2015/05/30(土) - 14:07
獲得標高差は今大会最大の5000mというハードなジロ・デ・イタリア第19ステージ。山頂ゴール制覇でイタリアを湧かせたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やマリアローザをキープしたアルベルト・コンタドール、マリアアッズーラを獲得したジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)らのコメントを紹介します。
ステージ優勝&総合2位に返り咲いたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
モルティローロを登った第16ステージではラスト50kmからゴールまでひたすら苦しみ続け、同じ様に今日もラスト7kmから苦しみ続けた。この苦しみこそがロードレースというスポーツなんだと思う。調子が良い時に勝つのは簡単なことだけど、調子が悪いときに辛抱することはとても難しいことだ。ここまでのキャリアが順調であったことに嘘偽りはないが、今回のジロでは耐え忍ぶことを学んだ。そして今日ステージ優勝を手にすることができた。
色々なことを頭では理解しているけど、いざレースになれば、それらの知識が役に立たないという経験を得てきた。脚と頭を使って一生懸命にペダルを漕いできたことこそが、調子の悪かった僕自身を救ってくれたんだ。
予想外に調子が悪い日が続いただけに、この勝利は予想していなかった。ここまでどうにか持ちこたえてきた。(大きく遅れた)第16ステージの後はマッサージ中や夕方になると自然に寝てしまうほど疲れていた。疲れていると目覚めが悪くなり、「あと何キロ、あと何キロ」といつも以上にレースが長く感じてしまうから、とにかく睡眠時間を多くとった。そのことが今日の勝因の1つになっていると思う。
今日のステージ優勝はとても嬉しいし、ジロでの勝利は格別。僕にとってのプロ初勝利である去年のモンテカンピオーネは間違えなくかけがえの無い1勝ではあるけど、今回の様に苦労の末、あと数日でゴールにたどりつくという状況での勝利もまた素晴らしい。でもこの勝利にうろたえることなく、このジロをしっかりと完走したい。ジロの後は今後に向けて一旦休養を取る予定だ。
マリアローザをキープしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
チーム全体として今日は調子良く、僕自身は2位のミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)にずっと注意を払っていた。アルとランダが最後の登りで交互にアタックを仕掛けてきたため、終盤にかけては先を見通して誰をマークすべきなのかを判断しなければならなかった。
もちろんステージ優勝を狙いたいところではあるが、終盤になると周りのライダーが少なくなるため、前に大人数の逃げがあると追いつくのが困難であり、現実的には難しい。チームメイトが残っていないことがよく指摘されるけど、彼らは序盤からハードに仕事をこなしてくれているから、それは仕方ないこと。今日の結果には満足している。
マリアローザとステージ優勝のどっちが大事かと聞かれたら、ほぼ全員がマリアローザと答えるはず。だから今日の様なハードなステージを終えてマリアローザを守れたことが僕はただただ嬉しい。最後の(チェルヴィニア)の登りはとてもハードで、力のあったアルがステージを勝ち取り、総合順位を2位に上げた。きっと彼には素晴らしい未来が待っているはずだ。
明日のステージはハードな登りが含まれた個人的に好みのコースプロファイルで、恐らく今日よりも登りがキツいと考えている。そこで僕がやるべきことがは総合勢のアタックに反応し続けること。でも、どこかでアタックするかもしれないし、実際どうなるかは分からないよ。
マリアアッズーラを獲得したジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
今日のステージは恐ろしくハードだった。山を登っている最中に顔が痛くなるほど強烈な風が吹いてきた。自分としては最後まで逃げ続けられる様に体力をセーブしていが、条件が揃わなかった。だけどそれが普通だ。
戦略的に正しいか否かという議論があるとおもうけど、アスタナは彼らの狙いどおりに走り、自らのチームの戦略が正しかったことをステージ優勝を持って証明した。
自分が逃げに乗ると、総合系チームが後ろから追ってくるが、実際のところ最終的に逃げを決められるかは自分次第なんだ。マドンナ・ディ・カンピーリオ(が登場した第15ステージ)と今日の2ステージで逃げを試みて、脚はあったが最終的にはツキに見放された。また明日も過酷なステージだけど、明朝起きてみて、どのくらい体力が残っているかによっては再度トライするつもりだ。
このジャージは僕にとって(ここまで重ねてきた努力に対する)埋め合わせの1つにすぎないが、終盤にきてマリアアッズーラを獲得できた意味はとても大きい。
山岳ポイントを稼ぐためには常にペースの上がった集団前方を走ることが求められる。ハードだけどここ数年の経験から、山岳賞を争うことが自分にはあっていると感じている。
