2015/06/01(月) - 14:04
3週間の闘いを終える選手たちがミラノに凱旋。市街地周回コースはスプリンターのものになるとの予想を覆し、ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と逃げたイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)が勝利を飾りました。
トリノとミラノを結ぶ行程は真っ平らの一言。23日間にわたって繰り広げたプロトンが、北イタリアの中心都市ミラノに凱旋する。最後はミラノ市街の北西部に敷かれた5.4kmの周回コースを7周し、コルソセンピオーネ大通りでフィナーレを迎える。
マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)を始めとする各賞ジャージを先頭にスタートしたレースはしばらく和やかな雰囲気をもって進行する。
コンタドールがチームメイトやオレグ・ティンコフ氏、大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏らとプロセッコで乾杯。ピンクのバーテープとグローブで揃えたティンコフ・サクソを先頭に、グランツール最終日らしいスローペースでミラノを目指した。
86km地点のスプリントポイントではフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のマリアロッサを狙うBMCレーシングが動きを見せ、ジルベールを含むBMCレーシング3名とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)がメイン集団から抜け出すことに成功する。
先頭でスプリントポイントを通過したジルベールは暫定でポイント賞2位に浮上。その後方では別府史之(トレックファクトリーレーシング)が集団先頭通過(5番手通過)し、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)らのポイント獲得を阻止した。
ジルベールやリケーゼはペースを落として集団に戻り、再びティンコフ・サクソが先導する形でミラノの市街地周回コースに突入。コーナーが連続するハイスピードサーキットで、イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の2人が勢い良く飛び出した。
トラックレースのスペシャリストとして名を馳せるケイセと、2011年U23TT世界チャンピオンのダーブリッジによる2人逃げ。平均スピード52km/h弱のペースを刻みながら、チームスカイを始めとするスプリンターチーム率いるメイン集団から40秒のリードを稼ぎ出す。
ケイセとダーブリッジのスピードは一向に衰えず、メイン集団から36秒リードのまま最終周回に差し掛かる。迫り来るメイン集団を9秒差で振り切った2人が短い牽制を経て最終ストレートでスプリントを繰り広げ、ダーブリッジを下したケイセが両手を挙げた。
「キャリアの中で最高の勝利だ。これ以上のものはない」。スプリンターの独壇場になるのが通例のジロ最終ステージで逃げ切り勝利を飾ったケイセは喜びを語る。
トラック6日間レースのトップレーサーとして活躍し、近年ロードレースに打ち込んでいるケイセは現在32歳。過去には2007年トラック世界選手権ポイントレースで銀メダル、2005年大会マディソンで銅メダルを獲得している。「トラックレース出身なので、今日のようなコーナーが連続するクリテリウム形式のレースが得意。ルーク・ダーブリッジという最高の伴侶を得たことも勝利に繋がった。最終周回に入った時点で勝てると思ったし、最後は落ち着いてスプリントに持ち込んだんだ」と、グランツール初勝利についてコメントした。
9秒遅れの集団先頭を取ったのはロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)で、5位に入ったニッツォロがマリアロッサを獲得している。
ステージ42位と43位の間にギャップが開いたためコンタドールはライバルたちから9秒ロスしたが、最終的にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)と1分53秒差、ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)と3分05秒差で総合優勝。記録上2度目のジロ制覇を成し遂げた(2011年の総合優勝は剥奪)。
コンタドールは「過去の2勝(剥奪された優勝も含む)と比べると、ずっと落ち着いて勝負に挑んでいたと思う」と2015年大会を振り返る。「そして今ここでツール・ド・フランスが始まる。今晩は例外として可能な限りリカバリーに励み、3〜4日の休息を経てツールに向けた準備を始めるよ」。表彰式で3本指を立てたエル・ピストレーロの視界の先にはツールの光景が浮かんでいる。
ジロ・デ・イタリア2015第21ステージ結果
1位 イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 4h18’37”
2位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング) +09”
4位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
5位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
6位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、ジャイアント・アルペシン)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
10位 エリア・ファヴィッリ(イタリア、サウスイースト)
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 88h22’25”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1’53”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +3’05”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +8’10”
5位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +9’52”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +10’41”
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +10’53”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +12’08”
9位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +15’51”
10位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +16’14”
117位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +5h02’43”
マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング) 181pts
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) 148pts
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ) 147pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) 125pts
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) 122pts
3位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) 115pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 88h24”18”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) +1h51’46”
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング) +1h54’04”
総合敢闘賞
フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
チーム総合成績
1位 アスタナ 264h42’31”
