世界選手権かオリンピックかのような60km弱の個人TT。雨に濡れた起伏に富むコースを最速で駆け抜けたのはヴァシル・キリエンカ。アルベルト・コンタドールは総合勢から大きくタイムを奪い、再びマリアローザに袖を通しました。



全日本チャンピオンジャージを着てスタート待つ別府史之(トレックファクトリーレーシング)全日本チャンピオンジャージを着てスタート待つ別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei.Tsuji


長距離個人TTに挑む別府史之(トレックファクトリーレーシング)長距離個人TTに挑む別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei.Tsuji第98回ジロに登場する個人タイムトライアルはこの第14ステージのみ。それだけに距離が長く、60km目前の59.4kmというロングコースが用意された。トレヴィーゾを出発してからしばらくは緩やかに登る直線路が続き、後半は葡萄畑が広がる丘陵地帯を行く。世界的なワインとプロセッコの産地をTTバイクに乗った選手が駆け抜ける。

全ての中間計測でトップタイムと、完全勝利したヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)全ての中間計測でトップタイムと、完全勝利したヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ) photo:RCSsport総合順位を上げたリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)総合順位を上げたリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) photo:CorVos中盤の4級山岳は平均勾配4%ほどの緩斜面であり、終盤に登場するサンステファノの登りは最大勾配12%で、しかもヴァルドッビアーデネのフィニッシュラインは登り基調。1時間20分前後と予想された難易度五つ星の個人TTに向け、総合順位下位の選手から順に、続々とスタートを切っていく。

総合11位から5位にジャンプアップしたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)総合11位から5位にジャンプアップしたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:CorVosこの日も雨に濡れたジロ。気温は15℃ほどで、この日もワインディングの路面は滑りやすく、コーナーでは細心の注意を払わなければならないという集中力も問われるコンディション。そのため総合系の選手はあまりリスクを負わないのでは?と見られていた。

「今日は360〜400Wを目安に追い込み過ぎずに走った。観客も多くてそこまで長く感じなかった」とは、全日本チャンピオンジャージを着用して走った別府史之(トレックファクトリーレーシング)。別府は全体の96位で過酷なTTを乗り切っている。

そんな中で目覚ましいスピードで駆け抜けたのは、総合89位でスタートしたヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)。普段チームスカイの集団牽引役として活躍するキリエンカは、得意の長距離TTでそれまで首位に立っていたパトリック・グレッチュ(ドイツ、AG2Rラモンディアール)のタイムを上書きし、一躍ホットシートにつくこととなる。

その後ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)がキリエンカに迫るペースで好走したものの、結果的に14秒及ばず。後半になってスタートした総合勢もタイムを上書きできず、「後続のゴールを見ているのはとても大変だった」と語るキリエンカがステージ優勝に輝くことになった。33歳キリエンカのジロステージ優勝は、これで3度目だ。

そして総合勢では、今ステージ有力と見られていたリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)がスタート。オーストラリアチャンピオンジャージに身を包んだポートだったが、走りにも表情にも精彩を欠き、結果的にステージ55位と沈んだ。

一方でTTを得意とするリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)らはそれぞれ総合順位を大きくジャンプアップさせることに成功。対して総合上位に位置していたアスタナのダリオ・カタルド(イタリア)やミケル・ランダ(スペイン)はやや順位を落とすことに。



軽やかに登りをクリアするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)軽やかに登りをクリアするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:CorVos


TTに苦しんだマリアローザのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)TTに苦しんだマリアローザのファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:CorVosそして総合2位のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)と、マリアローザのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が順にスタートを切る。

休息日にポジションを変更したというコンタドールだったが、後半スタートの選手たちを襲った風の影響を受けながらも、不安を一切見せない走りで第一中間計測を通過。補給食をトップチューブに張り付けて走ったアルは、この時点でコンタドールから48秒の遅れを喫し、バーチャルでマリアローザが移動することに。

ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)が表彰台に上がるヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)が表彰台に上がる photo:RCSsportコンタドールはその後もペースを一切崩すことなく、前走のランダを抜き、後半の山岳区間では一気にタイムを稼ぎ、序盤の遅れを挽回してフィニッシュ。最終的にキリエンカの首位をぐらつかせる14秒遅れ(平均45.634km/h)という好記録でゴールへと飛び込んだ。

一方アルも自分のペースを守りながら走ったが、しかしTTを得意とするコンタドールとは格の違いを見せつけられることに。最終的にキリエンカから3分遅れ、コンタドールから2分47秒遅れとなるステージ29位でゴールした。

前日の遅れを消し去って余りある、圧倒的な走りを見せたコンタドール。総合2位に踏みとどまったアルに対してのリードは2分28秒、3位のアマドールに対しては3分36秒にも上る。王者の駒運びで再びマリアローザに袖を通し、表彰台では喜びを噛み締めるような笑顔がほころんだ。

各選手のコメントは別記事で紹介します。



ピストルポーズを繰り出すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)ピストルポーズを繰り出すアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:CorVos


ジロ・デ・イタリア2015第14ステージ結果
1位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 パトリック・グレッチュ(ドイツ、AG2Rラモンディアール)
5位 ステフェン・クルイシュウィック(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)
8位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
9位 トビアス・ルドヴィグソン(スウェーデン、ジャイアント・アルペシン)
10位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
1h17'52"
+12"
+14"
+23"
+1'09"
+1'17"
+1'25"
+1'26"
+1'27"
+1'36"


個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
3位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
4位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
7位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)
10位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
55h39'00"
+2'28"
+3'36"
+4'14"
+4'17"
+4'50"
+4'55"
+4'56"
+4'57"
+5'35"


マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

マリアアッズーラ 山岳賞
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text:So.Isobe
photo:CorVos

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