3週間の闘いを終える選手たちがミラノに凱旋。市街地周回コースはスプリンターのものになるとの予想を覆し、ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)と逃げたイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)が勝利を飾りました。



ジロ・デ・イタリアを制したティンコフ・サクソジロ・デ・イタリアを制したティンコフ・サクソ photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第21ステージジロ・デ・イタリア2015第21ステージ image:RCS Sportトリノとミラノを結ぶ行程は真っ平らの一言。23日間にわたって繰り広げたプロトンが、北イタリアの中心都市ミラノに凱旋する。最後はミラノ市街の北西部に敷かれた5.4kmの周回コースを7周し、コルソセンピオーネ大通りでフィナーレを迎える。

最終ステージのスタートラインに並んだアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)最終ステージのスタートラインに並んだアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsujiマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)を始めとする各賞ジャージを先頭にスタートしたレースはしばらく和やかな雰囲気をもって進行する。

集団から飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)集団から飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleコンタドールがチームメイトやオレグ・ティンコフ氏、大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏らとプロセッコで乾杯。ピンクのバーテープとグローブで揃えたティンコフ・サクソを先頭に、グランツール最終日らしいスローペースでミラノを目指した。

86km地点のスプリントポイントではフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のマリアロッサを狙うBMCレーシングが動きを見せ、ジルベールを含むBMCレーシング3名とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)がメイン集団から抜け出すことに成功する。

先頭でスプリントポイントを通過したジルベールは暫定でポイント賞2位に浮上。その後方では別府史之(トレックファクトリーレーシング)が集団先頭通過(5番手通過)し、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)らのポイント獲得を阻止した。

ジルベールやリケーゼはペースを落として集団に戻り、再びティンコフ・サクソが先導する形でミラノの市街地周回コースに突入。コーナーが連続するハイスピードサーキットで、イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の2人が勢い良く飛び出した。



大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏と乾杯するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏と乾杯するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele
ティンコフ・サクソを先頭にミラノの市街地周回コースを走るティンコフ・サクソを先頭にミラノの市街地周回コースを走る photo:Kei Tsujiマリアローザを着て凱旋するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)マリアローザを着て凱旋するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
逃げるイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)逃げるイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleミラノ市街地周回コースを走るマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)ミラノ市街地周回コースを走るマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
ニッツォロのために位置取りする別府史之(トレックファクトリーレーシング)ニッツォロのために位置取りする別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji


先行するイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)先行するイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleトラックレースのスペシャリストとして名を馳せるケイセと、2011年U23TT世界チャンピオンのダーブリッジによる2人逃げ。平均スピード52km/h弱のペースを刻みながら、チームスカイを始めとするスプリンターチーム率いるメイン集団から40秒のリードを稼ぎ出す。

最終ステージで逃げ切り勝利を飾ったイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)最終ステージで逃げ切り勝利を飾ったイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleケイセとダーブリッジのスピードは一向に衰えず、メイン集団から36秒リードのまま最終周回に差し掛かる。迫り来るメイン集団を9秒差で振り切った2人が短い牽制を経て最終ストレートでスプリントを繰り広げ、ダーブリッジを下したケイセが両手を挙げた。

プロセッコを開けるイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)プロセッコを開けるイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji「キャリアの中で最高の勝利だ。これ以上のものはない」。スプリンターの独壇場になるのが通例のジロ最終ステージで逃げ切り勝利を飾ったケイセは喜びを語る。

トラック6日間レースのトップレーサーとして活躍し、近年ロードレースに打ち込んでいるケイセは現在32歳。過去には2007年トラック世界選手権ポイントレースで銀メダル、2005年大会マディソンで銅メダルを獲得している。「トラックレース出身なので、今日のようなコーナーが連続するクリテリウム形式のレースが得意。ルーク・ダーブリッジという最高の伴侶を得たことも勝利に繋がった。最終周回に入った時点で勝てると思ったし、最後は落ち着いてスプリントに持ち込んだんだ」と、グランツール初勝利についてコメントした。

9秒遅れの集団先頭を取ったのはロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)で、5位に入ったニッツォロがマリアロッサを獲得している。

ステージ42位と43位の間にギャップが開いたためコンタドールはライバルたちから9秒ロスしたが、最終的にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)と1分53秒差、ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)と3分05秒差で総合優勝。記録上2度目のジロ制覇を成し遂げた(2011年の総合優勝は剥奪)。

コンタドールは「過去の2勝(剥奪された優勝も含む)と比べると、ずっと落ち着いて勝負に挑んでいたと思う」と2015年大会を振り返る。「そして今ここでツール・ド・フランスが始まる。今晩は例外として可能な限りリカバリーに励み、3〜4日の休息を経てツールに向けた準備を始めるよ」。表彰式で3本指を立てたエル・ピストレーロの視界の先にはツールの光景が浮かんでいる。



トロフェオセンツァフィーネにキスをするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)トロフェオセンツァフィーネにキスをするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele

パンクによって遅れてフィニッシュした別府史之(トレックファクトリーレーシング)パンクによって遅れてフィニッシュした別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji9秒遅れの集団先頭はロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)9秒遅れの集団先頭はロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング) photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第21ステージ結果
1位 イーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)     4h18’37”
2位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、IAMサイクリング)                +09”
4位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
5位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
6位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、ジャイアント・アルペシン)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 モレーノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
10位 エリア・ファヴィッリ(イタリア、サウスイースト)

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)      88h22’25”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                  +1’53”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                  +3’05”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)            +8’10”
5位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)        +9’52”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)             +10’41”
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)         +10’53”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)            +12’08”
9位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)               +15’51”
10位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)             +16’14”
117位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)         +5h02’43”

マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)   181pts
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)          148pts
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)           147pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)         125pts
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                 122pts
3位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)        115pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                 88h24”18”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)      +1h51’46”
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)   +1h54’04”

総合敢闘賞
フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)

チーム総合成績
1位 アスタナ                              264h42’31”
2位 BMCレーシング                            +43’16”
3位 チームスカイ                            +1h13’51”

text&photo:Kei Tsuji in Milano, Italy

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