2015/05/27(水) - 03:35
登坂距離11.8km/平均勾配10.9%という1級山岳モルティローロ峠でのマリアローザのアタックについていけたのは、総合2位ファビオ・アルではなく総合3位ミケル・ランダ。バスク生まれのクライマーがコンタドールを振り切ってステージ2連勝を飾りました。
休息日明けの第16ステージには悪名高き1級山岳モルティローロ峠が登場する。スタート直後に2級山岳カンポ・カルロマーニョが始まり、続いて2級山岳パッソ・デル・トナーレをクリア。一旦フィニッシュ地点の3級山岳アプリカを通過後、登坂距離11.8km/平均勾配10.9%という1級山岳モルティローロ峠が姿を現わす。
最大勾配が18%に達し、中盤にかけて13%前後が続くイタリア有数の難易度を誇るモルティローロ峠を越えて、3級山岳アプリカを駆け上がってフィニッシュ。獲得標高差が4500mに達するクイーンステージは朝から冷たい雨に見舞われた。
スタート後すぐに始まったアタックの応酬は気温7度の2級山岳カンポ・カルロマーニョを越えてもなお続き、2級山岳パッソ・デル・トナーレに差し掛かったところでようやくまとまった11名の先頭グループが形成される。
ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)という山岳ステージの逃げではお馴染みとなったオールラウンダーたちが逃げた。
マリアローザを擁するティンコフ・サクソが逃げグループに与えたタイム差は最大2分。この日も蛍光イエロージャージが集団先頭を固め、淡々とペースを刻んでフィニッシュラインが引かれた3級山岳アプリカ(残り77km地点)を通過する。その2分後方ではヘシェダルが単独走に持ち込み、逃げメンバーを置き去りにして1級山岳モルティローロ峠へと急いだ。
3級山岳アプリカの高速ダウンヒルで、それまで鉄壁だったティンコフ・サクソの体制に異変が生じる。落車の影響もあって分裂した集団の後方では、マリアローザを着るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がリアタイヤをパンク。その隙にアスタナやカチューシャを始めとするライバルチームが先行した。
コンタドールがダウンヒルを終えた時点で、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)を含む集団は40秒先行。ヘシェダルを含め、逃げていたメンバーを全員捉えたアルらは、コンタドールを40秒振り切ったまま1級山岳モルティローロ峠の登坂を開始した。
最大勾配18%の登りを進むうちに先頭はランダ、アル、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)の3名に絞られ、後方ではマリアローザのコンタドールがテンポ良く選手たちをパス。残り40km地点、つまり麓から8kmかけて、頂上まで4kmを残して、コンタドールは先頭ランダ、アル、クルイスウィクにようやく追いついた。
続けざまに飛び出したコンタドールに反応したのはアルではなくランダだった。ここにクルイスウィクが加わって先頭3名で1級山岳モルティローロ峠をクリア。56秒遅れでトロフィモフとヘシェダル、1分52秒でアルが頂上をクリアしていく。
先頭3名と単独追走アルのタイム差は広がり、さらにメカトラに伴うバイク交換でアルはさらにタイムを失ってしまう。ペースを上げながらフィニッシュ地点3級山岳アプリカに向かうコンタドール、ランダ、クルイスウィク。実質的にアルからエースの座を託されたランダがフィニッシュまで4kmを切ったところでコンタドールとクルイスウィクを振り切った。
ランダはそのまま先頭を守りきり、コンタドールとクルイスウィクを38秒、トロフィモフらを2分03秒引き離してフィニッシュ。一時の危機を乗り切ったコンタドールがマリアローザを守り、2分51秒遅れたアルに代わってステージ2連勝のランダが総合2位に浮上した。コンタドールとの総合タイム差は4分02秒。
「アプリカの登りは勾配が緩く、風も吹いていたので自分向きではなかった。だからモルティローロでアタックすることなくフィニッシュ手前の勝負に持ち込んだんだ。モルティローロでアルベルト(コンタドール)が追いついた時、ファビオ(アル)は調子を落としていた。だから今日はステージ優勝狙いに切り替えた」と、今大会最強とも言える登坂力を発揮したランダは語る。
コンタドールに対してアスタナは総合2位&総合3位。ランダは「まだ総合タイム差を詳しく見ていないけど、ファビオのリカバリー具合によっては力を合わせてコンタドールに立ち向かえると思う」と、今後も攻撃を続ける意志を見せている。
「アプリカの下りでパンクするまではパーフェクトだった」と語るのはマリアローザを守ったコンタドール。「バッソからホイールを受け取って再スタートしたけど、後方の集団に取り残されてしまった。(パンクしたマリアローザをライバルチームが待たなかったという)議論については何が正しいとか間違っているとか言うつもりはないよ」。
この日コンタドールとランダと対等の力を見せたクルイスウィクが総合8位に入るとともに山岳賞トップに浮上。モルティローロ峠を先頭で通過したクルイスウィクはパンターニの名前を冠した特別賞を表彰台で受け取った。
ジロ・デ・イタリア2015第16ステージ結果
1位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) 5h02’53”
2位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +38”
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +2’03”
5位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
6位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +2’10”
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +2’51”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +3’18”
9位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +3’19”
10位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 65h04’59”
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +4’02”
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +4’52”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +5’48”
5位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +8’27”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +9’21”
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +9’52”
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +11’40”
9位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +12’48”
10位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +12’49”
マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
マリアアッズーラ 山岳賞
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text&photo:Kei Tsuji in Aprica, Italy
