2015/05/29(金) - 13:53
多くの選手が住むルガーノ周辺を出発し、急峻な山々が湖に沈み込む湖水地方を走る。イタリア再入国とともに活気が戻ったジロ・デ・イタリアは「エル・ピストレーロ」の圧倒的な走りに支配されつつある。第18ステージを写真とともに振り返ります。
笑顔で第18ステージを迎える別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
気球が飛ぶスタート地点 photo:Kei Tsuji
スイスの警察とイタリアの警察のコラボ photo:Kei Tsuji
スイスを発ち、イタリアを目指す photo:Kei Tsuji
スイスを出発してからしばらくはオレンジ色のパトカー(フォルクスワーゲン)と蛍光イエローの救急車がレースに帯同。国境を通過すると同時に青いパトカー(アルファロメオ)と白&赤の救急車にバトンタッチする。ジロがイタリアに戻った。
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がルガーノ在住ということは前日のレポートでお伝えしたが、コンタドールだけでなく多くの選手がルガーノ周辺に居を構えている。マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)もその一人で、我が子を抱きながらいつものトレーニングに使用する山を指差してオレグ・ティンコフ氏に伝え、「標高1700mもあるのか?」とチームオーナーを驚かせていた。
なぜスイスのイタリア語圏を拠点に選ぶのかを問うと、どの選手もトレーニング環境の良さと税金のシステムを理由に挙げる。標高のある山岳へのアクセスが良いのと同時に、ミラノまで1時間ほどの立地が選手を呼び寄せる。元世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア)が住んでいるスタビオの街も近い。レース前半に通過するヴァレーゼ(イタリア)もオリカ・グリーンエッジやオーストラリアナショナルチームがヨーロッパ拠点を置く街として知られており、とにかく一帯には選手が集中している印象だ。
国境を越えても地形や景色、言語、文化に大きな変化は無し。しかし確実に街中のジロ歓迎ムードは倍増する。平日の昼間からこれほど多くの人が沿道に集まって大丈夫なのかと心配してしまうほど、やはりイタリア国内のジロに注がれる目線は熱い。
デコレートされた街を駆け抜ける photo:Kei Tsuji
ジロ・ディタリア! photo:Kei Tsuji
逃げグループを温かく迎える photo:Kei Tsuji
今日はなにやら騒がしい photo:Kei Tsuji
ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)が落車の影響で遅れた隙にアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がアタックしたことは、コンタドールがパンクした隙にランダらがアタックしたモルティローロでの出来事を思い起こさせた。
2日前の記者会見でコンタドールは「彼らの走りについて議論するつもりは無い」とコメントし、アスタナ勢の攻撃を気にしていない素振りを見せたが、この日の走りはどこかリベンジの匂いを感じずにはいられないものだった。ティンコフ・サクソのアシストの一人クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク)は「落車が起こった時点ですでにかなりスピードが出ていた。ランダが落車したと判明した時はさらにスピードを上げた」と証言している。
コンタドールから1分13秒失ったランダは「今日はコンタドールの日だった。あの日の出来事についてティンコフ・サクソは明らかに不満だったのだろう。彼らはモルティローロでのアスタナと同じ方法で攻撃した。今回は彼らの番だった。これがレースだ」と復讐心に燃えたライバルの走りに納得している。
プレスセンターのTVに映し出されたコンタドールの登坂に釘付けになったジャーナリストたちは「コンタドールが総合2位と10分差で勝つんじゃないか」なんて冗談交じりでつぶやいたが、その数字が現実になるかもしれない。
すでに5分もの総合リードを得ているコンタドール。それでもなお追い込む走りが7月のツール・ド・フランスに影響するとの声もあるが、本人は「目標はマリアローザを獲得することであり、1秒差でもいいから総合優勝すること。今日は自分たちがリードを得たが、明日はライバルたちが挽回するかもしれない。冷血に思われるかもしれないが、チャンスがあれば狙うしかない」とどこ吹く風だ。
もうすぐジロがやってくる photo:Kei Tsuji
表彰台の裏でガッツポーズするフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
ヴィレッラに感謝するライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji
マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とピンクの紙吹雪 photo:Kei Tsuji