2位 BMCレーシング +43’16”
3位 チームスカイ +1h13’51”
text&photo:Kei Tsuji in Milano, Italy
トリノとミラノを結ぶ行程は真っ平らの一言。23日間にわたって繰り広げたプロトンが、北イタリアの中心都市ミラノに凱旋する。最後はミラノ市街の北西部に敷かれた5.4kmの周回コースを7周し、コルソセンピオーネ大通りでフィナーレを迎える。
マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)を始めとする各賞ジャージを先頭にスタートしたレースはしばらく和やかな雰囲気をもって進行する。
コンタドールがチームメイトやオレグ・ティンコフ氏、大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏らとプロセッコで乾杯。ピンクのバーテープとグローブで揃えたティンコフ・サクソを先頭に、グランツール最終日らしいスローペースでミラノを目指した。
86km地点のスプリントポイントではフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のマリアロッサを狙うBMCレーシングが動きを見せ、ジルベールを含むBMCレーシング3名とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)がメイン集団から抜け出すことに成功する。
先頭でスプリントポイントを通過したジルベールは暫定でポイント賞2位に浮上。その後方では別府史之(トレックファクトリーレーシング)が集団先頭通過(5番手通過)し、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)らのポイント獲得を阻止した。
ジルベールやリケーゼはペースを落として集団に戻り、再びティンコフ・サクソが先導する形でミラノの市街地周回コースに突入。コーナーが連続するハイスピードサーキットで、イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の2人が勢い良く飛び出した。
トラックレースのスペシャリストとして名を馳せるケイセと、2011年U23TT世界チャンピオンのダーブリッジによる2人逃げ。平均スピード52km/h弱のペースを刻みながら、チームスカイを始めとするスプリンターチーム率いるメイン集団から40秒のリードを稼ぎ出す。
ケイセとダーブリッジのスピードは一向に衰えず、メイン集団から36秒リードのまま最終周回に差し掛かる。迫り来るメイン集団を9秒差で振り切った2人が短い牽制を経て最終ストレートでスプリントを繰り広げ、ダーブリッジを下したケイセが両手を挙げた。
「キャリアの中で最高の勝利だ。これ以上のものはない」。スプリンターの独壇場になるのが通例のジロ最終ステージで逃げ切り勝利を飾ったケイセは喜びを語る。
トラック6日間レースのトップレーサーとして活躍し、近年ロードレースに打ち込んでいるケイセは現在32歳。過去には2007年トラック世界選手権ポイントレースで銀メダル、2005年大会マディソンで銅メダルを獲得している。「トラックレース出身なので、今日のようなコーナーが連続するクリテリウム形式のレースが得意。ルーク・ダーブリッジという最高の伴侶を得たことも勝利に繋がった。最終周回に入った時点で勝てると思ったし、最後は落ち着いてスプリントに持ち込んだんだ」と、グランツール初勝利についてコメントした。
9秒遅れの集団先頭を取ったのはロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)で、5位に入ったニッツォロがマリアロッサを獲得している。
ステージ42位と43位の間にギャップが開いたためコンタドールはライバルたちから9秒ロスしたが、最終的にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)と1分53秒差、ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)と3分05秒差で総合優勝。記録上2度目のジロ制覇を成し遂げた(2011年の総合優勝は剥奪)。
コンタドールは「過去の2勝(剥奪された優勝も含む)と比べると、ずっと落ち着いて勝負に挑んでいたと思う」と2015年大会を振り返る。「そして今ここでツール・ド・フランスが始まる。今晩は例外として可能な限りリカバリーに励み、3〜4日の休息を経てツールに向けた準備を始めるよ」。表彰式で3本指を立てたエル・ピストレーロの視界の先にはツールの光景が浮かんでいる。
ジロ・デ・イタリア2015第21ステージ結果
1位 イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 4h18’37”
2位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング) +09”
4位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
5位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
6位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、ジャイアント・アルペシン)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
10位 エリア・ファヴィッリ(イタリア、サウスイースト)
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 88h22’25”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1’53”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +3’05”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +8’10”
5位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +9’52”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +10’41”
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +10’53”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +12’08”
9位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +15’51”
10位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +16’14”
117位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング) +5h02’43”
マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング) 181pts
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) 148pts
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ) 147pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) 125pts
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) 122pts
3位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) 115pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) 88h24”18”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン) +1h51’46”
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング) +1h54’04”
総合敢闘賞
フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
チーム総合成績
1位 アスタナ 264h42’31”
2位 BMCレーシング +43’16”
3位 チームスカイ +1h13’51”
text&photo:Kei Tsuji in Milano, Italy
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