ライダー・ヘシェダルについて語るキャノンデール・ガーミンのチャーリー・ウェゲリウス監督
ヘシェダルはステージ優勝を挙げるために走ったが、それは叶わなかった。しかし、調子の良さと今日の積極的な走りは着実に結果に結びついており、総合順位を2つ上げることができた。これは並大抵のことではない。
3位でゴールしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
今日の目標は良い内容のレースをすることにトライして、何ができるかを示すことだった。レースが始まってから逃げを試みたけど、集団は逃がしてくれなかったんだ。だから、チェルヴィニアの麓まではプロトンの中に留まることになった。コンディションもよく、人数が減って集団が活性化してきた際もアタックに反応することができた。
ただ、先頭集団が最終的に7人になってからのアタック合戦には付いていくことが出来なかったので、そこからはリカバリーしつつ自分のペースで刻んでいった。やがてアンドレイ・アマドール、タネル・カンゲルト、ミケル・ニエベと合流したが、彼らは前にエースがいるからペースを上げることもないだろうと考え、トンネルの中でアタックした。トンネルの出口でコンタドールらマリアローザグループの背中がみえ、そこから更にアタックした。
結果的にはアルとヘシェダルが大きく先行していたから3位でのゴールとなったけど、自分の持てる力を全て出し切ることができ、これだけ強いライダーが周りにいる中でゴールを迎えられたから、今日の結果には満足している。ジロは日曜日に終わるけど、残り2ステージにもチャンスがあるし、引き続きチーム一丸となって全力で臨みたい。
88位でフィニッシュした別府史之(トレックファクトリーレーシング)
7時間近いレース時間が予想される長距離山岳ステージだったが、序盤からハイスピードが進み、なかなか逃げが決まらなかった。最初の1級山岳の山頂まで3kmのところでメイン集団からドロップしてしまった。そこから数人と走り続けて最後の山へ。
最後の15kmがとても長いと感じていたら、ハンガーノックに。フラフラな状態で、ゴールを目指した。20人くらい抜かれ、最後は止まりそうになったが、なんとかゴールにたどり着いた。最後は苦しんだけれど、ステージ全般、自分でも一番好きな地域でもある美しいアオスタ渓谷を横目に走ることができて、とても気持ち良かった。残りはあと2ステージ。
※各コメントは現地取材、レース/チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイト/Twitter/Facebookより。
text:Yuya.Yamamoto
photo:CorVos, Kei.Tsuji, Tim de Waele
ステージ優勝&総合2位に返り咲いたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
モルティローロを登った第16ステージではラスト50kmからゴールまでひたすら苦しみ続け、同じ様に今日もラスト7kmから苦しみ続けた。この苦しみこそがロードレースというスポーツなんだと思う。調子が良い時に勝つのは簡単なことだけど、調子が悪いときに辛抱することはとても難しいことだ。ここまでのキャリアが順調であったことに嘘偽りはないが、今回のジロでは耐え忍ぶことを学んだ。そして今日ステージ優勝を手にすることができた。
色々なことを頭では理解しているけど、いざレースになれば、それらの知識が役に立たないという経験を得てきた。脚と頭を使って一生懸命にペダルを漕いできたことこそが、調子の悪かった僕自身を救ってくれたんだ。
予想外に調子が悪い日が続いただけに、この勝利は予想していなかった。ここまでどうにか持ちこたえてきた。(大きく遅れた)第16ステージの後はマッサージ中や夕方になると自然に寝てしまうほど疲れていた。疲れていると目覚めが悪くなり、「あと何キロ、あと何キロ」といつも以上にレースが長く感じてしまうから、とにかく睡眠時間を多くとった。そのことが今日の勝因の1つになっていると思う。
今日のステージ優勝はとても嬉しいし、ジロでの勝利は格別。僕にとってのプロ初勝利である去年のモンテカンピオーネは間違えなくかけがえの無い1勝ではあるけど、今回の様に苦労の末、あと数日でゴールにたどりつくという状況での勝利もまた素晴らしい。でもこの勝利にうろたえることなく、このジロをしっかりと完走したい。ジロの後は今後に向けて一旦休養を取る予定だ。
マリアローザをキープしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
チーム全体として今日は調子良く、僕自身は2位のミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)にずっと注意を払っていた。アルとランダが最後の登りで交互にアタックを仕掛けてきたため、終盤にかけては先を見通して誰をマークすべきなのかを判断しなければならなかった。
