差は18秒。仮にフルームがステージ優勝し、ヴァンガーデレンがステージ2位に入った場合、それぞれ10秒と6秒のボーナスタイムが与えられる。つまりヴァンガーデレンが総合首位を守るためにはフルームから14秒以上遅れることは許されない。
前日同様にダンシングで加速したフルームにヴァンガーデレンは一時的に反応したものの、徐々にその距離は開いていく。フルームはハイケイデンスで楕円チェーンリングを回し続け、残り1kmを切ってからの緩斜面をダンシングで加速。他の追随を許さない走りでフィニッシュした。
ヴァンガーデレンはサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)とルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)に追いつかれ、フルームから18秒遅れでフィニッシュ。ボーナスタイム獲得を逃したため、最終的に10秒差でフルームがヴァンガーデレンから総合首位を奪った。
ステージ2連勝で総合逆転優勝を射止めたフルームは「信じられない。これ以上の結果は望めない。チーム全体がイエロージャージに向けて全力で走った。100kmにわたって先頭固定で走ったイアン・スタナードをはじめ、全員が最後の最後までファンタスティックな走りをした。1秒も無駄に出来ない状況だったけど、興奮しながらフィニッシュに向かったよ」とまず最初にチームの走りを讃えた。
フルームは2013年にドーフィネで総合優勝し、好調を維持してツールで総合優勝。逆に2014年はドーフィネの落車の影響でコンディションを落とし、ツールでも不運が重なって第5ステージでリタイアしている。
「チームタイムトライアルで後退したものの、そこからチームは持ち直し、こうやって締めくくることが出来てよかった。今日という日を忘れることはないだろう。今の自分の状態には満足しているし、ドーフィネはチームの結束力強化にも繋がった。最大の目標であるツールに向けて準備は出来ている。数週間後に迫った戦いが楽しみだ」。2015年のフルームはツールに向けて波に乗っている。
敗れながらもツールに向けて好調ぶりを示したヴァンガーデレンは「フルームのアタックは完璧なタイミングだった。食らいつこうとしたものの、フルームとの間に開いた5mを詰めるのは生半可なことじゃない。彼はファンタスティックな選手。でも決して無敵ではないと感じたよ」とコメントしている。
ジロ・デ・イタリアに続いて出場した別府史之(トレックファクトリーレーシング)は最終ステージ121位。総合120位でドーフィネを完走している。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015第8ステージ
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 3h59’27”
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +18”
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +28”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +31”
8位 ワウテル・ポエルス(オランダ、チームスカイ) +44”
9位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
121位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +23’20”
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 30h59’02”
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +10”
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +1’16”
4位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +1’21”
5位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +1’33”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +2’05”
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +2’52”
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +3’06”
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +3’12”
10位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン) +4’17”
ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
山岳賞
ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)
ヤングライダー賞
サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
Amazon.co.jp