2015/03/17(火) - 15:40
テルミニッロ頂上が雪ならば、下界は当然のように雨。アドリア海に到着した選手たちを迎えたのは冷たい雨だった。ミラノ〜サンレモを見据えるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が、雨の集団スプリントで今シーズン初勝利を手にした。
白銀のテルミニッロから下山後も悪天候は続いた。ティレーノ〜アドリアティコ第6ステージは内陸のリエーティからアペニン山脈を越え、アドリア海に面したポルト・サンテルピーディオの周回コースに向かう210km。今大会の最長ステージは1日雨だった。
冷たい雨の中で逃げを打ったのはアレッサンドロ・ヴァノッティ(イタリア、アスタナ)、ステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)、そして新城幸也(ユーロップカー)の3人。前日に足首を強打したエースのピエール・ロラン(フランス)が途中でレースを降りる中、「何か結果を出したい」と語っていた新城が逃げた。
アドバンテージを5分まで広げながらアペニン山脈を抜け、アドリア海を目指すヴァノッティ、デヴォルデル、新城。雨脚が強まる中、4分ほどのリードを維持したままレース後半に差し掛かる。
レース中盤のGPMモンテルパーロで動いたのはティンコフ・サクソだった。アルベルト・コンタドール(スペイン)を含めたクライマー系選手たちがペースを上げると、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)を含むスプリンターたちが相次ぎ脱落。100名弱に絞られた集団が先頭3名を追う展開に。
ベルギーチームは一旦アシスト選手を下げてカヴェンディッシュを引き上げようとしたが、ミラノ〜サンレモ前に悪天候の中での無理は禁物と判断。カヴェンディッシュ、マーク・レンショー(オーストラリア)、ファビオ・サバティーニ(イタリア)、ゼネク・スティバル(チェコ)、ニキ・テルプストラ(オランダ)の5名をポルト・サンテルピーディオの周回コース到着後にリタイアさせている。
遅れたスプリンターを復帰させたくないチームの集団牽引によって逃げグループのリードは縮小し、フィニッシュまで50kmを残して逃げは吸収。メイン集団は雨のポルト・サンテルピーディオ周回コースを駆け抜けた。
諦めないヴァノッティが再び飛び出し、今度はアレクシ・ヴィエルモ(フランス、AG2Rラモンディアール)が合流して2人が先行する。最終周回に独走に持ち込んだヴィエルモだったが、ティンコフ・サクソやロット・ソウダルの追撃には対抗できずに吸収。MTNキュベカルがトレインを組んで、ウェットな最終ストレートになだれ込んだ。
最終的に50名強の集団スプリントで、ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)やイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)を振り切ったスロバキアチャンピオンが雄叫びをあげる。チームメイトの働きに応えるように、サガンが待望の今シーズン初勝利を手にした。
サガンの最後の勝利は昨年6月のスロバキア選手権ロードレースまで遡る。以降、9ヶ月の間に2位が9回。存在感を見せながらも勝てない日々が続いていた。
「何回2位になったのか数え切れないほど、ここまで2位続きだった。常にトップ争いに絡みながらもとにかく2位ばかりだった。でもそれも経験の一部であり、人生はそんなもの。いい時もあれば悪い時もある」とサガンは達観している。
「ツアー・オブ・カタールの落車で調子を落とし、ツアー・オブ・オマーンでは暑さに苦しんだ。ストラーデビアンケでも100%とは言えないコンディションだったものの、このティレーノで仕上がったと感じる。これからも過去ではなく未来を見据えて走る。今日はアルベルト(コンタドール)がライバルスプリンターをふるい落とすために登りで力を尽くしてくれるなんて感激したよ」と、週末に控えたミラノ〜サンレモに向けて手応えを掴んだ様子だ。
終始レインジャケットを着込み、リーダージャージを見せることなくフィニッシュしたナイロ・キンタナ(コロンビア・モビスター)が総合首位をキープ。総合タイム差は変わらず、バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)を39秒、リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)を48秒引き離した状態で最後の個人タイムトライアルに挑むことに。
キンタナは「今日のようなステージではライバルが攻撃を仕掛けてくることも考えられた。レースを失う可能性も有る危険なステージだったけど、幸い何も問題なかったよ」と胸をなでおろす。「明日はスピード勝負だ。そこには何も秘密なんてない。ただただスピードが勝敗を分かつ。(ライバルに対しての)アドバンテージは充分にあるので、トラブルなく走れば大丈夫だと思っている」。
新城幸也のコメント
64位でステージを終えた新城幸也(ユーロップカー)。「チームにとってはエースのピエール・ローランが足首を負傷し、リタイアしてしまったり、今回のレースでチームは何も残せていなかったので、スプリントになればトニー、自分はそのアシスト。また天気が悪いので、逃げ切る可能性もあるので誰かは逃げに乗るというチームオーダーだったので、デヴォルデル(トレックファクトリーレーシング)とふたりで飛び出し、逃げが決まった。その後、アスタナの選手が一人で追いついてきたので、待って3人で逃げ出した。 今日も寒さに耐える日となった。山岳ポイントででコンタドールらがアタックした事もあり、差が一気に差が縮まり、吸収されてしまった。しかし、今日逃げた事で、コンディションが一つ上がった感触が得られた。明日も良い感じで出し切って終わりたいと思います。」とコメントしている。