もちろんステージ優勝を狙いたいところではあるが、終盤になると周りのライダーが少なくなるため、前に大人数の逃げがあると追いつくのが困難であり、現実的には難しい。チームメイトが残っていないことがよく指摘されるけど、彼らは序盤からハードに仕事をこなしてくれているから、それは仕方ないこと。今日の結果には満足している。
マリアローザとステージ優勝のどっちが大事かと聞かれたら、ほぼ全員がマリアローザと答えるはず。だから今日の様なハードなステージを終えてマリアローザを守れたことが僕はただただ嬉しい。最後の(チェルヴィニア)の登りはとてもハードで、力のあったアルがステージを勝ち取り、総合順位を2位に上げた。きっと彼には素晴らしい未来が待っているはずだ。
明日のステージはハードな登りが含まれた個人的に好みのコースプロファイルで、恐らく今日よりも登りがキツいと考えている。そこで僕がやるべきことがは総合勢のアタックに反応し続けること。でも、どこかでアタックするかもしれないし、実際どうなるかは分からないよ。
マリアアッズーラを獲得したジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
今日のステージは恐ろしくハードだった。山を登っている最中に顔が痛くなるほど強烈な風が吹いてきた。自分としては最後まで逃げ続けられる様に体力をセーブしていが、条件が揃わなかった。だけどそれが普通だ。
戦略的に正しいか否かという議論があるとおもうけど、アスタナは彼らの狙いどおりに走り、自らのチームの戦略が正しかったことをステージ優勝を持って証明した。
自分が逃げに乗ると、総合系チームが後ろから追ってくるが、実際のところ最終的に逃げを決められるかは自分次第なんだ。マドンナ・ディ・カンピーリオ(が登場した第15ステージ)と今日の2ステージで逃げを試みて、脚はあったが最終的にはツキに見放された。また明日も過酷なステージだけど、明朝起きてみて、どのくらい体力が残っているかによっては再度トライするつもりだ。
このジャージは僕にとって(ここまで重ねてきた努力に対する)埋め合わせの1つにすぎないが、終盤にきてマリアアッズーラを獲得できた意味はとても大きい。
山岳ポイントを稼ぐためには常にペースの上がった集団前方を走ることが求められる。ハードだけどここ数年の経験から、山岳賞を争うことが自分にはあっていると感じている。
ライダー・ヘシェダルについて語るキャノンデール・ガーミンのチャーリー・ウェゲリウス監督
ヘシェダルはステージ優勝を挙げるために走ったが、それは叶わなかった。しかし、調子の良さと今日の積極的な走りは着実に結果に結びついており、総合順位を2つ上げることができた。これは並大抵のことではない。
3位でゴールしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
今日の目標は良い内容のレースをすることにトライして、何ができるかを示すことだった。レースが始まってから逃げを試みたけど、集団は逃がしてくれなかったんだ。だから、チェルヴィニアの麓まではプロトンの中に留まることになった。コンディションもよく、人数が減って集団が活性化してきた際もアタックに反応することができた。
ただ、先頭集団が最終的に7人になってからのアタック合戦には付いていくことが出来なかったので、そこからはリカバリーしつつ自分のペースで刻んでいった。やがてアンドレイ・アマドール、タネル・カンゲルト、ミケル・ニエベと合流したが、彼らは前にエースがいるからペースを上げることもないだろうと考え、トンネルの中でアタックした。トンネルの出口でコンタドールらマリアローザグループの背中がみえ、そこから更にアタックした。
結果的にはアルとヘシェダルが大きく先行していたから3位でのゴールとなったけど、自分の持てる力を全て出し切ることができ、これだけ強いライダーが周りにいる中でゴールを迎えられたから、今日の結果には満足している。ジロは日曜日に終わるけど、残り2ステージにもチャンスがあるし、引き続きチーム一丸となって全力で臨みたい。
88位でフィニッシュした別府史之(トレックファクトリーレーシング)
7時間近いレース時間が予想される長距離山岳ステージだったが、序盤からハイスピードが進み、なかなか逃げが決まらなかった。最初の1級山岳の山頂まで3kmのところでメイン集団からドロップしてしまった。そこから数人と走り続けて最後の山へ。
最後の15kmがとても長いと感じていたら、ハンガーノックに。フラフラな状態で、ゴールを目指した。20人くらい抜かれ、最後は止まりそうになったが、なんとかゴールにたどり着いた。最後は苦しんだけれど、ステージ全般、自分でも一番好きな地域でもある美しいアオスタ渓谷を横目に走ることができて、とても気持ち良かった。残りはあと2ステージ。
※各コメントは現地取材、レース/チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイト/Twitter/Facebookより。
text:Yuya.Yamamoto
photo:CorVos, Kei.Tsuji, Tim de Waele
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