この日ステージ優勝を飾ったジルベールの他、一緒に逃げていたケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)とリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、AG2Rラモンディアール)、そして集団から抜け出たコンタドールとライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)を対象に抜き打ちバイクチェックを実施。UCIコミッセールによってシートチューブやBB、ハブなどがチェックされた。
今回のジロでバイクチェックが行われるのは3回目。結果、モーターなどの疑わしいものは発見されなかった。表彰式に出るわけでもなく、チームバスに帰ることもできないままバイクチェックが終わるのをテントの外で待ったヘシェダルは「史上最高に馬鹿げている」と不満げにコメントしている。
ジロは残り3ステージ。何度も深呼吸したくなるような快晴が2日間続いたが、週末にかけて天候は再び下り坂。チェルヴィニア(マッターホルン)を目指す第19ステージはなんとかもちそうだが、チーマコッピのフィネストレ峠を通過する第20ステージは降雨の予報が出ている。
text&photo:Kei Tsuji in Verbania, Italy
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スイスを出発してからしばらくはオレンジ色のパトカー(フォルクスワーゲン)と蛍光イエローの救急車がレースに帯同。国境を通過すると同時に青いパトカー(アルファロメオ)と白&赤の救急車にバトンタッチする。ジロがイタリアに戻った。
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がルガーノ在住ということは前日のレポートでお伝えしたが、コンタドールだけでなく多くの選手がルガーノ周辺に居を構えている。マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)もその一人で、我が子を抱きながらいつものトレーニングに使用する山を指差してオレグ・ティンコフ氏に伝え、「標高1700mもあるのか?」とチームオーナーを驚かせていた。
なぜスイスのイタリア語圏を拠点に選ぶのかを問うと、どの選手もトレーニング環境の良さと税金のシステムを理由に挙げる。標高のある山岳へのアクセスが良いのと同時に、ミラノまで1時間ほどの立地が選手を呼び寄せる。元世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア)が住んでいるスタビオの街も近い。レース前半に通過するヴァレーゼ(イタリア)もオリカ・グリーンエッジやオーストラリアナショナルチームがヨーロッパ拠点を置く街として知られており、とにかく一帯には選手が集中している印象だ。
国境を越えても地形や景色、言語、文化に大きな変化は無し。しかし確実に街中のジロ歓迎ムードは倍増する。平日の昼間からこれほど多くの人が沿道に集まって大丈夫なのかと心配してしまうほど、やはりイタリア国内のジロに注がれる目線は熱い。
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2日前の記者会見でコンタドールは「彼らの走りについて議論するつもりは無い」とコメントし、アスタナ勢の攻撃を気にしていない素振りを見せたが、この日の走りはどこかリベンジの匂いを感じずにはいられないものだった。ティンコフ・サクソのアシストの一人クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク)は「落車が起こった時点ですでにかなりスピードが出ていた。ランダが落車したと判明した時はさらにスピードを上げた」と証言している。
コンタドールから1分13秒失ったランダは「今日はコンタドールの日だった。あの日の出来事についてティンコフ・サクソは明らかに不満だったのだろう。彼らはモルティローロでのアスタナと同じ方法で攻撃した。今回は彼らの番だった。これがレースだ」と復讐心に燃えたライバルの走りに納得している。
プレスセンターのTVに映し出されたコンタドールの登坂に釘付けになったジャーナリストたちは「コンタドールが総合2位と10分差で勝つんじゃないか」なんて冗談交じりでつぶやいたが、その数字が現実になるかもしれない。
すでに5分もの総合リードを得ているコンタドール。それでもなお追い込む走りが7月のツール・ド・フランスに影響するとの声もあるが、本人は「目標はマリアローザを獲得することであり、1秒差でもいいから総合優勝すること。今日は自分たちがリードを得たが、明日はライバルたちが挽回するかもしれない。冷血に思われるかもしれないが、チャンスがあれば狙うしかない」とどこ吹く風だ。
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今回のジロでバイクチェックが行われるのは3回目。結果、モーターなどの疑わしいものは発見されなかった。表彰式に出るわけでもなく、チームバスに帰ることもできないままバイクチェックが終わるのをテントの外で待ったヘシェダルは「史上最高に馬鹿げている」と不満げにコメントしている。
ジロは残り3ステージ。何度も深呼吸したくなるような快晴が2日間続いたが、週末にかけて天候は再び下り坂。チェルヴィニア(マッターホルン)を目指す第19ステージはなんとかもちそうだが、チーマコッピのフィネストレ峠を通過する第20ステージは降雨の予報が出ている。
text&photo:Kei Tsuji in Verbania, Italy
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