休息日明けの第16ステージには悪名高き1級山岳モルティローロ峠が登場する。スタート直後に2級山岳カンポ・カルロマーニョが始まり、続いて2級山岳パッソ・デル・トナーレをクリア。一旦フィニッシュ地点の3級山岳アプリカを通過後、登坂距離11.8km/平均勾配10.9%という1級山岳モルティローロ峠が姿を現わす。
最大勾配が18%に達し、中盤にかけて13%前後が続くイタリア有数の難易度を誇るモルティローロ峠を越えて、3級山岳アプリカを駆け上がってフィニッシュ。獲得標高差が4500mに達するクイーンステージは朝から冷たい雨に見舞われた。
スタート後すぐに始まったアタックの応酬は気温7度の2級山岳カンポ・カルロマーニョを越えてもなお続き、2級山岳パッソ・デル・トナーレに差し掛かったところでようやくまとまった11名の先頭グループが形成される。
ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)という山岳ステージの逃げではお馴染みとなったオールラウンダーたちが逃げた。
マリアローザを擁するティンコフ・サクソが逃げグループに与えたタイム差は最大2分。この日も蛍光イエロージャージが集団先頭を固め、淡々とペースを刻んでフィニッシュラインが引かれた3級山岳アプリカ(残り77km地点)を通過する。その2分後方ではヘシェダルが単独走に持ち込み、逃げメンバーを置き去りにして1級山岳モルティローロ峠へと急いだ。
3級山岳アプリカの高速ダウンヒルで、それまで鉄壁だったティンコフ・サクソの体制に異変が生じる。落車の影響もあって分裂した集団の後方では、マリアローザを着るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がリアタイヤをパンク。その隙にアスタナやカチューシャを始めとするライバルチームが先行した。
コンタドールがダウンヒルを終えた時点で、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)を含む集団は40秒先行。ヘシェダルを含め、逃げていたメンバーを全員捉えたアルらは、コンタドールを40秒振り切ったまま1級山岳モルティローロ峠の登坂を開始した。
最大勾配18%の登りを進むうちに先頭はランダ、アル、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)の3名に絞られ、後方ではマリアローザのコンタドールがテンポ良く選手たちをパス。残り40km地点、つまり麓から8kmかけて、頂上まで4kmを残して、コンタドールは先頭ランダ、アル、クルイスウィクにようやく追いついた。
続けざまに飛び出したコンタドールに反応したのはアルではなくランダだった。ここにクルイスウィクが加わって先頭3名で1級山岳モルティローロ峠をクリア。56秒遅れでトロフィモフとヘシェダル、1分52秒でアルが頂上をクリアしていく。
先頭3名と単独追走アルのタイム差は広がり、さらにメカトラに伴うバイク交換でアルはさらにタイムを失ってしまう。ペースを上げながらフィニッシュ地点3級山岳アプリカに向かうコンタドール、ランダ、クルイスウィク。実質的にアルからエースの座を託されたランダがフィニッシュまで4kmを切ったところでコンタドールとクルイスウィクを振り切った。
ランダはそのまま先頭を守りきり、コンタドールとクルイスウィクを38秒、トロフィモフらを2分03秒引き離してフィニッシュ。一時の危機を乗り切ったコンタドールがマリアローザを守り、2分51秒遅れたアルに代わってステージ2連勝のランダが総合2位に浮上した。コンタドールとの総合タイム差は4分02秒。
「アプリカの登りは勾配が緩く、風も吹いていたので自分向きではなかった。だからモルティローロでアタックすることなくフィニッシュ手前の勝負に持ち込んだんだ。モルティローロでアルベルト(コンタドール)が追いついた時、ファビオ(アル)は調子を落としていた。だから今日はステージ優勝狙いに切り替えた」と、今大会最強とも言える登坂力を発揮したランダは語る。
コンタドールに対してアスタナは総合2位&総合3位。ランダは「まだ総合タイム差を詳しく見ていないけど、ファビオのリカバリー具合によっては力を合わせてコンタドールに立ち向かえると思う」と、今後も攻撃を続ける意志を見せている。
「アプリカの下りでパンクするまではパーフェクトだった」と語るのはマリアローザを守ったコンタドール。「バッソからホイールを受け取って再スタートしたけど、後方の集団に取り残されてしまった。(パンクしたマリアローザをライバルチームが待たなかったという)議論については何が正しいとか間違っているとか言うつもりはないよ」。
この日コンタドールとランダと対等の力を見せたクルイスウィクが総合8位に入るとともに山岳賞トップに浮上。モルティローロ峠を先頭で通過したクルイスウィクはパンターニの名前を冠した特別賞を表彰台で受け取った。
ジロ・デ・イタリア2015第16ステージ結果
1位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) 5h02’53”
2位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +38”
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +2’03”
5位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
6位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +2’10”
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +2’51”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +3’18”
9位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +3’19”
10位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 65h04’59”
2位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) +4’02”
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +4’52”
4位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +5’48”
5位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ) +8’27”
6位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +9’21”
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) +9’52”
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) +11’40”
9位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) +12’48”
10位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン) +12’49”
マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
マリアアッズーラ 山岳賞
ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text&photo:Kei Tsuji in Aprica, Italy
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