2015/06/13(土) - 21:35
山岳4連戦の中で最も難易度の低い3級山岳ヴィラール=ド=ランの山頂フィニッシュでサプライズ誕生。前日に遅れたオールラウンダーが攻撃を仕掛け、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)がステージ優勝。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が総合首位に立った。
サンボネ=アン=シャンソールからヴィラール=ド=ランまでの183kmはアップダウンの連続。合計6つのカテゴリー山岳が設定されており、内訳は3級が4つと2級が1つ、そして1級が1つ。フィニッシュは3級山岳ヴィラール=ド=ラン(2.2km/6.2%)で、ドーフィネ後半山岳4連戦の中では最も難易度が低い。
しかしレースの厳しさを決めるのはコースではなく選手達。序盤から総合系オールラウンダーを含むハイスピードなアタック合戦が繰り広げられ、一時的にリーダージャージのティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)を含む20名弱が先行するなど荒れた展開となる。その結果、この日だけで16名がレースを去っている。
レース中盤に差し掛かってもアタック合戦は収拾がつかず、人数が絞られた集団からトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がアタック。そこから更に2014年ツール覇者ニーバリがペースを上げ、フィニッシュまで110kmを残して独走に持ち込んだ。
攻撃に転じ、20kmにわたって独走を続けたニーバリにマルティン、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)が残り85km地点で合流して先頭は5名に。強力なメンバー揃いの精鋭逃げグループは、メイン集団から3分30秒のリードを稼ぎ出した。
前日の第5ステージ2級山岳プラルーで集団から早々に脱落し、総合12位・1分28秒遅れに順位を落としたバルベルデと、同様に総合13位・1分33秒遅れまでダウンしたニーバリらによるエスケープ。暫定的に総合首位を奪われたBMCレーシングが懸命にメイン集団を牽引したが、ニーバリが積極的にリードする逃げとのタイム差は縮まらない。
残り51km地点で登場した最大の難所である1級山岳ルセ峠を越えてもなお先頭5名はリードを守り、やがて降り出した雨の中を逃げ続ける。先頭からはマルティンが脱落したもののスピードは落ちず、ニーバリ、バルベルデ、ギャロパン、コスタの4名が逃げ切りをほぼ確定させた状態で最後の3級山岳ヴィラール=ド=ランに向かった。
BMCレーシングのアシスト体制が崩れ、コントロールを失ったメイン集団からはアタックが続発。サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)が単独追走を開始する。マイヨジョーヌを着るティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の懸命の集団牽引も届かず、先頭4名がリードを保ったまま最後の3級山岳ヴィラール=ド=ランに差し掛かった。
フィニッシュまで4.5kmを残してギャロパンが独走に持ち込んだものの、残り1.5km地点でコスタとバルベルデを置き去りにしたニーバリが先頭を奪う。ニーバリはボーナスタイム10秒がついてくるステージ優勝に向けて邁進。しかしペースを刻んで追走したコスタに残り300mで追いつかれ、元世界チャンピオンがスプリントでフィニッシュへ。大会4連覇がかかったツール・ド・スイスを欠場してまで出場したドーフィネで、コスタがステージ初優勝を飾った。
「今日はスタートからフィニッシュまで常にハイスピードだった。そのおかげで最後の3級山岳は数値以上に厳しいものだった。残り2kmを切ってからニーバリがアタックしたものの、焦らず自分のペースで脚を残しながら走ったんだ。残り300mに差し掛かるまでステージ優勝出来るとは思っていなかったよ」とコスタは振り返る。
スイスではなくドーフィネを選択した理由は「疲労を残さずにツールに挑むため」。総合2位に浮上したコスタは「ニーバリやバルベルデといったトップライダーと争えるなんて素晴らしいこと。総合争いの行方はわからないけど、残りの2ステージを全力で走りたい」とコメントしている。
単独追走を続け、1分24秒遅れのステージ5位に入ったイェーツが総合4位に浮上するとともにマイヨブランを獲得。クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は2分12秒遅れ、マイヨジョーヌのヴァンガーデレンは2分14秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。
その結果、マイヨジョーヌはヴァンガーデレンからニーバリに移った。起死回生の大逃げを成功させたニーバリは総合首位奪取について「ステージ優勝を追い求めた結果」と説明する。「昨日のレース後に、ミケーレ・スカルポーニに『逃げに乗ろうと思う』と言ったら、『馬鹿じゃないの』と言われた。でも今日はその作戦が功を奏した」。
「こんなロングエスケープはジュニア時代以来。数日間アレルギーに苦しめられていたけど、今日は雨降りだったので症状が和らいだんだ。悪い一日(第5ステージ)を忘れ去るために動きを作りたかった。ツールを狙う立場上、このドーフィネで調子を上げすぎるのは得策ではない。明日から地に足をつけて走り続けるけど、イタリア人総合優勝者が未だに出ていないドーフィネを制することが出来れば、それはそれでスペシャルだ」。
山岳2ステージを残してニーバリはコスタに対して29秒、バルベルデに対して30秒、イェーツに対して35秒のリードを保有している。155kmコースに5つの1級山岳が詰め込まれた翌日の第7ステージで総合争いはさらなる動きを見せるだろう。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015第6ステージ
1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) 4h29’23”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +05”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +38”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +39”
5位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +1’24”
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +1’46”
7位 ジョン・ガドレ(フランス、モビスター) +1’48”
8位 ティエシー・ベノート(ベルギー、ロット・ソウダル) +1’59”
9位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +2’12”
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
11位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +2’14”
54位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +36’25”
個人総合成績
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 22h34’17”
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +29”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +30”
4位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +35”
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +42”
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +57”
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1’21”
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +1’29”
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +1’30”
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)
ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
山岳賞
ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)
ヤングライダー賞
サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
サンボネ=アン=シャンソールからヴィラール=ド=ランまでの183kmはアップダウンの連続。合計6つのカテゴリー山岳が設定されており、内訳は3級が4つと2級が1つ、そして1級が1つ。フィニッシュは3級山岳ヴィラール=ド=ラン(2.2km/6.2%)で、ドーフィネ後半山岳4連戦の中では最も難易度が低い。
しかしレースの厳しさを決めるのはコースではなく選手達。序盤から総合系オールラウンダーを含むハイスピードなアタック合戦が繰り広げられ、一時的にリーダージャージのティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)を含む20名弱が先行するなど荒れた展開となる。その結果、この日だけで16名がレースを去っている。
レース中盤に差し掛かってもアタック合戦は収拾がつかず、人数が絞られた集団からトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がアタック。そこから更に2014年ツール覇者ニーバリがペースを上げ、フィニッシュまで110kmを残して独走に持ち込んだ。
攻撃に転じ、20kmにわたって独走を続けたニーバリにマルティン、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)が残り85km地点で合流して先頭は5名に。強力なメンバー揃いの精鋭逃げグループは、メイン集団から3分30秒のリードを稼ぎ出した。
前日の第5ステージ2級山岳プラルーで集団から早々に脱落し、総合12位・1分28秒遅れに順位を落としたバルベルデと、同様に総合13位・1分33秒遅れまでダウンしたニーバリらによるエスケープ。暫定的に総合首位を奪われたBMCレーシングが懸命にメイン集団を牽引したが、ニーバリが積極的にリードする逃げとのタイム差は縮まらない。
残り51km地点で登場した最大の難所である1級山岳ルセ峠を越えてもなお先頭5名はリードを守り、やがて降り出した雨の中を逃げ続ける。先頭からはマルティンが脱落したもののスピードは落ちず、ニーバリ、バルベルデ、ギャロパン、コスタの4名が逃げ切りをほぼ確定させた状態で最後の3級山岳ヴィラール=ド=ランに向かった。
BMCレーシングのアシスト体制が崩れ、コントロールを失ったメイン集団からはアタックが続発。サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)が単独追走を開始する。マイヨジョーヌを着るティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の懸命の集団牽引も届かず、先頭4名がリードを保ったまま最後の3級山岳ヴィラール=ド=ランに差し掛かった。
フィニッシュまで4.5kmを残してギャロパンが独走に持ち込んだものの、残り1.5km地点でコスタとバルベルデを置き去りにしたニーバリが先頭を奪う。ニーバリはボーナスタイム10秒がついてくるステージ優勝に向けて邁進。しかしペースを刻んで追走したコスタに残り300mで追いつかれ、元世界チャンピオンがスプリントでフィニッシュへ。大会4連覇がかかったツール・ド・スイスを欠場してまで出場したドーフィネで、コスタがステージ初優勝を飾った。
「今日はスタートからフィニッシュまで常にハイスピードだった。そのおかげで最後の3級山岳は数値以上に厳しいものだった。残り2kmを切ってからニーバリがアタックしたものの、焦らず自分のペースで脚を残しながら走ったんだ。残り300mに差し掛かるまでステージ優勝出来るとは思っていなかったよ」とコスタは振り返る。
スイスではなくドーフィネを選択した理由は「疲労を残さずにツールに挑むため」。総合2位に浮上したコスタは「ニーバリやバルベルデといったトップライダーと争えるなんて素晴らしいこと。総合争いの行方はわからないけど、残りの2ステージを全力で走りたい」とコメントしている。
単独追走を続け、1分24秒遅れのステージ5位に入ったイェーツが総合4位に浮上するとともにマイヨブランを獲得。クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は2分12秒遅れ、マイヨジョーヌのヴァンガーデレンは2分14秒遅れでフィニッシュにたどり着いた。
その結果、マイヨジョーヌはヴァンガーデレンからニーバリに移った。起死回生の大逃げを成功させたニーバリは総合首位奪取について「ステージ優勝を追い求めた結果」と説明する。「昨日のレース後に、ミケーレ・スカルポーニに『逃げに乗ろうと思う』と言ったら、『馬鹿じゃないの』と言われた。でも今日はその作戦が功を奏した」。
「こんなロングエスケープはジュニア時代以来。数日間アレルギーに苦しめられていたけど、今日は雨降りだったので症状が和らいだんだ。悪い一日(第5ステージ)を忘れ去るために動きを作りたかった。ツールを狙う立場上、このドーフィネで調子を上げすぎるのは得策ではない。明日から地に足をつけて走り続けるけど、イタリア人総合優勝者が未だに出ていないドーフィネを制することが出来れば、それはそれでスペシャルだ」。
山岳2ステージを残してニーバリはコスタに対して29秒、バルベルデに対して30秒、イェーツに対して35秒のリードを保有している。155kmコースに5つの1級山岳が詰め込まれた翌日の第7ステージで総合争いはさらなる動きを見せるだろう。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015第6ステージ
1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) 4h29’23”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +05”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +38”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +39”
5位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +1’24”
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +1’46”
7位 ジョン・ガドレ(フランス、モビスター) +1’48”
8位 ティエシー・ベノート(ベルギー、ロット・ソウダル) +1’59”
9位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +2’12”
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
11位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +2’14”
54位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +36’25”
個人総合成績
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 22h34’17”
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +29”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +30”
4位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +35”
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +42”
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +57”
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1’21”
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +1’29”
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +1’30”
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)
ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
山岳賞
ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、MTNキュベカ)
ヤングライダー賞
サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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