最終個人タイムトライアルはサンベネデット・デル・トロントを舞台にした平坦な10km。天気予報によると雨の心配はなさそうだ。
ティレーノ~アドリアティコ2015第6ステージ結果
個人総合成績
山岳賞
カルロス・キンテロ(コロンビア、チームコロンビア)
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
ヤングライダー賞
ナイロ・キンタナ(コロンビア・モビスター)
チーム総合成績
カチューシャ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
※新城幸也(ユーロップカー)のコメントはユキヤ通信より。
白銀のテルミニッロから下山後も悪天候は続いた。ティレーノ〜アドリアティコ第6ステージは内陸のリエーティからアペニン山脈を越え、アドリア海に面したポルト・サンテルピーディオの周回コースに向かう210km。今大会の最長ステージは1日雨だった。
冷たい雨の中で逃げを打ったのはアレッサンドロ・ヴァノッティ(イタリア、アスタナ)、ステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)、そして新城幸也(ユーロップカー)の3人。前日に足首を強打したエースのピエール・ロラン(フランス)が途中でレースを降りる中、「何か結果を出したい」と語っていた新城が逃げた。
アドバンテージを5分まで広げながらアペニン山脈を抜け、アドリア海を目指すヴァノッティ、デヴォルデル、新城。雨脚が強まる中、4分ほどのリードを維持したままレース後半に差し掛かる。
レース中盤のGPMモンテルパーロで動いたのはティンコフ・サクソだった。アルベルト・コンタドール(スペイン)を含めたクライマー系選手たちがペースを上げると、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)を含むスプリンターたちが相次ぎ脱落。100名弱に絞られた集団が先頭3名を追う展開に。
ベルギーチームは一旦アシスト選手を下げてカヴェンディッシュを引き上げようとしたが、ミラノ〜サンレモ前に悪天候の中での無理は禁物と判断。カヴェンディッシュ、マーク・レンショー(オーストラリア)、ファビオ・サバティーニ(イタリア)、ゼネク・スティバル(チェコ)、ニキ・テルプストラ(オランダ)の5名をポルト・サンテルピーディオの周回コース到着後にリタイアさせている。
遅れたスプリンターを復帰させたくないチームの集団牽引によって逃げグループのリードは縮小し、フィニッシュまで50kmを残して逃げは吸収。メイン集団は雨のポルト・サンテルピーディオ周回コースを駆け抜けた。
諦めないヴァノッティが再び飛び出し、今度はアレクシ・ヴィエルモ(フランス、AG2Rラモンディアール)が合流して2人が先行する。最終周回に独走に持ち込んだヴィエルモだったが、ティンコフ・サクソやロット・ソウダルの追撃には対抗できずに吸収。MTNキュベカルがトレインを組んで、ウェットな最終ストレートになだれ込んだ。
最終的に50名強の集団スプリントで、ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)やイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)を振り切ったスロバキアチャンピオンが雄叫びをあげる。チームメイトの働きに応えるように、サガンが待望の今シーズン初勝利を手にした。
サガンの最後の勝利は昨年6月のスロバキア選手権ロードレースまで遡る。以降、9ヶ月の間に2位が9回。存在感を見せながらも勝てない日々が続いていた。
「何回2位になったのか数え切れないほど、ここまで2位続きだった。常にトップ争いに絡みながらもとにかく2位ばかりだった。でもそれも経験の一部であり、人生はそんなもの。いい時もあれば悪い時もある」とサガンは達観している。
「ツアー・オブ・カタールの落車で調子を落とし、ツアー・オブ・オマーンでは暑さに苦しんだ。ストラーデビアンケでも100%とは言えないコンディションだったものの、このティレーノで仕上がったと感じる。これからも過去ではなく未来を見据えて走る。今日はアルベルト(コンタドール)がライバルスプリンターをふるい落とすために登りで力を尽くしてくれるなんて感激したよ」と、週末に控えたミラノ〜サンレモに向けて手応えを掴んだ様子だ。
終始レインジャケットを着込み、リーダージャージを見せることなくフィニッシュしたナイロ・キンタナ(コロンビア・モビスター)が総合首位をキープ。総合タイム差は変わらず、バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)を39秒、リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)を48秒引き離した状態で最後の個人タイムトライアルに挑むことに。
キンタナは「今日のようなステージではライバルが攻撃を仕掛けてくることも考えられた。レースを失う可能性も有る危険なステージだったけど、幸い何も問題なかったよ」と胸をなでおろす。「明日はスピード勝負だ。そこには何も秘密なんてない。ただただスピードが勝敗を分かつ。(ライバルに対しての)アドバンテージは充分にあるので、トラブルなく走れば大丈夫だと思っている」。
新城幸也のコメント
64位でステージを終えた新城幸也(ユーロップカー)。「チームにとってはエースのピエール・ローランが足首を負傷し、リタイアしてしまったり、今回のレースでチームは何も残せていなかったので、スプリントになればトニー、自分はそのアシスト。また天気が悪いので、逃げ切る可能性もあるので誰かは逃げに乗るというチームオーダーだったので、デヴォルデル(トレックファクトリーレーシング)とふたりで飛び出し、逃げが決まった。その後、アスタナの選手が一人で追いついてきたので、待って3人で逃げ出した。 今日も寒さに耐える日となった。山岳ポイントででコンタドールらがアタックした事もあり、差が一気に差が縮まり、吸収されてしまった。しかし、今日逃げた事で、コンディションが一つ上がった感触が得られた。明日も良い感じで出し切って終わりたいと思います。」とコメントしている。
最終個人タイムトライアルはサンベネデット・デル・トロントを舞台にした平坦な10km。天気予報によると雨の心配はなさそうだ。
ティレーノ~アドリアティコ2015第6ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)
3位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
6位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
7位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
8位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)
9位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、キャノンデール・ガーミン)
10位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)
64位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)
3位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・グリーンエッジ)
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
6位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
7位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
8位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)
9位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、キャノンデール・ガーミン)
10位 アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)
64位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
5h04’13”
+26”
+26”
個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア・モビスター)
2位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
9位 スティーブ・クミングス(イギリス、MTNキュベカ)
10位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)
69位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
2位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
9位 スティーブ・クミングス(イギリス、MTNキュベカ)
10位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)
69位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
24h58’58”
+39"
+48"
+57"
+1’03"
+1’04"
+1’06"
+1’07"
+1’12"
+1’13"
+29’22”
+39"
+48"
+57"
+1’03"
+1’04"
+1’06"
+1’07"
+1’12"
+1’13"
+29’22”
山岳賞
カルロス・キンテロ(コロンビア、チームコロンビア)
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
ヤングライダー賞
ナイロ・キンタナ(コロンビア・モビスター)
チーム総合成績
カチューシャ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
※新城幸也(ユーロップカー)のコメントはユキヤ通信より。
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